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第2部 第1章 第3節 (1)2018年の消費生活相談の概況

第2部 消費者問題の動向及び消費者政策の実施の状況

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第3節 消費生活相談の概況

(1)2018年の消費生活相談の概況

全国の消費生活相談は前年より大きく増加

全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談の件数をみると、2018年は101.8万件となり、前年と比べ約10万件増加し、2007年以来11年ぶりに100万件を上回りました。2018年の特徴は、架空請求に関する相談件数が25.8万件となり、2017年の16.1万件を上回って、この10年で最多となったことです(図表II-1-3-1)。

消費生活相談件数の長期的な推移をみると、2004年度に192.0万件とピークに達しています。この時も架空請求に関する相談件数が67.6万件と急増し、全体の35.2%を占めていました。その後、架空請求に関する相談は減少し、消費生活相談の総件数も減少傾向となりましたが、2008年以降の10年間は年間90万件前後と、依然として高水準で推移し続け、2018年に再び100万件を突破しました。

消費生活相談件数が高水準で推移し続ける要因には、インターネットの普及・浸透が一段と進んだこと、はがき等を媒体とした架空請求に関する相談件数が再度増加に転じたこと等が考えられます。

近年、特にスマートフォンの普及により、SNSを通じたコミュニケーション、インターネット通販での商品やサービスの購入が、高齢者を含めた幅広い年齢層でより身近で日常的なものとなりました。こうした中で、簡単にもうかるノウハウを記したとする「情報商材」や、電子的に取引される暗号資産(仮想通貨)等も、主にインターネットを通じて取引が行われています(詳細は本章第4節(3)参照。)。

一方で、架空請求については、かつて電子メールを用いて不特定多数へ大量に送付されたことにより多くの相談が寄せられましたが、2017年以降は、はがきや封書といった手法が再びみられます(詳細は本章第4節(1)参照。)。こうした状況を背景に、消費生活相談においても関連したトラブルの相談が増加しています。

「商品一般」と「通信サービス」に関する相談件数で全体の4割超

2018年の消費生活相談状況について、商品・サービス別に相談件数と相談1件当たりの実際に支払った金額(平均既支払額)の関係でみると、まず、相談件数が最も多いのは「商品一般」で24.5万件となっています(図表II-1-3-2)。これは、法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が18.7万件と多数寄せられるなど、架空請求に関する相談が前年に続き増加したためです。また、次いで、デジタルコンテンツやインターネット接続回線に関する相談等の「通信サービス」が20.0万件と、この上位二つで全体の43.7%を占め、突出して多くなっています。しかし、平均既支払額でみると、「商品一般」は0.7万円、「通信サービス」は3.8万円と、他の商品・サービスよりも相対的に低くなっています。

平均既支払額では、フリーローン・サラ金の返済に関する相談等の「金融・保険サービス」が119.2万円と最も高額で、屋根工事やリフォーム工事の解約に関する相談等の「工事・建築・加工」が101.1万円、訪問販売で購入した給湯器や太陽光発電パネルに関する相談等の「土地・建物・設備」が91.6万円と続きます。「金融・保険サービス」は、相談件数も3番目に多く、総既支払額が最も高くなっています。

65歳以上の相談1件当たりの平均金額は大幅に増加

2018年に寄せられた相談1件当たりの平均金額をみると、全体では、請求された又は契約した金額である「契約購入金額」が117.2万円、実際に支払った金額である「既支払額」が50.5万円となっています。2018年は、平均契約購入金額において、「全体」、「65歳以上」、「65歳未満」の全てのカテゴリーにおいて増加しました。特に「65歳以上」については前年に比べて24.9万円増の150.9万円と大幅に増加しました。平均既支払額でも、全てのカテゴリーで増加し、特に65歳以上では20.1万円増の89.4万円と大幅に増加しました(図表II-1-3-3)。

また、2018年に寄せられた相談全体の契約購入金額及び既支払額それぞれの総額をみると、契約購入金額総額は4573億円、既支払額総額は1799億円といずれも前年を上回りました(図表II-1-3-4)。65歳以上の高齢者に関するものは、契約購入金額総額では1591億円と全体の34.8%を占め、既支払額総額では950億円と全体の52.8%を占めています。

65歳以上の高齢者については、相談1件当たりの平均既支払額は65歳未満の約3倍に及んでいます。また、既支払額総額も前年に比べて約5割増加していることから、高齢者の消費者被害は一層深刻であるといえます。

属性別にみた2018年の相談状況

2018年の消費生活相談状況について、属性別にみると、年齢層別では65歳以上が34.9%と、高齢者が大きな割合を占めています(図表II-1-3-5)。10歳ごとの区分でみると、2018年は50歳代から70歳代までの女性から法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が多く寄せられたこと等から、60歳代が19.7%と最も大きな割合を占め、次いで70歳代、50歳代の順となっています。

