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第2部 第2章 第1節 4.食品の安全性の確保

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況の詳細

第1節 消費者の安全の確保

4.食品の安全性の確保

(1)食品安全に関する関係府省の連携の推進

2012年6月に、食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項(平成16年1月閣議決定)の変更が閣議決定され、消費者庁が、食品安全に関わる行政機関として明確に位置付けられました。それ以降、食品安全行政を行う関係行政機関は、相互の密接な連携を図るために、消費者庁の調整の下、関係府省連絡会議等を定期的に開催し、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に推進しています。

関係府省間の連携強化を図るため、「食品安全行政に関する関係府省連絡会議」のほか、「食品安全行政に関する関係府省連絡会議幹事会」、「リスクコミュニケーション担当者会議」、「リスク情報関係府省担当者会議」等を定期的に開催しています。

(2)リスク評価機関としての機能強化

食品安全基本法では、食品のリスクが存在することを前提として、これをコントロールしていくという考え方の下、「リスクアナリシス(注45)」という考え方が導入されています。

また、同法の規定に基づき、食品の安全性について、科学的知見に基づいて中立公正に「リスク評価」を行う機関として、2003年7月、内閣府に食品安全委員会が設けられ、人の健康に悪影響を及ぼすおそれのあるものを含む食品を摂取することによって、どのくらいの確率で、どの程度人の健康に悪影響が生じるかを科学的に評価しています。

食品安全委員会には、ハザードごとに専門調査会が設置されており、それぞれが担当するハザードのリスク評価を行っています。また、特定の分野について集中的に審議を行う必要がある場合にはワーキンググループを設置して対応しています。2019年度には、鉛ワーキンググループ等二つのワーキンググループを設置し、それぞれ調査審議等を開始しています。

このほか、海外のリスク評価機関等との連携強化も進めており、既に協力文書を締結している欧州食品安全機関(EFSA)、豪州・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)、ポルトガル経済食品安全庁(ASAE)、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)及びデンマーク工科大学(DTU)と、連携強化のための会合の開催や情報交換を行っています。2018年度には消費者庁、厚生労働省及び農林水産省と合同で、新たにインド食品安全基準庁と協力覚書を締結しました。

また、必要に応じ、米国食品医薬品庁(FDA)等の他の外国政府機関との情報交換、連携の構築を行う予定です。

(3)食品安全に関するリスク管理

食品の安全性を向上させ、健康への悪影響を未然に防止するためには、生産から消費にわたってリスク管理に取り組むことが不可欠です。

厚生労働省では、飲食に起因する衛生上の危害の発生に関するリスク管理機関として、食品衛生法の規定に基づき、食品に残留する農薬、汚染物質や食品に使用する添加物等、食品や添加物等の規格基準の設定を行っており、2019年度には、食品中の農薬等の残留基準の設定件数が50件(2020年1月末時点)、食品添加物の新規指定件数が10件(2020年3月末時点)となっています。

また、都道府県等関係行政機関と連携した規格基準の遵守等に関する監視指導を実施しています。

農林水産省では、食品が安全であるかどうか、安全性を向上させる措置を講ずる必要があるかどうかを知るために、食品安全に関する情報を収集・分析し、優先的にリスク管理の対象とする有害化学物質・有害微生物を決定した上で、農畜水産物・加工食品中の汚染実態を調査しています。その上で、これらの実態調査の結果を解析し、必要がある場合には、低減対策を検討することとしています。これらの各過程において、生産者、事業者、消費者、地方公共団体等と情報・意見を交換し、必要に応じそれらの情報・意見を食品の安全性を向上させる措置に反映させています。

2019年度は、有害化学物質・微生物リスク管理基礎調査事業等にて、25件の実態調査を実施しました。

農畜水産物中のダイオキシン類(2018年度分)に関して、2020年1月に含有実態の結果を公表しました。また、食品中のトランス脂肪酸低減に向けた国内事業者や海外の取組状況について、情報を充実させました。

さらに、学校や保育所向けに学校等の菜園で栽培したジャガイモによる食中毒の発生を防止するための注意点を分かりやすく解説した動画のほか、食中毒を防ぐための正しい手洗いのポイント、お弁当を作る際の食中毒予防の注意点をまとめたウェブサイトと動画を作成し、これらを広く周知することで対策の普及を図っています。

