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第2部 第2章 第3節 2.商品・サービスに応じた取引の適正化

第2部 消費者問題の動向及び消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況

第3節 適正な取引の実現

2.商品・サービスに応じた取引の適正化

(1)電気通信サービスに係る消費者保護の推進

高度情報通信社会の進展により、インターネットを活用した取引が増加して利便性が向上する一方、それに関連する様々な消費者問題も数多く発生しています。

2015年5月に説明義務の充実、書面交付義務、初期契約解除制度、勧誘継続行為・不実告知等の禁止、媒介等業務受託者(代理店)に対する指導等の規定を盛り込んだ電気通信事業法等の一部を改正する法律(平成27年法律第26号)が成立しました。

総務省では、改正法施行に向けて、「ICTサービス安心・安全研究会」等での検討及びパブリックコメント等の手続を経て、2016年3月に、当該省令・告示等を公布するとともに、改正後の法令の内容を解説する新しい「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」を策定、公表しました。また、同年10月から開催した「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」の取りまとめを踏まえ、利用者が利用実態等に対応した料金プランを選択できるよう、電気通信事業者等が適切な説明を行うこと等を明記するため、2017年1月に同ガイドラインを改定しました。

これらの制度の実効性の確保のため、2016年5月には「電気通信事業の利用者保護規律に関する監督の基本方針」を策定、公表しています。さらに、同年9月には、消費者保護ルールの実施状況について総務省及び関係者の間で共有・検討・評価等をする「消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合」を立ち上げました。

2016年度のモニタリングでは、総務省及び全国の消費生活センター等で受け付けた電気通信サービスに係る苦情の相談件数把握及び内容の分類整理を行う苦情等分析、消費者保護ルールに関連する業務の運用方法や書面記載状況について実地調査等を実施したところです。

2017年2月の第2回会合では、契約書面等調査、苦情相談分析の結果を踏まえ、MNO(注79)・FTTH(注80)サービスについて、総支払額の明示、及び明示した書面の交付を行う運用を基本とすること等を指摘し、改善・検討事項として調査対象事業者に対応を要請しました。

さらに、同年6月の第3回会合では、MNO・FTTHサービスの販売現場における説明状況等の覆面調査を実施した結果、特に実施の状況が全体的に悪いと判明した事項を公表し、これまでの調査結果等を「平成28年度消費者保護ルール実施状況のモニタリング(評価・総括)」(以下「評価・総括」という。)として取りまとめました。

本評価・総括等を踏まえ、同年6月に調査対象事業者に所要の改善指導を実施するとともに、運用上の適切な事項等を明記の上、同年9月に同ガイドラインを改定しました。

2017年度においても、前年度に引き続きモニタリングを実施しており、2018年2月の第4回会合では、これまでのモニタリングにおける指摘事項に対するフォローアップや、2017年度上半期の苦情相談傾向分析の結果及びMVNO(注81)サービスの販売現場における説明状況等の覆面調査を実施した結果の報告を行い、各電気通信サービスの要改善・検討事項を取りまとめました。

さらに、初期契約解除制度の対象とされていない音声通話付きのMVNOサービスについても、対象とする方向で検討していくべきである旨の意見集約がなされ、電気通信事業法施行規則等を改正し、MVNO音声通話付サービスにおける初期契約解除制度を導入しました(2018年10月1日から適用)。

2018年6月の第5回会合では、2016年度及び2017年度消費者保護ルール実施状況のモニタリングにおける指摘事項に対するフォローアップや、2017年度の苦情相談の傾向分析の結果及びMNO・FTTHサービスへの実地調査の結果の報告を行い、これまでの調査結果等を「平成29年度消費者保護ルール実施状況のモニタリング」として取りまとめました。これらを踏まえ、調査対象事業者に対して所要の改善指導を実施するとともに、事業者団体等に対応を要請しました。

加えて、2018年10月には電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証の一環として、「消費者保護ルールの検証に関するワーキング・グループ」を設置し、携帯電話の契約時の手続時間の長さや高齢者の契約トラブル、不適切な営業を行う販売代理店等の現状を踏まえ、消費者保護ルールの今後の在り方について検討を開始しました。2019年1月の第6回会合では、モバイル市場の競争環境に関する研究会及び消費者保護ルールの検証に関するワーキング・グループにより、モバイルサービス等の適正化に向けて早急に取り組むべき事項を整理した緊急提言が取りまとめられ、「シンプルで分かりやすい携帯電話に係る料金プランの実現」や「販売代理店の業務の適正性の確保」について、法改正を含め、必要な措置を検討・実施することが適当とされました。

