文字サイズ
標準
メニュー

第2部 第2章 第4節 1.消費者教育の推進

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況の詳細

第4節 消費者教育の推進及び消費者への情報提供の実施

1.消費者教育の推進

(1)「消費者教育の推進に関する基本的な方針(基本方針)」等に基づく消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進及び地域における消費者教育推進のための体制の整備

 2012年12月に消費者教育推進法が施行され、同法第19条の規定に基づき、消費者教育推進会議(以下「推進会議」という。)が設置されました。推進会議の任務は、①消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して、委員相互の情報の交換及び調整を行うこと、②「消費者教育の推進に関する基本的な方針」に関し、意見を述べることです。

 同基本方針は、消費者教育の意義及び基本的な方向、内容等を記したものです。推進会議や消費者委員会等の意見を踏まえ、同基本方針は2013年6月に閣議決定され、2023年3月に消費者の多様化や社会経済情勢の変化等を踏まえ、2回目の変更を行いました。

 都道府県及び市町村は、同基本方針を踏まえ、その区域における消費者教育の推進に関する施策についての計画(消費者教育推進計画)を定めるよう努めることとなっています。また、その区域における消費者教育を推進するため、消費者教育推進地域協議会を組織するよう努めることにもなっています。「消費者教育推進計画」及び消費者教育推進地域協議会は、「地方消費者行政強化作戦2020」の政策目標に位置付けられており、消費者行政ブロック会議等において策定・設置を促しています。2022年4月1日時点で、「消費者教育推進計画」は47都道府県・18政令市で策定し、消費者教育推進地域協議会は47都道府県・19政令市で設置しています。

 また、消費者教育推進のための研修を国民生活センターにおいて行い、2022年度は16回(受講者数526人)実施しました。

 このほか、「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」の取りまとめや「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」の報告書において、消費者被害の未然防止のための消費者教育の取組強化が指摘されていることを踏まえ、消費者教育推進会議の下に「消費者力」育成・強化ワーキングチームを設置し、幅広い世代を対象に「消費者力」を身に付けるための新たな教材の開発について、検討しています。

 文部科学省では、大学等における消費者教育の基本的な方向性をまとめた「大学等及び社会教育における消費者教育の指針」(2011年3月消費者教育推進委員会決定)について、2018年度に改訂を行いました。また、成年年齢の引下げを踏まえ、地域における消費者教育が一層推進されるよう、「消費者教育アドバイザー(注98)」の派遣を実施しました。さらに、消費者教育フェスタを主催し、多様な関係者との交流を図るとともに、学校や地域における消費者教育の実践事例について報告を行いました。

 また、毎年度、全国(2022年度は14機関)で社会教育主事講習(注99)を実施し、消費者教育の講義を行うなど、地域における消費者教育の促進に取り組んでいます。

(2)学校における消費者教育の推進

 文部科学省では、2017・2018年に、小・中学校、特別支援学校小学部・中学部、高等学校、特別支援学校高等部の学習指導要領を改訂し、関連する教科等において消費者教育に関する学習内容の更なる充実を図りました。また、消費者教育フェスタを開催するとともに、2016年度及び2020年度に消費者教育推進委員会で作成した「消費者教育の指導者用啓発資料」を用いて、消費者教育を通じて育むべき力と指導者の役割、指導者が消費者教育を行う上でのヒントや関係者が相互に連携して取り組む手法等について普及・啓発を行っています。

 金融庁では、金融庁や関係団体から構成される金融経済教育推進会議において、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の内容を項目別・年齢層別に具体化・体系化した「金融リテラシー・マップ」を2014年6月に作成(2015年6月に改訂)しました。

 これらの関係団体と連携した取組として、大学生に対し、「金融リテラシー・マップ」に基づいた授業を2022年度に14大学において実施しました。

 消費者庁では、2022年4月からの成年年齢引下げに伴い、「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」等に基づき、全国での実践的な消費者教育の実施に向けた働き掛け等を行い、2021年度の進捗状況を2022年6月に公表しました。また、2022年度は、「社会への扉」等の活用実績が比較的低い特別支援学校や私立高等学校に加え、中学校や大学等を対象に、出前講座事業を展開しました。

 2022年度には国民生活センターにおいて、教員の指導力向上の観点から、教員を対象とした研修を4回実施しました。

(3)地域における消費者教育の推進

 文部科学省では、成年年齢の引下げに伴い、地域における消費者教育が一層推進されるよう、「消費者教育アドバイザー」の派遣を実施しました。

 また、多様な主体が情報共有し、相互に連携するための場として消費者教育フェスタを開催しており、2022年度は、岐阜県での開催は「専門学校における消費者教育の取り組み方」、東京都での開催は、「子供・若者の社会参画を育む消費者教育~『消費者の視点』でつながる教育分野の連携・協働のかたち~」、浜松市での開催は、「子供・若者の社会参画を育む消費者教育~浜松発!地域の多様な主体による連携・協働のかたち~」とそれぞれのテーマに、専門家による講演、取組報告やグループディスカッション・パネルディスカッションを実施し、一部をオンラインと現地開催の併用型で実施しました。

