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第1部 第1章 第3節(1)2016年の消費生活相談の概況

第1部 消費者意識・行動と消費者問題の動向

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第3節 消費生活相談の概況

(1)2016年の消費生活相談の概況

●全国の消費生活相談は前年より減少

全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談の件数について、最近の推移をみると、2013年から2015年にかけては年間90万件を超えていましたが、2016年は88.7万件となり、前年と比べ約5万件減少しています(図表I-1-3-1)。

図表I-1-3-1で長期的な相談件数の推移をみると、2004年度がピークとなっています。これは、架空請求に関する消費生活相談が67.6万件と、相談全体の35.2%を占めるほど急増したことが大きな要因として挙げられます。その後、架空請求に関する相談は大きく減少し、2011年には1.9万件となりました。しかし、再び増加傾向に転じ、2016年は7.7万件となりました。総件数が減少している中、架空請求に関する相談は2016年も前年と同水準の件数となっており、この数年では一番多く、全体の8.6%を占めています。スマートフォンの普及により、身に覚えのないデジタルコンテンツの利用料や会費等についての請求メールが届くケースが増え、相談が多数寄せられていることが増加の要因として挙げられます。

そのほか、2016年の消費生活相談件数が、この数年と同様に依然として高水準である要因として、消費生活にこれまで以上に情報化が浸透していることが挙げられます。

第1部第2章でも紹介するように、携帯電話が普及する中、特にスマートフォンへの移行により、従来に比べ消費者一人一人がウェブサイトにアクセスする機会が増えています。それにより、インターネット通販で商品やサービスを購入する機会が増えたり、ウェブサイトを利用して様々な情報を簡単に入手できるようになったりする等、便利になった反面、トラブルに巻き込まれるケースも比例的に増加しています。また、ソーシャルメディアを通じてコミュニケーションの在り方も多様化し、メリットもある一方、そこからトラブルへとつながっている相談も目立つようになってきています。

さらに、65歳以上の高齢者の生活にもこれまで以上に情報化が浸透していることも大きな要素の一つです。

一方、2014年と比べ、2015年、2016年と相談件数がやや減少している要因として、ここ数年深刻であった高齢者における金融商品への投資等に関する相談が徐々に減少してきていることが挙げられます。

そのほか、消費者行政や様々な主体による消費者への普及啓発、情報提供等により、消費者被害の未然防止の効果が徐々に現れている、また自分自身で早めに解決するようになっているとも考えられます。

少子高齢化による人口の影響を除いて、2007年以降の相談件数の推移をみていくと、年齢層により増減の動きが異なります(図表I-1-3-2)。1,000人当たりの相談件数は2007年では30歳代が最も多く11.5件でしたが、2016年は7.1件と減少しています。20歳代も2007年は10.8件であったのが、2016年は6.2件になっており、長期的に減少傾向にあります。また20歳未満は、2007年1.7件から2016年は1.0件と、他の年齢層に比べ人口で調整しても低い水準にあり、20歳代と同様減少しています。

他方、65歳以上は2007年が5.5件でしたが、2016年には7.1件と増加しています。80歳以上についてみると、2007年は4.3件でしたが、増加傾向が顕著で、特に2013年には8.4件と急増しています。これはその時期に目立った「健康食品の送りつけ商法」があったことが影響しています。

このように、人口要因を除いてみると若年層では減少、高齢層では増加と、年齢層で傾向が異なっています。平均では、2007年が8.1件であったのに対し、2016年は7.0件となっています。1,000人当たりの相談件数が減少しているということは、全体としては相談する人が減っていることを意味していますが、人口規模が大きくなっている高齢層で、1,000人当たりの相談が増加していることがけん引して、最近の相談総件数に表れていることがうかがえます。なお、近年の高齢層の相談の増加の背景には、高齢者を対象とした詐欺的手口の増加や、早めの相談を促す啓発活動の効果、見守り体制の強化による相談の掘り起しが浸透している等の可能性もあります。

●「通信サービス」に関する相談件数が突出

2016年の消費生活相談を、相談件数と相談1件当たりの実際に支払った金額(平均既支払額)の関係でみたところ、デジタルコンテンツやインターネット接続回線等の「通信サービス」が約26万件と最も相談件数が多く、相談全体の約3割を占め、他の商品・サービスの相談と比べ突出しています(図表I-1-3-3)。2番目に相談件数が多い「金融・保険サービス」の約6.9万件と4倍近い差がみられます。また、「通信サービス」の相談1件当たりの平均既支払額は2.7万円となっています。相談件数が2番目に多い「金融・保険サービス」は、平均既支払額が74.7万円と高額です。「金融・保険サービス」のうち、「ファンド型投資商品」や「公社債」等の投資に関する相談件数は、前年を下回っているものの、平均既支払額は増加しています。

