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第2部 第1章 第4節 (3)新型コロナウイルスの感染拡大・災害等の緊急時対応、消費税率引上げへの対応

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第4節 消費生活に関連する多様な課題への機動的・集中的な対応

(3)新型コロナウイルスの感染拡大・災害等の緊急時対応、消費税率引上げへの対応

新型コロナウイルス感染症の拡大への消費者庁の対応

2020年初頭の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、日常の消費生活に大きな影響が生じました。例えば、マスクの需要が急増する中、一部のインターネットにおけるマスクの高額転売や、食料品等の買いだめ、消費者につけ込む悪質商法等が発生しました。また、個人等が誤った風説を流すことに伴い、正しい情報や実態と齟齬のある消費行動もみられました。

新型コロナウイルス感染症に関する消費者からの相談も多くなっています。全国の消費生活センター等に2020年1月から5月20日までに寄せられた、新型コロナウイルス感染症に関する消費生活相談件数は、32,555件に上りました(2020年5月20日までの登録分)。主な相談内容としては、マスクや消毒液等の品不足に関するものや、旅行やイベント等のキャンセルに伴う返金に関するもの、詐欺や悪質商法の可能性があるもの等がみられました(「新型コロナウイルスに関する消費生活相談の件数と傾向」参照。)。

このような状況も踏まえ、消費者庁としては、マスク等の物資の需要増に対応するとともに不当表示や悪質商法による消費者被害の防止等の対策を進めています。

1マスク等の物資の需要増への対応

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、マスクや消毒液等の衛生関連商品等の大量購入等が発生しました。特にマスクについては、需要が急増し、医療機関を含めて必要なマスクの確保が困難となる中、小売店舗等でマスクを大量に購入し、一部のインターネット上で高額転売する行為がみられたことから、消費者庁としては、転売目的の購入は望ましくない旨の呼びかけやデジタル・プラットフォーム事業者各社への働き掛けを累次行ってきました。しかし、依然としてマスクの高額転売が続いたことから、2020年3月15日に、国民生活安定緊急措置法(昭和48年法律第121号)に基づき、マスクの転売を禁止することとしました。これは事業者のみならず個人も対象であり、購入価格を超える価格でマスクの転売を行った場合、処罰の対象となり得ます。

消費者庁では、引き続き関係府省庁や機関と連携し、今般のマスクの転売禁止規制が実効的なものとなるよう対応することとしています。

2食料品等の冷静な購買活動の呼び掛け

感染拡大を防ぐための学校休校や不要不急の外出の自粛要請、緊急事態宣言の発出等に至る過程で、一部店舗で食料品等の買いだめが発生したことから、消費者庁では、関係府省と連携し、消費者に対し冷静な購買活動の呼び掛けや、購買活動を行うには、感染の危険性が高い混雑を避けつつ、生活物資の安定供給のため努力されている従業員への協力が重要である趣旨の呼び掛けを行いました。加えて、2020年4月7日に緊急事態宣言が発出されたことを受け、スーパーマーケット等での生活必需品の買物等、生活の維持に必要な外出は可能(注19)であり、引き続き消費者に冷静な購買行動を求める呼び掛け等(注20)を行ったところです。なお、この間、消費者物価についてはおおむね通常の変動の範囲内で推移(注21)しました。

3不当表示や悪質商法による消費者被害の防止

新型コロナウイルスの感染が拡大し、不確かな情報提供等による不安が広がる中、消費者につけ込む悪質商法等による消費者被害の防止が喫緊の課題となりました。

消費者庁では、2020年2月25日から3月19日までの期間、インターネット広告において、新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうするウイルス予防商品の表示について、景品表示法及び健康増進法の観点から緊急監視を実施しました。この結果、インターネット広告においてウイルス予防商品を販売している64事業者による87商品(健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌商品、アロマオイル、光触媒スプレー等)について、新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする文言等があったことを受け、消費者が当該商品の効果について著しく優良等であるものと誤認し、新型コロナウイルスの感染予防について誤った対応をしてしまうことを防止する観点から、同年3月10日及び3月27日に、当該表示を行っていた事業者等に対する改善要請等の実施結果を公表するとともに、消費者への注意喚起を実施しました。加えて、マスクのおとり広告を行っていた2事業者に対しても、景品表示法の観点から再発防止の指導を行いました。

