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第1部 第3章 第2節(1)商品やサービスを選ぶ際の消費者としての行動や意識

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第3章 【特集】若者の消費

第2節 若者の消費者トラブル

(1)若者に関する消費生活相談

●消費生活相談件数の推移

全国の消費生活センター等へ寄せられた、15歳から29歳までの若者に関する消費生活相談を年齢によって3つに区分し、この10年間の相談件数の推移をみると、2007年以降それぞれ減少傾向にあり、2012年以降はほぼ横ばいの状況となっています(図表I-3-2-11~3)。

10歳代後半の相談は、2007年には約3万件でしたが、2012年に約1.7万件となり、2016年は約1.6万件の相談が寄せられています。この年齢層の相談は性別にみると例年、男性がおおむね約6割を占めています。ただし2016年においては、男性が51.5%に対し女性が47.1%と、例年より女性の割合が大きくなっていることが特徴的です(図表I-3-2-14)。これは、第1部第1章第3節で紹介した、インターネット通販等による健康食品等の「定期購入」トラブルが増加したことの影響によるものと考えられます。

20歳代前半は成年に達し、社会人となっていく時期に当たることから、2016年は10歳代後半の2.4倍にあたる約3.9万件の相談が寄せられています。また、この年代は、10歳代後半と異なり、女性の相談が半数を超え、男性の割合を上回っています。

20歳代後半の相談件数は、この10年の推移をみると2014年までは20歳代前半を上回っていましたが、2015年以降は20歳代前半とほぼ同水準となり、2016年は20歳代前半を下回る約3.8万件となっています。性別では女性が半数を超えるという点で、20歳代前半と共通しています。

以上から、5歳単位でも若干異なる傾向があり、成年になると女性がトラブルに遭う機会が多くなることがうかがえます。

なお、少子化によってこの年齢層の人口が減少していることを考慮して、人口1,000人当たりの相談件数をみても、どの年齢層でも、相談件数が減少しています。例えば、10歳代後半は、2007年の4.7件が2016年は2.7件と20歳代に比べて少ない件数となっています。20歳代前半は、2007年は11.0件でしたが、2016年は6.4件、20歳代後半は2007年が10.7件、2016年は6.0件となっています。

人口1,000人当たりの相談件数の推移については第1部第1章第3節の図表I-1-3-2で他の年齢層と併せてみましたが、65歳以上では増加していた一方、若者は減少傾向にあり、動きが二極化しています。

こうした状況から、最近、若者の相談件数が減っていることは明らかですが、その背景としていくつかの要因が考えられます。

消費者庁「消費生活に関する意識調査」(2016年度)で、トラブルに遭った際どのような行動をとるかについて尋ねたところ、「消費生活センター等の公共の相談窓口に相談する」との回答の割合は、10歳代後半が10.9%、20歳代前半が10.0%、20歳代後半が16.3%と、全体平均の26.6%を大きく下回りました。トラブルに遭ったとしても、他の年齢層に比べ、若者にとっては消費生活センター等への相談が解決の選択肢となっていないことが分かります。

また、そもそもトラブルに遭わなくなってきているということも考えられます。例えば、若者に多くみられるといわれるキャッチセールスやアポイントメントセールス、デート商法のトラブルについて20歳代の相談件数をみていくと、2007年から2011年まで減少しており、先ほどみた図表I-3-2-12~3と同じような動きをしています(図表I-3-2-2)。

第1節において、若者の消費が堅実になってきていることを紹介しました。一方、デート商法では相手に異性に対する好意を抱かせ、そのような(偽りの)恋愛関係につけ込んで、高額なアクセサリー等の商品等を販売するケースが多く、最近の若者の嗜好には合わなくなってきていることも推測されます。

さらに、トラブルに遭っても自分自身で解決し、消費生活センター等への相談にはつながらないということも考えられます。例えば、15歳から25歳までを対象とした消費者庁「消費生活に関する意識調査」(2016年度)によると、「契約のルールや取引のトラブル防止策」を教えてもらったことがあるとの回答は53.1%で、こういった学校などでの消費者教育の効果が表れている可能性があります。他に、デジタルネイティブである若者がスマートフォン等を用い、インターネット上でトラブル解決のための情報を迅速に調べて、対応していることもあると思われます。同調査では、商品の購入やサービス利用でトラブルに遭った際、最初にとる行動として「インターネットを検索して参考になる情報を探す」と回答した割合が全体平均では49.0%のところ、10歳代後半では70.0%、20歳代前半63.2%となりました(図表I-3-2-3)。この結果からも、トラブル対応にインターネットを使っていることが分かります。

