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第1部 第2章 第2節 (3)府省庁横断的な消費者政策の一体的推進

第1部 【特集】消費者庁及び消費者委員会設立10年~消費者政策の進化と今後の展望~

第2章 消費者庁及び消費者委員会の10年

第2節 消費者庁のこれまでの取組

(3)府省庁横断的な消費者政策の一体的推進

消費者庁は、縦割り行政から脱却すべく、消費者行政の「司令塔」としての役割を果たすために設置されました。以下では、消費者庁が消費者行政の「司令塔」としてどのような役割が求められてきたかについて、1消費者被害に対して、すき間なく迅速に対応する機能と、2府省庁横断的に消費者政策を推進する調整機能に分けて解説するとともに、3政府の消費者政策の計画的な推進(消費者基本計画等)について概観します(注36)

1消費者被害に対して、すき間なく迅速に対応する機能

消費者事故等に関する情報の一元的集約・分析・注意喚起等

従来の問題点を受け、消費者被害に対してすき間なく、迅速に対応するため、消費者事故等の情報を消費者庁に一元的に集約・分析した上で、消費者への注意喚起、関係行政機関(各大臣)への措置要求、事業者に対しての勧告等をする仕組みが整備されました(図表I-2-2-16)。

2012年の消費者安全法改正(注37)において、財産に関する事態(以下「財産事案」という。)にも勧告を行う対象を拡大し、2013年には、2件の財産事案で事業者に対する勧告を行いました(図表I-2-2-17)。

このような仕組みの下、2018年度末までに、消費者安全法の規定に基づく注意喚起を累計74件(生命・身体事案3件、財産事案71件)実施しています。

消費者庁では、2010年には、消費者安全法第6条の規定に基づき、「消費者安全の確保に関する基本的な方針」(2010年内閣総理大臣決定)を作成するなど、様々な取組を推進してきました。2010年には、消費者事故について分析・原因究明をするための助言や指導を行う「事故情報分析タスクフォース(注38)」を設置し、同タスクフォースは2012年に設置された消費者安全調査委員会に引き継がれました。2010年には、国民生活センターと連携し、関係機関の協力を得て生命・身体に関する事故情報等を幅広く集約して提供する「事故情報データバンク」の運用を開始し、また同年から、消費者からの苦情にはなりにくい消費者の不注意や誤った使い方による事故の情報を医療機関から収集する「医療機関ネットワーク事業」も開始しています(第2部第1章第2節参照。)。

さらに、欠陥等がある製品について、事業者がリコール措置を行う場合がありますが、リコール情報を適切に消費者に届けることは、同種の消費者被害を繰り返さないために重要です。消費者庁では、2012年から、各府省に多岐にわたって存在しているリコールに関する情報を一元化して消費者に提供する「消費者庁リコール情報サイト(注39)」の運用を開始しました。

加えて、消費生活用製品安全法に基づく重大製品事故の報告・公表制度については、消費者庁の設置により2009年から、重大製品事故の受理及び公表業務(事業者名公表も含む。)を消費者庁が行うこととなり、これまでに累計9,240件の事故を公表しています(2018年度末時点)。

事故の原因究明(消費者安全調査委員会の設置・取組)

2012年に、消費者事故からの教訓を得て、事故の予防・再発防止のための知見を得ることを目的に消費者安全調査委員会(以下「消費者事故調」という。)が設置されました(注40)。消費者事故調は、事故原因について、機械の不具合の有無、法令違反といった点だけでなく、消費者によって実際に使われる環境や人間の行動特性にも目を向け、幅広い視点から、科学的かつ客観的な調査を行っています。

また、消費者事故調による調査の対象となり得る事故等は、幅広い分野の生命身体事故等に及ぶため、「公共性」、「被害の程度」、「単一事故の規模」、「多発性」、「消費者による回避可能性」及び「要配慮者への集中」の要素を総合的に勘案して選定し、事故等原因調査等を実施しています(図表I-2-2-18)。

消費者事故調発足以来、16件の調査等を開始し、うち14件の事案について最終報告を行うとともに、関係行政機関の長に対して意見を述べています(2019年3月末時点)(図表I-2-2-19)。意見については、フォローアップを行い、事故の発生状況はどのようになっているか、再発防止の取組がなされているかについて確認することとしています。

