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第1部 第1章 第2節 (3)生命・身体に関する事故情報の事例

第1部 消費者問題の動向と消費者意識・行動

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第2節 消費者庁に集約された生命・身体に関する事故情報等

(3)生命・身体に関する事故情報の事例

収集された事故情報等を元に、消費者庁や国民生活センターでは注意喚起を実施しています。子どもの事故防止に関するものは第1部第2章特集「子どもの事故防止に向けて」で記載していますので、ここではそれ以外の事例を紹介していきます。

ゆたんぽによる事故

ゆたんぽによる事故について、事故情報データバンクには2009年9月から2017年10月までに363件、医療機関ネットワークには2010年12月から2017年10月までに97件の情報が寄せられています。主な事故の内容は、使用中に低温やけどを負った、加熱し過ぎてやけどを負った、破れてお湯が漏れやけどを負ったなどです。事故情報データバンクの363件のうち240件がやけどを負っており、全体の約3割(105件)が、治療期間に1か月以上かかっています。

さほど高温ではなく心地よく感じる温度でも、長時間皮膚が接触することで、それほど熱いと自覚しないままやけどになることがあります(低温やけど)。「家庭の医学」(注12)によると、低温やけどは、「普通のやけどに比べて痛みが少なく、水ぶくれなどもできにくく、乾燥していることが多いため、一見軽そうに見えますが、長時間熱の作用が及んだために、深いやけどとなっていることも珍しくありません」。医療機関ネットワークには、「就寝時に下腿たいにゆたんぽを使用したところ、翌朝にII度(注13)の低温やけどで水疱ほうびらんが生じた」といった事例が登録されています。

市販されているゆたんぽには様々なタイプがあります。IHヒーターや直火で直接加熱できるタイプでは、口金を閉めたまま加熱し、ゆたんぽが破裂した事例、電子レンジで温めるタイプでは、指定の加熱時間を上回る時間加熱し、やけどを負った事例などが寄せられています。また、電気蓄熱式のゆたんぽでは、布団やカバーに入れたまま充電するなど誤った充電方法により破裂し、中身が漏れた事故などが発生しています。これらの事故の主な原因は加熱・充電方法を誤ったことと推定されます(図表I-1-2-9)。また、ゆたんぽに破損や亀裂があることに気付かず使用して、お湯やジェルなどの内容物が漏れ、やけどをすることもあります。

消費者庁では、2017年12月6日に、ゆたんぽを長時間身体に接触させないようする、製品ごとに指定された加熱方法、加熱時間を守って加熱する、使用前にゆたんぽに亀裂や破損がないかよく点検する、ゆたんぽがリコール対象製品になっていないか確認する、といった注意を呼び掛けています(注14)

ライターに関する事故

事故情報データバンクには、ライターに関する事故情報が2009年9月から2017年3月までに722件(注15)寄せられています(図表I-1-2-10)。事故の発生登録件数を年度別にみると減少傾向はみられますが、毎年継続して事故が発生しています。事故の種類別にみると、「使用後の残り火による事故」が209件と最も多くなっています。また、「自動車内での事故」(55件)や保管、放置中の破裂(52件)や発火(43件)も多くみられました。このほか「子どもの火遊びによる事故」(6件)も報告されています。

残り火とは、ライターの使用後、着火レバーから指を離しても火が消えずについている状態のことです(図表I-1-2-11)。残り火に気付かず、衣類のポケットやバッグの中に入れてしまい、やけどを負ったり、衣服や家具が焼損したりするなどの事故が多く発生しています。死亡事故も発生しており、非常に危険です。

消費者安全調査委員会においては、使い捨てライターの残り火について情報提供(注16)を行っており、「(1)事業者及び消費者が、異物がライター本体内部に入りにくく、着火口が塞がれているスライド式を使用することが残り火対策として有効であることを知ること、(2)消費者がライターの残り火があり得ることを知り、残り火がないことを自身で確認することが重要である」と報告しています。

また、自動車内のダッシュボード上などに保管・放置していた使い捨てライターが爆発、破裂したなどの事故が報告されています。使い捨てライターには可燃性の高圧ガスが充てんされており、直射日光の当たる場所や高温になる場所などに放置すると爆発する危険性があります。

