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第1部 第2章 第2節 (4)消費者市民社会の実現に向けた取組

第1部 【特集】消費者庁及び消費者委員会設立10年~消費者政策の進化と今後の展望~

第2章 消費者庁及び消費者委員会の10年

第2節 消費者庁のこれまでの取組

(4)消費者市民社会の実現に向けた取組

消費者教育の推進

消費者基本法の成立により、消費者政策の基本理念は、従来の「保護」から消費者の「自立」支援に大きく転換されました。そして、消費者の自立を支援するためには消費者教育が重要であり、消費者教育の機会が提供されることが消費者の権利であることを踏まえ、2012年に議員立法により、消費者教育推進法が成立しました。

同法では、法律上初めて「消費者市民社会」が定義(注57)されるとともに、消費者の自立のためには、まずは消費者被害に遭わないよう、消費生活に関する実践的な能力が育まれなければならず、その上で、消費者が自らの行動が社会に与える影響を自覚し、主体的に消費者市民社会の形成に参画することができるようになることが重要であるとの基本理念を示しています。また、基本理念を踏まえた消費者教育の推進に関する施策の策定・実施に関する国、地方公共団体の責務を定めるとともに、消費者団体、事業者・事業者団体の努力義務について規定されました。

同法に基づき2013年6月に「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(以下「基本方針」という。)が閣議決定され、2018年には基本方針の決定から5年が経過することを踏まえ、消費生活を取り巻く環境の変化と消費者教育の推進に関する施策の実施状況を踏まえた検討を行った上で変更の閣議決定がなされました(図表I-2-2-29)。また、同法に基づき2013年3月に設置された消費者教育推進会議(以下「推進会議」という。)は、1消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して、委員相互の情報交換及び調整を行うこと、2基本方針に関し、意見を述べることが役割とされています。

基本方針や推進会議での議論を踏まえて、消費者庁では、消費者の生涯を通じた消費者教育の体系化(注58)や、文部科学省を始めとする関係府省庁や地方公共団体との連携・協力等の取組を進めています。特に、若年者への消費者教育の機会の充実のため、文部科学省を始めとする関係府省庁と連携しつつ、高校生向け消費者教育教材「社会への扉」を作成し、2018年には、民法の成年年齢引下げを見据え、2020年度までの3年間を集中強化期間とするアクションプログラムを決定(注59)したところです。

エシカル消費の推進

先進国では概して家計が支出する消費額が経済全体(GDP)の5割を超えているなど、消費者の行動は社会経済に大きな影響を与えます。消費者が自らの行動の影響力に自覚を持ち、日常の消費生活において、環境や労働問題等の人権問題、社会、地域等の持続可能性を配慮した消費行動、すなわち「エシカル消費(注60)」を実践することは、持続可能な社会の実現に欠かせません。

消費者庁では、2015年から「倫理的消費」調査研究会を開催し、エシカル消費(倫理的消費)の内容やその必要性、また、国民の理解を広め、日常生活での浸透を深めるための方策等について検討を行い、2017年に同研究会の取りまとめを公表しました(図表I-2-2-30)。

広くエシカル消費についての理解を深めるため、地方公共団体による取組を後押しすべく、エシカル消費の普及・啓発シンポジウムとして「エシカル・ラボ」を全国で開催するとともに、先進的な取組の収集・紹介や、啓発リーフレットの作成、多様な主体との協働によるムーブメントづくりの促進等を実施し、広くエシカル消費の普及に努めています。

消費者庁「消費者意識基本調査」(2018年度)で、消費者が日頃の消費生活で行っていることを聞いたところ、社会や環境に配慮した消費行動であるエシカル消費に通じる行動を心掛け、より良い社会への貢献を意識している人が多いことが分かります。一方で、「倫理的消費(エシカル消費)を行う」と回答した人の割合は10.2%にとどまっていることから、「エシカル消費という言葉は知らなかったが、環境問題等に配慮した消費を行うことで、社会に貢献したい」と考えている人が多いことがうかがえます(図表I-2-2-31)。

