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第1部 第1章 第4節 (1)架空請求に関する相談の急増

第1部 消費者問題の動向と消費者意識・行動

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第4節 最近注目される消費者問題

(1)架空請求に関する相談件数が急増

2017年は、架空請求に関する相談件数が15.9万件と、前年から倍増し、2007年以降で最多となりました(図表I-1-3-1参照。)。消費生活相談件数全体においても、架空請求に関する相談が17.5%を占めています。

相談の内訳をみると、例年は「デジタルコンテンツ」に関する相談が大半を占めているのに対し、2017年は、「商品一般」に関する相談件数が、前年の約12倍に急増し、架空請求に関する相談の4割を占めています(図表I-1-4-1)。これは、後述するように、法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が多数寄せられたためです。

「デジタルコンテンツ」に関する相談件数は増加しており、実在する有名事業者等をかたる電子メールやSMS(注29)を用いた架空請求の相談件数が約2割を占めています(注30)(注31)(注32)(注33)

中高年層から、法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が急増

2017年は、架空請求のはがきに関する相談が5.6万件寄せられました。その具体的な内容は、「法務省を名乗る差出人から『総合消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ』等と題したはがきが届いた。身に覚えはないが、不安。財産を差し押さえられてしまうのか」などというものです。「法務省管轄支局民事訴訟管理センター」、「法務省管轄支局国民訴訟通達センター」、「法務省管轄支局訴訟管理事務局センター」、「法務省管轄支局民間訴訟告知管理センター」などと法務省等国の機関をかたって消費者を信用させ、過去に利用した業者への未払いがあると思わせ、それに関して「財産を強制的に差し押さえる」などと不安にさせた上で、「訴訟の取り下げについて相談する」などと本人からの連絡を誘導するものとなっています(図表I-1-4-2)。相手と連絡し「最終的にコンビニでプリペイドカードを購入し、お金を支払ってしまった」との相談も寄せられています。

このようなはがきによる架空請求に関する相談は2017年3月下旬から増加し始めました。属性をみると、60歳代女性の相談件数が全体の半数を占め、50歳代以上の中高年女性の相談件数が約9割と大半を占めています。(図表I-1-4-3)。相談の状況からは、こうしたはがきは、短期間に集中して特定の地域に送付される傾向があり、何らかの名簿等に沿って送付されていると考えられます。

消費者に対しては、こうしたはがきが届いても、決して慌てて相手に連絡したり、お金を支払ったりせず、不安な場合には消費生活センター等に相談しましょう、と注意喚起が実施されています(注34)(注35)

過去の架空請求との違い

架空請求に関する相談が急増したことはこれまでもありました。2002年度から急増し、2004年度には67.6万件にも上りました(図表I-1-3-1参照。)。これは、架空請求を送付している者(事業者)が、普及し始めた電子メールという安価で容易な手法に目をつけ、不特定多数へ大量に送付したことによります。ピーク時の2004年度には、「個体識別番号」と称して携帯電話会社名や端末の機種名、製品型番、製造番号等を表示し、個人情報を入手したかのように装う手口などが目立ちました。

架空請求が社会問題化して以降、再発防止策が講じられてきていますが、架空請求を抜本的に防ぐ手段は難しく、消費者が自衛できるよう注意喚起を実施しています。大半の消費者は、架空請求と理解した請求については無視するという対応をしていると思われますが、消費者の不安をあおる新たな手口が出てくると、再度相談件数が急増する傾向がみられます。2017年も、はがきというここ数年主流ではなかった手段が用いられ、住所と氏名を知られている、ということが、消費者の不安をあおり、相談件数の急増につながったと考えられます。

相談時点で既に支払済みの相談は少ない

架空請求に関する相談について、相談時点での支払状況をみると、相談時点の既支払額が1円以上である相談の割合は、例年低く、2017年は1.9%となっています(図表I-1-4-4)。相談1件当たりの既支払額は、2017年は7,982.3円と2年連続で前年より減少し、2010年以降で最低額となりました。架空請求に関する相談のほとんどは、請求を受けた消費者が実際に相手方に連絡したり支払ったりする前に対処方法の確認や相談をしているものであり、消費者が消費生活センター等に相談することが、金銭的被害の未然防止につながっていると考えられます。

また、最近では、架空請求における支払手段として、仮想通貨購入用の口座が利用される手口に関する相談が寄せられています(注36)。この手口では、消費者は、架空請求事業者の指示どおりにコンビニにある端末を操作し、支払番号を入力しますが、これは、架空請求事業者に利用されている仮想通貨購入用の口座にコンビニから入金するための番号です。端末から出る用紙を持ってレジで代金を支払うと、当該口座に入金されます。架空請求事業者は、入金後すぐに仮想通貨に交換し、別口座に送金していることが多く、被害を取り戻すのは非常に困難です。


  • 注29:メールアドレスではなく携帯電話番号を宛先にして送受信するメッセージサービス。
  • 注30:国民生活センター「心当たりのないメール・SMSには反応しないで!―"迷惑メール"に誘導されてトラブルに!?―」(2017年7月6日公表)
  • 注31:消費者庁「SMSを用いて有料動画サイトの未払料金などの名目で金銭を支払わせようとする「株式会社DMM.comをかたる事業者」に関する注意喚起」(2017年2月28日公表)
  • 注32:消費者庁「SMSを用いて有料動画の未納料金の名目で金銭を支払わせようとする「アマゾンジャパン合同会社等をかたる架空請求」に関する注意喚起」(2017年11月14日公表)
  • 注33:消費者庁「SMSを用いて未納料金の名目で金銭を支払わせようとする「ヤフー株式会社をかたる架空請求」に関する注意喚起」(2017年12月22日公表)
  • 注34:国民生活センター「「民事訴訟管理センター」からの架空請求ハガキは無視してください!」(2017年5月1日公表)
  • 注35:消費者庁「法務省の名称を不正に使用して、架空の訴訟案件を記載したはがきにより金銭を要求する事案に関する注意喚起」(2018年4月27日公表)
  • 注36:国民生活センター「コンビニ払いを指示する架空請求にご注意!第2弾―新たな手口として仮想通貨購入用の口座が詐欺業者に利用されています―」(2017年6月29日公表)

担当:参事官(調査研究・国際担当)