また、フィッシング(注22)のほか、マスクや消毒液等、身に覚えのない商品の送り付け(ネガティブ・オプション)等に関する消費生活相談が寄せられたことを受け、消費者庁では、これらに関する注意喚起資料を作成し、地方公共団体、消費者団体、事業者団体等に提供しました。また、政府による布マスクの全戸配布に便乗したマスクの送り付け商法等の詐欺や悪質商法について消費者及び地方公共団体に注意を呼び掛けました。加えて、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」に一人当たり10万円の給付を行う「特別定額給付金」が盛り込まれたことを受け、消費者庁、総務省及び警察庁の連名で、この給付金を装った詐欺についての消費者への注意喚起も行いました。

このほか、新型コロナウイルスを口実に、行政機関職員をかたって勧誘を行うなど悪質な事例が発生したことから、国民生活センターでは、新型コロナウイルスに便乗した悪質商法に関する注意喚起を行ったほか、2020年5月1日から「新型コロナウイルス給付金関連消費者ホットライン」を開設しました。

4食品表示基準の弾力的運用

食品の表示に関しては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う中国産輸入原材料の供給不足を受け、中国産として原料原産地表示を行っている商品について食品表示基準を弾力的に運用する旨を、2020年3月3日に消費者庁及び農林水産省の連名で、関係行政機関に通知しました。これは、新型コロナウイルス感染症の拡大が社会的・経済的活動に影響を及ぼしている中、消費者の需要に即した食品の生産体制を確保する観点から、「中国産」との表記と実際の原材料の原料原産地に齟齬がある場合であっても、消費者に対して、店舗等内の告知、社告、ウェブサイトの掲示等により、当該商品の適正な原料原産地に関する適時適切な情報伝達がなされていれば、当分の間、取締りを行わなくても差し支えないとするものです。同年4月10日には、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が国内外の食料品のサプライチェーンに深刻な影響を及ぼしつつあることに伴い、前述の運用の範囲を拡大し、消費者庁、農林水産省及び厚生労働省の連名で、健康被害を防止することが重要なアレルギー表示や消費期限等を除き、容器包装に表記された原材料等、原料原産地又は栄養成分の量等の表示事項と実際に使用されている原材料等の表示事項に齟齬がある場合でも、消費者に対して、店舗等内の告知、社告、ウェブサイトの掲示等により、当該食品の適正な原材料等その他の情報が適時適切に伝達されている場合には、当分の間取締りを行わなくても差し支えない旨を、関係行政機関に通知したところです。

なお、消費者庁では、消費者を欺瞞するような悪質な違反に対しては、これまでどおり厳正な取締りを行っていくこととしています。

5正確な情報発信や不確かな情報の発信・拡散の抑制への対応

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、個人等が誤った風説等を流すことにより、合理的でない消費行動が起き、結果的に市場が混乱する事態が生じました。このため、正確な情報発信や、不確かな情報の発信・拡散の抑制に向けた取組として、消費者庁では、関係府省とも連携し、マスクや食料品等の供給状況の情報を基にした冷静な購買行動についての呼び掛けや、不確かな情報がチェーンメールとして拡散されていることへの注意喚起を実施しました。非常時においても消費者が情報の真偽を判断し、適切な対応を行うことを可能とするためには消費者教育が重要です。また、社会のデジタル化が、デマも含めた情報の拡散を増幅させていると考えられることから、今後、消費者庁では、関係府省と連携し、非常時においても適切な消費行動がなされるような環境整備に取り組んでいくこととしています。

新型コロナウイルス感染症に関する消費生活相談の件数と傾向

1.消費生活相談件数の推移

受付日
(2020年1月1日以降)
1月31日まで 2月29日まで 3月31日まで 4月30日まで 5月20日まで
累積件数 155 2,527 12,536 28,340 32,555