(4)食品の安全性に関するリスクコミュニケーションの推進

食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項としての食品安全に関するリスクコミュニケーションに関しては、消費者庁が関係府省等の事務の調整を担うこととされ、消費者庁、食品安全委員会、厚生労働省及び農林水産省(以下「4府省」という。)等が連携して、食品安全に関するリスクコミュニケーションの取組を推進しています。

4府省で連携した食品の安全性に関するリスクコミュニケーションの取組として、2019年度は、「これまでを知り、これからを考える~食品中の放射性物質~」と題する意見交換会を宮城県、東京都、京都府及び福岡県で開催しました。

このほか、宮城県、東京都及び京都府で実施された親子参加型イベントに出展し、小学生とその保護者等を対象に食品中の放射性物質に関するステージプログラムを行いました。

なお、上記以外で、関係府省ごとに行った食品の安全性に関するリスクコミュニケーションの取組は、以下のとおりです。

消費者庁では、2019年度に地方公共団体等と連携し、健康食品、食品添加物等のテーマについてリスクコミュニケーションを実施しました。食品中の放射性物質に関するリスクコミュニケーションについては、引き続き重点的に取り組んでおり、福島県を始めとした地方公共団体や消費者団体等と連携し、全国各地で意見交換会等を111回開催しました。

また、2011年度以降、食品・水道水の検査結果や、出荷制限等の範囲等、正確な情報をウェブサイトで発信しているほか、放射性物質や、食品等の安全の問題を分かりやすく説明する冊子「食品と放射能Q&A」(2011年5月30日に初版発行、適宜改訂、2019年6月に第13版を発行)及び特に重要な点を抜粋した「食品と放射能Q&A ミニ」(2015年3月25日に初版発行、適宜改訂、2019年6月に第5版を発行)も作成し、ウェブサイトで公表するとともに、意見交換会の会場等で配布しています。加えて、訪日外国人向けに「食品と放射能Q&A ミニ」第4版の英語、中国語、韓国語の翻訳版も作成し、公表しています。

食品の安全に関する注意喚起や回収情報等についても、報道発表や地方公共団体への情報提供、リコール情報サイトや消費者庁Twitter、Face-book等を通じて、消費者へ情報提供を行っています。

食品安全委員会では、リスク評価を始めとした食品の安全に関する科学的な知識を効果的に普及するため、2019年度は、食品安全の基本的な考え方や食中毒等をテーマとして取り上げ、地方公共団体と連携した意見交換会や講師派遣、マスコミ、消費者団体及び事業者団体との意見交換を実施しました。また、食品関係事業者等を対象とした講座「精講:食品健康影響評価のためのリスクプロファイル」を、「鶏肉等におけるカンピロバクター・ジェジュニ/コリ」及び「ノロウイルス」をテーマに開催しました。

さらに、ウェブサイトや広報誌等による情報提供に加え、Facebook、オフィシャルブログによる情報発信を行うとともに、メールマガジンとして、食品安全委員会の審議結果概要等を原則毎週配信する「ウィークリー版」、実生活に役立つ情報や安全性の解説等を配信する「読み物版」を、それぞれ配信しています。また、リスク評価の内容等を国内外に広く発信するため、英文電子ジャーナル「Food Safety」を年4回発行するとともに、「食の安全ダイヤル(注46)」を設けて、電話やメールによる一般消費者等からの相談や意見を受け付けています。

厚生労働省では、2019年度にはゲノム編集技術を利用して得られた食品等に関する意見交換会、輸入食品の安全性確保に関する意見交換会、検疫所における子供(保護者)を対象とした施設見学等を含む意見交換会等を開催しました。

また、食品中の放射性物質に関して、摂取量調査の結果や出荷制限等についてウェブサイトで情報提供するとともに、都道府県等が策定した検査計画や実施した検査結果を取りまとめ、ウェブサイトを通じて国内外へ情報提供を行っています。

そのほか、政府広報や厚生労働省Twitterを活用し、有毒植物、毒キノコ、ノロウイルスといった食中毒予防のポイント等、時宜に応じた情報発信を行うとともに、食肉等による食中毒予防に関するリーフレットやクリアファイル、輸入食品の安全確保に関するリーフレット等、食中毒予防や食品安全確保の取組に関する啓発資材を作成し、意見交換会等で配布するなど、積極的な情報提供に努めています。

