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第1部 第2章 第1節 (2)消費者庁設置以前の消費者行政の問題点

第1部 【特集】消費者庁及び消費者委員会設立10年~消費者政策の進化と今後の展望~

第2章 消費者庁及び消費者委員会の10年

第1節 消費者庁及び消費者委員会の設立

(2)消費者庁設置以前の消費者行政の問題点

明治以来、日本は各府省庁縦割りの仕組みの下、それぞれの領域で事業者の保護育成を通して国民経済の発展を図ってきましたが、この間、「消費者の保護」は、あくまで産業振興の間接的、派生的なテーマとして、縦割り的に行われてきました(注10)

しかし、社会経済情勢の変化に伴い、消費者問題は複数の府省庁にまたがる横断的なものも多くなっており、これまでの縦割り行政では、法規制の横断的な体系化に遅れが生じたほか、どの府省庁も権限を有しないいわゆる「すき間事案」が生じるなど、適切に対応することが困難な状況も発生しました。

具体的には、1受付体制等の不備(窓口不明、受付拒否、たらい回し)、2窓口間の情報共有の不足、3府省庁への連絡体制の不備、4府省庁間の分担・連携体制の不備、5権限の不行使、6権限の不備(すき間等)といったことが問題点として指摘されました(図表I-2-1-2)。

消費者行政の歴史(消費者庁及び消費者委員会の設置以前)

高度経済成長がもたらした、大量生産・大量消費社会の出現と軌を一にするように、消費者問題が社会的課題として顕在化し、政府において消費者問題に対応するための組織整備の必要性が認識されるようになりました。

1965年には、消費者行政を担当する政府の部局として、経済企画庁に「国民生活局」が設置され、さらに消費者政策等を審議するための内閣総理大臣の諮問機関として「国民生活審議会」が設置されました。また、同年、地方公共団体では、消費生活センターの設置が開始されました。この頃、各省庁においても、消費者行政を担当する組織の設置が進みました。

1968年に消費者保護基本法が制定され、日本の消費者政策の基本理念が定められました。同法では、地方公共団体の責務が規定されたほか、1969年の地方自治法改正で「消費者保護」が地方の事務として規定され(注11)、各地方公共団体において消費者行政担当部局が設置されました。

1970年には、消費者問題に関する情報提供や苦情相談対応、商品テスト、教育研修を担う機関として「国民生活センター(注12)」が設立され、地方公共団体においても消費生活センターの設立が続き、1973年には全都道府県に消費生活センターが設置されました。

2004年には、消費者保護基本法が改正され、消費者基本法(注13)として公布・施行されたほか、2005年には、同法に基づき、消費者政策の計画的な推進を図るため、2005年度から2009年度までの5年間を対象とする消費者基本計画(第1期)が定められ、その後も5年ごとに改定されています。

図表1-2-1-2消費者庁設置までの消費者行政の問題点と対応


  • 注10:具体的には、消費者保護に係る事務を各省庁が所管する業ないし物資に応じて配分した上で、各省庁設置法の所掌事務に「所掌事務に係る一般消費者の保護に関すること」といった規定を追加することにより対応していた。
  • 注11:2000年の地方自治法の大改正で、他の事務と横並びで「消費者の保護」という文字は明示されなくなったものの、引き続き「自治事務」として位置付けられている。
  • 注12:1970年に特殊法人として設立され、2003年に独立行政法人に移行した。
  • 注13:消費者基本法では、「消費者の権利の尊重」、「消費者の自立の支援」を消費者政策の基本理念とし、また、消費者を「保護」の対象から、経済社会における重要な「主体」と位置付け、さらに、消費者団体を、消費生活の安定及び向上を図るための健全かつ自主的な活動に努める主体として位置付けた。

担当:参事官(調査研究・国際担当)