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第2部 第1章 第5節(2)「倫理的消費」調査研究会

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第5節 消費者が主役となって選択・行動できる社会の形成

(2)「倫理的消費」調査研究会

●消費者行動・意識の変化と「倫理的消費」

より良い社会に向けて、地域の活性化や雇用等を含む人や社会・環境に配慮した消費行動である「倫理的消費」への関心が高まっています。また、消費者の意識としても、環境や被災地の復興、開発途上国の労働者の生活改善等に配慮した商品・サービスを選択して消費することへの関心が高まっていることから、第3期消費者基本計画でも、このような環境等に配慮した商品・サービスの選択を可能とする環境の整備や、食品やエネルギーのロスの削減などの社会的課題に配慮した消費、持続可能なライフスタイルへの理解の促進が求められています。

こうした消費行動の変化は、消費者市民社会の形成に向けたものとして位置付けられるものであり、日本の経済社会を物心両面からより豊かにする大きな可能性を秘めています。しかしながら、こうした動きは緒に就いたばかりであり、社会的な仕組みも整備されていません。消費行動の進化と事業者サイドの取組とが相乗的に加速していくことが重要です。

以上を踏まえ、消費者庁では倫理的消費の内容やその必要性等について検討し、国民の理解を広め、日常生活での浸透を深めるためにどのような取組が必要なのかについて調査研究を行う、「倫理的消費」調査研究会を2015年5月から2017年3月までの約2年間実施しました。

●「倫理的消費」調査研究会の活動

2015年5月に始まったこの研究会は、2015年度には6回、2016年度には4回開催され、様々な分野の専門家が一堂に会し、倫理的消費に関する国内外の動向について委員からプレゼンテーションが行われたほか、専門家からのヒアリング等を行い、それまでの議論を踏まえ、2016年6月には中間取りまとめを発表しました。中間取りまとめでは、倫理的消費について消費者・事業者・行政それぞれの視点から現状と積極的意義を考察した上で、推進方策の方向性等を取りまとめました。

2年目となる2016年度には、人間が動物に対して与える痛みやストレスといった苦痛を最小限に抑えるための「アニマル・ウェルフェア(動物の福祉)」や、動物由来の素材を使用しないだけではなく、農薬や工場排水などによる環境汚染や児童労働等の問題を排除し、オーガニックコットンやリサイクル素材等を用いる「エシカル・ファッション」などについて議論が交わされました。これらの内容やエシカル消費の推進がより重要となっている地球環境の状況、今後の普及方策について等を盛り込み、2017年3月に最終報告書を取りまとめました(図表II-1-5-5)。

研究会の関連事業として、2015年11月には倫理的消費に関して先進的な英国とノルウェーの現状調査を実施しました。また、広く倫理的消費についての理解を深めるための関連事業として、倫理的消費に関するシンポジウム「エシカル・ラボ」を2015年12月に東京で、2016年7月に徳島で開催しました。

その他、「倫理的消費(エシカル消費)」という言葉が分かりにくいという声も多いことから、その趣旨が伝わる日本語表記案を2016年7月に募集しました。

また、倫理的消費に関する消費者意識の把握を目的に、2016年12月、全国の15歳から65歳までの2,500人を調査対象としたウェブアンケートによる調査を行いました。調査結果の概要としては、「倫理的消費」や「エシカル」といった用語の認知度は1割未満と低いことを示したものや、若年者の関心は比較的高いものの、実際の行動に結び付いておらず、若年層に向けた取組の重要性が示唆されるものがみられました。

●「倫理的消費」に関する今後の取組

地球は今危機的な状況下に置かれているといえます。地球温暖化や貧困、大規模災害の発生、地域経済の活性化等の社会的課題について、消費者である国民全体が果たし得る役割を考え、理解を深め、それに対するアクションを進めていくことが必要です。そのためには、社会や環境に対する負担や影響といった社会的費用や世代内・世代間の公正の確保、持続可能性を意識しつつ、社会や環境に配慮した工程・流通で製造された商品・サービスを積極的に選択し、消費後の廃棄についても配慮する消費活動である「倫理的消費」への関心を高めることが重要となります。それには、消費者の自覚や自発的な行動によって取り組むことが重要であることから、官民共同による倫理的消費の普及促進を継続していく必要があります。

今後は、様々な主体・分野の協働による、具体的な行動を伴う運動としていくためのネットワークやプラットフォームづくり、学校での教育などを通じた消費者の意識の向上、表示、認証ラベル、広報などを通じ、消費者が必要とする情報が事業者により適切に提供される環境づくり等により、「倫理的消費」の取組や意識向上を推進していくことになります。公正かつ持続可能な社会を形成していくために、地域の活性化や地球環境保全につながる倫理的消費の普及に取り組んでいくことが必要です。

COLUMN18
倫理的消費に関するシンポジウム「エシカル・ラボin徳島」を開催

図表II-1-5-5あなたの消費が世界の未来を変える


担当:参事官(調査研究・国際担当)