消費者庁と国民生活センターは2017年6月1日に共同でライターに関する事故について注意喚起を行っており、1ライターの使用後は火が完全に消えていることを確認する、2自動車内など高温、直射日光に当たる場所にライターを保管・放置しない、3ライターを子どもの手の届く所に置かない、4PSCマークの付いた製品を使用し、PSCマークのない古い使い捨てライターは適切に処分する(PSCマークについては、第1部第2章第4節参照。)、等と呼び掛けています(注17)

女性ホルモン様の作用のある物質を含んだ健康食品による危害

プエラリア・ミリフィカというマメ科のクズ(葛)と同属の植物の貯蔵根が原材料として配合された、バストアップやスタイルアップ等の美容を目的とした健康食品が販売されています。

PIO-NETには、プエラリア・ミリフィカを含む健康食品に関する危害情報が2012年度以降の5年間あまりで209件(注18)寄せられています(図表I-1-2-12)。特に2015年度以降急増し、2015年度及び2016年度は年間100件近くの危害情報が寄せられています。このような状況を受けて、国民生活センターが2017年7月13日に注意喚起を行っています(注19)

危害情報209件における被害者は、ほぼ全員が女性で、年齢層別にみると、20歳代が69件(33.0%)と最も多く、次いで40歳代が42件(20.1%)、30歳代が41件(19.6%)、10歳代が37件(17.7%)となっています(図表I-1-2-13)。また、全員がこれらの健康食品を通信販売により購入していました。

これらの中には消化器障害や皮膚障害といった一般の健康食品でもよくみられる危害事例のほかに、月経不順や不正出血といった、女性特有の生理作用に影響を及ぼしていると考えられる特徴的な危害事例が多く見受けられます。ホルモンバランスが崩れていると診断されている事例や、当該健康食品の摂取をやめるよう医師から指導されている事例も複数みられました。

プエラリア・ミリフィカの貯蔵根には、女性ホルモン様の作用のある物質として、デオキシミロエストロールやミロエストロールといった成分等が含まれています。

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報は、デオキシミロエストロールは強いエストロゲン(女性ホルモンの一種)活性を持つことに触れた上で、「現時点でプエラリアの安全な摂取量についてはまだよく分かっていません」としています。また、「ヒトにおける安全性については、有害事象として乳房痛、膣出血、イライラや頭痛、吐き気、嘔吐などが認められたという報告がある」とし、「妊娠中・授乳中・小児によるプエラリア・ミリフィカを含むサプリメントの利用は避け、女性ホルモン関連の医薬品の服用者や治療を受けている人も、自己判断で安易にサプリメントを利用することは避けるべきである」と注意を促しています。

プエラリア・ミリフィカが配合されていると表示された健康食品を調査した結果、一日最大摂取目安量当たりのデオキシミロエストロールやミロエストロールの量が、身体へ作用を及ぼす可能性があると考えられる量が含まれている銘柄があることが分かりました。

また、商品パッケージ等やウェブサイトにおいて、健康保持増進効果等と受け取れる記載がみられ、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)、健康増進法又は景品表示法に抵触するおそれがあるものもみられました。

国民生活センターは、摂取によりホルモンバランスが崩れるなど、思わぬ健康被害が発生するおそれがあるため、安易な摂取は控えるよう注意喚起を実施しています。また、プエラリア・ミリフィカを含む健康食品を摂取して体調に異常を感じた場合、直ちに摂取を止め、医療機関を受診するよう呼び掛けています。

厚生労働省は、薬事・食品衛生審議会新開発食品評価調査会で審議を行い、調査会の意見を踏まえて、製造管理、消費者に対する情報提供及び健康被害情報の収集の改善等に関する事業者への指導等について、2017年9月22日に都道府県等に通知を行いました(注20)

高齢者の身の回りの事故

高齢者は、日常の生活の中で事故に遭いやすいと言えます(図表I-2-2-2も参照。)。その要因としては、身体機能が年齢と共に低下すること、その低下を自覚していない場合があること、心配されたくない等の思いから1人で作業を行い、危険な行動や製品の誤使用などをしてしまうことがあること、住宅設備、製品等が高齢者の行動に合っていないこと等があります。消費者庁では、事故情報データバンクや医療機関ネットワークに寄せられた情報を元に、高齢者の身の回りの事故について2017年9月13日に注意喚起を行いました(注21)

