記者会見要旨
(2019年5月31日(金) 16:10~16:30 於:消費者庁6階記者会見室)
発言要旨
(中川委員長)
よろしくお願いいたします。
本日の委員会では、歩行型ロータリ除雪機による事故の調査報告を取りまとめ、決定いたしました。
本件は、平成30年2月に調査対象として選定し、調査を開始いたしました。昨年11月には、その時点で得られた知見をもとに、経過報告を公表しております。
まず、事故の発生状況について、12道県の協力を得て、調査委員会が独自に除雪機の事故情報を収集したところ、平成29年11月から30年3月の間に、少なくとも死亡事故8件を含む98件の事故が発生していることを把握いたしました。
それらの情報も踏まえ、除雪機による事故の主な類型を4つに整理し、現地でのヒアリング等も活用しつつ、それぞれの類型での事故要因を分析し、再発防止策を検討いたしました。
再発防止策の検討に当たっては、郵送及びウエブでのアンケート調査による使用者への実態調査、除雪機の製造業者等へのヒアリング調査に加え、複数の安全装置について、その有効性を確認するため、除雪機の実機を用いた検証を行いました。
調査の結論といたしましては、大きく3点になります。
1点目は、設計の改善です。現行の除雪機においては、デッドマンクラッチと呼ばれる安全装置のみが、業界の自主規制によって標準装備とされております。その他の安全装置は標準装備に位置づけられておらず、また、デッドマンクラッチ自体にも、ヒューマンファクターの観点から、安全装置として幾つかの課題が確認されました。そのため、単一の安全装置に頼るのではなく、安全装置の多角化という考え方を設計に取り入れることが、除雪機の使用による事故リスクの軽減のために有効と考えました。これが第1点目です。
2点目は、事故情報の収集及び共有に関する課題であります。事業者による設計改善のためには、事故情報の活用が必要となりますが、今回の調査の結果、製造事業者等において事故情報を把握することには困難な面があることが明らかになりました。これは被害者と製造業者が直接向き合うことがなかなか感情的に難しいということで、製造業者等には意外に事故情報が入ってこないということでございます。そのため、消費者安全法などの関連法令に基づき、消費者庁やNITEなどの機関において、適切に事故情報を把握、収集し、製造業者への共有を図る。そのような体制づくりが必要であると考えました。
3点目は、事故リスクの周知です。使用者がひもなどでデッドマンクラッチを縛りつけることで、安全装置としての機能を無効化し、除雪機を使用するなど、不適切な使用が行われている実態が明らかとなりました。除雪機の適切な使用を促すため、製造業者等や地方公共団体、国の機関などから使用者に対して、除雪機による事故リスクを継続的に周知することが必要と考えました。
以上3点を踏まえまして、経済産業大臣及び消費者庁長官に対して、必要な対応を行うよう意見をすることといたしました。意見も3点に分かれます。
1点目は、これが一番本質的な対策ですが、現行の除雪機の安全装置に関する課題を踏まえ、安全装置が多角化された除雪機を開発すべきであるということです。その上で、使用者の買いかえを促すなど、開発された除雪機の普及も図るべきであると考えます。安全装置が多角化された除雪機の開発が最も本質的な再発防止策であると。これを速やかに進めていただくことが重要である。これが第1点目です。
2点目は、先ほども申しましたけれども、事故情報の収集と共有についての課題を克服するということです。除雪機による事故の情報が把握され、製造業者等に適切に共有されると。そういう仕組みを構築する必要があると考えます。具体的な取り組みといたしましては、例えば事故情報の製造業者等への共有が充実するよう、NITEが製造業者の協議会,すなわち除雪機の安全協議会に参加して情報交換を行うということ。また、除雪機による事故情報を製造業者間で共有する。例えば安全協議会、業界団体を通じて共有し活用するための仕組みを、協議会、業界団体の内部に構築するなどが考えられます。
そして、第3点目が、とはいえ、第1点目として申し上げた安全装置が多角化された新たな除雪機の開発、販売はまだこれから先のことになりますので、現在ある除雪機については、その事故リスクを周知することが非常に重要ということになります。現行の除雪機は、多くはデッドマンクラッチだけは標準装備されていると。中にはそれさえないものもありますが、そういう現状を踏まえまして、使用者に継続的に事故リスクを周知する。これが第3の対策になります。
以上が報告書の内容についての簡単な説明でございます。この内容を補足するために動画を準備しておりますので、ごらんいただければと思います。
(動画視聴)
(中川委員長)
以上がビデオでございますが、きょうは専門委員2人に来ていただきまして、今回の調査の意義について、わかりやすいことをおっしゃっていただきましたので、御紹介いたします。
今、ごらんになったように、「回転している刃が人に向かっている」という構造は、現在では工場でも存在しないような危険な装置であるにもかかわらず,それについての安全装置が、先ほど紹介のあったデッドマンクラッチだけである。デッドマンクラッチ自体はとても有効なのですけれども、ただ、これで全ての事故場面に対応できるわけではない。先ほどありましたように、非常に操作が複雑になるうえ、握り続けにくいため無効化の誘因があるということで、多角化が必要なのだけれども、そういう多角化が必要であるという検討がされず、かつ、そういう危険な機械を我々普通の素人が使っていながら、事故もたくさんあった。だけれども、ずっと放置されてきたということで、今回、やっとこういう問題点があるという報告書ができたのは、非常に意義があるということをおっしゃっていただきましたので、御紹介をしておきます。
次の案件に移りますが、本日の調査委員会では、幼児同乗中の電動アシスト自転車の事故についても審議を行いました。これは前回の委員会で使用実態の調査について検討いたしましたが、今回は、それに引き続いて、自転車の設計そのものについて、各製造業者がどのような検討をしているのか、それについて我々が加えるべき視点はないのか、設計そのものの検証を行うという観点について検討いたしました。これらの検証を踏まえて、製品としての自転車の安全性向上の観点から再発防止策を検討していくという方針が確認をされました。
そのほか、本日の委員会では、ハンドル形電動車椅子の使用中の事故、これは2年前ぐらいに報告書を出したものでありますが、そのフォローアップについて、昨年に発生した類似事故の内容を整理した上で、今後の進め方について方針を検討いたしました。
主なところは以上のとおりでございます。
続いて、部会の動きについて、委員長代理から説明をお願いいたします。
(持丸委員長代理)
委員長代理の持丸です。
今月開催した部会での議論を紹介いたします。
製品等事故調査部会では、ただいま話のありました幼児同乗中の電動アシスト自転車の事故及び本件であります歩行型ロータリ除雪機による事故について審議を行いました。
私が部会長を務めますサービス等事故調査部会では、プール事故、これも以前に調査してフォローアップもしているものですが、相変わらず事故が減らないことから、これについての基礎的調査を行おうということで、その審議を行いました。
ほかにも、新規の基礎的調査の案件候補について、意見交換を行いました。
私からは以上になります。
質疑応答
-
問
毎日新聞のオカです。
先ほど見せていただいた動画なのですけれども、何かどこかに配付するとか、使い方が決まっていたら教えてください。 -
答
(中川委員長)
これは事務局からお願いしましょうか。公表する予定です。 -
答
(事故調査室長)
こちらはホームページにアップさせていただいて、どなたでも見られるような形をとらせていただきたいと考えております。 -
問
共同通信のタナカと申します。
きょう、配付いただいた資料と事前レクのときにいただいた資料、特に変更点はないということでよろしいでしょうか。 -
答
(中川委員長)
ないです。 - 問 ありがとうございます。