第2部 第1章 第7節 (1)地方消費者行政の現況
第2部 消費者政策の実施の状況
第1章 消費者庁における主な消費者政策
第7節 国や地方の消費者行政の体制整備
(1)地方消費者行政の現況
地方消費者行政の充実・強化
地方消費者行政の充実・強化に関しては、これまで地方消費者行政推進交付金等(2008年度から2017年度までで約540億円)を活用し、消費生活センター・相談窓口の設置、消費生活相談員の配置・養成、消費者教育・啓発など地方公共団体の様々な取組を支援してきました。
また2014年以来、「地方消費者行政強化作戦」において、相談窓口のない地方公共団体(市町村)の解消や、消費生活センター設立の促進、消費者教育の推進、消費者安全法の規定に基づく消費者安全確保地域協議会の設置等の目標を掲げ、「どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられる地域体制」を全国的に整備することを目指してきました。
これらの取組の結果、2015年度には費生活相談窓口が未設置の地方公共団体がなくなり、政策目標の一つである「相談体制の空白地域の解消」を達成しました。また、消費者庁が設置された2009年から比較すると、消費生活センターは、501か所(2009年4月1日時点)から830か所(2017年4月1日時点)へ329か所増加しています。さらに、消費生活相談員数は2,800名(2009年4月1日時点)から3,434名(2017年4月1日時点)へ634名増加し、消費者行政担当職員数は5,190名(2009年4月1日時点)から5,255名(2017年4月1日時点)へ65名増加しています。
しかし、いまだ、特に小規模市町村を中心に、消費生活センターの設置や消費生活相談員の配置が進んでいない状況もあります。「地方消費者行政強化作戦」の進捗状況をみると(図表II-1-7-1)、消費生活センターの設立促進について、人口5万人以上の地方公共団体(全市町に消費生活センターを設置する目標)については30道府県、人口5万人未満の小規模市町村(半数以上の市町村に消費生活センターを設置する目標)については20道府県が目標を達成しているのにとどまっています。「地方消費者行政強化作戦」に掲げられた五つの政策目標の達成に向けて、引き続き地方公共団体の取組を促進していきます。
さらに、2018年度以降は、新たな枠組みでの支援を行います。地方消費者行政推進交付金等による支援が2017年度で区切りを迎えることから、消費者庁では、2018年度以降の地方消費者行政の充実・強化に向けた今後の在り方に関して、有識者による検討会を開催しました。検討会では、従来の地方消費者行政推進交付金の活用とともに、国として取り組むべき新たな消費者問題や重要課題に対する支援の必要性が指摘され、これらに意欲的に取り組む地方公共団体を中期的・計画的に支援するために「地方消費者行政強化交付金」を創設することとしました(図表II-1-7-2)。
今後は、「地方消費者行政強化交付金」を活用して、国として取り組むべき重要な消費者政策を推進するとともに、消費生活センターを中心とした消費生活相談体制の充実・強化について、地方公共団体の自主財源に裏付けられた消費者行政の充実を促していきます。
なお、地方消費者行政の予算規模は2008年度の約101億円(最終予算額)から、2017年度は約156億円(当初予算額)となっています。
改正消費者安全法が2016年度から施行
2016年度から、改正消費者安全法が一部を除き施行されました。消費者が「どこに住んでいても、質の高い相談・救済が受けられる体制」を構築するために必要な改正で、消費者行政の体制の強化として消費生活センターの組織運営等についての条例整備、消費生活相談員を法定の職として位置付けること、消費者被害防止のために地方公共団体が「消費者安全確保地域協議会」を設置できること等を定めています。
消費生活相談員資格試験制度
改正消費者安全法により、消費生活相談員の職が法律で明確に位置付けられ、消費生活に関する専門家であることが明らかにされました。
消費者等にとって分かりやすく、かつ、消費生活相談員に必要な知識、技術等を十分に担保する資格制度として、内閣総理大臣の登録を受けた試験機関が試験を実施しています(図表II-1-7-3)。 法定資格である消費生活相談員の試験は、登録試験機関である国民生活センター及び一般財団法人日本産業協会により、両機関が行う独自の資格試験「消費生活専門相談員資格認定試験」(国民生活センター)、「消費生活アドバイザー資格試験」(日本産業協会)と兼ねる形で実施されます。2017年度試験では合わせて1,055名が試験に合格しました。
消費者安全確保地域協議会の設置促進
高齢者等の消費者被害が深刻化する中で、高齢者等を取り巻く家族、近隣住民、介護・福祉関係者、警察等、地域の様々な主体が、高齢者等の消費生活上の安全に気を配り、何かあったときに消費生活センター等につなぐ体制の構築が消費者被害防止に有効です。
改正消費者安全法では、地方公共団体が地域で活動する様々な団体や個人を構成員とした消費者安全確保地域協議会を設置し、消費生活上、特に配慮を要する消費者の見守り等の取組を行うことができるとされています(図表II-1-7-4)。さらに地域で活動する「消費生活協力団体」、「消費生活協力員」を育成確保すること等も規定し、地域の見守りネットワークの構築を図っています。
消費者安全確保地域協議会は構成員間で秘密保持義務を課し、見守り対象者の個人情報、必要な情報をやり取りできる旨を法により定めており、更に効果的な見守りが可能となります。
全国で消費者安全確保地域協議会を設置している地方公共団体の数は、2018年3月末時点で85となっています。
消費者ホットラインの運用・周知
消費生活センター等の消費生活相談窓口の存在や連絡先を知らない消費者の方に、近くの消費生活相談窓口を案内することにより、消費生活相談の最初の一歩をお手伝いするものとして、「消費者ホットライン」の運用を2010年1月12日より全国で開始し、誰もがアクセスしやすい一元的な相談窓口を整備しています(図表II-1-7-5)。
消費者ホットラインは共通の電話番号から、全国どこからでも身近な消費生活相談窓口につながります。消費生活で困ったときにすぐ利用できるよう、2015年7月1日より、局番なしの3桁の電話番号「188番(いやや!)」での案内を開始しました(注21)。
2017年度の入電件数は75万8971件となり、導入前の約34万4000件から約2.2倍となりました。
消費者ホットラインの認知度について、2017年に実施した調査(注22)では「名前」、「番号」、「内容」の全てを知っていたと回答した人の割合は4.3%と、前年の3.3%に比べ1ポイント増となっていますが、いまだ十分でなく、認知度向上が課題となっています。また、全てを知っていたと回答した人を年齢層別にみると、60歳以上の認知度は7%前後なのに対し、10歳代後半から40歳代は2~3%程度となっており、特に若年層への普及啓発が必要です。
これまで、消費者庁では、政府広報等による周知のほか、地方公共団体の協力を得て、様々な啓発を行ってきました。今後もあらゆる機会を捉えてさらなる啓発に努めます。
また、2017年3月に作成した高校生向けの消費者教育のための教材「社会への扉」(本章第5節(2)参照。)などにより、若年層への周知も進めていきます。
担当:参事官(調査研究・国際担当)