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第2部 第1章 第6節(3)消費者政策の国際連携やグローバル化への対応

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第6節 消費者の被害救済、利益保護の枠組みの整備

(3)消費者政策の国際連携やグローバル化への対応

●持続可能な開発目標(SDGs)の推進

持続可能な開発目標(SDGs)は2015年9月に国連の「持続可能な開発サミット」で採択された、2030年までの国際目標です。SDGsでは、17個の持続可能な開発目標を達成することにより「誰一人取り残されない」社会の実現に向けて、途上国のみならず先進国も実施に取り組むものになっています。日本では内外の取組を府省横断的に総括し、優先課題を特定した上で「SDGs実施指針」を策定するとともに、内閣総理大臣を本部長とする推進本部を設置しました。消費者庁は、SDGsの達成に貢献しうる施策として、1倫理的消費等に関する調査研究、2倫理的消費の普及啓発の推進(「エシカル・ラボ」の地方での開催等)、3食品ロス削減国民運動「NO-FOODLOSS PROJECT」の展開、4「子どもを事故から守る!プロジェクト」の展開に取り組んでいます(図表II-1-6-6)。

●経済協力開発機構(OECD)における連携

消費生活における国際化の進展に伴い、消費者の安全と安心の確保、消費者と事業者との間の適正な取引の確保、苦情処理や紛争解決の促進等の様々な消費者政策を進める上で、国際的な連携を確保していくことが一層重要となっています。

1969年11月、消費者政策に関する加盟国間の情報及び経験の交換、討議並びに協力の推進を目的として、経済協力開発機構(OECD)に「消費者政策委員会」(CCP)が設置されました。

日本はCCPの副議長国の一国を務め、また、CCPの下部作業部会である製品安全作業部会では議長国を務めており、通常年2回開催される本会合に継続的に出席するとともに、各種プロジェクトに積極的に参加しています。

CCPでは、これまで、国際的な消費者取引に係る諸問題等について幅広く検討していますが、最近では、特にデジタル経済化に伴う消費者問題や製品安全分野に重点的に取り組んでいます。

デジタル分野では、2014年2月に「モバイル・オンライン決済に関する消費者政策ガイダンス」、同年9月に「デジタル・コンテンツ製品に関する消費者政策ガイダンス」がそれぞれ策定され、これらのガイダンス等を踏まえ、1999年に採択された「電子商取引の文脈での消費者保護のための行動指針(理事会勧告)」の改定作業が進められました。そして、2016年3月に同行動指針を全面改正した「電子商取引における消費者保護に関する理事会勧告」(注17)がOECD理事会で採択され、現在、同勧告の実施等に関し検討が行われています。

●OECD製品安全プロジェクトについて

1.経済協力開発機構(OECD)製品安全プロジェクトと製品安全作業部会の設置

製品サプライチェーンのグローバル化等により国内外での製品安全に関する消費者被害が頻発する状況を背景に、2007年、製品に関する消費者問題についての国際連携・情報共有に焦点を当てたOECD製品安全プロジェクトが開始しました。2010年には「消費者製品安全に関する情報共有の強化に関する報告書」が取りまとめられ、その提言を実施するため、OECD消費者政策委員会(CCP)の下に製品安全作業部会が設置されました。

日本も、製品安全作業部会(年2回:2016年度は4月、11月)に継続的に出席し現在進められている各プロジェクト(消費者教育・啓発、グローバル・リコール・ポータル・サイトの機能向上や活用等)の作業・今後の検討スケジュール等についての議論に参加しました(図表II-1-6-7)。日本は2016年1月1日に議長に就任し、2016年11月の第13回本会合では、再任され、引き続き議長を務めています。2016年6月にメキシコで開催されたOECDデジタル経済に関する閣僚級会合では、日本政府代表は、製品安全作業部会議長として、グローバル・リコール・ポータル・サイトを各国のハイレベルの出席者に紹介し、グローバル経済の下、各国がリコール情報を共有することの重要性を説明しました。このような取組により、これまで参加していなかったメキシコが同サイトへの参加の意向を表明することになりました。

OECDデジタル経済に関する閣僚級会合のカンクン宣言第6項では、製品安全の強化が、オンライン取引における消費者の信頼を強化する分野として挙げられました(図表II-1-6-8)。