引き続き、消費者安全の考え方や継続的な安全管理の取組の重要性が広く社会で共有され、実践されるよう、調査等によって得られた知見を適切に社会に提供するよう努めていきます。

COLUMN6
住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等報告書の公表

一元的に集約・分析された情報に基づく法執行等

消費者庁は、消費者行政の司令塔として、消費者利益の擁護及び増進に関わる主要な法律(消費者に身近な法律)を所管しています。その上で、消費者庁が法執行の権限を有する法令(景品表示法、特定商取引法等)については、消費者庁が中心となって法執行を行うこととなりました(図表I-2-2-20)。

例えば、取引の公正を確保し消費者被害を防止するため、消費者庁は、特定商取引法や預託法を所管しています。これらの法律・関連政省令は、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化や悪質事業者の手口の一層の巧妙化等に対応するため、累次にわたり改正されています。また消費者庁は、全国の地方経済産業局等と一丸となって、これらの所管法令を厳正かつ適切に執行しており、特に、全国的な広がりがあり、甚大な消費者被害のおそれのある重大事案に対して重点的に取り組んでいます。消費者庁が設立された後の特定商取引法及び預託法に基づく国(消費者庁及び地方経済産業局)による行政処分の件数は、合計381件となっており(2019年3月末時点)、特に近年は、売上高(注41)10億円以上の大規模事業者等に対する行政処分件数が増加傾向にあります(2016年度は21件、2017年度は15件、2018年度は20件)。

また、景品表示法は、消費者にその商品・サービスについて実際のもの又は競争事業者のものより著しく優良又は有利であると誤認される表示等を禁止等しています。景品表示法に違反する行為があれば、事業者に対して、その行為の取りやめ、再発防止策の実施等を命令する行政処分等を行っており、消費者庁では、2009年度から2018年度までに、景品表示法に基づく措置命令を302件、課徴金納付命令を40件行いました。

以上のように、消費者庁は、事案の性質に応じて地方公共団体等との連携や役割分担の下に、所管法令を適切に執行しています(図表I-2-2-21)。

一方、消費者庁以外の府省庁が所管する分野については、それぞれの分野の所管府省庁が法執行を行いますが、各府省庁が迅速に対応しない場合には、消費者安全法の規定に基づき措置要求等を検討します。いわゆる「すき間事案」については、同じく消費者安全法の規定に基づき消費者庁が法執行をすることで、網羅的かつ効率的に対応することができるようになりました。

このような仕組みを整備することにより、消費者庁が、一元的に収集された情報を基に、事案の性質に応じ適切な手段を選択し、すき間のない迅速な対応をすることが期待できます。

なお、消費者安全法の規定に基づく法執行の実績については、事業者に対する行政措置が2件であり、各府省庁に対する措置要求は実績がありません(2019年3月末時点)。

2府省庁横断的に消費者政策を推進する調整機能

消費者問題への対応における調整機能の発揮

消費者政策の推進には多くの府省庁が関与しており、関係府省庁一体となった取組が不可欠です。しかし、各府省庁の縦割り的な仕組みが制約となることもあったため、消費者庁には、消費者政策を一元的に推進するための強力な権限を付与して、消費者行政における司令塔機能を十分発揮することが期待されました。このため、消費者庁設置と共に必置化された消費者担当大臣には、関係行政機関の長に対し、勧告することができる権限が与えられました(注42)。また、2016年からは内閣官房・内閣府見直し法(注43)により、消費者問題と食品安全に関する総合調整機能が消費者庁に移管されました。これらにより、重要な消費者事故等が発生し、又は発生するおそれがある場合等には、消費者に対する注意喚起を行うとともに、関係府省庁間の連絡会議等を開催して、政府全体として講ずべき対応を確認・決定するなど、必要な対応を速やかに実施することとなっています。