また、事業者の乗換えや海外渡航時の一時的な事業者の変更の妨げになっているSIMロックについて、円滑な解除の実施を確保することとしており、2014年12月に改正した「SIMロック解除に関するガイドライン」により、事業者は、2015年5月以降に新たに発売される端末について、原則無料でSIMロック解除に応じることとなりました。さらに、「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」の取りまとめを踏まえ、2017年1月に新たに「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」を策定し、SIMロック解除が可能となるまでの期間の短縮等更なるSIMロック解除の推進を図りました。加えて、2018年8月に同指針を改正し、事業者に対して中古端末のSIMロック解除に応じることを義務付けました(2019年9月1日から適用)。

(2)有料放送サービスに係る消費者保護制度の適切な運用

総務省では、有料放送サービスについて、説明義務、契約関係からの離脱のルール、販売勧誘活動の在り方等、所要の制度整備を行い、整備された制度に基づき適切に運用することとしています。

2015年5月に電気通信事業法等の一部を改正する法律(平成27年法律第26号)が公布され、放送法(昭和25年法律第132号)において、有料放送サービスに係る書面交付義務、初期契約解除制度、勧誘継続行為の禁止、不実告知・事実不告知の禁止等の規定が設けられました。これを受けて、2016年4月に当該省令・告示を公布しました。

(3)詐欺的な事案に対する対応

金融庁では、2018年度に、無登録で金融商品取引業を行っていた者41者に対して警告書を発出し、これらの業者等について、社名等を公表しました。

また、証券取引等監視委員会では、2018年度には、無登録業者による金融商品取引法違反行為に係る裁判所への禁止命令等の申立てを2件実施しました。

(4)投資型クラウドファンディングを取り扱う金融商品取引業者等に係る制度の整備

金融庁では、投資型クラウドファンディングの利用促進及び投資者保護のためのルール等を盛り込んだ金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成26年法律第44号)を、2015年5月に施行しました。法施行後においても、投資者保護の観点から、必要に応じ、監督上の対応を行い、2018年度までに投資型クラウドファンディング事業者4社に対し行政処分を行っています。

なお、2018年度末時点で登録されている投資型クラウドファンディング事業者数は34社となっています。

(5)金融商品取引法に基づく適格機関投資家等特例業務(プロ向けファンド)に関する制度の見直し

適格機関投資家等特例業務(プロ向けファンド)の制度見直しに係る金融商品取引法の一部を改正する法律(平成27年法律第32号)が2015年5月に成立し、同年6月に公布、2016年3月に施行されました。

2018年度までに金融庁が実施した、プロ向けファンド業者に対する業務廃止命令等の行政処分は629件となっています。

(6)不動産特定共同事業法の改正に伴う制度整備・運用

国土交通省及び金融庁では、不動産投資市場政策懇談会の下に設置された制度検討ワーキング・グループにおいて、不動産特定共同事業に関する制度の在り方について検討を行い、2016年9月に本懇談会にて報告書が取りまとめられ、不動産特定共同事業法の一部を改正する法律(平成29年法律第46号)が、第193回国会で成立し、2017年6月に公布、同年12月1日に施行されました。2018年度には、不動産クラウドファンディングに係る業務管理体制や情報開示に関するガイドラインの策定、対象不動産変更型契約に係る規制の合理化等を内容とする不動産特定共同事業法施行規則の改正等、改正法の適切な運用のため必要な措置の検討を行い、2019年3月29日にそれぞれ発出・公布されました。

(7)サーバ型電子マネーの利用に係る環境整備

2015年7月から12月にかけて開催された、金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」の報告書を踏まえ、利用者からの苦情処理に関する態勢整備を発行者に求めること等を内容とする情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律(平成28年法律第62号)が2016年5月に成立、同年6月に公布され、2017年4月に施行されました。

また、サーバ型電子マネー発行者におけるIDの詐取被害の防止及び回復に向けた態勢整備等に関し、2016年8月に事務ガイドラインの改正を行いました。

事務ガイドラインの改正等を踏まえ、以下の取組等を実施しました。

・コンビニ等で購入できる手軽さや匿名性等悪用されやすいサーバ型電子マネーの発行者主要先に対して、重点的にモニタリングを実施(2015年度:12先、2016年度:14先、2017年度:9先、2018年度:9先)。

