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第2部 第2章 第5節 1.被害救済、苦情処理及び紛争解決の促進

第2部 消費者問題の動向及び消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況

第5節 消費者の被害救済、利益保護の枠組みの整備

1.被害救済、苦情処理及び紛争解決の促進

(1)消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律(消費者裁判手続特例法)の適正な運用

多くの消費者被害事案では、消費者と事業者の間の情報の質・量や交渉力の格差、訴訟に関する費用や労力のため、消費者が自ら被害回復を図ることが困難な場合が多いものと考えられます。

このような消費者被害の回復を図りやすくするための消費者裁判手続特例法が2013年12月に成立しました。この法律では、二段階型の訴訟手続を新設しました(被害回復制度)。

具体的には、1まず、第一段階の手続で、内閣総理大臣の認定を受けた特定適格消費者団体が原告となり、消費者契約(消費者と事業者の間で締結される契約(労働契約を除く。))に関して多数の消費者に生じた財産的被害について、事業者がこれらの消費者に対し、共通する原因に基づき金銭を支払う義務(共通義務)を負うべきことの確認を求める訴えを提起し、2第一段階で特定適格消費者団体が勝訴した場合、個々の消費者が第二段階の手続に加入し、簡易な手続によって、それぞれの請求権の有無や金額を迅速に決定する、というものです。

また、この法律では、消費者の債権の実現を保全するため、特定適格消費者団体による事業者の財産の仮差押えの仕組みが設けられています。

消費者庁では、消費者裁判手続特例法の施行に必要な施行令、施行規則、「特定適格消費者団体の認定、監督等に関するガイドライン」等を2015年11月に公布・公表しました。被害回復制度の担い手となる特定適格消費者団体は、2019年3月末時点で3団体が認定されています。

消費者の財産の散逸を防ごうとする特定適格消費者団体の取組を支援するため、2017年に独立行政法人国民生活センター法等の一部を改正する法律(平成29年法律第43号)が成立し、同センターが特定適格消費者団体に代わって仮差押えに必要な担保を立てることができるようになりました。さらに、同法可決時の附帯決議等を踏まえ、12017年9月、適格消費者団体等に対するクラウドファンディング等による寄附を容易にするための内閣府令等の改正等を行うとともに、22019年4月からは、PIO-NET情報の開示範囲を拡大し、「処理結果」及び「解決内容」の情報提供を開始しました。

さらに、2018年から新たに開始した「地方消費者行政強化交付金」を活用し、三つの適格消費者団体等の設立に向けた取組を支援しました。

また、制度について分かりやすく詳細に解説した動画やパンフレット等を用いて消費者団体訴訟制度の周知・広報に取り組んでいます。

(2)製造物責任法に関する裁判例の収集・分析

PL法は、製品の欠陥によって生命、身体又は財産に損害を被ったことを証明した場合に、被害者が製品の製造業者等に対して損害賠償を求めることができる、円滑かつ適切な被害救済に役立つ法律です。

具体的には、製造業者等が、自ら製造、加工、輸入又は一定の表示をし、引き渡した製造物の欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、製造業者等の過失の有無にかかわらず、これによって生じた損害を賠償する責任があることを定めています。PL法は、1994年7月に公布され、1995年7月から施行されました。

消費者庁では、PL法に関する裁判例を収集・分析した上で、論点別に裁判例を抽出・整理・公表しています。2019年3月末時点で消費者庁ウェブサイトに掲載されているPL法関連訴訟一覧の掲載件数は、累計で訴訟関係408件、和解関係94件、PL法論点別裁判例一覧の掲載件数は34件となっています。

そのほか、2018年9月に同法に関する逐条解説を消費者庁のウェブサイトにおいて公表しました。

(3)消費者に関する法的トラブルの解決

法務省では、消費者に関する法的トラブルを取り扱う関係機関・団体との協議会を開催するなど、より緊密な連携・協力関係を構築しています。

日本司法支援センター(法テラス)では、多重債務問題その他の消費者に関する法的トラブル等について、民事裁判等の手続において経済的に弁護士・司法書士の費用を支払う余裕がない人々を対象に、無料法律相談や、弁護士等の費用を立て替える民事法律扶助による援助を行っています。