以下では、消費者庁が府省庁横断的に取り組んだ主な事例を紹介します。

i.食品安全に関する取組

食品は、これに含まれる有害な微生物や化学物質等の危害要因を摂取することによって人の健康に悪影響を及ぼす可能性があることから、2003年に成立した食品安全基本法により、その発生を防止し、又はそのリスクを適切なレベルに低減するための枠組み(リスクアナリシス)が日本の食品安全行政に導入されました。この枠組みに基づき、リスク評価機関である内閣府食品安全委員会と、リスク管理機関である厚生労働省、農林水産省、消費者庁等が連携・協力して、食品安全行政を展開しています。

食品安全に関する緊急事態等においては、「消費者安全の確保に関する関係府省緊急時対応基本要綱」(2012年9月関係閣僚申合せ)で定める手順に基づき、関係府省庁が相互に十分な連絡及び連携を図り、政府一体となって迅速かつ適切に対応し、消費者被害の発生・拡大の防止に努めるとともに、関係行政機関や事業者、医療機関等から寄せられる事故情報については迅速かつ的確に収集・分析を行い、消費者への情報提供等を通じて、生命・身体に係る消費者事故等の発生・拡大を防止することとしています。なお、同要綱及び「冷凍食品への農薬混入事案を受けた今後の対応パッケージ」(2014年3月関係府省庁局長申合せ)を踏まえ、消費者庁では、関係府省と連携し、毎年度1回緊急時対応訓練を実施しています。また、定期的な関係府省庁の相互の十分な連絡及び連携を目的として、食品安全行政に関する関係府省連絡会議(局長級)を毎年度2回開催しています。

また、2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、消費者の食の安全・安心を確保し、食品中の放射性物質に関する理解を広げることを目的として、2011年度から「食品中の放射性物質」に関する情報提供とリスクコミュニケーションの推進に取り組んでおり、関係府省庁、地方公共団体及び各種団体とも連携して、消費者と専門家、生産者、行政担当者等が共に参加する意見交換会を2018年度末までに862回開催しています(図表I-2-2-22)。

ii.子供の事故防止に関する取組

消費者を取り巻く生活環境、消費者の生活スタイルは、時代と共に変化しています。生活スタイルが変わり、昔から使われているものが当時の想定にない使い方をされて事故のリスクが生じることや、消費者のニーズに応えた便利な新製品が、一方で事故の原因となることも考えられます。中でも発達段階にある子供は、身体機能が未熟であるため、事故に遭うと大人よりも危険な状態に陥りやすいという特徴があります。

長年にわたり、14歳以下の子供の死因の上位が不慮の事故となっている状況の中、消費者庁では設置後間もない2009年度から「子どもを事故から守る!プロジェクト」を推進し、子供の事故防止に向けた取組を行っています。

また、子供の事故は多岐にわたり、様々な場面や製品・サービスが関係しています。そこで、事故防止の取組に関係の深い府省庁で協力し、政府全体でより一層の事故防止に向けた取組強化を図るため、2016年度には、「子供の事故防止に関する関係府省庁連絡会議」を設置し、消費者庁が事務局を担っています。関係府省庁(注44)が子供の事故の実態及び子供の事故防止に向けた各種取組等を情報交換し、緊密に連携して、保護者の事故防止意識を高めるための効果的な啓発活動の実施、教育・保育施設等の関係者による取組、子供の事故防止に配慮された安全な製品の普及等の、総合的な取組を推進しています。

さらに、2017年度には、「子どもの事故防止週間」を創設し、共通テーマを掲げて関係府省庁が連携し、集中的に広報を実施して、相乗効果が期待できる啓発活動に取り組んでいます(注45)

iii.架空請求対策パッケージ

2017年度に架空請求に関する消費生活相談の件数が急増したことから、被害の未然防止、拡大防止を図るため、2018年7月に「架空請求対策パッケージ」を消費者政策会議において決定しました。架空請求がなされてから被害が発生するまでのプロセスを示し、関係省庁等が連携して、プロセスごとに対策等を提示し、その推進を図っています。

そのほかにも、様々な分野において関係府省庁と連携した取組を進めています(図表I-2-2-23)。

3政府の消費者政策の計画的な推進

消費者基本計画の策定と検証・評価・監視

消費者政策は、各府省庁の所掌分野にまたがる幅広い問題を対象とすることから、その効果的な推進を図るためには、各府省庁の施策を一元的に取りまとめ、整合性を確保することが必要となります。