・上記主要先に対して、月次で被害発生状況及び返金状況等を確認。

・返金状況については、2018年上半期におけるIDの詐欺被害申出金額の合計約12億円のうち、約2.8億円の返金を実行していることを確認。

・さらに、特に被害件数・金額が多い先に対し、2017年(3月、9月)及び2018年(6月、8月、10月)にヒアリングを実施し、より一層の取組を指導。

・電子マネーに関する消費者被害の項目を追加したガイドブック等を活用し、全国の高校等や地方公共団体への配布、学校や地域で開催される講座等への講師派遣の実施等、注意喚起を実施。

(8)暗号資産交換業者についての対応

金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」において、暗号資産交換業者について、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策や利用者保護を図るための制度整備について検討を行い、2015年12月に報告書が取りまとめられました。これを踏まえ、金融庁では、暗号資産交換業者に対し登録制を導入し、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与規制や利用者保護のための制度の導入を盛り込んだ情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案を2016年3月に国会に提出し、同法案は同年5月に成立し、同年6月に公布されました。これを受けて、政令等の整備のための検討を行い、パブリックコメント等の手続を経て、2017年3月に当該政令等を公布しました(2017年4月1日施行)。

制度の運用に当たっては、一部の事業者の詐欺的行為による消費者被害が発生していることを踏まえ、利用者保護の観点から、引き続き、金融庁、消費者庁及び警察庁において情報共有しつつ、無登録業者等に対する警告書の発出等を行っています。また、暗号資産交換業者に対しては、体制等形式面のみならず、システムの安全性の検証や利用者への説明態勢の整備状況等、実質的な審査を実施しています(2019年3月までに19社を登録。)。これまで暗号資産(仮想通貨)価格の乱高下や暗号資産(仮想通貨)の分岐等の動きが見られていること、証拠金を用いた暗号資産(仮想通貨)取引や暗号資産(仮想通貨)による資金調達等新たな取引が登場していること、暗号資産(仮想通貨)に関連する消費者トラブルが増加していること等を踏まえ、登録後においても、暗号資産交換業者における利用者への説明態勢や実際の説明状況等のほか、法令に基づく取引時確認についても、モニタリングを行っています。

こうした中、2018年1月に発生した暗号資産交換業者における暗号資産(仮想通貨)の不正流出事案を踏まえ、当該業者に対する立入検査及び行政処分を実施しました。また、その他の暗号資産交換業者に対しても、順次立入検査を実施し、問題が認められた業者には行政処分を実施しました。

2018年8月、これまで実施した暗号資産交換業者等に対する検査・モニタリングで把握した実態や問題点について、利用者が業者を選定する際の参考にしてもらうなどの観点から、「中間的なとりまとめ」を公表したほか、同年10月には、一般社団法人日本仮想通貨交換業協会を資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)に基づく認定資金決済事業者協会に認定し、例えば利用者からの相談・苦情対応等について同協会と連携して対応を行っています。

2017年9月に金融庁、消費者庁及び警察庁は、連名で利用者への注意喚起を行い、2018年10月には、暗号資産(仮想通貨)に関するトラブルが多様化している現状も踏まえて、主な相談事例等の更新を実施しました。

さらに、2018年3月に設置され、同年4月から12月にかけて計11回にわたり開催された「仮想通貨交換業等に関する研究会」において、暗号資産(仮想通貨)をめぐる諸問題について必要な制度的対応の検討を行い、同年12月に報告書が取りまとめられました。これを踏まえ、金融庁では、暗号資産交換業者に関する規制の整備、暗号資産(仮想通貨)を用いたデリバティブ取引や資金調達取引に関する規制の整備等を盛り込んだ情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案を2019年3月に国会に提出しました。

また、国民生活センターにおいても、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律(平成28年法律第62号)に関連する研修を2018年度に8回実施しました。

(9)安全・安心なクレジットカード利用環境の整備

経済産業省では、割賦販売法を適切に運用し、また関係事業者に法令の遵守を徹底させることにより、クレジット取引等の適切な対応を進めるため、関係事業者への立入検査や、報告徴収等の執行等を行っています。

また、2018年6月に、安全・安心なクレジットカード利用環境の整備を目的とした割賦販売法の一部を改正する法律(平成28年法律第99号)が施行され、クレジットカード加盟店等ではセキュリティ対策を実施することが求められます。

