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参考分析

参考分析

消費者のタイプ別分析とその活用

消費者に政策に対応した行動を促す場合には、消費者の意識を把握した上で行うことが有用です。今回、特集テーマである食品ロスに関する消費者の意識を把握するため、消費者庁「消費者意識基本調査」(2019年度)において、消費者分類のための質問を設定し、その回答から、消費者を意識面・行動面での特徴に基づいて分類する試みを行いました。その結果、環境への意識と自己利益への意識という二つの軸で、消費者を四つのタイプに分類することが可能との結論を得ることができました。

39項目の質問から分類

消費者意識基本調査において、まず、環境問題への意識・行動から買物行動、個人の性格に関する計39項目の質問を設け、その回答パターンから消費者をグループ分けしました。さらに、同調査で設けた食品ロス削減取組の項目に対する、グループごとの回答を比較しました(図表1)。

二つの軸から消費者を四つのタイプに分類

39項目の質問から、統計的手法を用いて、二つの項目群を抽出しました。一つは、「容器や包装の少ないものを選ぶ」、「レジ袋をもらわない」など、環境に関する項目群、そしてもう一つは、「損得を考えて行動するほうだ」、「他人の評価が気になる」など、自己の利益や他人との関係性に関する項目群です(図表2)。

この二つの群への回答内容を、統計的手法を用いてスコア化し(注1)、分析結果を分かりやすく示す観点から、それぞれ仮に「環境重視度」、「自己重視度」と名付けて、その高低から消費者の分類を試みました(注2)。その結果、消費者は、「環境重視度」、「自己重視度」の二つの軸によって、四つのグループに分類できることが分かりました(図表3)。

一つ目のグループは、図の右上に位置する、環境も自己の利益も重視するグループです。両方への意識が高いという意味で仮に「バランス型」と名付けました。二つ目は、図の右下、環境への意識は高いものの、自己利益への意識は高くないグループと考えられ、仮に「環境優先型」と名付けました。三つ目は、図の左上で、環境への意識は高くないが自己利益への意識が高いと思われるグループで、仮に「自己優先型」と名付けました。四つ目は、図の左下、環境と自己利益のどちらにも関心が薄いグループとみられ、仮に「無頓着型」と名付けました。

グループごとに代表的な項目への反応をまとめたものが(図表4)です。環境に関する項目では、「バランス型」と「環境優先型」で比較的肯定的な反応が高く、一方で自己の利益や他人との関係に関する項目では、比較的「バランス型」と「自己優先型」で肯定的反応が高い様子がうかがえます。

性別・年齢別構成

今回の分析対象全体の男女比は、男性が46.4%、女性が53.6%となっています(注3)。グループ別の特徴では、「バランス型」、「環境優先型」では、女性の割合が高くなっている一方、「自己優先型」、「無頓着型」では、男性の割合が女性の割合を上回っています。

「環境優先型」では、全体の約半数を50歳以上の女性が占めており、男性と合わせると、全体の約8割を50歳以上が占めています。一方で、「自己優先型」では全体の52.5%が30歳代までの男女となっています(図表5)。

職業別での各グループの特徴

次に、職業別で、各グループの割合をみると、会社員、公務員、団体職員(管理職を除く。)及び学生では、「自己優先型」の割合が、他の職業に比べて高くなっています。また、「環境優先型」は専業主婦・主夫や無職で、「無頓着型」は無職でそれぞれ比較的割合が高くなっています。「バランス型」は、特定の職業に片寄ることなく存在しています。啓発手段を考える場合、職場や学校等の「場」も検討要素として重要な役割を果たすと考えられます(図表6)。

食品ロス削減関連項目への反応

食品ロス削減に関する項目への四つのグループの反応をみると、「小分け商品、少量パック商品、バラ売り商品など食べきれる量を買う」、「買物をせず、残っている食材で料理をすることがある」、「食品に合った保存方法を考え、長持ちさせる」、「料理を作り過ぎない」など、食品ロス削減につながる項目では、環境への意識の高かった「バランス型」、「環境優先型」の肯定的反応が、他のグループよりも高くなっています。