2.OECDグローバル・リコール・ポータル・サイト

OECD消費者政策委員会製品安全作業部会では、製品がグローバルに取引される現状に対応し、国際的な製品安全の情報共有のためにグローバル・リコール・ポータル・サイトを構築し、2012年10月から、米国、オーストラリア、カナダ、EU(28か国)の参加を得て、英語とフランス語で運用を開始しました(図表II-1-6-9)。日本も、2015年1月から参加し、日本におけるリコール情報を提供しています。2016年度には、127件のリコール情報を提供し、国際的なリコール情報の共有に努めました。グローバル・リコール・ポータル・サイトでは機能向上に向けて、製造事業者のウェブサイト情報の追加やリコール情報の検索利便性向上等の改善が進められました。今後も更なる機能面・デザイン面等の改善が図られる予定です。(URL:http://globalrecalls.oecd.org/)

3.消費者教育・啓発

OECD消費者政策委員会製品安全作業部会では、多くの国で直面する製品安全問題や課題について認識を高め、グローバルに対処するため、関係各国と協働で啓発活動を行っています。2014年はボタン電池について、2015年は洗濯用パック型液体洗剤についてグローバルな啓発活動を行いました。

2016年のOECD国際啓発キャンペーンでは、2016年6月23日から30日までが「ブラインド等窓カバーのひもの安全性に関する国際啓発週間」とされ、日本、米国、EU、オーストラリア等の25の国と地域が参加し、啓発に取り組みました。キャンペーンでは、家庭におけるブラインド類やスクリーン類のひも部分やカーテン留め等のひも状部分が、子供の首に絡まり、窒息して死に至る危険性があること、世界15か国で250件以上の死亡事故が把握されていること、子供が過ごす部屋のブラインド等には、ひも部分がない等の安全性の高い商品を選ぶこと、また、既にひものあるブラインド等を設置済みの場合は、クリップを取り付けて、子供の手の届かない位置にひもをまとめること等を周知しました。

このOECD国際啓発キャンペーンの一環として、日本でも、注意喚起「ブラインド等のひもの事故に気を付けて!」を行いました(図表II-1-6-10)。

●国民生活センター越境消費者センター(CCJ)の取組と海外連携

第1部第1章第3節に記載したとおり、消費者庁では、2011年11月から2015年3月まで、実証調査の一環として「消費者庁越境消費者センター」を開設・運営し、日本の消費者と海外の事業者、海外の消費者と日本の事業者との間の取引において発生した紛争解決の支援を行いました。2015年4月には、恒常的な業務として、同センターの運営を国民生活センターに移管し、「国民生活センター越境消費者センター(CCJ:Cross-Border Consumer center Japan)」として業務を実施しています。

国民生活センターに運営を移管した効果として、CCJは、実証調査中に積み上げたトラブル解決支援の実績と併せて、国民生活センターの有する消費生活相談への対応に関する豊富なノウハウや知見等を活用することが容易になりました。これにより、国内外いずれにおいて発生した消費者トラブルについても、より円滑な解決を図ることが可能となっています。

消費者からCCJに寄せられた相談に対しては、CCJが相談・トラブル内容、事業者との連絡可否、相談者の希望等を確認し、責任の所在を検討した上で、事業者が所在する国の消費者相談機関へ相談内容を翻訳して伝達し、対応を依頼します。依頼を受けた消費者相談機関は、同国の事業者に相談内容を伝達する等して事業者の対応を促し、事業者からの回答結果をCCJへ伝達します。CCJはその回答を翻訳した上で、消費者に対して回答内容の伝達及びアドバイスを行います。また、必要に応じて、関連機関、専門家等の紹介も行っています。なお、海外の消費者からの相談に対しても、日本の消費者からの相談と同様に、海外の消費者相談機関とCCJが連携し、CCJが日本の事業者に相談内容を伝達する等して解決に当たります(図表II-1-6-11)。

CCJが支援対象とする取引は、BtoC取引(事業者と消費者間の取引)で、インターネット取引だけでなく対面取引(店頭取引)も含んでいます。また、対象とする事業者は海外に所在する事業者であることを条件としています。したがって、消費者による取引の相手方が外資系企業の国内法人や、海外から商品を輸入、販売している国内事業者等である場合は対象外とし、全国各地の消費生活センター等を案内することとしています。なお、CCJ開設以来、2,893件(全体の約15%(注18)が相談者の望む結果で解決に至っています。

また、海外の消費者相談機関に対して何らかの形で対応依頼を行い、トラブル解決に至った件数は135件(調査依頼を行ったうちの約41%(注19)となっています。全体の解決率に対してCCJの海外消費者相談機関への依頼分における解決率が大きくなっており、越境消費者トラブルの場合、海外消費者相談機関との連携がトラブル解決に効果的であったと言えます。

