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第1部 第3章 第2節 今後の消費者政策の方向性に関する消費者の意識

第1部 【特集】消費者庁及び消費者委員会設立10年~消費者政策の進化と今後の展望~

第3章 今後の消費者政策の在り方についての展望

第2節 今後の消費者政策の方向性に関する消費者の意識

今後の消費者政策は、以上のような新たな課題に適切に対処していくことが必要となりますが、その在り方を検討するに当たっては、今後の消費者政策の方向性について消費者自身がどのように考えているのかを確認しておくことが有益です。

以下では、消費者庁「消費者意識基本調査」(2018年度)の結果を基に、今後の消費者政策の在り方に関する消費者の意識を紹介します(図表Ⅰ-3-2-1)。

まず、法令による事業者の規制や消費者保護の在り方に関わる設問への回答をみると、「1自由な市場の形成を通じて消費者の利便性を向上させるため、できるだけ事後チェックに徹すべき」との項目に対する受け止めは、「そう思う」(「そう思う」+「ある程度そう思う」。以下同じ。)が45.9%、「そう思わない」(「あまりそう思わない」+「そう思わない」。以下同じ。)が11.2%と、「そう思う」が「そう思わない」を上回ったものの、「どちらともいえない」と回答する人も40.3%を占めました。

他方、「2事業者を事前規制することで、消費者に害が及ばないようにすべき」との項目に対する受け止めは、「そう思う」が74.0%、「そう思わない」が3.8%、「3消費者被害に遭いやすい人たちへの保護を強化すべき」との項目に対する受け止めは、「そう思う」が75.4%、「そう思わない」が4.7%と、それぞれ「そう思う」が「そう思わない」を大きく上回りました。

この結果については、様々な解釈があり得ますが、それぞれの項目に対する回答を総合的に評価すると、規制緩和等による経済の活性化、消費者の利便性向上と消費者保護との間で適切なバランスを確保することが必要であること、消費者の利益の擁護及び増進を目的とする消費者政策の在り方としては、特に消費者被害に遭いやすい消費者の保護等の面において、事後的な対応のみにとどまらず、より積極的な対応を求めているものと考えられます。

次に、消費者被害の抑止や消費者の自立促進等のための消費者等への支援や啓発の在り方に関わる設問への回答をみると、「4消費者が自ら考え、自主的かつ合理的な意思決定ができるよう支援すべき」との項目に対する受け止めは、「そう思う」が66.6%、「そう思わない」が3.9%、「5消費者による消費活動が社会や環境に与える影響について啓発すべき」との項目に対する受け止めは、「そう思う」が63.4%、「そう思わない」が4.2%、「6事業者による消費者被害を抑止するため、消費者団体の活動を支援すべき」との項目に対する受け止めは、「そう思う」が58.5%、「そう思わない」が5.6%と、いずれも「そう思う」が「そう思わない」を上回っており、総じて消費者の利益を擁護・増進する観点からの支援に対する期待が高いことがうかがえます。ただし、「どちらともいえない」との回答もそれぞれ3割前後を占めています。

また、消費者・事業者・行政間の協働促進の在り方に関わる設問への回答をみると、「7消費者・事業者・行政間の信頼関係や協働を促進すべき」との項目に対する受け止めは、「そう思う」が70.1%と「そう思わない」の3.2%を大きく上回っており、これまでの事業者に対する規制や消費者等への支援に加えて、消費者問題に関わる当事者間の協働を促進することが、今後の消費者政策における行政手法として重要となると考えていることが示されています。

さらに、より具体的に、今後の消費者政策において、どのような課題への対応が特に重要となると思うかを聞いたところ、回答の多い順に、「高齢化や単身世帯化に伴う消費者問題への対応」(73.0%)、「インターネット上の利用履歴などの個人データの取扱いの適正化」(60.4%)、「キャッシュレス決済に関する消費者問題への対応」(52.2%)、「成年年齢の引下げによる若年消費者の消費者被害防止」(39.3%)、「在留外国人や訪日外国人に関する消費者トラブルの防止」(29.4%)等となっており、今後の消費者政策は、このような消費者からの要請を十分に踏まえて推進していく必要があります(図表Ⅰ-3-2-2)。

担当:参事官(調査研究・国際担当)