文字サイズ
標準
メニュー

第2部 第1章 第1節 消費者基本計画

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第1節 消費者基本計画

第4期消費者基本計画の策定

消費者基本法において、政府は、長期的に講ずべき消費者政策の大綱等を「消費者基本計画」として閣議決定で定めることとされています。

2020年3月、2020年度から2024年度までの5年間を対象とする第4期消費者基本計画が閣議決定されました(図表Ⅱ-1-1-1)。

今後2020年代には、高齢化の進行、成年年齢の引下げ、外国人の増加等により、消費者のぜい弱化・多様化が更に進むと懸念されています。また、デジタル化の進展に伴う電子商取引の拡大や自然災害の激甚化・多発化等により、いわゆる「一般的・平均的消費者」についても一時的にぜい弱な消費者となってしまう状況がより多く発生することが懸念されています。2019年9月に開催されたG20消費者政策国際会合(本章第4節(2)参照。)では、デジタル時代における消費者政策の在り方について、国際的な連携の強化の必要性等が共有されました。さらに、持続可能な消費社会の実現に向けた社会的課題を解決するためには、商品やサービスを提供する事業者の取組を促すと同時に、商品やサービスを選択する消費者の適切な行動を促すことが不可欠となっています。

このような状況の下、長期的な展望を視野に入れつつ、消費者政策を更に推進していくため、同計画が新たに定められました。

この計画においては、消費者政策が中長期的に目指すべき消費者が主役となる社会の実現に向けて、「消費者被害の防止」、「消費者の自立と事業者の自主的取組の加速」、「協働による豊かな社会の実現」、「デジタル化・国際化に伴う新しい課題への対応」及び「災害・感染症拡大など緊急時対応」の5点を消費者政策の基本的方向として掲げています。

また、消費者政策の着実な推進に向け、PIO-NETに登録された消費生活相談情報を始めとする「情報」、地域において見守りネットワークを支える職員等を始めとする「人材」、地方消費者行政強化交付金を始めとする「財政」、執行関係法令を始めとする「法令等」の手段を的確に活用し、関連する他の行政分野の政策及びそれに関連する機関との有機的な連携を確保しつつ、行政のみならず、事業者・事業者団体や消費者・消費者団体を含む多様な関係者により、重層的かつ多段階的な取組を展開することとしています。

この計画に位置付けられた具体的な取組は、例えば以下のとおりとなっています。

第一に、「消費者被害の防止」のため、消費者の安全の確保の観点から、「消費者事故等の情報収集及び発生・拡大防止」、「事故の原因究明調査と再発防止」等を、取引及び表示の適正化等の観点から、「商品やサービスに関する横断的な法令の厳正な執行、見直し」、「不当な表示を一般的に制限・禁止する景品表示法の厳正な運用」等を進めるとともに、ぜい弱さや生きづらさを抱える消費者を支援するための取組の推進、消費者の苦情処理・紛争解決のための枠組みの整備等を進めることとしています。

第二に、「消費者による公正かつ持続可能な社会への参画等を通じた経済・社会構造の変革の促進」のため、食品ロスの削減、「プラスチック・スマート」キャンペーンの展開、水産エコラベルの推進等エシカル消費の普及啓発、公益通報者保護制度の見直し等を進めることとしています。

第三に、「消費生活に関連する多様な課題への機動的・集中的な対応」のため、安全・安心なキャッシュレスの実現のための取組、デジタル・プラットフォーム企業を介した契約についての消費者保護に資する規律の在り方についての検討、自動運転に関わる交通ルールや道路空間の基準・制度の在り方等についての検討等を進めるとともに、消費生活の国際化の進展に対応して、2020年度から新たに設置される消費者庁新未来創造戦略本部における国際共同研究等の取組を進めることとしています。

第四に、「消費者教育」については、引き続き、幼児期から高齢期までの各ライフステージに応じ、体系的な推進を図ることとしており、そのための教材等についても、年齢、障害の有無、情報の入手方法、読み解く能力の差異等の消費者の特性に応じたものとなるように取組を進めるほか、地域における消費者教育推進のため、消費生活センターの消費者教育の拠点化、消費者教育コーディネーターの育成等を支援することとしています。

最後に、「消費者行政を推進するための体制整備」として、消費者の意見の反映と消費者政策の透明性の確保のため、消費者の意見を代表する者を国の審議会等の委員に選任する取組等を進めるほか、国・地方における体制整備のため、「地方消費者行政強化作戦2020」の策定、電話での相談が苦手・困難な人のためにSNSでの消費生活相談を実施する取組等を進めることとしています。

図表2-1-1-1第4期消費者基本計画の概要

担当:参事官(調査研究・国際担当)