なお、海外の消費者から、日本の事業者との取引に関する相談も、件数は少ないものの一定数寄せられています。

消費者庁及び国民生活センターでは、CCJの連携する海外消費者相談機関の拡充及び連携強化のための取組を行っています。これまでCCJは、米国・カナダのCBBBを始め、18の国・地域を担当する8機関と連携してきたところですが、2016年5月にはタイの消費者保護委員会事務局と、同年7月にはフィリピンの貿易産業省と、2017年2月には英国のCTSIと、同年3月にはマレーシアのNCCCと新たに連携関係を構築しました。この結果、CCJと連携する海外消費者相談機関は計12機関、これらの機関が担当する国・地域は22に拡大しました(図表II-1-6-12)。

今後、情報化やグローバル化がますます進展する中、我が国における越境取引は一層増加し、それに伴い更なる越境消費者トラブルの増加も見込まれます。こうした状況に対応するため、引き続き海外消費者相談機関への働き掛け、交渉を行い、CCJの国際的な連携体制の拡充・強化を図っていきます。

●日中韓消費者政策協議会

2016年7月、第7回日中韓消費者政策協議会が韓国・インチョンで開催されました(図表II-1-6-13)。

本協議会は、日本、中国及び韓国の消費者政策担当者が一堂に会し、各国の消費者政策や消費者問題等について、情報共有や意見交換することを目的として発足した局長級会合です。2004年にソウルで第1回会合が開催されたのを皮切りに、2年ごとに各国持ち回りで開催されています。

今回の会合では、日本から消費者庁及び国民生活センター、中国から国家工商行政管理総局及び中国消費者協会、韓国から公正取引委員会及び消費者院が参加し、各国の消費者法制の改正や、国境を越える取引における消費者の救済に関する協力などの最近の消費者政策の進展について、情報共有や意見交換が行われました。また、会合2日目には公開フォーラムが開催され、研究機関等様々な分野からの参加者も含め、活発な議論が交わされました。

次回会合は、2018年に中国で開催される予定です。

●在留外国人の国内における消費生活に係る相談体制の強化

日本に在住する外国人や外国人観光客の数は増加傾向にあります。国民生活センターでは、2016年2月に、全国の消費生活センターを対象に、外国人住民や外国人観光客を対象とした消費生活相談や啓発事業の実施状況について調査する「消費生活相談における外国人対応の現況調査」を実施しました(注20)

外国人住民からの相談に対応するために何か行っていることがあるか尋ねたところ、「行っていることがある」という割合は51.9%、「特にない」は47.1%でした。行っている内容(複数回答)は、「相談者に、日本語が話せる人と一緒に相談するよう依頼」(30.7%)が最も多く、次いで、「自治体内の外国人対応部局(多文化共生担当、外国人相談窓口等)との協力・連携」(19.0%)、「センターや自治体内の外国語が話せる職員・相談員が対応」(15.1%)などとなっています(図表II-1-6-14)。

一方、外国人観光客の消費者トラブルへの対応として行っていることがあるか尋ねたところ、「行っていることはない」と回答したセンターの割合は92.7%、「行っていることがある」という割合は4.4%でした。行っている内容(複数回答)は、「外国語版ホームページでの情報提供・注意喚起」が1.6%、「滞在中の消費に関する相談対応」が1.2%などとなっています。

訪日外国人旅行客を含めた在留外国人については、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて更に増加が見込まれるところ、消費者庁としても、在留外国人の消費者被害への対応を含む消費生活相談体制の充実・強化に向けて、「地方消費者行政推進交付金」等を活用し、地方公共団体の取組を支援しています。


  • (注17)「電子商取引における消費者保護に関する理事会勧告」全文(OECDウェブサイト)
    (英語)http://www.oecd.org/sti/consumer/ECommerce-Recommendation-2016.pdf
    (日本語仮訳)http://www.oecd.org/sti/consumer/Japanese%20Translation%20Final%20.pdf
  • (注18)解決率はCCJからの有効なアドバイスができない、又はその必要がない相談を含む全相談件数を母集団として算出。
  • (注19)18と同様。
  • (注20)調査対象は、全国の消費生活センター786か所(消費者庁「平成27年度地方消費者行政の現況調査」(2015年11月)による2015年4月1日現在の設置数)。調査方法は、調査対象の消費生活センターに調査票を郵送し、FAXにて回収する方法。有効回収数:688、有効回収率:87.5%、調査時期:2016年2月。

担当:参事官(調査研究・国際担当)