相談件数が3番目である「教養娯楽品」には、新聞やスマートフォン、パソコンソフトやパソコン関連用品、腕時計等、様々な商品が含まれています。また、4番目の「食料品」には2016年は後述する健康食品の定期購入の契約トラブルが多く含まれています。5番目の「他の役務」には、様々な専門サービスが含まれますが、2016年では、主なものとしてアダルト情報サイトの架空請求トラブルに巻き込まれた消費者が、解決するため相談したところ高額な請求を受けた等の「興信所」に関する相談が挙げられます。

●相談1件当たりの平均金額は減少傾向

相談1件当たりの平均金額について、請求された又は契約した金額である「契約購入金額」と実際に支払った金額である「既支払額」とでそれぞれの推移をみると、全体、65歳以上の高齢者、65歳未満の全てにおいてすう勢として減少しているものの、2016年は高齢者の契約購入金額以外は前年よりやや増えており、全体の平均は、1件当たり契約購入金額が約106万円、既支払額は約42万円となっています(図表I-1-3-4)。

また、2016年に寄せられた相談全体の契約購入金額及び既支払額それぞれの総額を見ると、契約購入金額総額は4329億円、既支払額総額は1494億円と前年を下回りました。このうち高齢者に関するものは、契約購入金額では1326億円と全体の30.6%を占め、既支払額では617億円と全体の41.3%を占めています(図表I-1-3-5)。

高齢者の相談1件当たりの平均金額は低くなってきているものの、平均既支払額は約69万円で、65歳未満の約30万円を40万円近く上回り、2倍以上であること、前年よりやや増加していること、また、相談全体の既支払額総額の約4割を高齢者が占めていることから、高齢者の消費者被害は高額で、依然として深刻であることを示しています。

●属性別にみた2016年の相談状況

2016年の消費生活相談について、属性別での状況をみると、年齢層別では65歳以上の高齢者が27.5%を占め、高齢者の割合が大きいことが分かります(図表I-1-3-6)。さらに、10歳ごとの区分でみると40歳代が15.8%と最も大きな割合を占め、次いで60歳代、50歳代の順となっています。

性別では、女性が49.0%、男性が46.6%とやや女性が多くなっています。職業等別では、給与生活者が38.6%と最も多く、次いで無職が24.7%となっています。無職の割合が大きいのは、高齢者の相談が多いことと連動しています。

性別により寄せられる相談件数に大きな差がある商品・サービスは、女性が男性の2倍以上の「食料品」、「被服品」、「保健衛生品」、「クリーニング」、「教育サービス」、「保健・福祉サービス」と、男性が女性の2倍以上の「車両・乗り物」です。

さらに性別、年齢層別に区分してみると、相談件数は60歳代男性が約7.1万件、40歳代女性が約7.4万件と、それぞれの性別において最も多くなっています(図表I-1-3-7)。その他、40歳代男性の相談件数が約6.5万件となっています。

商品・サービス別では、性別を問わず幅広い年齢層で「通信サービス」が共通して大きな割合を占めていますが、これはウェブサイトを利用したデジタルコンテンツや、インターネット接続回線、携帯電話サービス等に関する相談が多いことによるものです。また、70歳代女性では「金融・保険サービス」の相談件数が多く、割合も1割を超えていることから、金融商品への投資勧誘等のターゲットとなり、トラブルに巻き込まれていることがうかがえます。

次に、商品・サービスを更に詳細に区分して上位商品をみると、アダルト情報サイトや何らかのウェブサイトに関連する「デジタルコンテンツ」についての相談が最も多く、他の商品・サービスを大きく引き離しています(図表I-1-3-8)。また、2番目に多いのは「インターネット接続回線」となっており、ウェブサイトのコンテンツと、それを利用するための通信サービス等のインターネットに関連した商品・サービスについての相談が大きな割合を占めていることが分かります。

年齢層別にみても、70歳代までの各年齢層で「デジタルコンテンツ」についての相談が最も多く寄せられており、「インターネット接続回線」についての相談も年齢層を問わず多くなっています。その他、幅広い年齢層で相談が多いのは、「不動産貸借」、「フリーローン・サラ金」、「工事・建築」、「携帯電話サービス」です。

年齢層別には、20歳代で「エステティックサービス」、20歳代から60歳代までで「四輪自動車」が上位にあります。また、20歳未満と80歳以上の各年齢層で「健康食品(全般)」及び「他の健康食品」が上位にあります。また、30歳代から50歳代までにおいても「他の健康食品」が上位にみられますが、これは健康食品を中心とした「定期購入」契約のトラブルによる相談の増加が影響しています。

