文字サイズ
標準
メニュー

第1部 第2章 第1節 (1)消費者政策の意義(消費者と消費者問題)

第1部 【特集】消費者庁及び消費者委員会設立10年~消費者政策の進化と今後の展望~

第2章 消費者庁及び消費者委員会の10年

第1節 消費者庁及び消費者委員会の設立

(1)消費者政策の意義

消費者と消費者問題

「消費者」とは、商品を購入したりサービスを利用したりといった「消費」活動をする人のことであり、全ての人は消費者であるといえます(注9)

「消費者」には、次のような特徴があります。

第一に、生身の人間(自然人)であることです。自然人である「消費者」は、生命・身体に深刻な被害を受けると二度と取り返しがつきません。

第二に、事業者との間で保有する情報の質と量に格差があることです。商品・サービスの選択に必要な、品質や価格に関する情報の全てを独力で把握することは困難であり、商品・サービスを製造・販売する事業者よりも情報の質と量で劣っています。

第三に、事業者との間に交渉力の格差があることです。消費者は事業者と比較して交渉力に劣り、巧みなセールストークや強引な売り込みにより、意図せざる消費行動をとってしまうことがあります。

一般的に、これらの特徴を要因として含む問題を「消費者問題」といいます。

同時に、消費者は、社会を構成する重要なステークホルダーとしての性質も有しています。消費者は、日本経済全体(名目国内総生産)の50%以上を占める家計消費の当事者であり、その行動が社会に大きな影響を与える主体としての側面もあります。そのため、消費者は従来の「保護」される脆弱な存在としてだけではなく、自立した責任のある行動を通して、社会的な「役割」を果たしていくことが求められます。

消費者の権利と消費者基本法

消費者基本法第2条では、消費者政策の基本理念として、消費生活における基本的な需要が満たされ、その健全な環境が確保される中で、

・消費者の安全が確保されること

・商品及び役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保されること

・消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供されること

・消費者の意見が消費者政策に反映されること

・消費者に被害が生じた場合には適切かつ迅速に救済されること

が重要であり、これらを消費者の権利として位置付けています。そして、「消費者の権利の尊重」と「消費者の自立支援」を消費者政策の基本と位置付けています(図表I-2-1-1)。

社会経済情勢の変化や新たに発生する様々な課題に対し、国、地方公共団体、事業者、消費者がそれぞれの役割を果たし、消費者が常に安心して消費活動を行うことのできる社会の実現に向けて、様々なルールや規制、仕組みの運用状況について不断に確認していくことが必要です。

図表1-2-1-1消費者基本法の全体構成


  • 注9:法律上、「消費者」概念を初めて明確に定義したのは、消費者契約法であり、「この法律において『消費者』とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。」(消費者契約法第2条第1項)と定義される。

担当:参事官(調査研究・国際担当)