(備考) 1.PIO-NETに登録された消費生活相談情報(2020年5月20日までの登録分)
2.「新型コロナ関連」の相談。

2.主な相談事例
○品不足、転売、抱き合わせ販売に関するもの
(例)マスク、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、消毒液等
○キャンセル料等に関するもの
(例)航空券・宿泊等の旅行関係、コンサート等のイベント、結婚式、着物レンタル、スポーツクラブの会費、宴会等
○詐欺や悪質商法の可能性があるもの
(例)
【詐欺サイト】
・マスクが買えるサイトがあると知人に聞いて注文したらメールでクレジットカード番号の入力を促された。電話したら別の会社だった。
・大量在庫ありと記載されたサイトでマスク等を注文。後刻不審に思い記載番号に電話すると別の店だった。詐欺サイトだったようだ。
【送り付け商法】
・注文していない箱入りのマスクが送付されてきた。どうしたらよいか。
【新型コロナウイルスへの効果を標ぼうするもの】
・アオサを食べると新型コロナウイルスの菌が入らないと言っているから、アオサ入りみそ汁を買うようにと勧誘された。本当か。
・胸にプレートを下げると新型コロナウイルスに効くという商品。効果はあるか。
【給付金詐欺】
・携帯電話に、10万円給付金の事務代行手続のため3,000円振り込むようにとSMSが届いた。
【その他】
・「行政からの委託で消毒に行く」という電話がかかってきた。
・排水管高圧洗浄のチラシを見て電話したら「排水管が新型コロナウイルスで汚染されている」と言われた。

災害に関連した消費者トラブルへの対応と相談体制の確保

地震や豪雨等による自然災害の発生後には、被災地において家屋の点検や修理を行うとして不当に高額な金銭を要求する事業者が出現するほか、被災地域外において架空請求等が発生するなど、災害に関連した消費者トラブルが多く寄せられる傾向にあります。一方で、地方公共団体によっては、被災により相談業務の継続が困難となることもあります。

このような状況において、消費者庁としては、被災された地方公共団体をバックアップして切れ目のない相談体制を確保するとともに、消費者への積極的な注意喚起により消費者トラブルの未然防止・拡大防止を図っています。

2019年には、台風第15号や台風第19号を始めとする暴風雨や河川の氾濫により、各地で多くの人的・物的な被害が発生しました。これらの災害により、被災地域の一部の地方公共団体において相談業務の継続が困難となったことから、消費者庁では、消費者ホットライン188の接続先を都道府県等の消費生活センター等に変更するなどの対応を行いました。

さらに、被災地域の消費者への支援や被災された地方公共団体のバックアップのため、国民生活センターでは「令和元年秋台風関連消費者ホットライン」を開設し、2019年11月1日から12月13日までの43日間、災害救助法(昭和22年法律第118号)の適用を受けた市区町村が所在する1都13県(注23)からの相談を通話料無料で受け付けました(図表II-1-4-6)。

これらのような自然災害に関連した消費者トラブルについては、2019年に全国の消費生活センター等に6,821件の消費生活相談が寄せられました(PIO-NETにおける2020年3月31日までの登録分。詳細は、第1部第1章第4節(3)参照。)。また、「令和元年秋台風関連消費者ホットライン」には、43日間に140件の相談が寄せられました。

全国の消費生活センター等に寄せられた具体的な相談内容としては、例えば、「台風で床上浸水した。業者が突然訪問し、床部分の除菌が必要だと言われたが、本当に必要なのか」、「台風に備えて屋根を補修してもらったら雨漏りが発生。業者は補修に応じず新たに高額な工事を勧誘してくる」といったものや、被災地域外においても「台風被害者への支援団体と記載し、募金活動をしているとのメールがスマホへ届いた。本当なのか」がありました。

消費者庁では、災害に便乗した事業者による消費者被害の未然防止・拡大防止のため、災害時に慌てないための留意事項について情報提供するとともに、災害に関連して寄せられた相談情報を基に、機動的な注意喚起も実施しています。

2019年度においても、台風等による一連の被害状況を踏まえつつ、消費者庁公式SNSにおいて、災害関連情報へのリンクを共有するとともに、消費者被害に関する啓発資料を作成し、被災された地方公共団体等への配布も行いました(図表II-1-4-7)。

消費税率引上げへの対応

商品・サービスの消費一般に対して広く課税される消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)の税率は、2019年10月に10%へと引き上げられると同時に、消費税の軽減税率制度(注24)が実施されました。この消費税率引上げに際して、消費者行政の分野では、円滑かつ適正な転嫁のために公共料金の改定、表示の適正化といった転嫁対策等の対応を行っています。