近年、高齢層で多かった「ファンド型投資商品」等の金融商品が全ての年齢層において上位商品となっていない点が2016年の特徴です。

●学生の相談はインターネット利用のトラブルが上位

2016年の相談を、学生別に小学生、中学生、高校生、大学生等と分類してみると、前述した年齢層別の相談状況と同様に、インターネットを利用した、アダルト情報サイト、オンラインゲーム等の「デジタルコンテンツ」(注23)がそれぞれ最も多いという点は共通しています(図表I-1-3-9)。

「デジタルコンテンツ」のほかには、小学生の場合はトレーディングカード等の「他の玩具・遊具」や、「電子ゲームソフト」といった、オンライン以外のゲーム関係がみられます。中学生では健康食品、携帯電話や「学習塾」がみられます。高校生ではダイエットサプリメント等の健康食品、「基礎化粧品」、コンサートチケット等の「コンサート」等、インターネット通販を利用してのトラブルがみられます。大学生等になると「不動産貸借」、「テレビ放送サービス」、「インターネット接続回線」といった、一人暮らしを始めた際にトラブルに遭いやすい商品・サービスについての相談が上位となる点が特徴的です。また、「エステティックサービス」も20歳代と同様、上位に来ています。また、「興信所」は、主にスマートフォン等でアダルト情報サイトにアクセスして請求を受け、被害救済を目的に相談をしたものの高額請求を受けたというトラブルが増えていることにより、上位に来ているものと考えられます。

●高齢者に関する消費生活相談件数は依然として高水準

65歳以上の高齢者に関する消費生活相談件数について、この10年間の推移をみると、2013年の26.5万件以降減少傾向にあり、2016年は24.4万件で前年を下回りました(図表I-1-3-10)。しかし、2012年以前と比較すると、依然として高水準にあるといえます。

また、5歳単位で内訳をみると、この10年間で60歳代後半で1.6倍、70歳代前半で1.3倍、70歳代後半で1.6倍、80歳代前半で1.8倍、85歳以上で2.5倍と、年齢が高い層ほど増加傾向が強く、トラブルの当事者の高年齢化が進んでいます。

高齢者に関する消費生活相談のうち上位商品を2010年、2013年、2016年と最近の3年ごとにみると、数年でもトラブルの内容の変化が確認できます。2010年は「フリーローン・サラ金」に関する相談が最も多く、「未公開株」など金融商品への投資に関する相談が上位にあります。2013年は「健康食品の送り付け商法」の影響で、健康食品に関する相談が多く、上位に来ています。また、この年は「ファンド型投資商品」が金融商品への投資に関する相談の主なものでした。2016年は「商品一般」以外では「アダルト情報サイト」、「光ファイバー」やデジタルコンテンツ等のインターネットに関連した相談で上位が占められています(図表I-1-3-11)。

●高齢者・障害者等に関する見守りの強化は重要

高齢者に関する消費生活相談が多い中で、認知症等の高齢者(注24)に関する相談件数は、高齢者全体と同様、2013年以降は減少傾向にありますが、この10年の推移でみると依然として高水準にあります(図表I-1-3-12)。高齢者全体では本人から相談が寄せられる割合は約8割であるのに対し、認知症等の高齢者に関する相談では、本人以外から相談が寄せられることが多く、本人からの相談は2割に満たない状況です。

2016年の認知症等の高齢者の相談を販売購入形態別にみると、「訪問販売」の割合が高齢者全体より大きいことが特徴です(販売購入形態別の相談については後述。)。「訪問販売」のうち、具体的には「新聞」や「屋根工事」、「浄水器」等が主な商品・サービスとなっています。

認知症等の高齢者は事業者からの勧誘や契約締結の場面で必要な判断能力が不十分な状態にあるために、一般の高齢者よりトラブルに遭いやすい状況にあります。また、一般の高齢者よりもトラブルに遭っているという認識が低く、問題が顕在化しにくい傾向にあります。

以上のことからも、消費者トラブルに巻き込まれないよう、特に周囲の見守りが必要なことが分かります。

また、障害者等(注25)に関する相談においても、本人以外から寄せられることが多く、本人が十分に判断できない状態にもかかわらず、事業者に勧められるままに契約したり、買物や借金を重ねたりするといったケースがみられます(図表I-1-3-13)。

トラブルの未然防止や被害の拡大防止には、周囲の気付きが不可欠です。家族のみならず、近隣住民や福祉事業者、行政機関等が協力して、見守りを強化していくことが重要です。

また、本人に代わって財産管理を行ったり、判断を助けたり、本人が行った不利な行為を取り消したりして、本人を守る役割を持つ成年後見制度の活用も、判断能力の不十分な方々の保護や支援に有用です。