2018年度も引き続き、民事法律扶助業務の周知徹底を図るとともに、法的トラブルの紛争解決に向けた支援の提供に努めており、多重債務問題等に関し、無料法律相談、代理援助、書類作成援助を実施しました。さらに、地方事務所等の相談場所へアクセスすることが困難な方を対象に、出張・巡回法律相談を実施し、高齢者を始めとした消費者が抱えるトラブル解決のための支援の提供に努めています。

2018年度の実績として、コールセンターへの問合せ件数362,709件のうち多重債務問題を含む金銭の借入れについては49,071件、民事法律扶助業務については、多重債務問題に係る法律相談援助件数119,870件、多重債務問題に係る代理・書類作成援助開始決定件数64,191件でした。

(4)消費者紛争に関するADRの実施

2008年の独立行政法人国民生活センター法等の一部を改正する法律(平成20年法律第27号)の成立により、国民生活センターでは、2009年4月から、独立して職権を行う紛争解決委員会を設置し、消費者紛争のうち、その解決が全国的に重要である紛争(重要消費者紛争)について公正・中立に解決を図る裁判外紛争解決手続(以下「ADR」(注114)という。)を実施しています。

紛争解決委員会では、2018年度には178件の和解仲介手続が終了し、このうち112件について和解が成立しました。さらに、手続が終了した139件の結果概要を公表しました。また、2018年度に新たに177件の和解仲介手続の申請を受け付けました。

このほか、国民生活センター法第34条の規定に基づき、地方公共団体との適切な役割分担及び連携の確保を図るため、都道府県・政令市の苦情処理委員会等の実施状況等に関する情報共有を行いました。

国民生活センターでは、ADR制度の普及啓発を図るため、各地の消費生活センターの行政職員及び消費生活相談員向けにADR研修会を開催するとともに、地方公共団体及び他のADR機関と意見交換を実施しています。

【上記取組の実績】

・「(一財)不動産適正取引推進機構との意見交換会」(2018年6月)

・「生命保険協会との意見交換会」(一社)(2018年9月)

・「立教大学観光ADRセンターとの意見交換会」(2018年10月)

・「(一社)日本損害保険協会との意見交換会」(2018年11月)

・「マンション紛争解決センターとの意見交換会」(2018年11月)

・「東京簡易裁判所との意見交換会」(2018年1月)

(5)金融ADR制度の円滑な運営

金融分野における苦情・紛争解決については、金融分野における裁判外紛争解決制度(以下「金融ADR制度」という。)の下、現在、銀行・保険・証券等、業態別に八つの指定紛争解決機関(以下「機関」という。)が当該業務に従事しています。2018年度は、これら8機関において、苦情処理手続7,377件、紛争解決手続1,666件の処理を行いました。(件数は速報値)

金融庁は、「指定紛争解決機関向けの総合的な監督指針」(2013年8月)に基づき、機関に対する利用者の信頼性向上や各機関の特性を踏まえた運用の整合性確保を図るなど、同制度の適切な運営に取り組んでいます。

2018年度には、金融トラブル連絡調整協議会(機関に加え、消費者行政機関・業界団体・弁護士等も参加。)を2回開催し、各機関の業務実施状況や金融機関・業界の業務改善に資する取組等について議論を行いました。また、同協議会に提示した機関の業務実施状況等に関する資料を金融庁ウェブサイトに速やかに掲載するなど、金融ADR制度の確実な浸透に向けて積極的な広報にも取り組んでいます。

(6)商品先物ADR制度の円滑な運営

経済産業省及び農林水産省では、商品先物取引法の規定に基づき紛争解決等業務を行っている日本商品先物取引協会において、紛争仲介手続の標準処理期間の短縮(6か月から4か月)が確実に実施され、全ての新規顧客に対して当該制度の周知が徹底されるよう、2015年度に同協会への指導・監督を行うとともに、紛争仲介を含めた苦情・相談を同協会へ連絡するようパンフレットを作成し、各消費生活センター等へ送付するなどの周知を行いました。また、2018年度においても引き続き、同協会において当該制度の周知を行っており、苦情相談手続13件、紛争解決手続11件を実施しました。