同法では、「クレジット取引セキュリティ対策協議会」(事務局:一般社団法人日本クレジット協会)が策定する「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画」(2019年3月改定。以下「実行計画」という。)を実務上の指針として位置付けており、関係事業者は、本実行計画に基づく取組を着実に実施していく必要があります。

加えて、クレジットカードが紐づけられたスマートフォンを活用した決済サービスについては、一般社団法人キャッシュレス推進協議会が「コード決済における不正流出したクレジットカード情報の不正利用防止対策に関する検討会」において、対策ガイドラインを会員企業等と共に検討しています。

(10)商品先物取引法の迅速かつ適正な執行

経済産業省及び農林水産省では、委託者の保護及び取引の適正化を図るため、商品先物取引法(昭和25年法律第239号)に基づく立入検査及び監督を実施しています。2018年度は、業務改善命令を1件実施しました。

また、商品先物取引の勧誘規制の見直しに係る改正省令の施行(2015年6月)を踏まえ、2018年度は同省令に基づく勧誘に関し、外務員に対する研修を3回実施しました。

このほか、商品先物取引法施行規則第102条の2第2号又は第3号の規定に基づく勧誘を希望する事業者について、同規則第103条第1項第28号に規定する体制が整備されているかを確認し、体制整備が確認できた事業者を公表しており、2019年3月末日時点で10社公表しています。

(11)旅行業における企業ガバナンスの強化及び弁済制度の在り方の見直し

旅行業者が多額の負債を抱えたまま経営破たんした事案の発生を踏まえ、2017年8月に有識者により取りまとめられた「新たな時代の旅行業法制に関する検討会 経営ガバナンスワーキンググループとりまとめ」に基づき、旅行業者の企業ガバナンスの強化及び弁済制度の在り方の見直しを行いました。

同取りまとめに盛り込まれた旅行業者の企業ガバナンスの強化策及び弁済制度の在り方の見直しを実施するため、2017年度に旅行業法施行規則の改正(2018年4月1日施行)を行い、旅行業登録更新等の際に提出書類の手続上の正当性を観光庁が簡易に確認できる方式を導入するとともに、営業保証金の見直しを行いました。また、同検討会の検討結果を踏まえ、2017年12月から、広告募集の在り方の見直し、前受金の使途の明記及び旅行業者の宿泊施設等への支払時期の適正化を行うとともに、2018年4月からはより詳細な経営状況の把握、企業内部・他企業からの通報を受け付ける通報窓口の設置及び保証制度の見直しを行いました。

(12)住宅宿泊事業法の適正な運用

急速に拡大するいわゆる民泊について、安全面・衛生面の確保がなされていないこと、騒音やゴミ出し等による近隣トラブルが社会問題となっていること、観光旅客の宿泊ニーズが多様化していること等に対応するため、一定のルールを定め、健全な民泊の普及を図ることを目指して、2017年6月に住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)が成立しました。2018年6月から施行され、同法に基づく住宅宿泊事業、住宅宿泊管理業及び住宅宿泊仲介業が開始されました。

(13)民間賃貸住宅の賃貸借における消費者保護

昨今、賃貸住宅への入居に当たり、従来の連帯保証人に代わるものとして、家賃債務保証業者による機関保証の役割・必要性が増しています。そのため、国土交通省では、家賃債務保証をめぐる消費生活相談等の状況を踏まえ、家賃債務保証業者を利用する賃借人及び賃貸人の基本的属性、家賃債務保証業者の利用状況、家賃債務保証業に関する消費生活相談内容等について、賃借人、賃貸人に加え、家賃債務保証業者に対してアンケートによる調査を行うなど、家賃債務保証の実態を把握し、家賃債務保証業者の適正な運営の確保や賃借人の居住の安定を図るための必要な諸施策の検討を行っています。

また、家賃債務保証の業界団体のセミナー等において、家賃債務保証業務の適正な実施に当たっての注意喚起を行いました。

このほか、家賃債務保証に関する適切な情報提供を行うための具体的な方策、要件等について有識者による検討会において議論し、2016年12月に家賃債務保証の情報提供等に関する方向性をまとめ、2017年10月に適正かつ確実に家賃債務保証の業務を行うことができる者として、一定の要件を満たす家賃債務保証業者を国に登録する制度を創設しました。

さらに、民間賃貸住宅をめぐるトラブルの未然防止のための「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」及び「賃貸住宅標準契約書」についてウェブサイト掲載等を通じ、広く周知を図るとともに、相談業務に携わる者に向けた相談対応に関する研修会の実施を支援しています。