医療機関ネットワークには、65歳以上の高齢者の事故情報が2010年12月から2017年8月末までに3,639件寄せられています。そのうち、日常生活における作業、動作において製品を利用した際の事故を紹介すると、「地面が斜めになっていたため脚立が滑り、1mの高さからコンクリートに転落。硬膜外血腫、脳挫傷、頭蓋骨骨折にて入院となった」、「せん定ばさみを掃除中に右示指の手のひら側を切ってしまった」などの事例があります。生活上の基本行動には支障がなくても、高い負荷が掛かった際や急な変化への対応が難しくなっており、不慣れな作業を行う場合は注意が必要です。

また、事故情報データバンクには、経年劣化による影響が疑われる古い製品やリコール対象となっている製品を高齢者が使用していたことによる事故も寄せられています。使い慣れた製品を長く使用している高齢者も多く、経年劣化やリコール情報に気付かずに使用を続けると非常に危険です。 他にも、視力の低下や疾病の影響、勘違い、思い込み、えん下能力の低下などによる高齢者の誤飲・誤食・誤えん等の事故が起きています。医療機関ネットワークには、「うがい薬と誤って塩素系漂白剤を口に含んでしまった」、「糖尿病性網膜症の手術後で、目があまり見えていなかったため、薬を誤ってPTP包装シート(注22)ごと誤飲」などの事例が寄せられています。

高齢者の事故は、高齢者の状態とそれを取り巻く環境が密接に関わっています。高齢者本人だけでは意識しづらい、改善できないものが多く含まれます。このため、家族や親戚、近隣、地域の人など高齢者の身近にいる人が、高齢者の事故の防止を意識することが必要です。1心身の変化に合わせて、家庭内の環境を再確認し、段差など高齢者にとって危険となる箇所や負担になる箇所を減らす、2高齢者が行っている作業を普段からよく確認し、いつもと変わったところがあれば、作業を控えるよう呼びかけることも検討する、3高齢者の使っている製品に故障や不具合等がないか、リコール対象製品でないかを確認する、4高齢者の普段の習慣を確認するとともに、誤飲しそうなものの取扱いや保管等に注意する、等の注意を呼びかけています。また、国民生活センターでも高齢者の「見守り新鮮情報」として事故に関する情報を発信しており、例えば2017年10月31日には転倒事故についてのリーフレットを公表しました(図表I-1-2-14)。


  • 注12:株式会社保健同人社「家庭の医学(第六版)」p.45
  • 注13:やけどの深度については、熱による損傷が皮膚のどの深さまで及んでいるかで分類される。「I度熱傷」とは表皮のみの熱傷、「II度熱傷」とは表皮よりも深い真皮までの熱傷、「III度熱傷」とは皮膚全層、さらに皮下組織まで損傷が及ぶ熱傷のことをいう。
  • 注14:消費者庁「ゆたんぽを安全に正しく使用しましょう!―低温やけど、過熱、漏れなどの事故を防止しましょう―」(2017年12月6日公表)
  • 注15:件数及び分類は、本件のために消費者庁が特別に精査したもの。
  • 注16:消費者安全調査委員会「事故に関する情報提供(ライターの残り火)」(2017年4月24日公表)
  • 注17:消費者庁「ライターは安全に正しく使いましょう!―ライターの注意表示をよく確認し、事故を防ぎましょう―」(2017年6月1日公表)
  • 注18:本件のために国民生活センターが特別に精査したもの。
  • 注19:国民生活センター「美容を目的とした「プエラリア・ミリフィカ」を含む健康食品―若い女性に危害が多発!安易な摂取は控えましょう―」(2017年7月13日公表)
  • 注20:厚生労働省「プエラリア・ミリフィカを原材料に含む「健康食品」の取扱いについて」(2017年9月22日付け薬生食基発0922第1号及び薬生食監発0922第1号厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課長及び食品監視安全課長並びに消食表第457号消費者庁食品表示企画課長通知)
  • 注21:消費者庁「ご家族など身近な方で高齢者の事故を防止しましょう!―事故防止のために高齢者の身の回りを見直してみましょう―」(2017年9月13日公表)
  • 注22:PTPとは「Press Through Package」の略で、医薬品等をアルミなどの薄いシートとプラスチックで1錠ずつ分けて包装したもの。

担当:参事官(調査研究・国際担当)