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第1部 第2章 第4節 (2)今後の取組強化に向けた主な課題

第1部 【特集】消費者庁及び消費者委員会設立10年~消費者政策の進化と今後の展望~

第2章 消費者庁及び消費者委員会の10年

第4節 これまでの取組の評価と課題

(2)今後の取組強化に向けた主な課題

前述のとおり、これまでの消費者政策に関する取組は、一定の成果を上げてきているといえますが、消費者の利益の擁護及び増進に関わる幅広い問題を対象とする消費者政策が取り組むべき課題は山積しています。また、取組の内容や成果が消費者に十分認知されていない面もあります。

今後、消費者政策を更に推進していくためには、消費者庁及び消費者委員会設置の理念を踏まえて、新たな決意の下で諸課題に取り組むことが必要です。

「消費者行政推進基本計画」では、新組織が満たすべき6原則として、1消費者にとって便利で分かりやすい、2消費者・生活者がメリットを十分実感できる、3迅速な対応、4専門性の確保、5透明性の確保、6効率性の確保の6項目が掲げられました。以下では、この6原則の観点を踏まえつつ、消費者庁及び消費者委員会が取り組むべき課題を提示します。

消費生活相談窓口ネットワーク維持向上、地方消費者行政の充実強化

「消費者意識基本調査」の結果にもみられるように、消費者にとって便利で分かりやすい消費者行政であるためには、高齢者を含む全ての消費者が迷わずに何でも相談できる一元的な窓口が存在することが極めて重要です。

消費者庁設立以来、「地方消費者行政推進交付金」等による財政支援を活用し、どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられる地域体制の整備を目標とした「地方消費者行政強化作戦」の達成に向けて取組を進めた結果、相談体制の空白地域の解消や消費生活センターの設立促進等、地方消費者行政の体制整備が進んだことは、地方消費者行政の充実につながりました。一方で、小規模市町村における消費生活相談体制の整備や地域の見守りネットワークの構築等には課題が残っており、今後更なる充実が求められるところです(図表I-2-4-6)。

なお、「地方消費者行政強化作戦」については、「相談体制の空白地域解消」、「適格消費者団体の空白地域解消」、「消費者教育推進計画の策定」等、おおむね達成された目標も多く、今後は、現下の状況を踏まえ、「地方消費者行政強化作戦」の成果を分析し、既存の目標の見直しや新たな目標の設定を行うことが必要となります。

一方、これらの取組の進展は、「地方消費者行政推進交付金」等による国からの財政支援に支えられていたものであり、今後、整備してきた体制を維持し、更なる充実を図るためには、国からの財政支援を活用しつつ、地方の一般財源に裏付けられた消費者行政予算の確保を行う必要があります。しかし、地方の一般財源に裏付けられた消費者行政予算の確保は十分に進んでいない現状(第1部第2章第2節(2)参照。)にあるといえます。このことを踏まえ、今後は、地方公共団体が、地域住民の消費生活の安全・安心の確保は自らの事務として優先的に取り組まなければならない課題であるとの認識を深めることが重要になると考えられます。

こうしたことから、2019年1月から3月にかけて、「地方消費者行政強化キャラバン」を実施しました。自主財源に裏付けられた地方消費者行政の充実について、直接、都道府県知事等に依頼するなどの取組を進めています(図表I-2-4-7)。

今後も、地方消費者行政の体制維持・充実に向けては、消費者庁から継続的に地方公共団体への働き掛けを行い、「消費者行政の優先順位」を高めるための様々な手段を講ずるとともに、交付金による支援の在り方の見直しも行いつつ、地方消費者行政予算を確保するための取組を進めていくことが求められています(第1部第2章第2節(2)参照。)。

また、消費生活相談の現場を支える消費生活相談員に対しては、処遇の改善に向けた取組を進めています。具体的には、2014年には消費者安全法において、消費生活相談員の職が法定され、消費生活相談員の専門性の確保とその社会的地位を確立しました。他方、消費生活相談員の報酬額をみると、消費生活相談員の処遇は徐々に改善されていることがうかがえるものの、その水準は必ずしも高いとはいえない状況にあります(図表I-2-4-8)。

また、消費生活相談員の高齢化が進んでいるとの調査結果(注72)もあり、今後、消費生活相談員の処遇について、安定的かつ専門性に見合う水準を確保することにより、より魅力ある職として次世代の担い手も確保していくことも課題となっています。