 消費者庁では、地方公共団体におけるコーディネート機能の強化に向けて、消費者教育コーディネーターの活動スキルの向上と積極的な情報交換を図ることを目的として、2022年7月に第2回消費者教育コーディネーター会議を実施しました。

 公正取引委員会では、2022年度には、「消費者セミナー(注100)」を83回、「独占禁止法教室(注101)」を220回、「一日公正取引委員会(注102)」を8回開催しました。また、消費者の暮らしと独占禁止法の関わりについて説明した資料を、「消費者セミナー」や「独占禁止法教室」の出席者に配布しました。

(4)多様な主体(家庭、事業者・事業者団体)による消費者教育の推進

 消費者庁では、成年年齢引下げに関する若者の消費者トラブルについて理解を深めることを目的に、10歳代後半から20歳代までの子を持つ親世代を対象としたセミナー動画を作成し、事業者等に周知しました。また、「成年年齢引下げ後の若年者への消費者教育推進方針―消費者教育の実践・定着プラン―」に基づき、若年者向け消費者教育を高等学校段階のみならず、社会人も含めた若年者への切れ目のない対応へと進展させることとし、事業者における新人研修向け消費者教育プログラムの開発に取り組みました。

 消費者教育ポータルサイトでは、事業者・事業者団体等が作成した教材や実践事例についても積極的に収集し掲載するよう努めています。2023年3月31日時点で、消費者教育ポータルサイトのアクセス数は、35万7563件でした。

(5)法教育の推進

 法務省では、法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方を身に付けるための教育(法教育)を推進しており、消費活動の前提となる私法の基本的な考え方についても取り上げるなど、様々な取組を行っています。

 法教育の普及・啓発に向けた取組としては、学習指導要領を踏まえた学校教育における法教育の実践の在り方及び教育関係者と法曹関係者による連携・協働の在り方等、法教育に関する取組について多角的な視点から検討するため、法教育推進協議会及び部会を開催(2022年度・6回)しています。

 また、法教育の具体的内容及びその実践方法をより分かりやすくするため、発達段階に応じた法教育教材を作成し、全国の小中学校、高等学校、教育委員会等に配布しているほか、これらの教材の利用促進を図るため、教材を活用したモデル授業例を法務省ウェブサイトで公開しています。

 このほか、法教育の担い手である教員が法教育の具体的な実践方法を習得することを通じて法教育の推進を図るため、教員向け法教育セミナーを実施しています。

 さらに、学校現場等に法教育情報を提供することによって、法教育の積極的な実践を後押しするため、法教育に関するリーフレットを作成し、全国の学校、教育委員会等に配布しているほか、学校や各種団体からの要請に応じて、法務省の職員を講師として派遣し、教員、児童・生徒や、一般の人々に対して法的なものの考え方等について説明する法教育授業を実施しています。

 加えて、2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられたことを踏まえ、契約や私法の基本的な考え方を学ぶことができる高校生向けのリーフレットを作成し、全国の高等学校、教育委員会等に配布しています。

(6)金融経済教育の推進

 金融庁では、幅広い層に対して金融経済教育の取組の推進に向けて、金融経済教育や資産形成に関する動画の作成・配信や、政府広報を活用した普及啓発活動等を行いました。

 また、2022年4月から高等学校において年次進行で実施されている学習指導要領では、金融経済分野に関する記述がより充実したため、これに対応して指導教材を作成するとともに、教員等の研修会への講師派遣を実施しました。

 金融広報中央委員会等の関係団体と連携し、大学生に対し、「金融リテラシー・マップ」に基づいた授業を14大学で実施しました。また、金融庁及び財務局において、学校や地域で開催される講座等(オンライン開催を含む)への講師派遣を926回実施しました(2023年3月31日時点)。

 また、金融サービス利用に伴うトラブルの発生の未然防止等に向けた事前相談の提供の充実を図るため、「事前相談(予防的なガイド)」を2014年から開設し、相談への対応を行っています。

(7)食育の推進【再掲】

 第2部第2章第2節1.(2)食育の推進を参照。

(8)エシカル消費の普及啓発【再掲】

 第2部第2章第2節3.(1)エシカル消費の普及啓発を参照。


  • (注98)文部科学省では2013年度から地域における消費者教育が、連携・協働により一層推進されるよう、全国の社会教育等における消費者教育の先駆的実践者を消費者教育アドバイザーに委嘱し、地方公共団体からの求めに応じて派遣している。
  • (注99)社会教育主事となり得る資格を付与することを目的として、大学その他の教育機関で実施される講習(約20日間)。社会教育主事は、都道府県及び市町村の教育委員会の事務局に置かれる専門的職員で、社会教育を行う者に対する専門的技術的な助言・指導に当たる役割。
  • (注100)消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動について、より一層の理解を深めてもらうため、公正取引委員会事務総局の職員を消費者団体等の勉強会に派遣するもの。
  • (注101)中学生・高校生・大学生に経済活動の基本ルールである独占禁止法の役割について学んでもらうため、公正取引委員会事務総局の職員を学校の授業に講師として派遣するもの。
  • (注102)公正取引委員会の本局及び地方事務所等の所在地以外の都市において、「消費者セミナー」及び「独占禁止法教室」を独占禁止法講演会等と共に1か所で同時に開催するもの。

担当:参事官(調査研究・国際担当)