2018年3月に国土交通省及び消費者庁では、サブリースに関するトラブルの防止に向けて、サブリース契約を検討されている方及びサブリース住宅に入居する方に対して、注意喚起を行いました。また、2018年10月には、国土交通省、消費者庁及び金融庁が連携し、注意点の内容を拡充・更新し、改めて注意喚起を行ったほか、2018年11月には、より簡潔な啓発用資料を別途作成し、周知を図りました。

(14)住宅リフォーム等における消費者保護

国土交通省では、既存住宅流通やリフォーム工事に係る悪質事案の被害防止の観点から、「住まいるダイヤル」(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)において、リフォーム工事の内容や価格、事業者に確認すべき点等に関する相談を含めた住宅に関する電話相談業務、リフォーム工事の見積書についての相談を行う「リフォーム見積チェックサービス」を実施しています。さらに、住まいるダイヤルのウェブサイト(注82)で、住まいるダイヤルや専門家相談で受け付けた住宅に関する悪質事案を含む代表的な相談内容と相談結果を公表しています。

また、住宅リフォーム及び既存住宅売買に関するトラブルに対応するため、消費者保護の観点から、リフォーム瑕疵保険等の住宅欠陥に関する保険制度等について、2018年7月に設置した「制度施行10年経過を見据えた住宅瑕疵担保履行制度のあり方に関する検討会」において制度の改善策の検討を行い、検討結果を踏まえて制度等の充実を図ります。

さらに、住宅リフォーム事業の健全な発達及び消費者が安心してリフォームを行うことができる環境の整備を図るために国土交通省が創設した「住宅リフォーム事業者団体登録制度」について、これまでで登録住宅リフォーム事業者団体数は14団体となりました。

消費者が基礎的な品質等を有する既存住宅を円滑に選択できるようにするため、耐震性があり、構造上の不具合及び雨漏りが認められず、想定されるリフォームの内容・費用等について適切な情報提供が行われる既存住宅について、国が商標登録したロゴマークを事業者が広告時に使用することを認める「安心R住宅制度(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)」(国土交通省告示(2017年11月公布・2017年12月施行)を推進し、安心して購入できる既存住宅の普及を図ります。

(15)高齢者向け住まいにおける消費者保護

入居一時金の償却についての透明性を高める観点から、厚生労働省では、事業者団体や消費者関係団体、地方公共団体、国土交通省と連携して、有料老人ホーム等の高齢者向け住まいへの入居を考えている消費者向けに「--高齢者向け住まいを選ぶ前に--消費者向けガイドブック」を2012年度に作成し、入居者が支払う金額や契約が終了した場合に返還される金額について、消費者向けに分かりやすい説明を行うことを念頭に、モデルケースを設定し、グラフや表を用いて説明を行っています。

このほか、有料老人ホームの入居者保護のための施策の強化(事業停止命令の創設、前払金の保全措置の義務の対象拡大等)を盛り込んだ地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成29年法律第52号)が2018年4月1日から施行されました。

さらに「平成30年度有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査」を実施し、調査結果を公表するとともに、都道府県等に対して届出促進・指導等の徹底を要請しました(2019年3月29日)。

(16)身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての対応

身元保証等高齢者サポート事業について関係省庁と連携し実態把握を行い、その結果を踏まえ、必要な措置を検討・実施しています。

消費者の保護のため、2016年度、身元保証等高齢者サポート事業に関する実態把握の実施に係る調査体制の検討等、実態把握のための準備・調整を行い、2017年度、事業者に対するヒアリングを行うなど、実態把握のための調査を実施しました。2018年4月に、2017年度に実施した調査研究についての報告書を取りまとめました。2018年8月に、当該報告書を踏まえ、厚生労働省では、「市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について」を発出し、介護保険施設において入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない旨を示し、身元保証人等がいないことのみを理由に入所を拒むことや退所を求めるといった不適切な取扱いを行うことのないよう、適切に指導・監督を行うよう各都道府県等にお願いしたほか、実態調査の結果及び高齢者やその家族が身元保証等高齢者サポート事業の利用を検討する際のポイントを示した、分かりやすい普及啓発のための資料を周知しました。当該資料について、同年9月には、消費者庁でも地方公共団体に周知するとともに、消費者庁のウェブサイトへの掲載を行いました。同年11月に、厚生労働省と消費者庁が共同して、当該資料について、消費者庁のウェブサイト(注83)の紹介を含める形で、調査の対象となった事業者に情報を周知したほか、2019年3月の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議においても通知の内容について周知を行いました。加えて、2019年3月から、厚生労働省及び消費者庁において、身元保証等高齢者サポート事業に関連すると思われる消費生活相談の情報を共有し、共有された情報を厚生労働省から各地方公共団体に提供する取組を開始しました。