「消費者政策の推進に関する基本的な計画」(以下「消費者基本計画」という。)は、消費者基本法第9条の規定に基づき、長期的に講ずべき消費者政策の大綱及び消費者政策の計画的な推進を図るために必要な事項について閣議決定するものです。2005年(注46)、2010年、2015年と3期にわたり策定され、第2期と第3期の消費者基本計画については消費者庁の設置後に取りまとめられました(注47)

現行の第3期消費者基本計画では、2015年度から2019年度までの5年間に取り組むべき施策として、六つの枠組みを示し、その評価指標(KPI)と共に規定しています(図表I-2-2-24)。また、本計画に基づき関係府省庁が講ずる具体的施策について、その実施状況を検証・評価するための工程表を作成し、毎年改定するとともに、計画の検証・評価に際しては、政府の消費者政策を監視する観点から消費者委員会が意見を表明しています。このように、PDCAサイクルを機能させつつ、関係府省庁と連携し、消費者基本計画及び工程表に盛り込まれた施策を着実に推進しています。

分野横断的な法令の整備

各府省庁縦割りの法制度の弊害として、所管ごとの規制の程度にばらつきがあることや、複数の法律による規制の仕組みが複雑であること等が挙げられます。そこで、消費者の目線に立ちつつ、各府省庁の縦割りを超えて、幅広い分野を対象にした横断的な新法等を企画立案することが消費者庁の重要な任務とされました。

これにより、必要に応じて新規立法の企画立案等に取り組むとともに、所管ごとに分断されていた個別の規制を横断的に体系化することによって、他分野より遅れた分野の規制を改善することができ、さらには所管ごとで錯綜していた規制を分かりやすいものとすることが期待されます。

以下では、消費者庁が分野横断的な法令の企画立案を行った主な事例を紹介します。

i.食品表示制度の一元化

食品表示は消費者が食品を購入するとき、食品を適切に選択したり、安全に食べたりするため、食品の内容を正しく理解する上で重要な情報源です。消費者庁設置時には、食品の表示について一般的なルールを定めている法律として、食品衛生法、JAS法、健康増進法の三法があり、三法それぞれに基づき複数の表示基準が定められ、用語の定義が異なるなど、分かりにくいものとなっていました。その結果、消費者にとって分かりにくい制度となっていたばかりか、事業者にとっても、同一の食品に複数の法律が定める基準に従って表示を行わなければならない状況が生じていました。

2013年に食品表示法が成立し、2015年から施行され、食品衛生法、JAS法、健康増進法の三法の食品表示に関する規定が統合されたことにより、食品表示に関する包括的かつ一元的な制度が創設されました。また、同法の制定を受けて、58本あった表示基準についても整理統合が行われました(図表I-2-2-25)。

新たな食品表示制度が導入された後も、制度の更なる充実のため、個別の検討課題等について、検討(注48)、整備を進めています。

例えば、加工食品の原料原産地表示については、有識者による検討を踏まえ、2017年9月に、輸入品を除く全ての加工食品について、重量割合上位1位の原材料の原産地を義務表示の対象とすること等を内容とする食品表示基準の一部を改正する内閣府令が公布されました。

遺伝子組換え食品の表示についても、有識者による検討を経て、2019年4月25日に食品表示基準の一部を改正する内閣府令が公布されました。この改正は、情報が正確に消費者に伝わるようにすることに主眼を置き、任意表示制度について、1分別生産流通管理を実施し、遺伝子組換え農産物の混入を5%以下に抑えているものについて、これまでは「遺伝子組換えでない」との表示が認められていたところ、今後は、「適切に分別生産流通管理している」旨の表示ができることとし、2遺伝子組換え農産物が「不検出」の場合に限り、「遺伝子組換えでない」という表示を認めることとするものです。新たな制度は、2023年4月1日から施行されます。