また、消費者庁では、2010年1月から、消費生活センターの存在や連絡先を知らない消費者の方に、近くの消費生活センター等を案内する共通の電話番号として、「消費者ホットライン」の運用を開始しました。2015年7月には、困った消費者がより便利に利用できるよう、局番なしの3桁の番号(「188(いやや!)」)での案内を開始しました。3桁化以降、消費者ホットラインの入電件数は、2倍以上に増加しました。しかしながら、消費者庁「消費者意識基本調査」(2018年度)で「番号『188』」の認知度を聞いたところ、全体では9.2%にとどまり、年齢層別にみると20歳代が最も低く、高齢になるにつれて高くなっています(図表I-2-4-9)。「188(いやや!)」の認知度向上のため、2018年7月には、イメージキャラクター「イヤヤン」を発表しました。それ以降は、イヤヤンを活用して、SNSを通じたデジタルコンテンツの配信を行うなど、若者に向けた周知・啓発にも力を入れていますが、全体の認知度は未だ低いため、今後は消費者の特性に応じて、あらゆる世代への周知を行うことが求められています。

内閣府の「成年年齢の引下げに関する世論調査」によると、消費者被害に遭うかもしれないという不安を感じている若者は60%を超えています(図表I-2-4-10)。こうした状況からも、相談窓口の認知度が特に低い若年層に対しては、SNSの活用や動画投稿サイト等を利用するなど訴求対象となる消費者に適した手法によって周知活動を進めていく必要があります。

収集した情報の有効活用と消費者等への発信力の強化

消費者被害の発生・拡大を防止するためには、消費者事故や消費者トラブルに関する情報を消費者に分かりやすく伝えることが重要です。消費者事故等に関する情報を集約、一元化したことにより、消費者庁に多数の情報が寄せられるようになり、事故情報データバンクやリコール情報サイト等を通じて一般にも提供しているほか、調査分析や原因究明等を行った上で、消費者に対する注意喚起や情報提供等を実施しています。

また、最近では、テキストマイニング等の手法を活用し、消費者トラブルに関連すると思われるSNS等の文字列情報を把握する取組を試行的に実施しています。

そうした取組の成果を活用し、積極的な情報発信を進めているものの、消費者にとって有益で分かりやすい情報をよりタイムリーに届けるためには、収集した情報をより有効に活用するための工夫(調査分析や原因究明を行うための専門性の向上等)を続け、各府省庁等と連携の上で、政府の政策課題に密接に関連する情報提供を適切に行うことが重要です。また、消費者が情報に触れる機会を増やすため、例えば、2018年度に頻発した自然災害の発生後における情報提供・注意喚起の取組の経験等をいかし、収集する情報に優先順位を付け、十分な分析を行った上で、多様な発信手法の活用等を通じた発信力の強化を図ることや、制度所管省庁等との連携等を通じ、啓発資料の内容をより分かりやすいものにすること等、発信力の強化やより効果的な周知広報の在り方を検討することが必要です。

消費者行政における「司令塔機能」の更なる強化

消費者に消費者行政のメリットを十分実感してもらうためには、消費者被害の実態を踏まえて、消費者被害の未然防止、拡大防止、被害救済等に結び付ける仕組みを十分に機能させることが必要です。このためには、一元的に集約した情報を有効に活用して、タイムリーに注意喚起等を行うとともに、法執行等必要な対応を迅速・適切に行う必要があります。

このための手段として、消費者庁は消費者に身近な法令を所管するとともに、消費者安全法に定められた権限として、関係府省庁に対する措置要求と「すき間事案」に対する措置権限を保持しています。

消費者被害の拡大防止のためには、法令違反行為に対し法と証拠に基づき所管法令を厳正かつ適切に執行をすることが重要であり、法執行力の一層の強化が課題です。消費者庁は、これまでも、全国的な広がりのある重大な事案を中心に法執行を行ってきていますが、更なる情報分析力や調査能力の向上に向けて、各種研修等による内部職員の専門性の向上に加え、外部専門人材の活用を含め執行体制の一層の強化が必要です。