2018年4月には、「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」等を発出し、入院による加療が必要であるにもかかわらず、入院に際し、身元保証人等がいないことのみを理由に、医師が患者の入院を拒否することは医師法(昭和23年法律第201号)第19条第1項に抵触する旨、各都道府県等へ周知を行いました。また、2018年度は厚生労働行政推進調査事業費補助金地域医療基盤開発推進研究事業において、「医療現場における成年後見制度への理解及び病院が身元保証人に求める役割等の実態把握に関する研究」を立ち上げ、医療機関を対象に、身元保証人等が得られない場合の患者への対応等の事例を収集し、同年度末までに現場で活用できる事例集を作成し、都道府県等に周知する予定です。

2018年9月に、消費者が身元保証等高齢者サポートサービスを選択するに当たり有用と思われる情報を提供する観点から、関係する情報を一覧することの可能なページを消費者庁ウェブサイト内に設けたほか、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート本部等4団体に、会員への情報の周知等を依頼しました。

(17)金融機関による顧客本位の業務運営の推進

顧客本位の業務運営を浸透・定着させることで、家計の安定的な資産形成を図り、国民生活に貢献します。具体的には、「顧客本位の業務運営に関する原則」に基づき、取組方針を策定した金融事業者の公表、顧客本位の業務運営の定着度合いを客観的に評価できるための成果指標(KPI)の公表への働き掛け、ベストプラクティスを収集し、金融事業者や顧客の参考となるように公表、といった策を実施していきます。

(18)美容医療サービス等の消費者被害防止

美容医療、歯科インプラント等の自由診療について、施術の前に患者に丁寧に説明し、同意を得ることが望ましい内容等について関係者に周知徹底するとともに、指導事例の共有等により、円滑な指導のための連携を行い、また、地方公共団体における相談・指導件数を把握し、指針等の効果の検証を行うこととしています。

厚生労働省では、地方公共団体におけるインフォームド・コンセントに関する相談・苦情件数等の状況を調査し、2017年度における相談・苦情件数は6,943件、うち違反のおそれがあるものとして行政指導を要した件数は105件であることを把握しました。

2017年度から、医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業により、美容医療等に関する不適切な表示を認めた場合には、適切な修正を行うよう指導しています。

このほか、厚生労働省と消費者庁が協力・連携し、美容医療サービスを受けるに当たって注意すべき事項等について周知するため、消費者向けの注意喚起資料を作成し、2016年9月に都道府県等に周知しました。また、2016年9月以降、行政のTwitter等を活用し、定期的に注意喚起・普及啓発を行っています。

また、2017年度から、美容医療サービスの提供状況の把握に資するよう、「美容医療サービス」関連としてPIO-NETに登録された消費生活相談情報を消費者庁から厚生労働省に提供し、同省から地方公共団体に提供しています。

消費者庁では、2016年1月に消費者委員会から内閣総理大臣へなされた特定商取引法の規律の在り方についての答申の内容等を踏まえ、特定商取引法施行令を改正し、一定の美容医療契約を特定継続的役務提供として規制対象に追加しました。具体的には、役務の提供期間が1か月を超え、かつ支払総額が5万円を超える美容医療契約のうち、1脱毛、2にきび・しみ・そばかす・ほくろ等の除去、3肌のしわ・たるみ取り、4脂肪の溶解、5歯の漂白等について、光の照射や薬剤の使用等主務省令で定める方法によるものを規定しています。これにより、消費者が一定の美容医療契約についてもクーリング・オフや中途解約を行うことが可能となりました。

(19)警備業務に関する消費者取引における情報提供の適正化及び苦情解決の円滑化

警備業は、施設警備、雑踏警備、交通誘導警備、現金輸送警備、ボディーガード等の種々の形態を有しており、ホームセキュリティ等の需要も拡大するなど、国民生活に幅広くサービスを提供しています。また、空港や原子力発電所のようなテロの標的とされやすい施設での警備も担っています。こうした警備業が果たす役割を踏まえ、警察では、警備業法(昭和47年法律第117号)の規定に基づき、警備業者に対する指導監督を行い、警備業務の実施の適正と警備業の健全な育成を図っています。