農林水産省では、本省及び地方農政局等において、消費者や事業者との意見交換会・説明会等の開催や講師の派遣を通じて、食品安全に関するテーマ等について積極的な情報提供に努めています。

また、農林水産省のウェブサイト「安全で健やかな食生活を送るために(注47)」において、一般消費者向けに、食品安全や望ましい食生活に関する情報提供を行っています。

農林水産省メールマガジン「食品安全エクスプレス(注48)」において、同省を始め食品安全関係府省による報道発表資料等の最新情報を月曜日から金曜日までの平日に毎日発信しています。

(5)輸入食品の安全性の確保

輸入食品の安全性に対する国内の高い関心を受け、政府は、主要食料輸入国や食の安全に関わりの深い国際機関を所管する在外公館を中心に設置している「食の安全担当官」等を活用し、個別事例への対応や各国政府・国際機関との連絡体制の強化、さらには、国内関係府省・機関における連絡体制の強化に取り組んでいます。

食品流通のグローバル化の進展、消費者ニーズの多様化等を背景に、輸入食品の届出件数は年々増加しています。厚生労働省は、輸入時の検査や輸入者の監視指導等を効果的かつ効率的に実施し、輸入食品等の一層の安全性確保を図るため、「輸入食品監視指導計画」を年度ごとに策定しており、厚生労働省及び外務省では、2019年3月に公表された「平成31年度輸入食品監視指導計画(注49)」に基づき、輸出国、輸入時(水際)、国内流通時の3段階の監視指導を実施しており、2018年度における監視指導結果を2019年8月に公表しました。

輸出国での安全対策として、日本への輸出食品について食品衛生法違反が確認された場合は、輸出国政府等に対して原因の究明及び再発防止対策の確立を要請するとともに、二国間協議を通じて生産等の段階での安全管理の実施、監視体制の強化、輸出前検査の実施等の推進を図っています。

外務省では、関係政府機関との連絡体制の構築や、在留邦人等への情報伝達のための連絡体制の構築をしています。

さらに、輸入食品に関する個別の問題が発生した場合は、関係政府機関からの情報収集及び関係政府機関への働き掛けをしています。

また、関係国際機関(WTO(世界貿易機関)、WHO(世界保健機関)、OIE(国際獣疫事務局)、FAO(国際連合食糧農業機関)及びコーデックス委員会(国際食品規格委員会))における国際基準を含む「食の安全」についての議論の情報収集及び蓄積に努めています。

輸入時の対策としては、多種多様な輸入食品を幅広く監視するため、港や空港に設置された検疫所が年間計画に基づくモニタリング検査を実施しており、検査の結果、違反の可能性が高いと見込まれる輸入食品については、輸入の都度、輸入者に対して検査命令を実施しています。また、検疫所の検査機器の整備等、輸入食品の安全性確保体制の強化を図っています。

国内流通時の対策としては、厚生労働省本省、検疫所等と連携を取りつつ、都道府県等が国内流通品としての輸入食品に対する監視指導を行っており、違反食品が確認された際には、速やかに厚生労働省に報告を行い、輸入時監視の強化(モニタリング検査や検査命令等)を図っています。

(6)食品中の放射性物質に関する消費者理解の増進

2013年1月7日に消費者庁内に設置した「食品と放射能に関する消費者理解増進チーム」において、関係府省や地方公共団体との連携の下、意見交換会等の開催や消費者庁ウェブサイトでの情報提供等、リスクコミュニケーションの強化を始めとする消費者理解増進のための施策を効果的に行うことにより、風評被害の払拭を図っています。

また、2013年以降、インターネットを通じて、被災地域及び被災地産品の主要仕向け先となる都市圏の消費者約5,000人を対象とした、「風評被害に関する消費者意識の実態調査」を実施しています。本調査はこれまで半年に1回行っていましたが、東京電力福島第一原子力発電所事故から8年が経過し、消費行動の実態等に大きな変化は見られなくなっていること等から、2019年度は、2020年2月に第13回目となる本調査を1回行いました。第13回調査の結果では、「放射性物質を理由に福島県の食品の購入をためらう」という回答は、10.7%とこれまでで最も小さい値になりました。