2018年には、食品衛生法に食品リコール情報の報告制度が導入されたこと等に伴い、食品表示法についても、食品リコール情報の行政機関への届出を義務化する改正法案(注49)が成立しました。

ii.消費者契約法

2001年から施行された消費者契約法は、消費者と事業者との間で、締結される契約を幅広く対象としてその適正化を図る民事ルールを規定しています。社会経済情勢の変化等を踏まえ、法の実効性を確保するため、2016年及び2018年に改正法案が成立し(以下、それぞれ「2016年改正」(注50)、「2018年改正」(注51)という。)、取消しの対象となる不当な勧誘行為や無効となる不当な契約条項の拡充等が行われてきました。具体的には、初めての民事ルール部分の改正となった2016年改正では、社会の高齢化の進展を背景に、いわゆる過量契約に係る取消権の創設等がなされました。また、2018年改正では、若年者を含めた幅広い世代に消費者被害が生じている状況を念頭に、社会生活上の経験不足等を利用する行為(就職セミナー商法、デート商法等)により消費者が困惑した場合における取消権の創設等がなされました。その後は、2018年改正の審議の際の、衆参両院の委員会における附帯決議の趣旨を踏まえ、2019年2月から「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」を開催し、消費者契約法の各種論点について、法制的・法技術的な観点から、検討を行っています。

iii.消費者団体訴訟制度

消費者被害については、同種の被害が多数発生するという特徴があります。消費者被害の未然防止・拡大防止を図るため、適格消費者団体が事業者の不当な行為に対して差止請求権を行使することができる制度について消費者契約法の改正により2007年6月から運用が開始され、2009年からは景品表示法及び特定商取引法に、2015年からは食品表示法に差止請求権を行使できる対象が広がりました。

また、消費者被害については、個々の消費者が受ける被害額が僅少であることから、訴訟により被害の回復を図ることが困難でした。そこで、消費者の財産的被害を集団的に回復するため、消費者裁判手続特例法が制定され、2016年10月から、特定適格消費者団体が(個々の消費者に代わって)訴訟を通じて集団的な被害の回復を求めることができる制度の運用が開始されました(図表I-2-2-26)。

また、被害回復裁判手続の実効性を強化するため、2017年には、国民生活センター法が改正(注52)され、国民生活センターが特定適格消費者団体に代わって、仮差押えの担保を立てることができるようになりました。

物価対策の推進

消費者庁は、物価に関する基本的な政策の企画立案や推進についても所掌しています。オイルショックのような物価に関する異常事態が発生した際に、国民生活の安定等を図るための法令(注53)を所管するとともに、生活関連物資等の価格調査等を実施しています。

また、政府の規制する料金又は価格である公共料金等の新規設定及び変更について所管省庁が認可等をするに当たっては、事前に消費者庁と協議を行うことになっており、消費者庁は公共料金の決定過程の透明性と料金の適正性の確保に向けて、消費者の立場から検討を行っています。その中でも特に重要な公共料金等として物価問題に関する関係閣僚会議に付議する案件については、消費者庁が検討するに際して消費者委員会の意見を求めることにより、消費者の声が適切に反映されるようになっています(図表I-2-2-27)。

特に、2011年3月に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により原子力発電が停止された際には、火力発電の活用による燃料費の増加を賄うため、電力会社各社は電気料金の値上げ申請を行いました。これを受け消費者庁は、消費者利益の擁護の観点から、消費者委員会に意見を求めた上で、原価の更なる厳格な査定や情報公開等について経済産業省に意見を表明しました。その結果、各電力会社の値上げ幅はそれぞれ申請時に比べ圧縮されました。また、電気料金の値上げ後においても消費者委員会に意見を求めた上でフォローアップを行い、料金の適正化に向けて電力会社への指導を行うよう経済産業省に要請しました。

また、2016年4月から電気、2017年4月から都市ガスについて、それぞれ小売全面自由化が進められています。料金の自由化が進む分野においても引き続き消費者の利益を確保することが重要であり、消費者庁としてもその動向を注視しています。

この一環として、消費者庁は、各送配電事業会社による電力の託送料金(注54)の在り方について調査・審議を行うために消費者委員会へ諮問を行い、消費者委員会からの答申を基に、2016年7月に経済産業省に対して、消費者利益の擁護・増進の観点からの問題点の改善に向けて対応するよう要請しました。

さらに、一般家庭など低圧需要家向け電気の経過措置料金の解除(注55)についても、消費者庁は、消費者委員会の意見等を踏まえた上で、2018年12月に経済産業省に対して、小売電気事業者間における公平・公正な競争を確保するための施策が十分に機能することや、消費者が自主的かつ合理的に選択できる環境が整っていることを確認した上で、電気の経過措置料金の解除をすること等を求める意見を表明しています(図表I-2-2-28)。

