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「ミネラルウォーター類のPFOS及びPFOAに係る規格基準」に関するQ&A

令和7年7月

1.基準値設定の考え方

2.その他

1.基準値設定の考え方

Q1 ミネラルウォーター類に関するPFOS及びPFOAの基準値はどのように設定されたのですか。
A

清涼飲料水のうちミネラルウォーター類について、殺菌又は除菌を行うものにおける食品衛生法に基づく成分規格としてPFOS及びPFOAを設定し、その基準値はPFOS及びPFOAの合算値として0.00005 mg/L(50 ng/L)としました。

食品衛生法に基づく規格基準においては、従来、ミネラルウォーター類は水道水の代替として摂取されている実態があることから、殺菌又は除菌を行うものについては、水道法に基づく水道水の水質基準等として基準値が設定されている項目を食品衛生法においてもミネラルウォーター類の成分規格の項目とすることを検討することとしています。今回も同様の考え方に基づき、水道水における水質基準と同じ考え方により基準値を設定しました。

具体的には、水道水質基準等の設定の考え方に準じて、以下の条件で対象物質の1日当たりのばく露量が耐容一日摂取量(TDI)を超えないような値を算出し、基準値としたものです。

  • 人が1日に飲用する水の量:2 L
  • 人の平均体重:50 kg
  • 水経由のばく露割合としてTDIの10%
  • ヒトが一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量のこと。体重1kg当たりの物質の摂取量で示される(mg/kg 体重/日)。
Q2 海外では、飲料水のPFOS及びPFOAの規制はどのようになっていますか。
A

飲料水におけるPFASの基準値については、国際的な基準は定められておらず、各国・地域・機関においてそれぞれの考え方に基づいて設定されています。

なお、米国では、ミネラルウォーターに対する基準値は設定されておらず、水道水のみが規制対象とされています。

国内及び諸外国等における飲料水のPFAS規制状況等
国等 対象及び根拠 内容
日本 水道水(水道法第4条に基づく水質基準) PFOSとPFOAの合算値として 50 ng/L
日本 ミネラルウォーター類(殺菌又は除菌を行うもの) PFOSとPFOAの合算値として0.00005 mg/L(50 ng/L)
WHO 飲料水(PFOS and PFOA in Drinking-water, Background document for development of WHO Guidelines for Drinking-water Quality, 29 September 2022, Version for public review) 暫定ガイドライン値として、PFOS、PFOAそれぞれに対して0.1 μg/L(100 ng/L)、全てのPFASに対して0.5 μg/L(500 ng/L)を提案
※ 2023年11月、パブリックコメントを受けてPFASのレビュー継続を発表
コーデックス規格(Codex Alimentarius)注1 基準値は設定されていない。 基準値は設定されていない。
EU 人間の消費を目的とした水(water intended for human consumption)(Directive(EU) 2020/2184)
責任ある当局からナチュラルミネラルウォーターと認定されたものは適用除外されている。「ナチュラルミネラルウォーター」は、地下水面または堆積層に由来し、1つ以上の自然出口又は掘削出口から汲み上げられた泉から湧き出る、微生物学的に健全な水とされている(Directive 2009/54/EC)。
PFAS Totalに対して0.50 μg/L(500 ng/L)
Sum of PFASに対して0.10 μg/L(100 ng/L)
PFAS Total はペル及びポリフルオロアルキル化合物の全物質の合算、Sum of PFASは指定された20種類のPFAS(PFOS及びPFOAを含む。)の合算。加盟国はPFAS TotalとSum of PFASの片方または両方を用いることを選択できる。なお、EU加盟国は、2026年1月12日までに規制値を遵守するための必要な措置を講じなければならないとしている。
米国 飲料水(National Primary Drinking Water Regulation(NPDWR)on April 10, 2024) 規制対象は、水道水に限られる。 PFOS、PFOAそれぞれに対して 4.0 ng/L 注2
  • 注1
    1963年に国際連合食糧農業機関(FAO)及び世界保健機関 (WHO)が設立した、消費者の健康保護及び食品の公正な貿易の促進を目的とした政府間組織である、コーデックス委員会(Codex Alimentarius Commission (CAC))において策定された食品の国際食品規格。
  • 注2
    米環境保護局(EPA)は、2024年4月に規制とすることを公表し、各水道会社に対して、3年以内にモニタリングを実施し、基準超過の場合は5年以内の削減措置を求めていた。その後、2025年5月に、PFOS及びPFOAについての規制値は維持するものの、遵守期限を2029年から2031年に延長することを検討するとともに、PFOS及びPFOA以外のPFASの規制について再考する意向が公表された。(2025年6月時点)
Q3 ミネラルウォーター類のうち、殺菌又は除菌を行わないものについては、PFOS及びPFOAの規格基準を設定しないのですか。
A

ミネラルウォーター類のうち、殺菌又は除菌を行わないもの(容器包装内の二酸化炭素圧力が20°Cで98kPa以上のものを除く。)については、食品衛生法に基づく製造基準において、泉源及び採水地点の環境保全を含む原水の管理を行うこと、人為的な環境汚染物質を含んでいるものであってはならないこと等が規定されています。PFOS及びPFOA は人為的な環境汚染物質に該当するものであり、人の健康を損なうおそれのない濃度として、当面の間、PFOSとPFOAの合算値として0.00005 mg/L(50 ng/L)とし、泉源の衛生管理を適切に行うことが求められます。