性別では、女性が59.1%、男性が37.1%と女性の割合が高くなっています。性別により寄せられる相談件数に大きな差がある商品・サービスは、女性が男性の8倍近くの「商品一般」、3倍以上の「クリーニング」、2倍以上の「保健衛生品」、「被服品」、「保健・福祉サービス」等、男性が女性の3倍近くの「車両・乗り物」です(注22)

さらに、性別、年齢層別に区分してみると、相談件数は、男女共に60歳代が最も多くなっています(図表II-1-3-6)。

商品・サービス別でみると、男性では幅広い年齢層で「通信サービス」が大きな割合を占めていますが、これは、ウェブサイトを利用したデジタルコンテンツや、インターネット接続回線等に関する相談が多いことによるものです。また、2018年は、前年に引き続き、50歳代から70歳代までの女性では「商品一般」の相談件数が多く、特に60歳代女性では全体の約6割を占めていますが、これは、主にこの年齢層の女性から、法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が寄せられたこと等によるものです。

次に、商品・サービスを更に詳細に区分してみると、「商品一般」の相談件数が最も多く、他を大きく引き離しています(図表II-1-3-7)。「商品一般」のうち、架空請求のはがきに関する相談が高齢者を中心に多く寄せられたことが影響していると考えられます。

架空請求に関するもの以外では、「アダルト情報サイト」や「他のデジタルコンテンツ」、「出会い系サイト」に関するものが多くなっています。主な相談例は「パソコンで無料検索をしていたら突然『登録完了1年間見放題24万円』と出た。電話したが大丈夫か」、「スマホに『未納コンテンツ料金が発生。連絡がない時は法的措置に』とSMS(注23)があり記載された電話番号にかけたところ高額請求された」、「無料通信アプリで誘われ登録したところが出会い系サイトだった、解約したいができない」といったものです。年齢層別には、20歳未満、20歳代、30歳代、40歳代の各年齢層で「デジタルコンテンツ」に関する相談が最も多くみられました。

このほか、20歳代から50歳代までについては、「不動産貸借」に関する相談が、相談件数の上位に入っています。

若者の相談は賃貸アパート、インターネット利用に関するものが目立つ

15歳から29歳までの若者の消費生活相談をみると、インターネット関連の相談が目立つほか、20歳から29歳までは性別を問わず、「賃貸アパート」が最上位に挙がりました。内容としては、契約時に敷金は返金しないと大家から言われたり、退去時に合意していない修理費を請求されたりするなど、一人暮らしを始めて間もないことによるトラブルも見受けられます(図表II-1-3-8)。

また、20歳代では「フリーローン・サラ金」についての相談も多く寄せられており、性別にみると、20歳代の男性からの相談が多くなっています。内容をみると、生活費や遊興費のための借金のほか、多重債務に関する相談等も寄せられています。女性では、エステや健康食品等広い意味での美容に関わる相談が多くみられます。

高齢者に関する消費生活相談件数は依然として高水準

65歳以上の高齢者に関する消費生活相談件数について、この10年間の推移をみると、2013年以降高水準で推移していましたが、2018年は約35.6万件と、前年を8万件以上上回り、この10年間で最も多くなりました(図表II-1-3-9)。5歳ごとに分けてみると、前年に比べて65-69歳が約2.7万件、70-74歳で約3.9万件増えており、法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が多く寄せられたことが影響していると考えられます。また、この10年間で、85歳以上に関する相談件数は2倍以上となっています。

高齢者に関する消費生活相談について相談件数上位の商品をみると、2018年は、架空請求のはがきに関する相談の増加により、「商品一般」が圧倒的多数を占めました。「商品一般」以外では、「デジタルコンテンツ(全般)」、「光ファイバー」、「他のデジタルコンテンツ」等インターネットに関連した相談で上位が占められています(図表II-1-3-10)。

一方、2016年まで相談が多かった「アダルト情報サイト」に関する相談は、2018年には、上位に挙がっていません。2014年に相談が多かった「ファンド型投資商品」に関する相談の件数は、その後、一旦減ったものの2018年に再び増加に転じています。

認知症等の高齢者や障害者等の見守りが重要

認知症等の高齢者(注24)に関する相談をみると、高齢者全体とは異なる傾向を示しています。本人から相談が寄せられる割合の推移をみると、高齢者全体では約8割であるのに対し、認知症等の高齢者では2割に満たない状況です(図表II-1-3-11)。販売購入形態別にみると、「インターネット通販」は約1.5%、通信販売全体でも約1割にとどまる一方で、「訪問販売」が4割近く、「電話勧誘販売」も2割近くと大きな割合を占めています(図表II-1-3-13参照。)。「訪問販売」や「電話勧誘販売」に関する相談では、本人が十分に判断できない状態にあるために、事業者に勧められるままに契約したり、買物を重ねたりといったケースがみられます。相談内容としては、新聞や健康食品に関する相談が多くなっています。具体的には、「離れて住む判断力不十分な母に対し新聞販売店が意味不明な領収証を渡したり勝手に契約延長したりする」、「認知症気味の親の家で健康食品と請求書を見付けた。本人は身に覚えがないという」といった相談が寄せられています。