また、事案の規模、地域等に応じて、例えば地方公共団体と共同調査を行うなど、関係行政機関との連携を一層進めることにより、効率的な法執行に努めることが重要です。

消費者被害が起こった際に、既存の法律による措置に関する事務を所掌する大臣による速やかな実施を担保するための消費者安全法に基づく措置要求(注73)については、これまで発動した実績はありません。もちろん、安易に発動することは適切ではなく、措置要求を行うべき事案、状況であるのかについて十分な見極めが必要ですが、必要な場面においては、ためらうことなく権限を発動する姿勢が求められます。また、措置要求権限を背景として関係行政機関との連携を図ることにより、速やかな対応を促すことも有効です。

さらに、「すき間事案」についての事業者への勧告(注74)はこれまでに財産事案の2件の実績にとどまりますが、収集した情報を有効に活用し、必要な事案については積極的に対応していくことが重要といえます。

府省庁横断的な消費者問題等に迅速かつ効果的に対応するためには、関係府省庁間での連携・協力が不可欠です。消費者問題や物価問題等への取組において、各府省庁間の連携・協力体制の構築や政府全体としての対処方針の策定等において、総合調整権限を有効に活用し、消費者庁がより主導的な役割を果たしていくことが必要です。

また、消費者基本計画は、各府省庁横断的な消費者政策を強力に推進する上で極めて有効な手段です。消費者基本計画を起点とするPDCAサイクルをより実質的に機能させることにより、消費者政策を一体的かつ透明性のある形で推進することができます。PDCAサイクルの実効性を高めるためには、KPIの設定方法等必要な改善に取り組むことが重要ですが、その上で、社会経済情勢の変化を踏まえ、基本理念や基本的施策、政策の推進主体についても積極的に見直していくことが、消費者政策の発展につながると考えられます。

このように、消費者庁は、消費者行政の司令塔として、事案や問題の性質に応じて、与えられた手段を最大限に活用して、消費者政策を推進していくことが求められます。

所管法令・制度の拡充と実効性の向上

消費者に消費者行政のメリットを十分実感してもらうためには、特に消費者被害の未然防止、拡大防止、被害救済等のための府省庁横断的な法令・制度を十分に整備し、実効性を向上させることが重要です。

消費者庁及び消費者委員会の設置後、新法の制定や法改正等により、消費者法制の体系的整備は大きく進展しました。例えば、2014年11月の景品表示法改正(注75)により2016年4月から導入(施行)された課徴金納付命令制度(注76)については、これまでに、合計40件の課徴金納付命令が行われ、合計13億8461万円の課徴金が課されています(2019年3月末時点)(図表I-2-4-11)。

また、2017年12月から施行された改正特定商取引法に基づき、従来の違反事業者に対する業務停止命令に加え、違反事業者の役員等に対し新たに法人を設立して停止を命じられた業務を継続すること等を禁止する業務禁止命令の制度が整備され、これまでに国・都道府県合わせて45件の業務禁止命令が課されています(2019年3月末時点)。

他方、例えば、2013年に成立し、2016年10月に施行された消費者裁判手続特例法については、施行後2年以上が経過しましたが、同法に基づく提訴は3件(3事業者)となっています(2019年4月末時点)。もっとも、裁判外では、特定適格消費者団体が消費者のために事業者と交渉した結果、事業者から消費者に返金されることとなった例もみられることから、同法の成果が上がりつつあるといえます。引き続き、特定適格消費者団体及び適格消費者団体との連携を促進していくなど、同法が有効に活用されるような環境整備に努める必要があります。

また、公益通報者保護制度の実効性の向上を図ることも重要です。同制度は、要件を満たす通報を行った通報者を解雇その他の不利益取扱いから保護するものであり、事業者による不祥事が後を絶たない中、各事業者における不祥事の未然防止、早期是正等の自浄作用の発揮による法令遵守の確保や、通報を端緒情報とする行政機関の法執行力の強化等に大きな役割を果たします(図表I-2-4-12)。そのため、同制度は、消費者の安全・安心の確保という消費者政策の目的を、事業者のコンプライアンス向上を通じて迅速かつ効率的に達成するためにも非常に重要であるといえます。

