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第1部 第2章 第2節 (6)消費活動のみならず産業活動を活性化

第1部 【特集】消費者庁及び消費者委員会設立10年~消費者政策の進化と今後の展望~

第2章 消費者庁及び消費者委員会の10年

第2節 消費者庁のこれまでの取組

(6)消費活動のみならず産業活動を活性化

消費者政策と経済の好循環の関係

消費者の視点からの行政の展開は、消費者に安全・安心を提供すると同時に、ルールの透明性や行政行為の予見可能性を高めることにより、産業界も安心して新商品や新サービスを提供できるようになるなど、産業活動を活性化させるものです。消費者被害・トラブル額の推計は2018年において約6.1兆円と依然として高い水準にありますが(第2部第1章第5節参照。)、一元的な消費者行政の仕組みの下で消費者政策を適切に推進し、消費者の安全・安心が確保されれば、名目国内総生産(GDP)の5割以上を構成する個人消費の拡大につながることが期待されます(第1部第1章第1節参照。)。また、消費者庁の発足後に進められた消費者行政の一元化、府省庁横断的な制度整備、法執行に関する事例の蓄積等は、ルールの透明性や行政行為の予見可能性の向上に資すると考えられるほか、適切な法執行によって悪質な事業者が市場から排除されることは、多くの健全な事業者にとっても大きなメリットがあると考えられます。

このように、消費者政策を適切に推進することは、消費者と事業者の双方にとって利益となるものであり、市場の健全化や経済の好循環につながると考えられます(図表I-2-2-36)。

消費者志向経営(愛称:サステナブル経営)の推進

消費者政策の目標を実現するための手段として、規制や法執行等に加えて、消費者、事業者、行政等関係者間の連携・協働を促進することは重要です。それぞれが社会における責任を自覚し、コミュニケーションを深化することによって、より効果的な取組となることが期待されます。

多くの事業者・事業者団体では、消費者の利益に資する活動に積極的に取り組んでおり、消費者庁としては、これらの活動を支援・促進する取組の一環として、事業者団体との意見交換や各種の連携・協力を実施しています。

また、2016年から、事業者団体、消費者団体、行政機関で構成する推進組織(注66)(プラットフォーム)を設けて、消費者志向の理念に基づく事業者の取組等を、消費者や社会に広く周知していく取組である「消費者志向経営(注67)」(愛称:サステナブル経営)を推進しています(図表I-2-2-37)。

具体的には、事業者の取組を「見える化」し、消費者等に知ってもらうため、「消費者志向自主宣言(注68)・フォローアップ活動」を推進しています。2018年には、ロゴマークの作成や優れた取組事例に対する表彰(図表I-2-2-38)、シンポジウムの開催等、今後の更なる普及と取組の多様化のための取組を積極的に実施しています。

消費者志向経営の取組により、事業者としては、消費者からの信頼が高まるとともに、内部のコンプライアンス意識の向上等により、中長期的な企業価値の向上が期待されます。消費者としては、商品・サービスの品質が確保され、またニーズを捉えた商品・サービスが提供されることにより、自主的・合理的な選択をすることが可能になり、結果として消費の満足度が向上することが期待されます。これらが互いに作用し合いながら進んでいくことによって、消費の拡大、企業価値の向上を通じ、経済の好循環につながると考えられます。

図表1-2-2-36消費者政策と経済の好循環

図表1-2-2-37消費者志向経営(愛称:サステナブル経営)について

図表1-2-2-38消費者志向経営優良事例表彰について


  • 注66:「消費者志向経営推進組織」。構成員は、事業者団体から、一般社団法人日本経済団体連合会、公益社団法人経済同友会、公益社団法人消費者関連専門家会議(ACAP)、一般社団法人日本ヒーブ協議会、消費者団体から、一般社団法人全国消費者団体連絡会、公益社団法人全国消費生活相談員協会、公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)、行政機関から消費者庁。オブザーバーとして、国民生活センターが参加している。
  • 注67:事業者が、消費者全体の視点に立ち、消費者の権利の確保及び利益の向上を図ることを経営の中心と位置付け、その上で、健全な市場の担い手として、消費者の安全や取引の公正性の確保、消費者に必要な情報の提供等を通じ、消費者の信頼を獲得し、持続可能で望ましい社会の構築に向けて、自らの社会的責任を自覚して事業活動を行う経営をいう。
  • 注68:2019年4月末時点で、102の事業者及び事業者団体が自主宣言をしており、自主宣言事業者については、消費者庁のウェブサイトで公開している。 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/consumer_oriented_management/

担当:参事官(調査研究・国際担当)