文字サイズ
標準
メニュー

第2部 第1章 第4節 (1)架空請求に関する相談

第2部 消費者問題の動向及び消費者政策の実施の状況

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第4節 最近注目される消費者問題

(1)架空請求に関する相談

前年に続き、架空請求に関する相談が多い

架空請求に関する相談件数は、2017年に前年比で倍増しましたが、2018年は、年間約25.8万件と2017年より更に約10万件近く増加し、急増傾向が続いています(図表II-1-4-1)。

相談の内訳をみると、2017年同様「商品一般」に関する相談件数が多く、架空請求に関する相談の約8割を占めています。これは、後述するように、法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が多数寄せられたためです。

架空請求の請求手段は、電話、はがき、電子メール、SMS等様々ですが、中でもはがきによるものが約18.8万件と2017年の約5.8万件から3倍以上に増加しています(図表II-1-4-2)。

また、架空請求には法務省など国の機関や裁判所のほか、消費者に本物と思わせるよう実在の事業者名をかたっているケースもみられます。このようなケースでは、電子メールや携帯電話のSMSに「コンテンツ利用料金の清算確認が取れません。本日ご連絡なき場合には法的手続きに移行いたします」といったメッセージが届いています(注30)

巧妙化するはがきのほか、封書が届くケースも

はがきの中には、公的機関からの文書を装うために、日本国政府で広く用いられている「桐花紋」のような紋章が印刷されているものもみられました(注31)(図表II-1-4-3)。

また、2018年には、はがきに加え封筒が送られてくるケースも各地で報告されています(注32),(注33)(図表II-1-4-4)。封筒の表書きには『重要』と赤いスタンプが押されているものもあり、書面には、「貴方の利用されていた契約会社、ないしは運営会社側から契約不履行による民事訴訟として、訴状が提出されました事をご通知致します」、「裁判取り下げ最終期日を経て訴訟を開始させていただきます」と記載されており、「裁判取り下げなどのご相談」に関しては、固定電話の問い合わせ先に連絡するように誘導しています(「 」内は原文のまま引用)。

また、連絡がない場合は、「原告側の主張が全面的に受理され、執行官立ち合いの元、給料差し押さえ及び、動産、不動産物の差し押さえを強制的に履行させて頂きますので裁判所執行官による執行証書の交付を承諾していただくようお願い致します」などと脅して不安にさせる文言も記載されています(「 」内は原文のまま引用)。

消費者に対しては、こうしたはがきや封書が届いても決して相手に連絡したり、お金を支払ったりせず消費生活センター等に相談するようにとの注意喚起が繰り返し行われています(注34)(図表II-1-4-5)。

架空請求はがきの相談、9割以上は女性

架空請求のはがきに関する契約当事者の属性をみると、60歳代女性の相談件数が全体の約4割を占めていますが、2018年は70歳以上女性の相談件数が、30.3%(2017年は約1割)に増加し、50歳以上の女性が全体の約9割を占めています(図表II-1-4-6)。相談の状況から、こうしたはがきは、短期間に集中して特定の地域に送付される傾向があり、何らかの名簿等に沿って送付されているとも考えられます。

架空請求の既支払額

架空請求の既支払額について、相談時点で既に1円以上支払った件数の割合は、過去10年で最も高かった2011年の4.0%から、2018年には1.0%にまで減少しています。一方で、支払った金額をみると、2018年は、2011年と比べて、1,000円から1万円未満での相談が25.6%から5.5%に減少する一方で、10万円以上50万円未満の相談が24.9%から44.2%に増加しています(図表II-1-4-7)。

急増する架空請求の相談への対応

2017年以降、架空請求に関する相談件数が急増している状況を踏まえ、消費者庁で調査を行ったところ、法務省管轄支局と称する事業者との取引において、消費者の利益を不当に害するおそれのある行為(消費者を欺き、又は威迫して困惑させること)を確認しました。そこで、2018年4月、消費者庁は、消費者安全法の規定に基づき、消費者被害の発生又は拡大の防止に資する情報を公表し、消費者に注意喚起を行いました(注35)。さらに、2018年7月、架空請求による消費者被害の未然防止・拡大防止を図るため、消費者政策会議において決定した「架空請求対策パッケージ(注36)」の下、総務省、法務省、経済産業省、消費者庁、警察庁、金融庁の各省庁、個人情報保護委員会及び国民生活センターは、一体となって対策を講じており(図表II-1-4-8)、同年12月には、各施策の進捗状況についてフォローアップ(注37)を行っています。

こうした行政横断的な取組が行われる一方で、公的機関や実在する企業名、家族をかたり、家族構成や資産状況などを電話で聞き出そうとする、いわゆる「アポ電」と呼ばれる事例がみられるなど、架空請求、振り込め詐欺、還付金詐欺等の入口にもつながると思われる手口は多様化してきており(注38)、引き続き啓発が必要です。


  • 注30:国民生活センター「速報!架空請求の相談が急増しています--心当たりのないハガキやメール・SMSに反応しないで!--」(2018年4月20日公表)
  • 注31:国民生活センター「たとえ桐花紋が入っていても架空請求ハガキは無視してください」(2019年2月22日公表)
  • 注32:国民生活センター「『法務省管轄支局国民訴訟通達センター』からの封書による架空請求は無視してください!」(2018年10月31日公表)
  • 注33:国民生活センター「あなたの携帯電話番号が記載された架空請求は無視してください!」(2018年12月7日公表)
  • 注34:国民生活センター「『利用した覚えのない請求(架空請求)』が横行しています」(2019年2月22日更新)
  • 注35:消費者庁「法務省の名称を不正に使用して、架空の訴訟案件を記載したはがきにより金銭を要求する事案に関する注意喚起」(2018年4月27日公表)
  • 注36:「架空請求対策パッケージ」(2018年7月22日 消費者政策会議決定)
  • 注37:「『架空請求対策パッケージ』に掲げられた施策の進捗状況について(2018年12月28日消費者政策担当課長会議)
  • 注38:国民生活センター「その電話、『アポ電』かも--知らない番号からの電話に出るのは慎重に--」(2019年3月18日公表)

担当:参事官(調査研究・国際担当)