●若者に多い商品・サービス別相談

性別及び年齢層別に2016年の若者の相談を商品・サービス別にみると、男性の10歳代後半は、インターネット利用に関する内容が上位を占めています(図表I-3-2-4)。20歳代前半では、「賃貸アパート」が2番目、「フリーローン・サラ金」が3番目となり、「他の内職・副業」がみられるのも特徴です。20歳代後半は「賃貸アパート」に関する相談が最も多く寄せられています。

男性で各年齢層に共通してみられる「普通・小型自動車」は、10歳代後半に比べ、成年の方が相談件数は多くなっています。ンラインゲーム」が10歳代後半及び20歳代後半で上位にみられます。また、成年では20歳代前半、後半ともに「フリーローン・サラ金」が上位にみられます。

女性は、10歳代後半では、インターネッではト利用に関する内容と並んで、ダイエットに関連する商品である健康食品や酵素食品等に関する相談が上位にきているのが特徴です。また、「コンサート」に関する相談も多く寄せられています。20歳代前半は男性と同様、「賃貸アパート」が2番目となり、他に「脱毛エステ」を中心としたエステティックサービスについての相談も多くみられます。20歳代後半は男性同様、「賃貸アパート」の相談が最も多くなっています。また、美容医療等を含む「医療サービス」も上位にみられます。

女性では、広い意味での美容に関わる相談が多くみられるのが特徴ですが、年齢層ごとに上位にみられる商品・サービスが異なります。

また、20歳代後半では男女共通で「結婚式」に関する相談もみられ、若者の中でもライフステージの違いで相談内容が異なってくることが確認できます。

●インターネット通販に関する相談が多い

2016年の若者の相談を、年齢を3つに区分し販売購入形態別にみると、インターネット利用を含む「インターネット通販」に関する相談は、10歳代後半は約9,500件(58.4%)、20歳代前半は約1.3万件(32.7%)と最も多くなっています(図表I-3-2-5)。20歳代後半でも、「店舗購入」を下回りはするものの、約1.2万件(31.7%)寄せられており、若者の相談ではインターネットに関するものが共通して多いといえます。

「店舗購入」に関する相談は、成年と未成年とでは相談件数に大きな差がみられ、自分自身で判断して契約や購入する機会が増えることに比例して、件数が増加している傾向がみられます。また、成人直後に当たる20歳代前半は前後の年齢層と比べ、

キャッチセールス等の「訪問販売」や、「マルチ取引」に関する相談が多いことが確認できます。

●SNSがトラブルのきっかけとなるケース増加

第1部第2章でも紹介しましたが、消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)で、スマートフォンの利用用途として「SNS」と回答した人が10歳代後半、20歳代ともに7割という結果が得られたことからも分かるように、若者においては、SNS利用は日常的になっています。

SNSがきっかけとなるトラブルの相談が増加傾向にあることは第1部第1章第4節でも紹介していますが、若者はSNSの利用頻度が高いことに伴い、相談件数も他世代と比べて多い状況にあります。

20歳代前半を中心に、2014年から増加が顕著となっています。性別では、20歳代後半では女性の相談が多く寄せられています(図表I-3-2-6)。

主な事例として、未成年の相談では、「SNSで知り合った人からコンサートチケットを譲り受ける約束をして代金を支払ったが、相手と連絡が取れなくなった」といった内容が目立ちます。他に、第1部第1章第4節で紹介したダイエットサプリメント等の健康食品の「定期購入」のトラブルが2016年は未成年、成年を問わず女性に多くなっています。また、「SNSで個人からバイクを買う約束をし、代金を支払ったが商品が届かない」、「SNSで知り合った人にもうかる情報があると言われ、投資用教材を購入したがもうからなかった」等、SNSでの広告や、SNS上で知り合った人とのやり取りでトラブルに巻き込まれるケースが目立ちます。他に、「SNSで、送られてきた荷物を指定された住所に転送するだけで報酬がもらえるというアルバイトを紹介)され、身分証明書の画像など個人情報を相手に送ったところ、知らない間に自分の名義で携帯電話が契約されていた」という相談も2016年に寄せられています(注72)

図表I-3-2-2で、キャッチセールス等の勧誘に関わる相談は減少していることを紹介しましたが、それらは消費者が駅や繁華街の路上で呼び止められて営業所等へ連れて行かれ、勧誘で長時間引き止められたり、強引に、又は不安をあおられたりして商品やサービスを契約させられるものです。こういった、きっかけが対面型の相談について顕著に減ってきた中、SNS等のインターネット上の顔が見えない中でのやり取りであるという点に特徴がある相談が最近際立っていると考えられます。

COLUMN11
「取り返しのつかなくなる前にお電話ください。」


  • (注72)国民生活センター「『荷受代行』・『荷物転送』アルバイトにご注意!(速報)」(2016年7月22日公表)

担当:参事官(調査研究・国際担当)