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第1部 第1章 第4節(2)高齢者が巻き込まれる詐欺的なトラブル

消費者意識・行動と消費者問題の動向

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第4節 最近注目される消費者問題

(2)高齢者が巻き込まれる詐欺的なトラブル

●詐欺的な手口に関する高齢者のトラブルには依然として注意

近年、高齢者に関する消費生活相談において、詐欺的な手口に関する相談(注37)が多いため、その状況をみていきます。「詐欺的な手口」とは、事業者側の「だます」という意思を有することを心証として消費者や消費生活センター等が強く持った場合をいいます。

2010年以降の数年間をみると、詐欺的な手口に関する相談は2014年まで増加傾向にあり、2016年も依然として高水準にあり前年から横ばいの状況となっています(図表I-1-4-10)。

図表I-1-3-10でみたように、高齢者の相談全体は減少傾向にあるものの、このような詐欺的な手口に関する相談の割合は増加し続けており、見守り活動の重要性を改めて認識すべき実態がうかがえます。

詐欺的な手口のうち、高齢者が巻き込まれるトラブルの典型例である、複数の事業者が役回りを分担して消費者をだまそうとする「劇場型勧誘」に関する相談は、この数年数多く寄せられ、2014年には2万件近くありました。しかし、2015年は約1.1万件と減少し、2016年も約6,300件と前年から約4割減少しました。ただし、その中で高齢者の占める割合は8割を超えており、手口や対象となる商品にも変化がみられるため、引き続き注意が必要です。

●仮想通貨をめぐる勧誘トラブル

インターネットを通じて電子的に取引される、ビットコイン等のいわゆる「仮想通貨」をめぐり、投資や利殖をうたってその購入を勧誘する際のトラブルについての相談が高齢者を中心に増加しています(注38)(図表I-1-4-11)。2014年4月以降の推移をみると、2016年10月以降に急増しています。

主な相談事例は、「必ず値上がりすると言われて仮想通貨を購入する契約を結び、代金を支払ったが解約できない」などといった電話勧誘や訪問販売によるトラブルが多くなっています。また、「仮想通貨を代わりに買ってくれれば高値で買い取ると言われ契約したが、約束どおりに買い取られない」などといった劇場型勧誘に関するトラブルも多くみられます。 仮想通貨は、資金移動や決済手段として利用されるほか、投資目的として購入されていますが、その種類には様々なものがあり、取引相場の価格変動リスクなどを伴うため、将来必ず値上がりするというものではありません。

しかし、相談事例では、事業者から仮想通貨の取引価格が将来必ず値上がりするかのような事実と異なる説明が行われ、それをうのみにした消費者が、仮想通貨の価格変動リスクを十分に理解せず契約しているケースがみられます。

さらに最近では、知人から「必ず値上がりする」と勧められたり、セミナーで勧誘され、売却利益を目的に購入したものの、もうかるどころか支払ったお金さえ戻ってこないなど、マルチ商法のような勧誘も目立ってきており、高齢者以外でのトラブルも目立ってきています。

2017年4月から仮想通貨に関する新たな規制が設けられ、国内で仮想通貨と法定通貨との交換サービスを行うには、仮想通貨交換業の登録が必要になりました。契約をする際は、登録事業者であるか確認し、「必ずもうかる」という言葉はうのみにせず、リスクも十分理解するようにしましょう。

●レンタルオーナー契約によるトラブル

その他、全国の消費生活センター等には、電話や訪問などで「元本保証で高利回り」などとあたかも「投資」や「出資」、「預金」であるかのように勧誘され、商品の売買契約と賃貸借(レンタル)契約等を同時にしたという消費者の相談が寄せられています(注39)。中でも高齢者の相談が目立っています。

相談事例では、「契約後、事業者が突然破綻したため、約束どおりのレンタル料などの支払いがなくなり、支払ったお金(元本)も戻らなくなってしまった」、「半年後には支払った分全額が戻ると言われて次々に契約をしたが事業者と連絡がとれなくなった」などという内容が多くみられます。

