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第1部 第1章 第3節 (2)越境取引に関わる消費生活相談

第1部 消費者問題の動向と消費者意識・行動

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第3節 消費生活相談の概況

(2)越境取引に関わる消費生活相談

越境消費者センター(CCJ)の活動

グローバル化が進む中、消費者がインターネット経由で気軽に海外事業者と取引できるようになったこと等に伴い、海外事業者とのトラブルが発生するようになりました。

国民生活センター越境消費者センター(CCJ)(注31)は、海外ネットショッピング等、海外の事業者との取引においてトラブルに遭った消費者の相談窓口です。CCJでは、海外の提携消費者相談機関と連携し、海外に所在する相手方事業者に相談内容を伝達するなどして事業者の対応を促し、日本の消費者と海外の事業者のトラブル解決を支援しています。

CCJに寄せられた相談の特徴

CCJが受け付けた相談の件数は、2017年までは毎年4,000件台で推移していましたが、2018年は5,890件と、2017年(4,040件)の約1.5倍に増加しました(図表I-1-3-19)。2019年も5,935件と引き続き高い水準で推移しています。相談件数の増加には、CCJが2018年4月から、スマートフォンからも入力・相談がしやすい相談受付フォームに変更したこと等が影響していると考えられます。

2019年の取引類型別では、「電子商取引」が5,789件(97.5%)と、インターネット取引によるものが引き続き大部分を占めています(注32)

年齢層別にみると、最も高い割合を占めているのは「40歳代」で、「30歳代」、「20歳代」と続きます。「70歳以上」の割合は、全国の消費生活センターに寄せられた消費生活相談の2割強であることに比べて、CCJでは7.3%と低くなっていますが、一方で2019年での「70歳以上」の相談件数は433件と、2017年の157件、2018年の339件から年々増加しています。CCJに寄せられた「70歳以上」の相談のうち66.5%に当たる288件は「PCソフトウェア」に関する相談となっています。

「役務・サービス」に関する相談割合が増加

CCJが受け付けた相談を商品・サービス別にみると、2019年は「役務・サービス」が35.8%と、2018年の21.9%から急増し、最も高い割合を占めています(図表I-1-3-20)。相談内容をみると「コンサートチケットを、海外のチケット転売サイトから購入した。チケット代以外に、法外な手数料を請求された。カード会社にキャンセルしたい旨連絡したが、取引は成立しており、相手側がキャンセルしないと取り消せないと言われた」など、海外のチケット転売サイトに関する問合せが多く寄せられています。ほかには、「インターネットサイトで渡航認証(ESTA(注33))の申請をしたところ、正規のサイトでは14ドル程度しかかからないはずなのに、手数料という形で不当な請求をされている。問合せ画面から不当分の返金を英文で送ったが、返信がない」など、「役務・サービス」の約8割が「解約」に関するトラブルです。

一方、SNSやマッチングアプリ等、インターネットで知り合った外国人と親しく連絡を取り合ううちに送金を迫られる、いわゆる「国際ロマンス詐欺」に関する相談も継続してみられます。内容をみると「外国人との交流サイトで知り合ったソマリアで従軍しているという女性と仲良くなり、SNSでやりとりをしていたところ、日本に送る荷物があるので代わりに受け取ってほしいと言われた。承諾し、個人情報を教えたところ、配送事業者から受取人払いで50万円かかるとの連絡があった」など、受け取る際に通関料等の料金を請求されるというトラブルが目立っています。国民生活センターでは、「インターネットで知り合いになった面識のない海外の人と安易に荷物を受け取る約束をしない」などの注意を呼び掛けています(注34)

事業者所在国は多様化が進む

CCJが受け付けた相談について事業者所在国別にみると、2019年は「所在国不明」が1,617件(27.2%)となっています(図表I-1-3-21)。事業者所在国が判明している中では、「米国」が833件で最も多く、以下、「スイス」(638件)、「中国」(403件)、「英国」(266件)、「シンガポール」(198件)、「カナダ」(184件)と続きます。2018年まで上位3か国であった「米国」、「中国」、「英国」の占める割合は、2015年の44.5%から2019年は25.3%に低下する一方、「その他」の割合が増加傾向にあり、事業者所在国が多様化する傾向が続いています。

2019年の大きな変化は、事業者所在国が「スイス」の相談件数が、2018年の119件から、約5.4倍の638件となり、米国に次ぐ存在となったことです。「スイス」の件数急増の背景には、スイスを所在地とする事業者が運営するチケット転売サイトに関する相談が、2019年に数多く寄せられたことがあると考えられます。

また、「詐欺疑い(注35)」のトラブルは「所在国不明」であることが多くなっています(図表I-1-3-22)。

決済手段は主に「クレジットカード」

CCJが受け付けた相談を決済手段別にみると、2019年は「クレジットカード」が4,555件(76.7%)と最も多くなっています。トラブル類型別の推移をみると、2015年では「詐欺疑い」のみ「金融機関振込」が主な決済手段となっていましたが、2019年では全ての類型において「クレジットカード」が主な決済手段となっています(図表I-1-3-23)。

一方、金融機関振込は近年減少傾向にありますが、その一方で、現金による決済が、2018年の229件に続き、2019年でも182件と、2017年の94件に比べ約2倍に増えています。取締りや注意喚起の強化により、金融機関振込による取引が行いにくくなり、代引きの取引が増えたこと等が、現金取引が増えた一因になったと考えられます。なお、「その他」には、近年の決済手段の多様化を反映し、クレジットカードや振込以外の決済方法として暗号資産(仮想通貨)、プリペイドカード等が含まれています。

相談内容をみると、トラブル類型が「解約」の相談では、PCソフトウェアの解約やイベントチケットの解約に関する相談が多くなっています。


  • 注31:2011年11月消費者庁において開設、2015年4月から国民生活センターに業務移管。2015年度は移管準備のため4~5月は相談窓口を閉鎖し、6月から相談受付を開始。なお、2018年3月に相談項目等の見直しを行ったため、2017年以前の相談件数は過去発表の数値と異なる場合がある。
  • 注32:「電子商取引」以外は、「現地購入」121件(2.0%)、「その他」4件(0.1%)、「不明・無関係」21件(0.4%)。
  • 注33:電子渡航認証システム(Electronic System for Travel Authorization)。米国に短期商用・観光等の90日以内の滞在目的で旅行する場合に、米国行きの航空機や船に搭乗する前に受けなければならない、オンラインでの渡航認証
  • 注34:国民生活センター「--愛のギフトを受け取ってほしい!?--それってもしかして『国際ロマンス詐欺』?」(2020年2月13日公表)
  • 注35:注文及び決済の事実が確認できるにもかかわらず、何も届かないまま事業者とのコミュニケーションが途絶え(又は事業者が合理的な対応をしない)、なおかつ事業者の実態が正確に把握できない相談。

担当:参事官(調査研究・国際担当)