(7)住宅トラブルに関するADRの実施

住宅品確法及び特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成19年法律第66号)に基づき、建設住宅性能評価書が交付された住宅及び住宅瑕疵担保責任保険を付した新築住宅についての請負契約又は売買契約に関する紛争については全国52の住宅紛争審査会(弁護士会)においてADRを実施しています。また、建設工事の請負契約に関する紛争については、建設業法(昭和24年法律第100号)に基づく全国48の建設工事紛争審査会(国土交通省及び各都道府県)においてADRを実施しています。国土交通省では、既存住宅流通やリフォーム工事に関する悪質事案の被害防止の観点から、以下のような取組を行っています。

「住まいるダイヤル」(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)において、リフォーム工事の内容や価格、事業者に確認すべき点等に関する相談を含めた住宅に関する電話相談業務、リフォーム工事の見積書についての相談を行う「リフォーム見積チェックサービス」を実施しています。また、全国の弁護士会における「専門家相談制度」等の取組を進めています。さらに、住まいるダイヤルのウェブサイト(注115)において、住まいるダイヤルや専門家相談で受け付けた住宅に関する悪質事案を含む代表的な相談内容と相談結果を公表しています。

他方、消費者が安心して中古住宅を取得し、リフォームができるよう、検査と欠陥への保証がセットになった既存住宅売買瑕疵保険やリフォーム瑕疵保険、大規模修繕工事瑕疵保険等を引き続き実施しています。また、これらの保険を利用する事業者を登録し、一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会のウェブサイトで公開しており、消費者は事業者選びの参考とすることができます。

また、リフォーム支援制度を紹介したガイドブックや住まいるダイヤルが作成する各種パンフレット等で、住まいるダイヤルや、リフォーム瑕疵保険の有用性等について消費者に周知しています。

2019年1月から3月にかけて、消費生活センターの相談員や不動産事業者等を対象に、賃貸住宅の賃貸借契約に係る相談対応研修会を札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、岡山市、松山市、福岡市で計9回(うち東京都では2回)開催しました。

(8)振り込め詐欺救済法に基づく被害者の救済支援等

振り込め詐欺等の被害者に対する返金率の向上については、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(平成19年法律第133号。以下「振り込め詐欺救済法」という。)に基づき、被害者への返金制度等の周知徹底を図ることとされています。

2018年度には、振り込め詐欺救済法の規定に基づく被害者への返金制度等について引き続き金融庁ウェブサイトに掲載を行う等、広く一般国民に向けて周知を図りました。また、金融機関による「被害が疑われる者」に対する積極的な連絡等の取組を促しました。

(9)「多重債務問題改善プログラム」の実施

消費者金融市場が拡大する中で、社会問題としての多重債務問題が深刻化したことを背景に、「貸し手」に対する所要の規制強化を図るため、いわゆる「総量規制」と「上限金利引下げ」をポイントとする貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(平成18年法律第115号)が2006年12月に可決・成立し、公布され、2010年6月に完全施行されました。同改正法の成立を機に、「借り手」に対する総合的な対策を講ずるため、政府は、関係大臣からなる「多重債務者対策本部」を設置しました。同本部の下で、2007年に「多重債務問題改善プログラム」(注116)を取りまとめ、関係府省が一体となって、多重債務者向け相談体制の整備・強化を始めとする関連施策に取り組んでいます。なお、改正貸金業法の施行状況については、金融庁、消費者庁及び法務省において、施行後の状況をフォローするため、関係者ヒアリング等を実施した結果、特定の制度の見直しが必要となるような実態は把握されないとの結論を得ました。

近年では、貸金業者から5件以上の無担保無保証借入れの残高がある債務者数がここ数年で見ると大きく減少していることや、多重債務を理由とする自殺者数は、ここ数年は横ばいですが、改正貸金業法の施行以降、減少傾向にあること、金融庁、財務局等、日本貸金業協会における貸金に関する1日当たりの相談・苦情件数が減少してきていること等を踏まえれば、改正貸金業法が多重債務者対策の上で相応の効果があったものと認識しています。