一方、「買物に行ってから買うものを考える」、「特売品だと予定より多く買ってしまう」、「賞味期限・消費期限が近づいていても、安くなっていれば買う」などの設問に対しては、「バランス型」、「自己優先型」の肯定的反応が、他のグループと比較して高くなっています。

また、「残さずに食べる」、「外食時、食べきれる量を考えて注文する」などの項目に関しては、各グループいずれも7割を超える肯定的反応を示しています(図表7)。

メディアへの接触状況

次に、四つのグループが、暮らしの中で注意すべき情報を、どのようなメディアから得ているかをみると、「テレビ・ラジオ」が各グループ9割超で最高値となっています。グループ別の特徴では、「環境優先型」は、「新聞・雑誌・書籍」や「行政の広報誌」等、紙媒体において高い接触率となっています。「自己優先型」は、「新聞・雑誌・書籍」への接触率は最も低い一方、「インターネット」、「携帯電話・スマートフォン」、「SNS」、「動画配信サイト」等、ウェブ関連メディアへの接触率が4グループ中で最も高くなっています(図表8)。

何をどのような方法で伝えるべきか

今回、性格や行動パターンで消費者をタイプ分類し、それぞれの特徴を分析することで、年齢や性別のみでは見えてこなかった、効果的に消費者を啓発するためのヒントが得られたと考えられます(図表9)。

例えば、環境への意識や社会の役に立ちたいとの意識が比較的高い一方、自己の損得への意識が高くない「環境優先型」には、食品ロスへの取組が社会的課題の解決につながることや日常の生活で無理なくできる取組等を、これらの人が接触することの多い新聞や行政の広報誌等、紙媒体を通じて発信することが考えられます。他方、自己の利益や他人からの評価等に敏感な一方、環境や社会貢献への意識が高くない「自己優先型」には、食品ロスへの取組が、結果的に自己の利益につながるというメッセージを、接触の多いインターネット媒体を通じて発信することや、学校や職場といった場を捉えた啓発をすることが有効と考えられます。例えば、近年現れた、インターネットを活用したフードシェアリングのサービスもこれらの層に効果的に受け入れられる可能性があります。また、環境や社会、自己の損得いずれの意識も高い「バランス型」は、「環境優先型」と「自己優先型」のいずれの施策にも反応し行動する期待があります。

さらに、こうした消費者特性ごとの啓発の工夫は、食品ロス削減にとどまらず、持続可能な社会へ向けて求められる「エシカル消費」を実践するアプローチ構築にも有効であると考えられます(第1部第2章第4節(3)参照。)。

[解説]今回の分析手法

今回実施した分析は、消費者庁「消費者意識基本調査」(2019年度)を活用し、消費者を意識・行動面の特徴によって分類する試みです。具体的には、まず消費者の意識・行動に関する39の調査項目(図表10)を設定し、因子分析を行いました。因子分析とは、観測された複数の変数に影響を与えている、直接観測することのできない共通因子を抽出する分析手法です。この手法により抽出された因子に基づき、集団の中から、似たもの同士を集めてグループに分けるクラスター分析によって消費者の分類を行いました。因子分析では、因子の数等モデルの構造について先験的な仮定を置かない、いわゆる探索的因子分析(EFA(注4))と、順序的離散変数を潜在変数で説明する非線形モデルによる、いわゆる検証的因子分析(CFA(注5))の両方を試みました。

(1)探索的因子分析

探索的因子分析では、標準的な手法で判定される因子数では尤ゆう度比検定(注6)によりモデル自体が棄却されやすくなり、逆に尤度比検定で棄却されないほどに因子数を増やすと、推計結果が不適解(注7)となりました(図表11)。その後、39の調査項目を精査して分析対象項目を選別するなどして、同様に探索的因子分析を行いましたが、適切なモデルの特定化を見いだすことはできませんでした。一方で、本分析を通じて、環境に関する項目群に強い相関がみられることが分かりました。