なお、2014年4月の消費税率の引上げ(5%から8%)に際しては、2013年8月に「消費税率引上げに伴う公共料金等の改定について」の物価担当官会議申合せを行い、消費税の公共料金等への転嫁についての基本的な考え方を整理しました。本申合せに基づき、重要な公共料金等で料金改定申請がなされたものについては、消費者委員会からの意見聴取や物価問題に関する関係閣僚会議の了承を得た上で、料金改定の認可等を行いました。また、2013年10月に消費者庁に便乗値上げ情報・相談窓口を開設し、消費者・事業者への相談対応を行うとともに、物価モニター調査を活用し、消費税率引上げの前後における生活関連物資等の価格調査等を実施しました。

さらに、2019年10月に予定されている消費税率の引上げ(8%から10%)に向けて、2018年11月に関係省庁等(注56)において「消費税率の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」を取りまとめ、税率引上げ前後における価格設定に関する考え方を明確化しました。


  • 注36:これ以降、「消費者行政の司令塔機能」といった用語を用いる場合には、主にこれらの機能を意味するものとする。
  • 注37:消費者安全法の一部を改正する法律(平成24年法律第77号)
  • 注38:消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案に対する附帯決議(参議院)14を踏まえ設置。
  • 注39:https://www.recall.caa.go.jp/
  • 注40:2012年に消費者安全法の一部を改正する法律が成立し、同年10月1日に消費者庁内に設置。
  • 注41:売上高は、消費者庁において確認することができた直近事業年度のもの。
  • 注42:内閣府設置法(平成11年法律第89号)第12条第2項
  • 注43:内閣の重要政策に関する総合調整等に関する機能の強化のための国家行政組織法等の一部を改正する法律
  • 注44:2018年度末時点で、内閣府、警察庁、消費者庁、総務省消防庁、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、海上保安庁で構成。
  • 注45:2017年度は5月22日から28日まで「外出時の子どもの事故防止」をテーマに、2018年度は5月21日から27日まで「水の事故」と「幼児用座席付自転車の事故」をテーマに、実施した。
  • 注46:第1期消費者基本計画については、内閣府の国民生活局(当時)で取りまとめた。
  • 注47:第4期の消費者基本計画については、多様な有識者の参画を得て、2017年10月から、「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」を開催し、2019年1月8日に検討会での議論の取りまとめを報告(詳細は第1部第3章参照。)。
  • 注48:「食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会」、「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」、「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」、「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」において、それぞれ報告書の取りまとめを行った。
  • 注49:食品表示法の一部を改正する法律(平成30年法律第97号)
  • 注50:消費者契約法の一部を改正する法律(平成28年法律第61号)
  • 注51:消費者契約法の一部を改正する法律(平成30年法律第54号)
  • 注52:独立行政法人国民生活センター法等の一部を改正する法律(平成29年法律第43号)
  • 注53:生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律(昭和48年法律第48号)、国民生活安定緊急措置法(昭和48年法律第121号)、物価統制令(昭和21年勅令第118号)
  • 注54:託送料金とは、小売電気事業者が送配電事業者の送配電設備を利用する際の利用料を指す。消費者が支払う電気料金には託送料金が含まれているが、送配電事業は地域独占であることから、総括原価方式による料金規制が措置されている。
  • 注55:電気の小売全面自由化に際しては、「規制なき独占」に陥ることを防ぐため、低圧需要家向けの小売規制料金について経過措置を講じ、2020年3月末までは、全国全ての地域において、従来と同様の規制料金(経過措置料金)が存続することとなっている。経過措置料金は、2020年3月末をもって原則として撤廃されることになっているが、小売電気事業者間の競争が十分に進展していないなど、「電気の使用者の利益を保護する必要性が特に高いと認められるものとして経済産業大臣が指定する」供給区域については、引き続き経過措置料金が存続することとなる。
  • 注56:内閣官房、公正取引委員会、消費者庁、財務省、経済産業省、中小企業庁

担当:参事官(調査研究・国際担当)