認知症等の高齢者本人はトラブルに遭っているという認識が低いため、問題が顕在化しにくい傾向があり、特に周囲の見守りが必要です。

障害者等(注25)に関する相談についても、本人から相談が寄せられる割合をみると、消費生活相談全体では約8割であるのに対し、障害者等に関する相談では約4割という状況です(図表II-1-3-12)。相談内容をみると、「フリーローン・サラ金」に関する相談や、「出会い系サイト」等が含まれる「デジタルコンテンツ」に関する相談が多くなっています。具体的には、「施設の入所者に対し、債権回収業者から督促状が届く。本人は病気で何も覚えていない。どうしたらよいか」、「知的障害のある息子が、スマホに届いたメールで出会い系サイトに誘導され、50万円を支払った。返金を希望する」等、判断力の不足や契約内容への理解不足でトラブルになっていると思われるケースが目立ちます。

以上のことからも、認知症等の高齢者や障害者等の消費者トラブルの未然防止や被害の拡大防止には、周囲の見守りが必要なことが分かります。家族のみならず、近隣住民や福祉事業者、行政機関等が協力して見守りを強化していくことが重要です。

販売購入形態別にみた相談状況

販売購入形態別の消費生活相談割合の推移をみると、2018年の特徴は、「不明・無関係」の割合が、2014年の約2倍の32.3%に増加していることです(図表II-1-3-13)。この割合は、前年比でも11ポイント以上と急増しています。「不明・無関係」には、販売購入形態が分からないもの等が分類され、「架空請求」のほとんどはこの分類に該当します。2018年は、「架空請求」に関する相談が急増し、「不明・無関係」のうちの5割以上を占めました。65歳以上の高齢者では、「不明・無関係」の割合は41.9%と更に高くなっており、「架空請求」の割合も7割近くを占めています。

「店舗購入」の割合は、近年減少傾向にあります。なお、近年増加傾向にあり、2017年に「店舗購入」を超えた「インターネット通販」の割合は、2018年は減少し、再び「店舗購入」の割合を下回る結果となりました。しかし、2018年は、「架空請求」に関する相談件数の急増が大きく影響していると考えられるため、「インターネット通販」の相談件数が減少傾向に入ったと結論付けることは早計であり、今後もその動向には注意が必要です。

65歳以上の高齢者についてみると、65歳未満と比べて「訪問販売」、「電話勧誘販売」の割合が大きいことが特徴ですが、2014年と比較すると、いずれの割合も大きく減少しています。

また、年齢層別にみると、20歳代では「マルチ取引」、80歳以上では「訪問販売」、「電話勧誘販売」、「訪問購入」が、他の年齢層に比べて、相談に占める割合が高くなっています(図表II-1-3-14)。

「インターネット通販」について商品・サービス別にみると、2018年は、2014年に相談の7割近くを占めていた、アダルト情報サイトや出会い系サイト等の「デジタルコンテンツ」の割合が減少する一方で、電子商取引の拡大を背景に(第1部第1章第2節参照。)、健康食品、化粧品、パソコンソフト等の「商品」に関する相談の割合が増加しています。「商品」に関する相談の割合は、2018年は2017年に比べて10ポイント以上、上昇しました(図表II-1-3-15)。

トラブルになりやすい商法や手口に関する相談

トラブルになりやすい商法や手口には様々なタイプのものがありますが、主なものとその相談件数の推移をみると、2017年に急増し、2018年も同様の傾向が続いた、法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談等もあり、「架空請求」、「身分詐称」が急増しています(図表II-1-3-16)。

その他、「サイドビジネス商法」も増加し続けており、これは、ウェブサイトやSNSの成功報酬型広告等、インターネット上での副業に関する相談の増加等が影響しているものと考えられます。また、「原野商法」は2018年も高止まりしています。

一方、「劇場型勧誘」、「無料商法」では件数の減少が顕著になっています。手口が消費者に少しずつ認知されることで被害の未然防止が図られ、相談件数の減少につながったものもあると考えられる一方で、詐欺に関連することも多い「利殖商法」、「当選商法」は再び増加に転じており、引き続き消費者への啓発その他の対策を続ける必要があります。


  • 注22:「商品一般」(女性212,282件、男性27,792件)、「クリーニング」(女性3,155件、男性1,017件)、「保健衛生品」(女性20,707件、男性7,812件)、「被服品」(女性25,500件、男性9,880件)、「保健・福祉サービス」(女性22,910件、男性8,927件)、「車両・乗り物」(女性5,416件、男性14,577件)。
  • 注23:メールアドレスではなく携帯電話番号を宛先にして送受信するメッセージサービス。
  • 注24:トラブルの当事者が65歳以上で、精神障害や知的障害、認知症等の加齢に伴う疾病等、何らかの理由によって十分な判断ができない状態であると消費生活センター等が判断したもの。
  • 注25:トラブルの当事者が心身障害者又は判断能力の不十分な方々であると消費生活センター等が判断したもの。

担当:参事官(調査研究・国際担当)