(2)検証的因子分析

検証的因子分析の実施に当たっては、消費者の行動決定に影響を与える因子について、以下の1及び2を検証されるべき仮説として設定しました(図表12)。

12因子モデル

エシカル消費に代表される、地球環境や社会への貢献への意識である「倫理性(注9)9」因子と、自らの物質的・社会的利益への意識である「実利性(注10)」の2因子モデルであること。

24クラスター

二つの軸により、消費者は四つのクラスターに分けられること。

2因子モデルに従い、「倫理性」因子の変数の一つとして、探索的因子分析の際に相関の高かった環境項目の一つである「環境に配慮されたマークのある食品・商品を選ぶ」、同様に「実利性」因子の変数の一つとして「自分が得をすればそれでよいと思う」という項目をそれぞれの基準に設定し、残りの項目との間で検証的因子分析を行うこととしました。調査項目の3段階評価(注11)を説明する順序ロジット・モデル(注12)により、解釈可能なパラメータの推計値を得ることができました(図表13)。この結果に基づいて、「倫理性」、「実利性」に相当する二つの因子を抽出し、それぞれ仮に「環境重視度」、「自己重視度」と命名(注13)し、これら二つの因子を基に、消費者を四つのクラスターに類型化することができました。

図表1 消費者分類に用いた項目群及び食品ロス削減取組に関する項目群

図表2 環境に関する項目群及び自身の利益や他人との関係性に関する項目群

図表3 消費者のグループ化

図表4 代表的項目に対する各グループの反応

図表5 各グループの性・年齢構成

図表6 職業別分析

図表7 食品ロス削減関連項目への反応

図表8 メディアへの接触状況

図表9 消費者の4類型とその特徴

図表10 消費者分類に用いた項目群

図表11 5件法による分析結果

図表12 2因子と4クラスタ―

図表13 2因子及び各観測変数の因子負荷量


  • 注1:統計的手法については、後述の「[解説]今回の分析手法」参照。
  • 注2:あくまで統計的手法を用いた分類やグループ化の試みであり、個々の消費者の意識や行動について、価値判断を行うものではない。
  • 注3:今回のタイプ別分析の対象者は、図表1に掲げた消費者分類に用いた39項目の質問全てに回答した5,629名。なお、消費者意識基本調査(2019年度)での有効回収数6,173人の男女比は、男性46.4%(2,866人)、女性53.6%(3,307人)。
  • 注4:Exploratory Factor Analysis 分析対象となる変数の共分散行列の構造に関する仮定のみに基づく因子分析。
  • 注5:Confirmatory Factor Analysis パラメトリックな仮定で先験的に構造化されたモデルの推計による因子分析。
  • 注6:帰無仮説の採否を、一般的な場合との最大尤度の比を基に検定する手法。ここでは、各因子数のモデルを帰無仮説、因子構造のないモデルを対立仮説とする尤度比検定である。推計結果が不適解の場合、検定は適切ではなくなる。
  • 注7:推計値がパラメータの理論的な境界を超えること。
  • 注8:AIC(赤池情報量基準)とBIC(ベイズ情報量基準)は、モデル選択(ここでは因子数の選択)の基準である。これらの基準では、モデルのデータへの当てはまりと過剰適合(標本内の当てはまりを高めすぎると標本外の当てはまりが低くなる。)のトレードオフが考慮される。BICはベイズ理論に基づき、AICと比べて過剰適合へのペナルティが大きい。
  • 注9:分析を分かりやすくする観点から名付けたもの。
  • 注10:分析を分かりやすくする観点から名付けたもの。
  • 注11:5段階評価を、肯定的反応(かなり~ある程度当てはまる等)、中立的反応(どちらともいえない)、否定的反応(あまり~ほとんど・全く当てはまらない等)の3段階に再編し分析。
  • 注12:順序的離散変数である回答値を被説明変数とし、説明変数(ここでは因子)が被説明変数の選択確率に影響を与えるモデル。
  • 注13:分析を分かりやすくする観点から名付けたもの。

担当:参事官(調査研究・国際担当)