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第1部 第3章 第1節(3)若者の消費に対する意識

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第3章 【特集】若者の消費

第1節 若者の消費行動

(3)若者の消費に対する意識

若者の平均消費性向は長期的に低下しており、いくつかの費目では支出が大きく減少していますが、若者の消費に対する意識や行動の実態はどうなっているのでしょうか。消費者庁「消費者意識基本調査」等、主に最近の調査結果から、若者の意識や行動についてみていきます。

●若者がお金を掛けていること

第1部第2章第2節で紹介した、消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)では、「お金を掛けている」との回答の割合が最も高かったのは、「食べること」で、これは若者だけでなく、全年齢層共通でした(前掲図表I-2-2-3)。

年齢が高い層より若者において、「お金を掛けている」との回答の割合が高かったものとしては、「ファッション」や「理美容・身だしなみ」といった自分の外見に対する費用、また、「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」といった「コト消費」関連の費用が挙げられます。

また、「貯金」と回答した割合が高く、若者が所得を貯蓄に回していることが裏付けられます。ここから若者が将来に不安を抱えているために備えを増やしていることがうかがえます。

●買物好きな若者は多い

消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)によると、「買物が好き」かどうかについての調査で、10歳代後半から30歳代まででは「買物が好き」に「当てはまる」(「かなり当てはまる」+「ある程度当てはまる」。以下同じ。)と回答した人の割合が7割を占めており、他の年齢層より高い割合となっています(図表I-3-1-11)。消費支出は減少傾向にある若者ですが、買物が嫌いではなく、むしろ、買物好きが多いことが分かります。特に、女性は10歳代後半で85.7%、20歳代で83.1%が「当てはまる」と回答しています。

また、自身の消費行動について、「新し物好き」に「当てはまる」と回答した割合は、全体で37.5%のところ、女性の10歳代後半及び20歳代では6割を超え、男性の10歳代後半でも54.1%となっています。また、「衝動買いをする」に「当てはまる」と回答した割合については、全体では27.8%のところ、20歳代では女性44.6%、男性35.6%と、それぞれの性別で最も高くなっています。

総務省「社会生活基本調査」により、1日当たりの買物時間をみると、1976年から2011年までの5年ごと時系列推移で男性に比べ女性の買物時間は長く、性別によって明らかな違いがある一方、男性の買物時間は1976年と比べて大幅に伸びています(図表I-3-1-12)。特に高齢層は昔と比べ、買物時間が長くなっており、買物を楽しむ人が増えているのではないかと考えられます。

女性は時系列推移で全体的には男性ほどの変化はみられません。また男女とも、10歳代後半や20歳代では、他の年齢層と比べ短時間となっています。

●若者の消費は堅実

消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)では買物好き、衝動買いをするなどの回答割合が若者は高かったにもかかわらず、実際の消費行動には、先にみたように平均消費性向が下がっていることから、堅実さがうかがえます。お金を掛けているものや今後お金を掛けたいものが「貯金」である若者もかなりの割合で存在します。

また、「買う前に機能・品質・価格等を十分に調べる」かについては、「かなりあてはまる」と回答した人の割合は、全体で17.3%のところ、10歳代後半では21.6%、20歳代では23.9%と高くなっており、この結果からも堅実な一面がうかがえます。

●豊かな暮らしに最も重要なものは年齢層で異なる

消費者庁「消費生活に関する意識調査」(2016年度)によると、豊かな暮らしに最も重要だと思うものは、40歳代までは「お金」という回答が最も多くなりました(図表I-3-1-13)。一方、「健康」との回答の割合は年齢が上がるほど高くなります。他には、若者は「時間」との回答の割合が他の年齢層より高く、10歳代後半で「家族や友人とのつながり」との回答が30.9%という結果でした。年齢層により豊かな暮らしを送るための要素が異なることが確認できます。また、若者は先にみた消費支出の動きや将来に対する不安、貯蓄とも連動し、「お金」が暮らしにとって重要であると認識していることが分かりました。

●「コト消費」に関心が置かれるように

近年の消費行動について、モノやサービスを購入する「モノ消費」より、購入したモノやサービスを使ってどのような経験・体験をするかという「コト消費」に、消費者の関心が置かれているといわれています。

このような傾向の背景の一つとして、情報化の進展によりデジタル化されたコンテンツが複製によって簡単に手に入るようになり、モノを所有することの意義が低下する、また、デジタル化されていない情報やコンテンツの価値が相対的に高まるという影響が生じたことなども考えられます(注67)

「コト消費」の傾向は、デジタルネイティブと呼ばれる世代に当たる若者の消費行動において、他の年齢層より強く表れるとみることもできます。実際、消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)によると、「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」といった「コト消費」について、お金を掛けていると回答した人の割合は、24歳までの年齢の若い層で高くなっています(図表I-3-1-14)。

他に、「交際(飲食を含む。)」にお金を掛けていると回答した人の割合は、20歳代で45.2%と、全体の29.0%を大きく上回っています。今後お金を掛けたいとの回答の割合でも、全体が25.7%のところ、20歳代では39.4%であり、人とのつながりに軸を置いた「コト消費」を重視していることが分かります。「旅行」にお金を掛けている、又は今後お金を掛けたい、との回答にも同様の傾向がうかがえます。

また、若者が中心となって広まった「コト消費」もあります。最も普及した「コト消費」としては、ハロウィン(注68)が挙げられます。ここ数年の間に、若者が仮装し、友人と楽しむ姿が日本でもよく見られるようになり、その市場規模はバレンタインデーを超えたという試算(注69)もあります。

2017年2月から、毎月最終金曜日を「プレミアムフライデー」と位置付ける取組が始まりました。これは、買物や家族との外食、観光等の個人が幸せや楽しさを感じられる体験や、そのための時間の創出を促すことで、生活スタイルの変革への機会の提供や、コミュニティ機能強化や一体感の醸成、デフレ的傾向を変えていくきっかけとなるなどの効果につなげていく取組です。今後、この取組が広がっていくことにより、若者のみならず幅広い年齢層において、「コト消費」の広がりにもつながっていく可能性があります。


  • (注67)総務省 2016年「情報通信に関する現状報告」第1章第4節。
  • (注68)欧米等で、収穫祭を起源とし、かぼちゃをくりぬいた提灯を飾ったり、子どもが魔女やお化けに仮装して、近所にお菓子をもらったりすること等を楽しむ伝統的な行事。
  • (注69)一般社団法人日本記念日協会・記念日文化研究所による2016年の推計市場規模は、「バレンタインデー」1340億円、「ハロウィン」1345億円。

担当:参事官(調査研究・国際担当)