●販売購入形態別では「通信販売」の割合が増加

どのような購入の経緯でトラブルとなっているか、販売購入形態別の消費生活相談割合の5年間の推移をみていくと、全体では「店舗購入」の割合が2012年の32.5%から徐々に減少し、2016年は27.7%となっている一方で、「通信販売」(「インターネット通販」と「インターネット通販以外の通信販売」の合計。以下この項において同じ。)が2012年の29.7%から2016年は35.6%へと増加しています。細かくみていくと、「インターネット通販」の割合が19.4%から26.8%へと増加したことも確認できます(図表I-1-3-14)。

65歳未満に関する相談は、全体と同様、「店舗購入」の割合が減少していく一方で、「通信販売」が2012年の36.2%から2016年は43.5%へと増加しており、2016年は「インターネット通販」が34.8%と、29.9%の「店舗購入」を上回る状況となっています。

65歳以上の高齢者に関する相談は、65歳未満と比べ「訪問販売」、「電話勧誘販売」の割合が大きいことが特徴です。しかし、「電話勧誘販売」の割合は減少傾向にあります。一方、「インターネット通販」の割合が徐々に増加し、2016年は15.2%で、15.5%の「訪問販売」とほぼ同じ割合になっています。図表I-1-3-11で2016年の高齢者に関する消費生活相談の上位商品・サービスに、インターネットに関連したものが占めるようになったことを紹介しましたが、ここでも最近は高齢者でも「インターネット通販」におけるトラブルが増えていることが分かります。

また、65歳以上の高齢者のうち認知症等の高齢者の相談について、2016年の相談状況をみると、先に述べたように「訪問販売」が40.7%を占めていることが特徴的で、「電話勧誘販売」の割合が大きく、他方「店舗購入」、「通信販売」の割合が小さいなど、高齢者全体とも傾向が異なることが確認できます。

●「通信販売」の中では「インターネット通販」に関する相談が増加

先の図表I-1-3-14で紹介した「通信販売」の中の「インターネット通販」に関する相談については、ウェブサイトで消費者が購入したい商品を注文して、その商品が数日のうちに自宅に届く、又はサービスを利用するために予約をするといった、いわゆる通常のインターネット通販よりも広い概念を含んでいます。

「アダルト情報サイト」に代表される、ウェブサイトの利用料、「オンラインゲーム」等の「デジタルコンテンツ」も、消費生活相談情報では「インターネット通販」に入るため、データの見方には注意が必要です。

そこで、2016年の「インターネット通販」を「デジタルコンテンツ」と「デジタルコンテンツ」以外の商品・サービスに分類してみると、「デジタルコンテンツ」が63.0%、「デジタルコンテンツ」以外の商品・サービスが36.9%と、6割以上が「デジタルコンテンツ」に関する相談であることが分かります(図表I-1-3-15)。

相談の具体的な主な商品・サービスは、いわゆるインターネット通販においては、商品は健康食品、化粧品、「パソコンソフト」等が多く、サービスでは、アダルト情報サイトに関するトラブルに関連して「興信所」、アフィリエイト等の副業、「モバイルデータ通信」等が主なものとして挙げられます。

「デジタルコンテンツ」では「アダルト情報サイト」や「出会い系サイト」、「オンラインゲーム」等が多くなっています。

●トラブルになりやすい商法や手口に関する相談

トラブルになりやすい商法や手口には様々なタイプのものがありますが、主なものを図表I-1-3-16に挙げ、その相談件数の推移も示しています。

このうち、「架空請求」や「身分詐称」が増加傾向にあります。「架空請求」は、スマートフォン等にメールなどで、使った覚えのないウェブサイト利用料の未納料金についての請求が送られてくるという内容が代表的です。「身分詐称」は、主に社会保険料の還付金詐欺等の相談を表しています。

他には、「サイドビジネス商法」について、2015年以降の増加が目立っています。これは、アフィリエイト等の副業の相談が影響しています。「二次被害」は、2016年に増加がみられますが、アダルト情報サイトからの請求に関する探偵業者等への相談で二次被害に遭ったというケースの急増を示しています。

一方、数年前に非常に多かった「利殖商法」や「劇場型勧誘」等の金融商品への投資に関する商法・手口の減少が顕著となっています。減少しているものの中には、手口が消費者に少しずつ認知されることで被害の未然防止につながり、相談件数が減ってきているものもありますが、悪質事業者が新たな手口へ移ったために相談件数が減った可能性のあるものもあります。


  • (注23)他に漫画サイト、アニメサイト、占いサイト、内容不明の有料情報サイトに関する相談など。
  • (注24)トラブルの当事者が65歳以上で、精神障害や知的障害、認知症等の加齢に伴う疾病等、何らかの理由によって十分な判断ができない状態であると消費生活センター等が判断したもの。以下同じ。
  • (注25)トラブルの当事者が心身障害者又は判断能力の不十分な方々であると消費生活センター等が判断したもの。

担当:参事官(調査研究・国際担当)