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第2部 第1章 第3節 (2)越境取引に関わる消費生活相談

第2部 消費者問題の動向及び消費者政策の実施の状況

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第3節 消費生活相談の概況

(2)越境取引に関わる消費生活相談

越境消費者センター(CCJ)の活動

グローバル化が進む中、消費者がインターネット経由で気軽に海外事業者と取引できるようになったこと等に伴い、海外事業者とのトラブルが発生するようになりました。

消費者庁では、消費生活センター等における相談受付機能を補完するため、2011年11月から2015年3月まで「消費者庁越境消費者センター」を開設し、越境消費者取引でのトラブルに関する相談対応及び海外の消費者相談機関との連携体制の構築に関する実証調査を行いました。

2015年4月からは、相談体制を整備し、事業として恒常的に行うことを目的として、国民生活センターに移管し、「国民生活センター越境消費者センター(CCJ:Cross-border Consumer center Japan)」と名称変更して、引き続き活動を行っています(注26)(CCJの相談対応の仕組み等については、第1部第2章第2節(2)参照。)。

CCJに寄せられた相談の特徴

CCJが受け付けた相談の件数は、2017年までは毎年4,000件台で推移していましたが、2018年は、5,882件と2017年(4,040件)の約1.5倍に増加しました(図表II-1-3-17)。

相談件数の増加には、CCJが2018年4月から、スマートフォンからも入力・相談がしやすい相談受付フォームに変更したことが影響していると考えられます。 2018年の取引類型別では、「電子商取引」が5,727件(97.4%)と、インターネット取引によるものが引き続き大部分を占めていますc(注27)

年齢層別にみると、最も高い割合を占めているのは「40歳代」で、「20歳代」、「30歳代」と続きます。「70歳以上」の割合は、全国の消費生活センターに寄せられた消費生活相談の2割強であることに比べて、CCJでは5.8%となっており、高齢者の割合は低くなっていますが、一方で2018年での「70歳以上」の相談件数は339件と、前年の157件から倍増しています。CCJに寄せられた「70歳以上」の相談のうち249件は「PCソフトウェア」に関する相談で、全体の73.5%を占めており、2017年の59.2%(93件)を上回っています。

「ソフトウェア」に関する相談割合が増加

CCJが受け付けた相談を商品・サービス別にみると、2018年は「ソフトウェア」が23.0%と最も高い割合を占めています(図表II-1-3-18)。相談内容をみると「インターネットの利用中にセキュリティ警告の画面が出て、PCソフトを購入させられた」、「パソコンが破損しているという告知が現れ、修理のためのソフトを購入したが、詐欺サイトだった」など、パソコンのソフトウェアのインストールによるトラブル等が主な内容で、9割以上が「解約」に関するトラブルです。また、近年、日本の消費者が、冬物の衣服・履物(ダウンジャケットやブーツ等)を購入する時期に合わせて、詐欺・模倣品サイトが登場してくるケースが多くなっており、詐欺・模倣品トラブルが冬季(11月~1月)に集中して発生する傾向があることから、国民生活センターは注意を呼び掛けています(注28)

事業者所在国は多様化が進む

CCJが受け付けた相談について事業者所在国別にみると、2018年は「所在国不明」が2,557件(43.5%)で、最も多くなっています(図表II-1-3-19)。事業者所在国が判明している中では、「米国」が761件で最も多く、以下「中国」(332件)、「英国」(203件)、「香港」(197件)、「シンガポール」(178件)と続きます。上位3か国の占める割合は22.0%に低下する一方、「その他」の割合が増加傾向にあり、事業者所在国が多様化する傾向が続いています。

事業者所在国別にトラブル類型の内訳をみると、「詐欺疑い(注29)」のトラブルは「所在国不明」であることが多く、事業者所在国が判明しているトラブルでは「解約」のトラブルが占める割合が高くなっています(図表II-1-3-20)。

決済手段は主に「クレジットカード」

CCJが受け付けた相談を決済手段別にみると、2018年は「クレジットカード」が4,344件(73.9%)と最も多くなっています。トラブル類型別に推移をみると、2014年ではトラブル類型によって主な決済手段が異なっていましたが、2018年では全ての類型において「クレジットカード」が主な決済手段になっています(図表II-1-3-21)。

一方、2018年は、前年に比べ、クレジットカードや振込以外の決済方法として「暗号資産(仮想通貨)」などもみられ、決済手段の多様化がうかがわれます。また、銀行振込は近年減少傾向にありますが、その一方で、2018年では、現金による決済が229件と、前年の94件に比べ倍以上に増えています。取締りや注意喚起の強化により、銀行振込による取引が行いにくくなり、代引きの取引が増えたこと等が、現金取引が増えた一因になったと考えられます。

相談内容をみると、トラブル類型が「解約」の相談では、2016年以降、偽警告に誘導されて購入したウイルス対策ソフトの解約に関する相談が、引き続き多くなっています。


  • 注26:2015年度は移管準備のため4~5月は相談窓口を閉鎖し、6月から相談受付を開始。なお、2018年3月に相談項目等の見直しを行ったため、2017年以前の相談件数は過去発表の数値と異なる場合がある。
  • 注27:「電子商取引」以外は、「現地購入」115件(2.0%)、「その他」14件(0.2%)、「不明・無関係」26件(0.4%)。
  • 注28:国民生活センター「冬物の『衣服・履物』の詐欺・模倣品サイトに注意!--トラブルが冬季に集中して発生--」(2018年10月23日公表)
  • 注29:注文及び決済の事実が確認できるにもかかわらず、何も届かないまま事業者とのコミュニケーションが途絶え(又は事業者が合理的な対応をしない)、なおかつ事業者の実態が正確に把握できない相談。

担当:参事官(調査研究・国際担当)