警備業に対する社会的な需要が拡大する中で、警備業務の内容や契約の対価、解除等の条件に関する説明がなかったなど、契約時における警備業者の説明が不十分であることに起因する苦情が数多く発生したため、2004年に成立した警備業法の一部を改正する法律(平成16年法律第50号)において書面の交付に関する規定(第19条)が新設されました。これにより、警備業者は依頼者に対し、契約の成立前に書面を交付して重要事項を説明しなければならず、また、後日の紛争を防ぐため、契約締結後に契約内容を記載した書面を交付しなければならないこととされ、警備業務の依頼者の保護が図られました。

2018年度においても、各都道府県警察は、警備業法第19条の規定に基づく契約内容の書面交付が確実に実施され、警備業務の依頼者の保護が図られるよう、各種講習会や定期立入検査等、様々な機会を捉えて警備業者に対する指導を行い、さらには、違反業者に対して行政処分を実施するなど、警備業者に対する指導監督を継続的に実施しています。

(20)探偵業法の運用の適正化

探偵業は、個人情報に密接に関わる業務でありながら、何らの法的規制もなされず、調査の対象者の秘密を利用した恐喝事件、違法な手段による調査、料金トラブル等の問題が指摘されていました。

このような状況に鑑み、2006年6月、探偵業の業務の運営の適正を図り、もって個人の権利利益の保護に資することを目的とし、探偵業を営もうとする者の都道府県公安委員会への届出制、探偵業者の遵守事項、探偵業者に対する監督等について定めることを内容する探偵業の業務の適正化に関する法律(平成18年法律第60号。以下「探偵業法」という。)が公布され、2007年6月に施行されました。これにより、探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、依頼者に対し、重要事項について書面を交付して説明しなければならず、また、依頼者と探偵業務を行う契約を締結したときは、遅滞なく、重要事項について契約の内容を明らかにする書面を依頼者に交付しなければならないこととされ、探偵業務の依頼者の保護が図られました。

2018年度においても、各都道府県警察は、探偵業法第8条の規定に基づく契約内容の書面交付が確実に実施され、探偵業務の依頼者の保護が図られるよう、各種講習会や立入検査等、様々な機会を捉えて探偵業者に対する指導を行い、さらには違反業者に対して行政処分を実施するなど、探偵業者に対する指導監督を継続的に実施しています。

(21)電気・ガスの小売供給に係る取引の適正化

2016年4月及び2017年4月の電気事業法等の一部を改正する法律(平成26年法律第72号)の施行に伴い、電気・都市ガスの小売業への参入が全面自由化され、一般家庭を含む全ての消費者が電力会社・都市ガス会社や料金メニューを自由に選択できることとなりました。

消費者庁では、2016年4月の電力小売全面自由化の開始に当たり、2016年2月及び3月に、消費者への制度の周知や消費者トラブルの未然防止のため、注意喚起を実施しました。

経済産業省では、電気・都市ガスの小売供給に関する取引の適正化を図るため、「電力の小売営業に関する指針」及び「ガスの小売営業に関する指針」を踏まえ、需要家への情報提供や契約の形態・内容等について、電気事業法(昭和39年法律第170号)及びガス事業法上問題となる行為を行っている事業者に対して指導等を行いました。

さらに、電力・ガス取引監視等委員会の相談窓口等に寄せられた不適切な営業活動等について、事実関係の確認や指導を行っています。

消費者庁では、電力及び都市ガスの小売全面自由化の開始に向け、2016年2月と2017年3月に特定商取引法施行令を改正し、電力及びガスの供給契約に関する特定商取引法の適用除外の範囲の見直しを行いました。

従来、電力及び都市ガスの供給契約については特定商取引法に基づくクーリング・オフの適用が除外されていましたが、本改正により、消費者が訪問販売又は電話勧誘販売により小売電気事業者やガス小売事業者と電気やガスの供給契約を締結した場合、特定商取引法に基づくクーリング・オフを行うことが可能となりました。

また、都市ガスの小売全面自由化の開始に当たり、2017年3月に、消費者への制度の周知や消費者トラブルの未然防止のため、注意喚起を実施しました。

経済産業省では、電気・都市ガスの小売全面自由化について、全国各地での説明会開催や、ラジオ・雑誌等のメディアを通じた広報、コールセンターの運営等、電気・都市ガスの小売全面自由化の周知・広報を積極的に実施しました。