COLUMN7
パートナーシップで進める「エシカル消費」の普及~消費者の日々の暮らしが世界の未来を変える~

消費者等に対する周知・啓発、情報提供

消費者の安全・安心を確保するとともに、自主的かつ合理的な行動をとることを支援するためには、消費生活を送る上で必要な知識や情報が消費者それぞれの特性に応じて分かりやすく届けられることが重要です。

消費者庁では、国民生活センター等の関係機関と連携した上で、消費者を取り巻く社会経済情勢や消費生活相談の傾向等を踏まえつつ、消費生活に関する知識の普及や情報提供等に取り組んでいます。

例えば、資源の有効活用や環境負荷への配慮の観点から、食べられるのに廃棄される食品(食品ロス)を減らすことは重要です。食品ロス削減に向けて、消費者庁を始めとした関係省庁(注61)は、2012年度から毎年度、「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」を開催し、各省庁の取組の実施状況について情報共有を行っており、関係省庁が連携し、食品ロス削減に向けた国民運動「NO-FOODLOSS PROJECT」を展開しています(図表I-2-2-32)。

また、日常生活において、消費者が自らの食生活の状況に応じた適切な食品の選択ができるようにするためには、栄養成分表示等の活用によるバランスの取れた食生活の普及啓発や、栄養機能食品(注62)、機能性表示食品(注63)、特定保健用食品(注64)の三つから成る保健機能食品の適切な利用に関する消費者の理解促進が重要です。

消費者庁では、栄養成分表示を食生活の参考に活用する消費者を増やしていくために、事業者への栄養成分表示制度の普及啓発と共に、高齢者、中高年、若年女性向けといった消費者の特性に応じた消費者向けリーフレットを作成するなど消費者への活用を促す取組を進めています(図表I-2-2-33)。

さらに、2011年3月の東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故後に、被災県産の農林水産物を買い控える消費行動がみられたことに対応して、食品中の放射性物質に関するリスクコミュニケーションの実施や、消費者意識の実態等の調査を行っています(第1部第1章第2節、第1部第2章第2節(3)参照。)。

これらの普及啓発等に加え、消費者基本法及び消費者安全法の規定(注65)に基づき、2013年から、毎年、「消費者政策の実施の状況」、「消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告」等を「消費者白書」として取りまとめ、国会に報告しています。消費者白書では、これらに加え、毎年その時々話題になっている事柄(特集テーマ)や消費者の行動・意識、消費者問題の現状についても調査・分析し、一般の消費者にも分かりやすい形で解説しています。

COLUMN8
食品ロスの削減の推進に関する法律について


  • 注57:消費者教育推進法第2条第2項では、消費者市民社会を「消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会」と定義している。
  • 注58:消費者庁では、「消費者教育ポータルサイト」(https://www.kportal.caa.go.jp/index.php)を通じ、消費者教育の体系イメージマップを始め、消費者教育に関する様々な情報を提供している:。
  • 注59関係省庁(消費者庁、文部科学省、法務省、金融庁)で構成する「若年者への消費者教育の推進に関する4省庁関係局長連絡会議」において、「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」を決定した。
  • 注60:「消費者基本計画」では、「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会・環境に配慮した消費行動」と定義されている。
  • 注61:消費者庁、文部科学省、農林水産省、経済産業省及び環境省
  • 注62:栄養機能食品は、食生活において特定の栄養成分の補給を目的として摂取する者に対し、当該栄養成分の機能を表示するもので、20種類の栄養成分の含有量や表示する機能について一定のルールが定められており、それに従った表示を行う自己認証制度となっている(2019年3月末時点)。
  • 注63:機能性表示食品は、疾病に罹患していない者に対して、健康の維持及び増進に資する特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く。)が期待できる旨を、事業者の責任で科学的根拠に基づいて表示する食品であり、販売日の60日前までに必要な事項を消費者庁長官に届け出たもの。
  • 注64:特定保健用食品は、体の生理学的機能に影響を与える成分を含み、その摂取により、おなかの調子を整える、等の特定の保健の目的が期待できる旨を表示する食品。この表示をするためには、その保健の用途に関する科学的根拠が明らかであるかどうか等について、国による個別の審査を受けて、消費者庁長官の許可を得る必要がある。
  • 注65:消費者基本法第10条の2及び消費者安全法第13条第4項

担当:参事官(調査研究・国際担当)