2019年度には、別途2020年1月に、全国約7,000人を対象とした、福島県産の食品の購入実態や、放射性物質に対する意識等を確認する「放射性物質をテーマとした食品安全に関するインターネット調査」も行いました。福島県産の米を購入していると回答した人にその理由を聞いたところ、「おいしいから」、「安全性を理解しているから」、「福島県や福島県の生産者を応援したいから」と回答した人は約3割でした。

これらの調査結果を踏まえ、引き続き、食品中の放射性物質を始めとした食品安全に関する情報発信やリスクコミュニケーションの取組を推進していきます。

さらに、消費者庁では、食品と放射能問題の全国的な広がりを踏まえ、消費者の安全・安心を一層確保するため、生産・出荷サイドだけではなく、消費サイドでも食品の安全を確保する取組を進めており、国民生活センターとの共同で、地方公共団体に放射性物質検査機器を貸与し、消費サイドで食品の放射性物質を検査する体制の整備を支援しています。2019年度には、179の地方公共団体に対し、232台の検査機器を貸与しています。

(7)農業生産工程管理(GAP)の普及推進

農業生産工程管理(以下「GAP(注50)」という。)とは、農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組です。さらに農業者が第三者機関の審査を受けて、GLOBALG.A.P.(注51)、ASIAGAP、JGAP(注52)等のGAP認証を取得することで、GAPを正しく実施していることを客観的に証明できるようになります。

GAPの実施と認証取得の拡大は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会への国産農畜産物の供給だけでなく、輸出の拡大や農業の人材育成等、農業競争力の強化を図る観点からも極めて重要です。

農林水産省では、消費者に対するGAPの認知度向上を目的に、都道府県のアンテナショップを通じたイベントや、「実りのフェスティバル」等のイベントにおいて、GAPのPRを行うとともに、GAP認証農産物を取り扱う意向を有する実需者を「GAPパートナー」として、GAP情報発信サイト「Goodな農業!GAP-info」に掲載しています。

(8)中小規模層の食品等事業者のHACCP導入の促進

食品の安全と消費者の信頼の確保を図るため、生産から消費に至るフードチェーン全体において安全管理の取組強化が求められている中、厚生労働省及び農林水産省では食品の安全性の向上と品質管理の徹底等を目的に、問題のある製品の出荷を未然に防止することができるHACCP(注53)の普及・導入促進のための施策を実施しています。

厚生労働省では、2016年3月から、「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」を開催し、食品衛生法等におけるHACCPに沿った衛生管理の制度化に向けた検討を行い、同年12月に最終取りまとめを公表しました。この取りまとめや2017年11月に取りまとめた「食品衛生法改正懇談会報告書」等を踏まえ、改正の方針案についてパブリックコメントを実施した上で、食品衛生法等の一部を改正する法律(平成30年法律第46号)が第196回国会(通常)で成立し、2018年6月13日に公布され、2020年6月1日に施行されます(ただし、施行後1年間は経過措置期間とし、現行基準が適用されます。)。これにより、原則として製造・加工、調理、販売等を行う全ての食品等事業者を対象として、HACCPに沿った衛生管理が求められることになります。衛生管理の具体的な内容等については、「食品衛生管理に関する技術検討会」において検討を行い、食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令(令和元年厚生労働省令第68号)で規定しました。

農林水産省では、HACCP導入を促進するため、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(平成25年法律第103号)に基づく施設や体制整備についての長期低利融資のほか、HACCP導入に向けた基礎研修、指導者・責任者を養成するための研修の開催を支援しており、2019年度は59回開催しました。

また、食品事業者向け手引書の作成も支援しており、2019年度は40種類の手引書の作成を支援しました。加えて、完成した手引書について、随時厚生労働省のウェブサイトにおいて公開しています。

(9)食品のトレーサビリティの推進

食品のトレーサビリティとは、食品の移動を把握できることを意味し、日頃から食品を取り扱った記録を残すことにより、万が一、健康に影響を与える事件・事故が起きたときの迅速な製品回収や原因究明のための経路の追跡と遡及、表示が正しいことの確認等に役立ちます。

米トレーサビリティ法では、米穀等(米穀及びだんごや米菓、清酒等の米を使った加工品)に問題が発生した際に流通ルートを速やかに特定するため、生産から販売・提供までの各段階を通じ、取引等の記録を作成・保存し、米穀等の産地情報を取引先や消費者に伝達することが米穀事業者へ義務付けられています。