これまでに、同制度の実効性向上、普及・浸透に向けて、民間事業者向け及び国の行政機関向けガイドラインの改正、地方公共団体向けガイドラインの策定、これらの周知と共に、内部通報制度に関する認証制度を創設し、2019年2月からその運用を開始したところです。また、公益通報者保護法の在り方について、消費者委員会の答申(注77)を受け、法改正も視野に更なる検討を行っています。今後、更に公益通報者保護制度の実効性向上に向けた取組を着実に行うことが必要です(図表I-2-4-13)。

消費者教育等の更なる促進、消費者とのコミュニケーションの強化

消費者教育や消費者への啓発を推進することは、消費者被害の防止を図り、消費者の自立を支援する上で重要な取組です。他方、これまで整備されてきた制度や仕組みが、消費者によって活用され、社会の中で実効性を発揮するためには、消費者による消費者政策の現状や制度についての理解が欠かせません。消費者一人一人にとっても、安全・安心で豊かな消費社会の形成のためにも、消費者教育や啓発は極めて重要です。

特に若年者への消費者教育については、2022年4月からの成年年齢の引下げを見据え、その重要性が改めて認識されています。消費者庁では、2016年度に消費者教育推進会議に設置された「若年者の消費者教育に関するワーキング・チーム」の意見を聴きつつ、関係省庁と連携し、高校生向けの消費者教育教材「社会への扉」を作成しました。2018年2月に関係省庁で連携して決定した「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム(注78)」では、2018年度から2020年度の3年間を集中強化期間と位置付け、「社会への扉」を活用した授業が全ての都道府県で行われることや、全ての都道府県で消費者教育コーディネーターが育成・配置されること等を目指し、働き掛けや支援の取組を進めています(図表I-2-4-14)。

このように、消費者政策の目的を効果的に実現するためには、消費者教育やその他の周知・広報のルートを有効活用して、消費者とのコミュニケーションを広く、深くしていくことが必要であり、消費者庁としても、ウェブサイトやSNS等、様々なコミュニケーションツールを駆使して積極的に情報発信を行っています(図表I-2-4-15)。

他方、消費者とのコミュニケーションをより深めていくためには、情報発信だけでなく、消費者のニーズを吸い上げることも必要となります。効果的な消費者政策を実施するためには、多様な消費者の意見や消費者の真のニーズを的確に把握して、消費者政策の企画立案に反映することが必要です。従来からの消費者団体等を通じた意見集約のルートに加えて、消費者問題や関連分野に関心を有する新たな団体との交流やSNS等を通じた情報収集、消費者に対する意識調査の有効活用等、様々な手法を用いて、消費者の生の声を把握するための工夫を続けることが必要です。

関係団体との連携・協力の強化

社会経済情勢が変化し、消費者問題が多様化・複雑化する中で、消費者政策が扱うべき課題は今後ますます多くなっていくことが予想されます。一方で、消費者行政に関わる人的・財政的資源は限られているのが現状です。このような制約の中で消費者政策の目的を効率的に達成するためには、消費者団体や事業者団体等の関係団体と連携していくことが必要です。

消費者団体は消費者の声を集約して発信し、消費者に対してきめ細やかな啓発活動を行うなど、行政機関では手の届かない部分で消費者の利益に資する活動を行っています。今後も、より多くの消費者が恩恵を受けられるよう、消費者団体と緊密に連携し、支援していく必要があります。

また、新しい課題が次々と発生する時代において、既存の消費者団体等との連携だけでなく、多様な分野において活動している主要な団体等と積極的に連携していくことも重要といえます。

さらに、消費者志向経営の推進は、消費者政策の目的の達成に向けた事業者及び事業者団体の自主的な取組や協力を引き出す上で非常に有効な方策であり、今後、更なる普及・促進を図ることが必要です。しかし、2019年4月末時点における消費者志向自主宣言事業者数は102社にとどまっており、参加事業者の業種、規模、地域の属性にも偏りが見られるのが現状です。

このように、参加事業者数が伸び悩んでいることの背景の一つとして、事業者による消費者志向経営への取組に対する消費者の関心が現時点では必ずしも高いとはいえない状況にあることが考えられます。消費者庁「消費者意識基本調査」(2018年度)の結果によると、事業者による消費者志向経営の取組に関心があると回答した消費者の割合(「関心がある」と「ある程度関心がある」の合計)は41.5%と、関心がないと回答した割合(「関心がない」と「あまり関心がない」の合計)の57.8%を下回っています(注79)(図表I-2-4-16)。このように消費者の関心が必ずしも高くないことが、事業者が消費者志向経営に積極的に取り組むためのインセンティブが高まらない要因になっていると考えられます。

