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第2部 第1章 第5節 (1)成年年齢引下げに対する対応

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第5節 消費者が主役となって選択・行動できる社会の形成

(1)成年年齢引下げに対する対応

問題の背景

民法では、未成年者が親権者等の法定代理人の同意を得ずに締結した契約は、事業者の行為の不当性の有無にかかわらず、取り消すことができます(未成年者取消権)。20歳になった若者(成人)に注目すると、消費生活相談件数は未成年者と比べて多くなっており(図表Ⅱ-1-5-1)、また、その契約金額も高額になる傾向があります。それらの相談の中には、未成年者取消権による保護がなくなる満20歳を迎えた直後に、悪質な事業者のターゲットとなった事例もみられます。

民法の成年年齢引下げに伴い、これまで未成年者取消権で保護されていた18歳、19歳の若者が保護の対象から外れることになるため、消費者被害の拡大を防止すべく万全を期する必要があります。

消費者庁の取組

消費者庁では、内閣府消費者委員会によって取りまとめられた「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書」(2017年1月、消費者委員会、成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ)を踏まえ、①若年者の自立を支援する消費者教育の充実、②社会生活上の経験の不足する若年者の被害事例を念頭に置いた、消費者契約法の改正による取消権の追加などの制度整備等、③消費生活相談窓口の充実及び消費者ホットライン188の周知に取り組んでいます(図表Ⅱ-1-5-2)。

特に、消費者教育の充実が重要であることから、2018年2月には、消費者庁、文部科学省等の関係省庁の局長で構成する連絡会議を発足させ、2018年度から2020年度までの3年間を集中強化期間とする「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」を決定しました。このアクションプログラムでは、2020年度までに、消費者庁で作成した高校生向け消費者教育教材「社会への扉」を活用した授業が全ての都道府県の全高校で行われることを目指す、消費者教育コーディネーターの全都道府県での配置を促進するといった、実践的な消費者教育を推進するための目標を掲げています。

また、制度整備については、消費者庁は、2018年3月2日に「消費者契約法の一部を改正する法律案」を国会に提出しました。この法律案では、主として若年者に発生している被害事例を念頭に置き、①消費者の不安をあおる告知(いわゆる就職セミナー商法など)、②恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用(いわゆるデート商法など)といった不当勧誘行為に対して取消権を追加することなどを規定しています。

成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議

民法の成年年齢引下げを見据えた環境整備に関し、関係行政機関相互の密接な連携・協力を確保し、総合的かつ効果的な取組を推進するため、2018年4月16日には、「成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議」(第1回)が開催されました。

この会議は、法務大臣を議長、構成員を関係府省庁の局長級の職員とし、各府省庁における取組の進捗管理を行うとともに、特に府省庁横断的な検討が必要な論点を重点的に検討するものです。

この会議には、消費者庁も参画しており、今後は、検討テーマの一つとして掲げられている「若年者の消費者教育・消費者保護」について、取組状況を報告していくことになっています。

担当:参事官(調査研究・国際担当)