米トレーサビリティ法の規定に基づく取組として、農林水産省及び国税庁では、米穀等の取引等に関する記録の作成・保存に関する状況を確認するため、米穀事業者に対して立入検査等を行い、不適正な事業者に対しては改善指導等を実施しています。

また、農林水産省では、米トレーサビリティ法違反に関する指導件数等を取りまとめ、公表しています。取引記録の作成に関する指導件数は、2019年度上半期においては指導6件となっています。

消費者庁では、米トレーサビリティ法に違反する被疑情報に基づき、農林水産省、地方公共団体と連携した調査が実施できる体制を整え、違反に対しては厳正に対処します。

(10)食品関係事業者のコンプライアンスの徹底促進

農林水産省では、消費者の信頼を揺るがす食品の偽装表示等の事件が相次いで発生したことを背景に、食品業界のコンプライアンス徹底に向けた対応や消費者の信頼確保と向上に取り組むための「道しるべ」として「『食品業界の信頼性向上自主行動計画』策定の手引き~5つの基本原則~」(2008年3月農林水産省食品の信頼確保・向上対策推進本部決定)を策定しました。これを受け、食品業界団体に対し、「信頼性向上自主行動計画」の策定とそれに基づく取組の実施を要請しました。

また、2015年6月から、食品業界団体、消費者団体、マスコミ、有識者で構成する意見交換会を開催し、2016年1月に同手引きを改訂しました。2019年度は、研修会等を通じて食品関係事業者に対し、本取組の必要性について普及啓発に努めるとともに、アンケート調査によって、自主行動計画の策定の推進と実態の把握に努めています。

(11)食品衛生関係事犯及び食品の産地等偽装表示事犯の取締りの推進

警察庁では、消費者庁、国税庁及び農林水産省を構成員とする「食品表示連絡会議」に2008年の第1回開催から参加するなどし、関係機関との情報交換による情報収集に努めています。また、都道府県警察に対しては、関係機関と連携した情報収集及び食品表示に対する国民の信頼を揺るがす事犯や国民の健康を脅かす可能性の高い事犯を認知した際の早期の事件着手等を指示しています。

なお、2019年中は、食品衛生関係事犯を19事件22人、食品の産地等偽装表示事犯を11事件14人検挙しています。

(12)流通食品への毒物混入事件への対処

警察庁では、流通食品への毒物混入事件について、被害の拡大防止のために、関係行政機関との連携を図っています。また、都道府県警察に対して、流通食品への毒物混入事件に関する情報収集、関係行政機関との連携の必要性等について指示するとともに、こうした事件等を認知した際には、必要に応じて、関係行政機関に通報するなどしています。

これを受け、都道府県警察では、流通食品への毒物混入の疑いがある事案を認知した際には、迅速に捜査を推進し、責任の所在を明らかにするよう努めるとともに、関係行政機関との情報交換を積極的に行うなど相互に協力しながら被害の未然防止、拡大防止に努めています。

なお、2019年度中の流通食品への毒物混入事件の発生はありません。

(13)廃棄食品の不正流通事案

食品製造業者等から処分委託をされた食品廃棄物が産業廃棄物処理業者により不正に転売され、その後、消費者に食品として販売されていたことが、2016年1月に発覚しました。これを受けて、「食品安全行政に関する関係府省連絡会議」において、「廃棄食品の不正流通に関する今後の対策(注54)」(2016年2月食品安全行政に関する関係府省連絡会議申合せ)が取りまとめられました。2017年9月に、関係府省の実施した対策を取りまとめて、上記申合せを改訂しました。

事業活動に伴って生じた廃棄物は事業者自らの責任において適正に処理しなければなりません。環境省では「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」を作成し、都道府県等が排出事業者に対する指導等に活用できるようにしています。加えて、不適正な登録・報告内容の疑いの検知等ができるように電子マニフェストシステム改修を行ったり、特定の廃棄物を多量に排出する事業者を対象とした電子マニフェスト導入説明会を2017年度から2019年度にかけて全都道府県で開催したりするなど様々な取組を通じて排出事業者責任の更なる徹底に努めてきました。さらに、2019年7月には食品リサイクル法の規定に基づく新たな基本方針を策定し、食品関連事業者の排出事業者責任の徹底及び国による継続的な周知徹底が必要であるとし、同法の規定に基づく再生利用事業者登録における確認を強化しました。


担当:参事官(調査研究・国際担当)