消費者庁では、公共料金の新規設定や変更に係る認可等について、消費者に与える影響を十分に考慮すべく、必要なものは事前に所管省庁からの協議を受けるとともに、そのうち重要なものについては、消費者委員会で審議した上で、物価問題に関する関係閣僚会議へ付議しています(注25)。消費税率引上げに伴う公共料金の改定に際しても、同様の手続を行った上で、所管省庁が料金改定の認可等を行いました。

消費税転嫁対策に関しては、2013年6月に消費税転嫁対策特別措置法(注26)が制定され、事業者間の消費税の転嫁拒否等の行為規制のほか、「消費税還元セール」のような消費税を転嫁していない旨の表示等の禁止、総額表示義務の特例(誤認防止措置を講じていれば、税込価格を表示することを要しないこととする特例)等の措置がなされています。特に「消費税還元セール」等の表示規制に関しては、具体的にどのような表示が問題となるのかに関して流通業界から懸念があり、2013年9月に消費者庁が「消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方」を取りまとめ、禁止される具体的な表示例等を提示しました(図表II-1-4-8)。

また、2018年5月に消費税の軽減税率制度に関して、「消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について」と題するガイドラインを関係府省庁と連名で公表し、様々な表示方法が可能であることを明確化するとともに、同年11月には、今回の消費税率引上げに際し、「消費税率の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」を関係府省庁と連名で公表し、表示や便乗値上げについての考え方を示しました。

便乗値上げに関しては、ガイドラインで価格引上げに当たって合理的な理由があれば便乗値上げに当たらないという考え方を示しつつ、2013年10月に消費者庁に開設した便乗値上げ情報・相談窓口を継続して設置しました。消費者及び事業者から受け付けた情報・相談の中から必要に応じて関係省庁へ情報提供を行いました(注27)。また、生活関連物資等の価格変動、物価動向についての意識等を迅速に把握するため、「物価モニター調査」については、消費税率引上げ前後(2019年8月から11月まで)において、調査対象品目を25品目から40品目に拡充させるとともに、物価モニター数を2,000人から4,000人に増員して、調査を実施しました(物価モニター調査の詳細は、第1部第1章第6節(1)【解説】参照)。

図表2-1-4-6「令和元年秋台風関連消費者ホットライン」の広報チラシ

図表2-1-4-7災害時に注意すべき消費者被害に関する啓発資料

図表2-1-4-8消費税の転嫁を阻害する表示の具体例


  • 注19:買物の際は、できるだけ少人数かつ短時間で行い混雑を避けることを求める呼び掛けも別途実施した。
  • 注20:緊急事態宣言下において消費者が食品ロスを削減できる工夫として、例えば、飲食店のテイクアウト販売や、また、引取手がなく捨てられそうな農産物等の販売を行うインターネットサイト等の情報を取りまとめ、消費者庁ウェブサイト「緊急事態宣言下での食品ロス削減の工夫」として、2020年5月1日に公表した。
  • 注21:2020年1月~3月において、総務省「消費者物価指数」の総合指数の季節調整済前月比は±0.1%以内で推移した。なお、2020年1月~4月の物価モニター調査結果によると、全25品目のうち22品目以上で前月比±1%未満であった。
  • 注22:実在する組織をかたって、ユーザーネーム、パスワード、アカウントID、ATMの暗証番号、クレジットカード番号といった個人情報を詐取すること。電子メールのリンクから偽サイト(フィッシングサイト)に誘導し、そこで個人情報を入力させる手口が一般的に使われる。
  • 注23:岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県
  • 「酒類及び外食を除く飲食料品」及び「定期購読契約が締結された週二回以上発行される新聞」が、軽減税率(8%)の適用対象品目。
  • 注25:直近の例:消費税率引上げに伴う公共交通運賃の改定及び北海道旅客鉄道株式会社の運賃の改定について(2019年8月30日物価問題に関する関係閣僚会議で了承)。
  • 注26:消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(平成25年法律第41号)
  • 注27:このほか、価格転嫁等に関する政府共通の相談窓口として内閣府に「消費税価格転嫁等総合相談センター」を設置したことを始め関係府省庁でも転嫁対策、総額表示等に関する相談窓口を設けて対応している。

担当:参事官(調査研究・国際担当)