今後、推進組織の活動等を通じて事業者による優れた取組をより積極的に周知・広報すると共に、エシカル消費の取組との連携を図ること等により、消費者志向経営に対する消費者の関心や支持を向上させ、事業者による消費者志向経営への取組を、業種、規模、地域を超えて普及・促進していくことが求められます。

COLUMN9
消費者志向経営に関する消費者の意識

消費者行政新未来創造オフィスの成果の全国展開

2017年7月に開設した新未来創造オフィスでは、徳島県等の協力の下、各種プロジェクトに取り組んでいます。全国展開を見据えたモデルプロジェクトとしては、若年者向け消費者教育や高齢者等の見守りネットワークの構築等、基礎研究プロジェクトとしては、若者の消費者被害の心理的要因からの分析、障がい者の消費行動と消費者トラブルに関する調査等を実施し、成果を上げてきました(図表I-2-4-17)。新未来創造オフィスでの取組で得られた成果や検証結果等を踏まえて、全国展開へつなげ、全国の消費者のためになるよう役立てていくことが必要です。また、基礎研究プロジェクトについても、消費者の実態を踏まえ、より効果的な政策を立案していくために、得られた成果を役立てていくことが必要です。

消費者庁及び消費者委員会の機能向上、真価の発揮

これまで述べてきたように、消費者政策をより効果的なものにするための課題は山積していますが、消費者庁及び消費者委員会は設置当時の理念を踏まえつつ、これらの課題に着実に取り組んでいくことが求められます。

まず何よりも、消費者行政一元化によるシナジー効果を最大限に発揮して、組織体制の効率的な運用を行うとともに、行政組織の肥大化を回避することに留意しつつ、真に必要な組織体制の拡充を行うことが必要です。そのためには、少ない人員で最大限の効果を発揮する「機動的に活動できる賢い組織」であることを目指し、多様なバックグラウンドを有する職員や、関係府省庁、民間の専門家の力を結集して、消費者問題への対応における高い専門性を発揮していかなければなりません。

また、小さな組織で幅広い消費者問題に対応するためには、関係機関との効果的な連携・協力関係を構築することが不可欠です。国民生活センター・全国の消費生活センター等による消費生活相談窓口のネットワーク、地方公共団体、関係府省庁、消費者・事業者による団体等、あらゆる関係機関と効果的に連携・協力して、山積する諸課題に立ち向かうことが、今後の消費者行政において必要となります。

最後に、消費者庁及び消費者委員会の真価を発揮することが重要です。消費者庁は「消費者を主役とする政府の舵取り役」としての機能を担うのに対して、消費者委員会は政府の消費者行政全般に対する監視役としての機能を果たします。消費者庁を始めとする政府の消費者政策に消費者の意見を反映し、透明性を確保するためには、消費者委員会によるチェック機能が重要です。他方、幅広い消費者問題に対して各府省庁横断的に取り組むためには、消費者庁と消費者委員会による連携した取組が有効といえます。チェック機能による適度な緊張関係の中で両組織が適切に連携することによってこそ、消費者庁及び消費者委員会の真価が発揮されると考えられます。


  • 注72:公益社団法人全国消費生活相談員協会「会員実態調査」(2018年)
  • 注73:消費者安全法第39条第1項に基づくもの。
  • 注74:消費者安全法第40条第1項及び同条第4項に基づくもの。
  • 注75:不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(平成26年法律第118号)
  • 注76:違反事業者に経済的不利益を課すことにより、事業者が不当表示を行う動機を失わせ、不当表示規制の抑止力を高めることによって不当表示を防止することを目的とする制度。
  • 注77:2018年12月27日付けで、消費者委員会から内閣総理大臣宛てに「公益通報者保護法の規律の在り方や行政の果たすべき役割等に係る方策についての答申」がなされた。
  • 注78:関係省庁(消費者庁、文部科学省、法務省、金融庁)で構成する「若年者への消費者教育の推進に関する4省庁関係局長連絡会議」において決定した(2018年2月)。
  • 注79:特に若年層の関心が低くなっており、年齢層が高くなるほど関心があるとの回答が増える傾向にある。

担当:参事官(調査研究・国際担当)