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第2部 第1章 第2節 (3)消費者安全調査委員会(消費者事故調)の取組

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第2節 消費者の安全の確保

(3)消費者安全調査委員会(消費者事故調)の取組

消費者事故調は、消費者事故からの教訓を得て、事故の予防・再発防止のための知見を得ることを目的に、2012年10月、消費者庁に設立されました。

消費者事故調は、責任追及(「誰が悪い」)ではなく、事故の予防・再発防止(「なぜ事故が起きたのか」、「どうすれば同じような事故が防げるのか」)を考える組織です。消費者事故調の事故等原因調査等の流れは、図表Ⅱ-1-2-3のとおりです。事故原因について、機械の不具合の有無、法令違反といった点だけでなく、消費者によって実際に使われる環境や人間の行動特性にも目を向け、幅広い視点から、科学的かつ客観的な調査を行っています。

消費者事故調による調査の対象となり得る事故等は、幅広い分野の生命身体事故等に及ぶため、「公共性」、「被害の程度」、「単一事故の規模」、「多発性」、「消費者による回避可能性」及び「要配慮者への集中」の要素を総合的に勘案して、対象を選定して調査等を実施しています。

消費者事故調がこれまでに選定した事案は、図表Ⅱ-1-2-4のとおりです。消費者事故調発足以来、15件の調査等を開始し、うち12件の事案について最終報告を行うとともに、関係行政機関の長に対して意見を述べています。意見については、フォローアップを行い、事故の発生状況はどのようになっているか、再発防止の取組がなされているかについて確認することとしています。

2017年からは、消費者事故調に寄せられた申出に関連して収集した情報のうち、消費者安全確保の見地から有益であると考えられるものについて、「情報提供」という形で公表しています。これまで、「手動車いすのフットサポート」、「ライターの残り火」、「靴底の剥がれによる転倒」、「屋外コンテナ式収納スペースの移動式足場の階段からの転落」、「自転車使用中の転倒」の5件について公表しました。

引き続き、消費者安全の考え方や継続的な安全管理の取組の重要性が広く社会で共有され、実践されるよう、事故等原因調査によって得られた知見を適切に社会に提供するよう努めていきます。

玩具による乳幼児の気道閉塞事故報告書の公表

2017年11月に、玩具による乳幼児の気道閉塞事故の報告書を公表しました(図表Ⅱ-1-2-5)。

乳幼児には、「何でも口に入れる」という行動特性がみられ、また、身体的には、咽頭の大きさが最大開口量に比べて小さい、口腔とのどが近い、唾液が多い、のどに物が詰まるとそれを自力で飲み込んだり、吐き出したりする力が不十分であるといった特徴があります。

報告書では、アンケート調査によって、どの程度の月年齢、どのような玩具で誤嚥事故が発生しているかについて明らかにしました。また、口やのどのCT画像と飲み込む動きの造影画像とを組み合わせ、大きさや形状を変えた玩具のモデルを用いたコンピューターシミュレーション(仮想の実験)によって、玩具による気道閉塞のメカニズムを明らかにしました。このコンピューターシミュレーションによって、大きな玩具では、のどの上の方が詰まる咽頭閉塞型の窒息、小さな玩具であってものどの下の方が詰まる喉頭閉塞型の窒息が発生する可能性があること、また、大きさや形状からは喉の閉塞が発生するとは考えにくい玩具であっても、唾液などの粘度のある液体等と入り混じって、咽頭や喉頭にとどまり、窒息に至る可能性があることが示されました(第1部第2章第4節(1)参照。)。

消費者事故調では、乳幼児の行動特性や身体的特徴、また、窒息を起こす可能性のある玩具の特徴等について、行政機関、玩具関連事業者、消費者等といった子供に関わる全ての関係者が理解することが必要であると考え、啓発資料として、動画「窒息事故から子どもを守る」、及び頭部と口・のどについて9か月児の実サイズに組み上げられるペーパークラフト(紙模型)を作成し消費者庁ウェブサイト等で紹介しています(図表Ⅱ-1-2-6)。

図表2-1-2-3消費者安全調査委員会における事故等原因調査等の流れ

図表2-1-2-4消費者安全調査委員会案件一覧

図表2-1-2-5玩具による乳幼児の気道閉塞事故の報告書(概要)

図表2-1-2-6啓発用の資料(動画、ペーパークラフト)

担当:参事官(調査研究・国際担当)