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第1部 第2章 第4節 (4)保護者等子どもの周囲にいる人への啓発の取組

第1部 消費者問題の動向と消費者意識・行動

第2章 【特集】子どもの事故防止に向けて

第4節 子どもの事故防止に向けた取組

(4)保護者等子どもの周囲にいる人への啓発の取組

地方公共団体や医療関係者ら専門家等が、子どもの事故防止に向けて啓発活動に取り組んでいます。いくつかの特徴のある活動について紹介します。

1地方公共団体による啓発活動事例

札幌市:様々な関係者に向けた啓発活動

札幌市では、様々な機会を捉え、保護者だけでなく、保育関係者や子ども本人など、様々な関係者に向けた啓発活動を行っています(図表I-2-4-12)。

i イベントに参加する親子とふれあいながらの啓発活動

親子が参加する2017年12月16日に開催された「こそだて★さっぽろ SORAこそだてフェスティバル2017」に出展しました。この中で、キッズデザイン賞受賞製品の展示や事故防止講座、国民生活センターの注意喚起を参考とした事故事例の紹介、キッズデザイン賞受賞製品などを使用できる体験プログラム、子ども安全メールの周知等を行いました。また、札幌市の消費者教育イメージキャラクターで消費者教育推進大使でもある「しろうくま」も登場し、子どもとふれあいながら、啓発活動を行いました。

ii 親子向け出張講座

子育てサロンや児童会館等、親子が集まる場所での出張講座を開催しました。講座では、子どもへの安全教育を目的とした紙芝居や事故防止に関する情報を載せたリーフレットの配布、子どもの視野を体験できるチャイルドビジョンや誤飲防止のために身の回りのものが子どもの口に入らないかを確認する誤飲防止ルーラーの説明等を行いました。

iii 保育関係事業者向け講座

保育所、幼稚園等向けの講座を開催しました。2017年度は2018年2月に産業技術総合研究所から講師を招き、科学的に事故を防止する方法について学びました。参加者から「園で今回の講座の内容を伝えたい」といった感想があったとのことです。

iv フリーペーパーへの記事掲載

2017年度からの新しい取組として、子育てサロンや保育所、幼稚園等に配布されている親子向けのフリーペーパーに、子どもの事故防止等も含めた消費者教育に関する記事を載せました。これらのフリーペーパーを読んでいるという保護者の声が多かったことを踏まえた取組です。記事に加えて、親子で学べるよう、幼児とその保護者向けの消費者教育動画を収録したDVDも添付しています 93 。

福岡県:子育てを支援する高齢者に向けた啓発活動

福岡県では、豊かな経験や知識を持つ高齢者に地域の子育て現場で活躍してもらうことを目的に、2012年度から「ふくおか子育てマイスター」制度を実施しています。

子育て支援に意欲がある60歳以上の高齢者が子育て全般について研修を受けた後、子育て支援の現場で活躍できるというもので、2018年3月末時点で1,419名が認定されています。研修プログラムには子どもの事故防止や緊急時の処置対応も含まれており、2017年度には認定者を対象として、乳幼児の応急救護についてのフォローアップ研修も行っています。

徳島県:地域の関係団体が連携し、集中的に啓発

徳島県では、医師会、助産師会、看護協会、学識経験者、子育て支援団体、保育関係者、学校関係者、行政の保健部局、消費者行政部局等の関係機関が連携することを目的に、2017年度に「子どもの事故防止プロジェクト関係者ネットワーク会議」を設置しました。多様な関係者が持っている「事故防止から事故発生時の対応まで」のノウハウを用いて保護者等の多様な対象者に合わせた啓発活動を行っています。

具体的には、各関係機関が開催する保護者を対象にした講演会等で消費者庁が作成した「事故防止ハンドブック」を配布したり、乳幼児健診時や子育て広場でこの会議が作成した「子ども安全・安心チェックリスト」を用いて個別指導・啓発等を行っています。その他、保護者と関わる機会の多い保育関係者や医療関係者等に対し、子どもの事故防止に関する研修も実施しています。関係機関が同じ資料を用い、集中的に啓発を行うことで認知が進むと期待されます。

愛媛県西条市:事故の教訓をいかした安全対策の実施

愛媛県西条市では、2012年7月、幼稚園でのお泊り保育中、河川での水遊び中に増水により園児が流され、園児1名が死亡する事故が発生しました。

この事故の教訓をいかし、二度と同様の事故を起こさないという思いから、保護者を中心とした市民による様々な活動が行われ、同市では、河川情報アラームメールや防災情報アプリでの情報配信等水難事故防止のための体制整備が進んでいます。

また、市内の保育所・幼稚園・小中高等学校関係者が情報を共有するための合同連絡会(西条市就学前関係者合同連絡会)や関係部署による協議会が定例で開催されています。2017年7月からは、川や海での教育活動の際には、ライフジャケットを着用することを奨励しています。2018年4月からは子ども用ライフジャケットを無料で貸し出す事業が始まり、市内2か所の消防署がレンタルステーションになっています。

2専門家の知見をいかした啓発

医療関係者の取組:日本小児科学会、佐久医師会

子どもの事故が起きたとき、医療関係者は、治療を行うため、事故の状況を発生直後に把握しています。こうした日々の診療において集められた、事故による子どもの傷害情報を基に、専門知識を持つ医療関係者が事故情報や防止策の発信を行っている取組があります。

公益社団法人日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会では、重症度の高い傷害を繰り返さないために、会員である小児科医などからの投稿に基づき、2008年に日本小児科学会雑誌とウェブサイトに「Injury Alert(傷害速報)」の項目を設け、傷害の事例を報告する取組を行っています(図表I-2-4-13)。さらに、事故に関係した製品の使用上の注意の周知徹底や製品自体の改善課題といった、事故を防ぐためのコメントも掲載されています。他に、ウェブサイト「こどもの救急」の「こどもの事故と対策コーナー」では、生後1か月から6歳までの子どものいる家庭で、知っておくと役に立つ一次救命処置や、溺水、誤飲など家庭内で起こりやすい事故を防ぐためのポイントを紹介しています。

また、長野県佐久市では、子育て力向上事業の一環として、2015年に一般社団法人佐久医師会が「教えて!ドクタープロジェクト」を実施しています。小児科医が保護者の子育て不安に寄り添うことを目的にしていますが、あらかじめ必要な知識を伝えることにより、小児救急外来の負担軽減の取組も兼ねています。

同プロジェクトでは、子どもの病気やホームケア、受診の目安等を解説した冊子の作成や、市内の保育園等での小児科医による保護者を対象とした出前講座、講座の内容をまとめた無料アプリの作成や、SNSを活用しての発信を行っています。また、「乳幼児で注意する食物とその予防について」(図表I-2-4-14)や「子どもが溺れる時」(本章第2節参照。)の実態を分かりやすくイラストで説明しています。

図表1-2-4-12様々な関係者に向けた啓発活動(札幌市)

図表1-2-4-13Injury Alert(傷害速報)のウェブサイト(日本小児科学会)

図表1-2-4-14乳幼児で注意する食物とその予防について


担当:参事官(調査研究・国際担当)