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第1部 第2章 第5節 (1)行政機関に求められる取組

第1部 消費者問題の動向と消費者意識・行動

第2章 【特集】子どもの事故防止に向けて

第5節 子どもを安全な環境で育てるために

(1)行政機関に求められる取組

法令等による消費者の安全確保

消費者の安全の確保は、消費者基本法において、消費者の権利の一つとして位置付けられ、国は、消費生活における安全を確保するため、商品・サービスについての必要な基準の整備及び確保、事業者による安全を害するおそれがある商品の回収の促進、安全を害するおそれがある商品・サービスについて情報を収集し、提供する等の必要な施策を講ずることが定められています。

子どもの事故の発生や生活環境の変化等を踏まえ、危険な商品・サービス等に対して、法令による規制や事業者への措置等を実施していくことが求められます。最近では、ドラム式電気洗濯機に子どもが入りドアが閉まった際、内部から開けられないため、死亡に至ったとみられる事故が発生したことを踏まえ、2018年に電気用品安全法(昭和36年法律第234号)に関する経済産業省通達 94 を改正し、内側から前面のドアが開けられる構造であることを義務付ける要求事項を追加する予定となっています。

子どもの事故に関する情報収集・原因究明の充実・強化

子どもの事故が発生した場合には、事故に関する情報を迅速に収集することが求められるとともに、重要な事故等については幅広い安全確保の観点からの原因究明とそれに応じた対策の実施が求められます。消費者庁が設置されたことにより、子どもの事故を含め、消費者事故等の情報は、消費者庁に一元的に集約され、消費者への注意喚起等に活用されています。また、消費者事故調において、事故原因の調査や再発防止に向けた提言が行われています。

事故情報は幅広く収集する必要があるとともに、有効な対策を講じるためには、事故が発生した原因を科学的に究明できるだけの詳細で具体的な情報が必要になります。一方で、事故の後の混乱した状況下で、詳細な情報収集を行うことは関係者にとっての負担が大きいという側面があります。こうした中で、子どもの死亡という最悪の事態については、その死を無駄にしないためにも、医療機関、警察、消防、行政関係者等複数の機関や専門家が死因調査を行うことにより、効果的な防止策を導き出すという死因究明の制度(Child Death Review)が注目されています。この制度は既に米国、英国等で導入されていますが、日本でも、同制度の導入について検討することが、2017年に衆議院における児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議に盛り込まれました。

子どもの発達に合わせたタイムリーな情報提供を

事故の防止に向けては、行政機関は、注意喚起やリコールの情報等安全に関わる情報を、保護者を始め子どもの周囲にいる大人に周知することが必要です。その際には、事故防止に向けた行動が求められる人が、知識が必要なときに情報を届けることが求められます。消費者庁では、季節的な発生傾向がある事故について注意喚起する等、時期を考慮した発信を行っています。

子どもの事故には発達段階に応じた傾向があることを踏まえれば、月齢・年齢等、子どもの成長に合わせた情報提供が効果的と考えられます。現在では、情報通信技術の発達により、地方公共団体が民間事業者と連携しつつ、スマートフォンのアプリケーション等を活用して、月齢・年齢等の子ども一人一人の成長に合わせて予防接種に関する情報や育児情報を提供する取組もみられます。このような仕組みを利用して、子どもの事故防止に関する情報をタイムリーに提供していくことも期待されます。

母親だけでなく、子どもの周りにいる大人全員に届く啓発活動を

消費者庁が実施した意識調査によれば、事故防止に関する情報源として最も利用されているのは「新聞・テレビなどの報道」でした。消費者庁では、メディア報道や地方公共団体等による周知につながるように、個別テーマごとに注意喚起の記者公表を行っています。その他に、「子ども安全メールfrom消費者庁」や「消費者庁 子どもを事故から守る!Twitter」で保護者等に直接情報を届けるとともに、関係府省庁や地方公共団体等にリツイートを依頼するなど、情報発信がより幅広く関係者に届くように工夫しています。

一方で、意識調査の結果からは、事故防止に関する情報源として、「行政」を利用していると回答した割合は、母親の方が父親に比べて高く、行政の情報発信がどちらかといえば母親に届きやすくなっている面があるとみられます。イクメン、イクジイという言葉もあるように、子育ては、母親だけでなく、父親や祖父母、地域の人も担うようになっています。子育てに関わる周囲の大人全員に届くような情報提供・啓発活動が期待されます。


  • 注94:「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」(20130605商局第3号)

担当:参事官(調査研究・国際担当)