また、ミネラルウォーター類のうち、殺菌又は除菌を行わないものであって、かつ、容器包装内の二酸化炭素圧力が20°Cで98kPa以上のものについては、その原水について自主的にPFOS及びPFOAの濃度を管理し、PFOSとPFOAの合算値として0.00005 mg/L(50 ng/L)を参考に可能な範囲で低減措置等の対応を検討することが望ましいと考えます。

なお、ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行わないものについては、従来、原則としてコーデックス規格のナチュラルミネラルウォーター規格に準拠し、成分規格に設定する項目の選定及び基準値の設定等を行うこととしておりますが、現時点ではコーデックス規格が設けられていません。

参考通知
Q4 ミネラルウォーター類以外の清涼飲料水については、PFOS及びPFOAの規格基準を設定しないのですか。
A

ミネラルウォーター類以外の清涼飲料水については、食品衛生法に基づく規格基準による製造基準において、水道水又はミネラルウォーター類の規格に適合する水を原料として用いなければならない旨が規定されています。そのため、清涼飲料水の原料となる水について、水道水又はミネラルウォーター類の規格に適合することが求められます。

Q5 食品製造用水については、PFOS及びPFOAの規格基準を設定しないのですか。
A

食品衛生法に基づく規格基準による食品製造用水は、食品の洗浄や冷却など、食品の製造、加工、調理等の目的に使用されるものであり、水道水の代替として摂取されているものではないことから、現時点では、PFOS及びPFOAの規格基準は設定していません。

なお、水道水以外の食品製造用水(食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)のB 食品一般の製造、加工及び調理基準の5の第1欄及び第2欄に定める26項目の規格に適合する水をいう。)を使用する食品等事業者においては、自主的にPFOS及びPFOAの濃度を管理し、PFOSとPFOAの合算値として0.00005 mg/L(50 ng/L)を参考に可能な範囲で低減措置等の対応を検討することが望ましいと考えます。

参考通知
Q6 PFOS、PFOA以外のPFASについては、基準値を設定しないのですか。
A

PFOS、PFOA以外のPFASについては、現時点では、評価を行う十分な知見が得られていない等の理由から、基準値を設定していません。今後の食品安全委員会における評価、水道水質基準、コーデックス規格における検討状況等を注視してまいります。

2.その他

Q7 有機フッ素化合物(PFAS)とはどのような物質ですか。PFOS・PFOAとはどのような物質ですか。
A

PFAS(通称ピーファス)とは、主に炭素とフッ素からなる化学物質で、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物のこと(1)を指します。分類の仕方によって数が異なります(2)が、PFASは1万種類以上の物質があるとされています。

PFASの物性は炭素鎖の長さで大きく異なりますが、いずれも強く安定した炭素-フッ素結合を持ち、加水分解、光分解、微生物分解及び代謝に対して耐性があります。中には撥水・撥油性、熱・化学的安定性等の物性を示すものがあり、溶剤、界面活性剤、繊維・革・紙・プラスチック等の表面処理剤、イオン交換膜、潤滑剤、泡消火薬剤、半導体原料、フッ素ポリマー加工助剤等、幅広い用途で使用されています。

  1. 「アルキル」は、炭素と水素が結びついたものです。「ペルフルオロ」はアルキル基に結合した水素がすべてフッ素で置き換わったもの、「ポリフルオロ」はアルキル基に結合した水素の一部がフッ素で置き換わったものを指しています。
  2. 例えば、経済協力開発機構(OECD)が2018年に発表したデータベースでは、4,730の分子種の存在が確認されています。

PFASの一種であるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸、通称ピーフォス)・PFOA(ペルフルオロオクタン酸、通称ピーフォア)は、様々な用途で使用されてきました。具体的には、PFOSは、半導体用反射防止剤・レジスト(電子回路基板を製造する際に表面に塗る薬剤)、金属メッキ処理剤、泡消火薬剤などに、PFOAは、フッ素ポリマー加工助剤(他のフッ素化合物を製造する際に、化学反応を促進させるために添加する薬剤)、界面活性剤などに使われてきました。

いずれも難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質を持つため、予防的な取組方法の考え方に立ち、PFOS・PFOAは、それぞれ2009年・2019年にPOPs条約対象物質に追加されました。これを受け、日本国内では、PFOS・PFOAをそれぞれ2010年・2021年に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)の第一種特定化学物質に指定し、製造・輸入等を原則禁止しました。

このため、国内で新たに製造・輸入されることは原則ありませんが、主に過去様々な形で環境中に排出されたものが公共用水域(河川・湖沼・海域)や地下水等から検出されることがあります。また、PFOS等を含む泡消火薬剤を使った消火設備は、今でも市中に残っています。

出典:環境省ホームページ「有機フッ素化合物(PFAS)について」
Q8 PFOS及びPFOAの耐容一日摂取量(TDI)はどのように設定されたのですか。
A

現時点で得ることができた科学的知見から、食品安全委員会においてPFASの食品健康影響評価が実施され、PFOS及びPFOAの耐容一日摂取量(TDI)が設定されました。

詳細は、食品安全委員会のウェブサイト中の『「有機フッ素化合物(PFAS)」評価書に関するQ&A』において記載されています。

参考:
Q9 PFASに関して他にも情報を得られるところはありますか。
A

担当:食品衛生基準審査課