2018年には、有識者と関係府省(注117)から構成される「多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」を2回開催(6月、12月)しました。また、「多重債務者相談強化キャンペーン2018」(9月1日から12月31日まで)において、各都道府県における消費者及び事業者向けの無料相談会等の開催、ヤミ金融の利用防止等に係る周知・広報を実施するとともに、潜在的な多重債務者の掘り起こし等を図るため、相談窓口周知のためのリーフレット(82万部)を作成し、関係先に配布しました。また、「ギャンブル等依存症対策の強化について」(平成29年8月29日ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議決定)及びギャンブル等依存症対策基本法等を踏まえ、多重債務相談窓口と「精神保健福祉センター」等のギャンブル等依存症対策の専門機関との連携を図りました。

厚生労働省では、各都道府県社会福祉協議会を実施主体として、低所得世帯等を対象に必要な相談支援に合わせて資金の貸付を行い、その経済的自立の促進を図るためのものとして、生活福祉資金貸付制度を実施しています。また、2015年の生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)の施行に伴い、生活困窮者の相談窓口と密接な連携を図りながら、より効果的な支援を推進しています。

警察庁では、2015年から2018年までの生活安全警察の運営重点として、「広域にわたるヤミ金融事犯(注118)の取締りの推進」等を掲げ、都道府県警察に対して、ヤミ金融事犯の徹底した取締りのほか、ヤミ金融に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供、携帯音声通信事業者に対する契約者確認の求め、プロバイダ等に対する違法な広告の削除要請等の推進を指示しています。【上記取組の実績】

・2018年12月末時点の貸金業者から5件以上の無担保無保証借入れの残高がある人数:8.8万人(2017年12月末:8.5万人)

・2018年度末時点の多重債務に関する消費生活相談の件数2万3277件(2017年度末:2万6421件)

・地方公共団体等の多重債務相談窓口の設置状況:財務局、都道府県では全て設置済み、市区町村では1,723市区町村(全体の約99%)で設置済み。

・2018年中の多重債務を理由とする自殺者数:703人(全自殺者数2万840人)

・2018年(4月~12月)の金融庁・財務局等・日本貸金業協会における貸金に関する1日当たりの相談・苦情件数:96件(2017年12月の1日当たり件数:98件)

・2018年中におけるヤミ金融事犯の検挙事件数及び検挙人員:718事件、814人(前年比25事件減、67人減)

・2018年中におけるヤミ金融に利用された口座の金融機関への情報提供件数:1万5289件(前年比3,690件減)

・2018年中における携帯音声通信事業者への契約者確認の求めを行う旨の報告を受けた件数:2,556件(前年比752件減)(出資法又は貸金業法に基づくもので、警察庁が都道府県警察(生活経済担当課)から報告を受けた件数)

・2018年中のインターネット上のヤミ金融事犯広告の削除要請件数:1万2323件(前年比2,091件増)

(10)自殺対策基本法に基づく総合的な自殺対策の強化

政府は、自殺対策基本法(平成18年法律第85号)及び同法の規定に基づく「自殺総合対策大綱」(平成24年8月閣議決定)の下、自殺対策を総合的に推進しており、同大綱に基づき、国、地方公共団体、関係団体、民間団体で連携して、総合的な対策の強化を図ってきました。

厚生労働省では、2018年6月に「自殺対策白書」を作成しました。また、2019年2月には全国自殺対策主管課長等会議を開催しました。自殺予防週間(2018年9月10日から16日まで)においては、各種の啓発活動を行うとともに、関係府省、地方公共団体、関係団体及び民間団体等と連携して、心の健康、多重債務及び法律に関する相談等の支援策を重点的に行いました。

また、厚生労働省では2018年3月から、SNS等を活用した相談事業への支援等を行っています。

引き続き、地域における自殺対策の更なる強化を図るため、若年層向け自殺対策や経済情勢の変化に対応した自殺対策等、特に必要性の高い自殺対策に関し、地方公共団体への支援を行っていきます。

なお、自殺統計によれば2018年の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は16.5となり、2010年以降、9年連続減少となっています。

(11)ギャンブル等依存症対策の強化

ギャンブル等依存症患者への対策を抜本的に強化するために、2018年10月に施行されたギャンブル等依存症対策基本法(平成30年法律第74号)等を踏まえ、関係府省等との連携の下で次の1から4までの取組を推進しています。

