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第2部 第2章 第3節 1.商品・サービス横断的な法令の厳正な執行、見直し

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況の詳細

第3節 適正な取引の実現

1.商品・サービス横断的な法令の厳正な執行、見直し

(1)特定商取引法の執行強化

消費者が商品を購入する際、通常は、店舗に出掛けて行って商品を見比べ、自分の必要とする品質・性能を持つかどうかや価格等を十分考慮します。一方、事業者からの電話で勧誘を受ける場合や、事業者が自宅に突然訪れて勧誘を受ける場合もあります。このような場合、消費者にとってみれば、いわば「不意打ち」のような形となり、商品について冷静かつ十分に吟味する時間もなく、適切な判断ができないおそれがあります。

そこで、特定商取引法では、事業者と消費者との間でトラブルを生じやすい取引類型(①訪問販売、②通信販売、③電話勧誘販売、④連鎖販売取引、⑤特定継続的役務提供、⑥業務提供誘引販売取引、⑦訪問購入)について、購入者等(消費者)の利益を保護し、商品の流通や役務の提供を適正で円滑なものとするため、事業者が守るべきルール(行為規制)と、クーリング・オフ等の消費者を守る民事ルールを定めています。事業者に同法の規制に違反する行為が確認され消費者の利益が著しく害されるおそれがあるときには、業務停止命令等の行政処分が行われています。

消費者庁では、特定商取引法について、権限委任を行い、かつ指揮監督下にある経済産業局と密な連携の下、執行を一元的に実施しており、2017年度は業務停止命令を15件、指示を17件実施しました。

(2)特定商取引法の改正

特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律(平成20年法律第74号)の施行から5年が経過したことから、2015年1月に、内閣総理大臣から消費者委員会に対して、特定商取引法の施行状況を踏まえた購入者等の利益の保護及び特定商取引の適正化を図るための規律の在り方について、諮問を行い、これを受けて、消費者委員会に設置された特定商取引法専門調査会において報告書が取りまとめられ、答申がなされました。

同答申を踏まえ、特定商取引に関する法律の一部を改正する法律(平成28年法律第60号)2016年5月に成立、同年6月に公布され、2017年12月1日に改正政省令とともに施行されました。

改正法の施行に当たっては、全国各地での説明会の実施や各種講演会への講師派遣を行ったほか、本改正の内容も含めたリーフレットを作成し、全国の消費生活センターや地方公共団体に対して配布しています。

(3)特定商取引法の適用除外とされている消費者保護関連法の必要な執行体制強化及び制度改正

特定商取引法の適用除外とされている分野は、それぞれの分野に関する法律によって消費者の利益を保護することができると認められるために適用除外とされているという趣旨に鑑み、当該法律の執行状況を踏まえ、それぞれの分野における消費者取引の適正化を図る観点から、必要に応じて制度改正等を検討・実施することとしています。

消費者庁では、関係省庁の協力を得て特定商取引法の適用除外とされている法律等の消費者保護関連法の執行状況を取りまとめ、消費者基本計画工程表の別表として公表しています。

(4)消費者契約法の見直し

民法は、私人間の対等な当事者関係を前提として、取引に関するルールを定めていますが、そもそも消費者と事業者の間には情報量や交渉力に格差があることから、その格差を前提とした上で消費者の利益の擁護を図るためのルールを定めた消費者契約法が、2001年4月に施行されました。

消費者契約法は、あらゆる取引分野の消費者契約(消費者と事業者の間で締結される契約(労働契約を除く。))に幅広く適用され、不当な勧誘行為があればその契約を取り消すことができることとするとともに、不当な契約条項については無効とすること等を定めています。

消費者庁では、消費者契約に関する裁判例等の収集・分析等を通じ、消費者契約における契約締結過程及び契約条項の内容に関する規律等の在り方についての検討を行ってきました。そして、消費者委員会に設置された消費者契約法専門調査会での調査審議及び報告書の取りまとめに基づく同委員会からの答申を踏まえ、過量な内容の契約の取消権の新設などを内容とする「消費者契約法の一部を改正する法律」が、2016年6月に公布され、2017年6月に施行されました。

ただ、高齢者のみならず、若年者も含めた幅広い世代において消費者被害は依然として生じています。その中には、契約の締結について合理的な判断をすることができないような事情を事業者に不当に利用され、不必要な契約を締結させられたという被害事例等も存在し、対策が必要とされています。

こうした状況を踏まえ、上記の消費者委員会の答申において引き続き検討を行うべきとされた論点については、2016年9月から再開された消費者契約法専門調査会において審議され、2017年8月に消費者委員会の答申がなされました。

同答申を踏まえ、消費者庁及び法務省では、所要の改正法案の検討を行い、2018年3月2日に「消費者契約法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に提出されました。

(5)消費者の財産被害に対する消費者安全法の厳正な執行等

消費者庁では、消費者の財産被害の発生又は拡大の防止のため、消費者安全法第12条第2項の規定に基づく通知が的確に実施されるよう、関係機関等の消費者行政担当職員に対し、2015年3月に改定した「消費者事故等の通知の運用マニュアル」の周知徹底を行っており、2017年度における同通知件数は8,272件となっています。また、消費者安全法第38条第1項の規定に基づき、消費者に対し、2017年度において10件の注意喚起を実施しました。

また、関係機関等において消費者被害の発生又は拡大の防止のための措置が適切に講じられるよう、消費者安全法第38条第2項の規定に基づき、これに資する情報を関係機関の長等に提供しています。

(6)高齢者、障害者等の権利擁護の推進

厚生労働省では、高齢者、障害者等の権利擁護の推進を図るため、市町村による成年後見制度の申立て等の助成を行う「成年後見制度利用支援事業」、介護保険サービスの利用援助や日常生活上の金銭管理など、成年後見制度の利用に至る前の支援からその利用に至るまでの支援までを切れ目なく一体的に確保する「権利擁護人材育成事業」及び都道府県による市町村の市民後見の取組のバックアップや相談体制の整備を行う「高齢者権利擁護等推進事業」の実施を進めています。

また、各都道府県において、介護支援専門員については成年後見制度や高齢者の権利擁護等の内容を含む介護支援専門員専門研修等を実施するとともに、介護職員については尊厳の保持等の内容を含む介護職員初任者研修を実施しています。

消費者庁では、消費生活センター等において、認知症、障害などの理由で判断能力が不十分な方々に関する消費生活相談があった場合、状況に応じて福祉担当部局等と連携しつつ、成年後見制度の活用を図るよう、2016年度及び2017年度に開催された、消費者行政ブロック会議(全6ブロック)において、改めて都道府県等に要請しました。

担当:参事官(調査研究・国際担当)