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第1部 第2章 第4節 (3)消費者にできること

第1部 消費者問題の動向と消費者意識・行動

第2章 【特集】つくる責任、つかう責任、減らす責任~食品ロス削減--持続可能な社会のために~

第4節 持続可能な社会の形成に向けて

(3)消費者にできること

エシカル消費

全ての人は消費者であり、日本経済において家計消費は名目国内総生産(GDP)の約54%と過半数を占めています(第1部第1章第6節参照。)。消費者は、自らの消費行動が社会に大きな影響を与えるという自覚を持ち、自らの行動が結果的に消費サイドから供給サイドを動かす要因となり得ることを認識し、行動することが重要です。これは、まさに「消費者市民社会(注120)」の実現を支える考え方といえます。

持続可能な社会を実現するためには、消費者が自らの社会に与える影響力を自覚し、地域の活性化や雇用等も含む、人や社会・環境に配慮した消費行動、すなわち「エシカル消費」を実践していくことが欠かせません(図表I-2-4-1)。

エシカル消費を実践していくことは、社会的課題の解決に資するだけでなく、消費者にとっても身の回りにある「安さ」や「便利さ」等に隠された社会的費用といった背景や影響を意識することにつながります。例えば、食品については、生産から消費に至る様々な段階で食品ロスが発生しており、結果として食品が無駄になっているだけでなく大きな環境負荷につながっていることや、食品ロスが発生している一方で食料を真に必要としている人がいることを考えるきっかけとなります。水産エコラベルの商品等、選択・購入することで持続可能性に配慮した消費行動を実践できる商品も増えつつあり、消費者にとってエシカル消費は身近なものであるといえます(詳細は「水産エコラベル(農林水産省)」参照。)。また、プラスチックについては、その機能性により日々の生活が便利になっている一方で、プラスチックごみが大量に海洋に流出し海洋汚染の原因となっていることや、化石燃料の大量消費や地球温暖化にもつながっていることを考えるきっかけとなります。

水産エコラベル(農林水産省)

水産エコラベルは、生態系や資源の持続性に配慮した方法で漁獲・生産された水産物・食品に対して、消費者が選択的に購入できるよう商品にラベルを表示するスキームです。近年では、大手小売事業者が、水産エコラベルの添付された商品を取り扱うなど、消費者の目に触れる機会も増えてきました。世界的にも広がりを見せており、水産エコラベルに対する関心は高まりつつあります。世界には様々な種類のエコラベルがありますが、日本ではMSC、ASC、MEL(注121)等が一般的に流通しています。このうち、日本発の水産エコラベルであるMELは、2019年12月、国際的な承認を得るなどの動きも活発化しています。

水産エコラベルの商品を消費者が購入することにより、持続可能な漁業・養殖業を支えることができ、消費者が身近にエシカル消費を体感することが可能となるとともに、生産から流通、消費まで一貫してエシカル消費を支えることができます。水産エコラベルを始めとした農林水産品について、持続可能性に配慮した製品のストーリーを消費者が認知できるように、そのストーリーについて供給サイドが積極的に発信するとともに、これら認証自体の知名度を向上させることが重要です。水産エコラベルの普及を通じて、消費者が持続可能な水産物について考えるきっかけとなることが期待されます。

日本発の水産エコラベル「MEL」 (提供:水産庁) MELが表示された商品 (提供:水産庁)

エシカル消費の実践のために

消費者にエシカル消費に関心をもってもらい、実践するよう促すためには、まず現在の消費者像を的確に捉え、効果的な啓発方法やアプローチ手段を検討することが重要です。社会経済情勢の変化に伴って、消費者の価値観やライフスタイルが多様化する中で、従来の性別、年齢、世帯構成といった見方にとどまらない分析により、消費者の特性をきめ細かく捉える必要があります。

消費者庁「消費者意識基本調査」(2019年度)において、消費者分類のための質問を設定し、その回答を基に、消費者を意識面・行動面での特徴に基づいて分類する試みを行ったところ、環境への意識と自己利益への意識という二つの軸で、消費者を四つのタイプに分類することができました(図表I-2-2-33(再掲))(詳細は【参考分析】参照。)。それぞれのタイプが、生活に関する情報を、どのようなメディアから得ているかをみると、「環境優先型」は、「新聞・雑誌」や「行政の広報誌」等、紙媒体において高い接触率となっており、「自己優先型」は、「新聞・雑誌・書籍」への接触率は最も低い一方、「インターネット」、「携帯電話・スマートフォン」、「SNS」、「動画配信サイト」等、ウェブ関連メディアへの接触率が高くなっています(図表I-2-4-2)。

このように、消費者の性格や行動パターンからそれぞれの特徴を分析することで、年齢や性別だけでは見えてこなかった、効果的に消費者を啓発するためのヒントが得られたと考えられます。

例えば、環境への意識や、社会の役に立ちたいとの意識が比較的高い一方、自己の利益への意識が高くない「環境優先型」には、社会的課題の解決に資するような考えや商品・サービス、事業者の取組を、新聞や行政の広報誌といった紙媒体を通じて発信することで、そのような商品・サービスを選択するよう促すことができます。他方、自己の利益や他人からの評価等に敏感な一方、環境や社会へ意識が高くない「自己優先型」には、環境や社会に貢献するような取組が結果的に自己の利益につながることを、ウェブ媒体を通じて発信していくことが効果的であると考えられます。また、「自己優先型」は、管理職を除く会社員や学生等において割合が高くなっていることから、職場や学校といった場を捉えて啓発を行うことも有効といえます(【参考分析】参照。)。環境や社会、自己の利益いずれに対する意識も高い「バランス型」は、「環境優先型」と「自己優先型」のいずれの施策にも反応し行動する期待があります。

これらの工夫は、行政が政策を発信する際のみならず、消費者志向経営等の社会的課題を解決するための取組を行っている事業者が自社の取組を発信する場合にも当てはまると考えられ、消費者と事業者がコミュニケーションを深化させるために有効な手段となり得ます。


  • 注120:消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会をいう(消費者教育推進法第2条第2項)。
  • 注121:MSC(海洋管理協議会(Marine Stewardship Council))、ASC(水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council))はいずれも海外発の水産エコラベルであり、MSCは持続可能な漁業、ASCは持続可能な養殖業を対象とした認証である。一方、MEL(一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会(Marine Eco-Label Japan Council))は日本発の水産エコラベルであり、多種多様な漁業が多種多様な魚種を利用している日本の水産業を対象とした認証である。

担当:参事官(調査研究・国際担当)