文字サイズ
標準
メニュー

第2部 第2章 第1節 2.消費者事故等の情報収集及び発生・拡大防止

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況の詳細

第1節 消費者の安全の確保

2.消費者事故等の情報収集及び発生・拡大防止

(1)事故情報の収集、公表及び注意喚起等

消費者庁と国民生活センターが連携し、関係機関の協力を得て、生命・身体に関する事故情報を広く収集し提供する「事故情報データバンク(注40)」を2010年4月1日から運用しています。

また、消費者庁では、消費者安全法の規定に基づき通知された生命・身体被害に関する消費者事故等について、(原則として)週1回定期的に公表しており、2019年度には、重大事故等の概要等の発表を50回行いました。

さらに、消費生活用製品安全法の規定に基づき報告のあった重大製品事故については、原則として週2回定期的に公表しており、2019年度には、事故の概要等の公表を101回行いました。

このほか、被害の未然防止・再発防止を図るために、事故情報の分析を行い、消費者への注意喚起等を実施しています。

消費者庁では、消費生活相談の円滑化につなげられるように、2016年度以降、インターネット上の文字列を分析し、消費者被害・トラブル情報の把握ができないか、検討を行ってきているところです。2017年度及び2018年度には、2016年度に構築したテキストマイニング等の手法を活用し、10回程度にわたってデータの抽出作業を試行的に実施しました。2019年度にも、おおむね同様の作業を継続するとともに、当該抽出結果を全国の消費生活センター等の関係機関に情報共有しました。

内閣府、文部科学省、厚生労働省では、2015年4月から、教育・保育施設等において重大事故が発生した場合には国への報告を行うこととしており、2016年3月には「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」を作成し、重大事故の再発の防止のため、地方公共団体による事後的な検証の実施について通知するとともに、教育・保育施設等に対する指導監査等は、目的に照らし、必要に応じて、事前通告せずに実施することについて通知しました。

さらに、2016年度からは「教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議」を開催し、事故の再発防止策について検討を行い、2018年7月に「教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議年次報告」を公表しました。

また、2015年度からは「特定教育・保育施設等における事故情報データベース(注41)」として、重大事故のあった地方公共団体からの第一報(原則当日又は翌日)を四半期ごとにまとめ公表しています。

(2)緊急時における消費者の安全確保

緊急事態等においては、「消費者安全の確保に関する関係府省緊急時対応基本要綱」(2012年9月関係閣僚申合せ)で定める手順に基づき、関係府省が相互に十分な連絡及び連携を図り、政府一体となって迅速かつ適切に対応し、消費者被害の発生・拡大の防止に努めるとともに、関係行政機関や事業者、医療機関等から寄せられる事故情報については迅速かつ的確に収集・分析を行い、消費者への情報提供等を通じて、生命・身体に関する消費者事故等の発生・拡大を防止することとしています。なお、同要綱及び「冷凍食品への農薬混入事案を受けた今後の対応パッケージ」(2014年3月関係府省庁局長申合せ)を踏まえ、消費者庁では、関係府省と連携し、毎年緊急時対応訓練を1回程度実施することとしており、2019年度は、2019年12月に食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省と連携し、訓練の詳細を当日まで明かさないブラインド方式で行うなど、実践的な方法での緊急時対応訓練を実施しました。

(3)リコール情報の周知強化

消費者庁では、これまで関係府省等が主管する法令等に基づき個々に公表していた「リコール情報」について、消費者庁がこれらの情報を一元的に収集した上で、消費者が分野横断的にリコール情報を確認できる「消費者庁リコール情報サイト(注42)」の運用を2012年4月から開始しました。そのほか、地方公共団体や事業者が独自に公表している情報の収集にも努め、2019年度末には6,482件のリコール情報が登録されており、メールマガジンの配信数は9,327件となっています。また、リコールが多発している製品群に着目し、当該製品群に関する事故事例、製品規格、正しい使い方等といった製品安全情報を中心とした関連情報の提供にも取り組んでいます。

(4)製品安全に関する情報の周知

経済産業省では、消費者庁に報告が行われる重大製品事故の情報や経済産業省に届出が行われるリコールの情報等については、経済産業省のウェブサイト等で随時公表(注43)を行い、消費者等への注意喚起を実施しています。

また、政府広報や、独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下「NITE」という。)のプレスリリースにおいても、最近事故が増加している製品や季節に応じて事故が増加する製品等の注意喚起を実施しています。

毎年11月の製品安全総点検月間では、製品安全総点検セミナーの開催、製品安全に関するポスターの掲示、中小企業向けの情報発信、ウェブサイト等を通じた製品安全に関する情報発信等を通じて、製品安全が持続的に確保されるよう周知に努めました。また、高齢化社会の進展を踏まえ、高齢者特有の製品事故や高齢者の製品安全に関する現状認識等を分析し、今後の中長期的な製品安全施策の検討に資する基礎的な調査の報告書を公表しました。

さらに、長期使用製品安全点検制度の所有者情報の登録率向上、点検率向上のため、取引事業者、関連事業者等との連携を進めるとともに、政府広報等各種媒体を通じたユーザーへの働き掛けを行っています。

また、国民生活センターでは、人の生命・身体等に重大な影響を及ぼす又はそのおそれがある商品や、品質・表示等に問題がみられる商品について、消費者被害の救済や未然防止・拡大防止のために、消費者の使用実態を考慮しつつ科学的に信頼性の高い商品テストを実施しています。テスト結果において、商品の問題や使用に当たって注意を要すること等が確認された場合には、消費者へ注意喚起をするとともに、関係行政機関・団体に要望・情報提供を行っています。

(5)道路運送車両法に基づく自動車のリコールの迅速かつ着実な実施

自動車のリコールの迅速かつ着実な実施のため、2015年6月に道路運送車両法の一部を改正する法律(平成27年法律第44号)が成立し、国土交通省は、装置メーカーへの対策を強化しました。また、自動車メーカー等及びユーザーからの情報収集に努め、自動車メーカー等のリコール業務について監査等の際に確認・指導するとともに、安全・環境性に疑義のある自動車については独立行政法人自動車技術総合機構において現車確認等による技術的検証を行っています。2019年度のリコール届出件数は415件で、対象台数は1,053万台となっています。また、2017年度、2018年度及び2019年度には、複数の自動車メーカーによる、型式指定車の完成検査における不適切な取扱いが判明したことを受け、市場措置を速やかに行うことを促しました。さらに、ユーザーからの不具合情報の収集を強化するため、「自動車不具合情報ホットライン(注44)」について周知活動を積極的に行いました。

(6)高齢者向け住まいにおける安全の確保

厚生労働省では、2018年4月2日付けで「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」を改正し、都道府県等の指導指針に反映するよう周知・徹底を図りました。2019年3月には全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議において、届出施設から都道府県等に対する事故報告の徹底を図るとともに当該事故報告に関する都道府県等から厚生労働省への一層の情報提供の実施を図ることを徹底するよう要請しました。有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査結果を踏まえた通知の発出を通じて、都道府県等において指導指針を的確に運用し、行政指導を徹底するように要請しました。


担当:参事官(調査研究・国際担当)