1消費者向けの注意喚起、普及啓発の実施

2018年度は、において、「消費者行政ブロック会議」ギャンブル等依存症対策基本法の概要等を説明するとともに、都道府県にギャンブル等依存症対策推進計画策定の努力義務が課されていることも踏まえ、普及啓発や相談支援に適切に対応するよう要請しました。2018年11月には、ギャンブル等依存症対策基本法案が可決された際に付された附帯決議等を踏まえ、ギャンブル等依存症対策推進本部の関係府省等の協力を得て、青少年向けの啓発用資料を取りまとめ公表し、また、2019年2月に、地方公共団体における啓発活動を支援する一環として、関係省庁等と連携して啓発用資料のサンプルを作成し、公表しました。

2関係機関との連携方法等を整理した対応マニュアルの策定

2018年3月に、金融庁、厚生労働省と連携し、多重債務相談窓口等におけるギャンブル等依存症に関する相談拠点との具体的な連携方法や相談実施方法等を整理したマニュアルを策定し、2019年3月に、ギャンブル等依存症対策基本法施行を踏まえた内容の更新等を行いました。

3消費生活相談員等を対象とした研修の実施

2018年度は、消費者庁から要請した結果、国民生活センターにおいて、消費生活相談員等を対象とした研修を5回実施し、多重債務相談窓口等における対応マニュアル等の理解の浸透を図りました。

4地方公共団体に対する地域における自主的な取組の推進の依頼

2017年に、都道府県・政令指定都市の消費生活相談課宛てに、「ギャンブル等依存症対策の強化について」を周知し、各地域における自主的な取組の推進を依頼しました。

(12)生活困窮者自立支援法に基づく支援の推進

厚生労働省では、生活困窮者自立支援法に基づき、生活困窮者を自立相談支援事業に着実につなげるとともに、就労準備支援事業、家計改善支援事業等の推進により、生活困窮者に対する包括的な支援を推進しています。

2015年4月の生活困窮者自立支援法の施行以降、都道府県等における事業の実施体制の整備の支援や事業の従事者に対する研修等により、都道府県等における制度の定着を図るとともに、任意事業の実施促進を図ってきました。

法施行3年後の見直しの規定に基づき、2017年5月から、社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会において、生活困窮者自立支援制度の見直しに関する議論が行われ、同年12月、その見直しに関する報告書が取りまとめられました。その報告書の内容も踏まえ、第196回国会に所要の法案を提出し、2018年6月に生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律(平成30年法律第44号)が成立しました。改正生活困窮者自立支援法に基づき、地方公共団体の関係部局における自立相談支援事業等の利用勧奨を努力義務とするとともに、就労準備支援事業と家計改善支援事業の実施を努力義務とし、両事業が効果的かつ効率的に行われている場合には家計改善支援事業の補助率を引き上げること等により、包括的な支援体制の強化を着実に進めていくこととしています。2018年度には、ニュースレター等を活用した先進事例の情報提供や、厚生労働省から地方公共団体に職員を派遣し、両事業の実施の必要性の説明や意見交換等を行いました。

(13)成年年齢引下げを見据えた関係府省庁連絡会議の開催

民法の成年年齢引下げを見据えた環境整備に関し、関係行政機関相互の密接な連携・協力を確保し、総合的かつ効果的な取組を推進するため、成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議を、2018年4月に第1回会議を、同年9月に第2回会議を開催しました。

また、2018年度は、成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議の下に設置された幹事会を開催して、有識者からのヒアリング及び意見交換を実施するなどしました(2018年11月に第1回幹事会を開催し、2019年1月に第2回幹事会を開催しました。)。


  • 注114:Alternative Dispute Resolutionの略。消費者トラブルが生じた場合、紛争解決の方法として裁判があるが、一般的には時間と費用が掛かる。このため、厳格な裁判によらずに当事者の合意に基づいて迅速かつ簡便に紛争解決する方法としてADRがある。
  • 注115:https://www.chord.or.jp/index.php
  • 注116:同プログラムでは、「相談窓口の整備・強化」、「セーフティネット貸付の提供」、「金融経済教育の強化」、「ヤミ金の取締り強化」の四つの柱に沿って、取り組むべき施策等がまとめられている。
  • 注117:内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省。
  • 注118:貸金業法違反(無登録営業)、出資法違反(高金利等)に係る事犯及び貸金業に関連した犯罪収益移転防止法違反、詐欺、携帯電話不正利用防止法違反等に係る事犯。

担当:参事官(調査研究・国際担当)