また、電力・ガス小売全面自由化の実施に伴う消費者トラブル防止施策強化のための連携協定に基づき、電力・ガス取引監視等委員会と国民生活センターが共同で、消費者から寄せられた小売全面自由化に関するトラブル事例やそれに対するアドバイスを公表するなどの取組を実施しています。

このほか、液化石油ガス(LPガス)の小売供給については、2016年5月に取りまとめられた液化石油ガス流通ワーキンググループ報告書で示された料金の透明化・取引の適正化に向けた対応の基本的方向性を具体的措置として実施するため、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成29年経済産業省令第8号。以下「改正液石法省令」という。)及び「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針」(以下「取引適正化ガイドライン」という。)等を2017年2月に公布しました。

同年6月の改正液石法省令の施行後、順次LPガス販売事業者への立入検査を実施し、改善指導等を行うとともに、2018年2月には、取引適正化ガイドラインを改訂し、より一層料金の透明化・取引の適正化に向けた取組を行っています。

(22)リスクの高い取引等に関する注意喚起

仕組みが複雑である、内容が分かりにくい、損失が生じた場合に高額になる、適正な価格が判断しづらいなどのリスクの高い取引(例えば商品等の先物取引)等については、所管省庁の取組に加え、必要に応じ、消費者庁も、国民生活センターと連携し、取引の際にはリスクについての十分な理解が必要であること等、被害の未然防止の観点から注意喚起を行うこととしています。

消費者庁では、2015年5月に、先物取引のリスクの高さについて注意喚起を行い、また、同月に国民生活センターから商品先物取引法施行規則の改正の内容とそれに対応した注意事項について、注意喚起を行いました。さらに、継続して消費生活相談の状況を注視し、2019年3月に、消費者庁ウェブサイトにおける注意喚起の更新を行いました。

このほか、改正後の商品先物取引法施行規則に基づく勧誘を希望する事業者で、同施行規則に規定する体制が整備されている事業者の状況を、所管府省から情報提供を受け、更新の度に国民生活センター、全国の消費者行政部局及び消費生活相談窓口に周知しました。

また、近時、大規模災害が相次いで発生したことを踏まえ、消費者庁ウェブサイトにて特設ページの開設、「災害に関連する主な相談例とアドバイス」や「災害発生時にあわてないために!消費生活での留意事項例をご紹介」の公表等、消費者に対する情報提供を随時行いました。今後も、災害発生後の状況等に応じて、消費者が留意すべきリスク等について注意喚起を行います。

その他、ゲノム医療・ビジネスについて、正しく理解することができるよう、2018年4月に、消費者庁のSNSやウェブサイトを活用して情報提供を行いました。また、地方公共団体ふるさと納税サイトの画像や返礼品を不正にコピーしたサイトが存在することを受けて、地方公共団体による注意喚起がなされたことを踏まえ、2018年12月に、消費者庁のSNSやウェブサイトを活用して注意喚起を行いました。

新生活を始める方に対し、2019年3月に、キャッシュレス決済やプラットフォームの利用における留意点、再配達が生じないようにするための留意点等を含め、注意喚起を行いました。


  • 注79:電気通信役務としての移動通信サービス(以下「移動通信サービス」という。)を提供する電気通信事業を営む者であって、当該移動通信サービスに係る無線局を自ら開設(開設された無線局に係る免許人等の地位の承継を含む。以下同じ。)又は運用している者。
  • 注80:光ファイバー回線でネットワークに接続するアクセスサービス(集合住宅内等において、一部に電話回線を利用するVDSL等を含む。)
  • 注81:(1)MNOの提供する移動通信サービスを利用して、又はMNOと接続して、移動通信サービスを提供する電気通信事業者であって、(2)当該移動通信サービスに係る無線局を自ら開設しておらず、かつ、運用をしていない者。
  • 注82:https://www.chord.or.jp/index.php
  • 注83:当該ウェブサイトにおいては、「身元保証等高齢者サポートサービスを利用するに当たっては、...(中略)...事業者における預託金の管理方法なども把握していただくなど、本当に身元保証等高齢者サポートサービスが必要かどうかを含め、慎重に情報収集した上で判断いただくようお願いします。」と記載している。

担当:参事官(調査研究・国際担当)