こうした相談における契約内容をみると、消費者は、コンテナや太陽光パネル等の商品を購入し、購入した商品を事業者に一定期間レンタルするなどの契約(レンタルオーナー契約)を結んでいます。この契約では、購入した商品は消費者には引き渡されないまま、事業者は、消費者が購入した商品を第三者に転貸するレンタル事業などを行い、これによって得られた収益の一部をレンタル料などの名目で消費者に支払うことになっています。中にはレンタル期間が経過した後に、購入した商品を事業者が消費者から購入代金と同額で買い取る契約になっているものもあります(図表I-1-4-12)。

しかし、実際には、消費者はレンタル事業の実体や自身が購入した商品の存在などを確認することが困難であることが多く、事業の実体がなければ、いずれ事業者が破綻し、契約どおりのレンタル料などは受け取れず、支払ったお金(元本)も戻らなくなってしまうリスクがあります。

こうしたリスクを十分に理解しないまま、事業者のセールストークにより、元本保証の投資商品や預金などのつもりで契約しているケースも目立ちます。また、お金が戻らない状況にある消費者に対し、別の事業者が被害回復を持ちかけ、高額な手数料を要求する等、二次被害が疑われる場合もあります。

事業者のレンタル事業の実体が確認できない場合や、事業者が破綻した場合のリスクが十分に理解できない時は、契約するのをやめましょう。

(3)最近目立つその他のトラブル

●ガスの小売全面自由化に関する相談

2017年4月1日から、ガスの小売全面自由化が始まりました。これまで、都市ガスの契約は地域ごとに特定の事業者としか結ぶことができませんでしたが、小売全面自由化により参入したガス小売事業者の中から消費者が契約先を選択することが可能となります。

ガスの小売全面自由化に関連して、消費生活センター等へ寄せられた相談事例は、「しつこいアンケート電話がかかってくる」、「訪問され、強引に説明をされた」、「制度が変更になったが、自分ではどう事業者を選べばよいか分からない」などが主なものです。

契約先の切替えに当たっては、原則として新たな機器を購入する必要はありません(ただし、オール電化やLPガスから都市ガスへの切替えの場合は、都市ガス用の配管やガス機器(ガスコンロ、ガス給湯器等の消費機器)の調整、取替えなどが必要になる場合があります。)。ガスの小売全面自由化に便乗したガス機器等の販売が行われていますが、必要性を十分に検討して購入を判断しましょう。

ガス小売事業者の代理店を名のる電話であっても、不審に思った場合にはその場で安易に自分の情報を伝えず、社名や担当者名、連絡先等を確認し、当該ガス小売事業者にそれを伝えた上で本当に代理店かどうかを確認しましょう。

ガスの小売全面自由化が始まり、新たなガス小売事業者、新たなメニューでのガスの供給が行われることになり、小売全面自由化前と異なり、複数の料金メニューが提供されることがあります。このため、新たな契約締結の際、供給条件を十分に確認していないと、供給開始後に、違約金条項が含まれていたことが判明する等、思っていた契約内容と違うといった状況が生じることがあります。ガス小売事業者は、契約内容(料金の算定方法、供給開始の予定年月日や内管等の設備の工事に伴い消費者に費用の負担が生じるのか否か等)について契約締結前に説明することが義務付けられていますので、契約締結する際には、ガス小売事業者にしっかりと契約内容について確認し、納得した上で契約を締結することが重要です。

その他、ガスの小売全面自由化に関し、小売契約を締結する際のトラブル等があれば、経済産業省電力・ガス取引監視等委員会の相談窓口(03-3501-5725)又は最寄りの消費生活センター等に相談しましょう。


  • (注37)「詐欺的な手口」とは、事業者側の「だます」という意思を心証として消費者や消費生活センター等が強く持った場合に選択する「詐欺」や「架空請求」、「融資保証金詐欺」、「還付金詐欺」の項目が入力された相談。
  • (注38)国民生活センター「投資や利殖をうたう仮想通貨の勧誘トラブルが増加―「必ず値上がりする」などの説明をうのみにせず、リスクが理解できなければ契約しないでください―」(2016年2月18日公表)
  • (注39)国民生活センター「レンタルオーナー契約によるトラブルにご注意―元本保証、高配当と言われても、業者が破綻すれば、レンタル料も受け取れず、「元本」もほとんど戻りません―」(2016年9月8日公表)

担当:参事官(調査研究・国際担当)