「世界消費者権利デー」を迎えるに当たって(令和2年3月13日)
世界消費者権利デーは、1962年3月15日に、米国のケネディ大統領によって消費者の4つの権利(安全への権利、情報を与えられる権利、選択をする権利、意見を聴かれる権利)が初めて明確化されたことを記念し、世界中の消費者の権利を促進するために国際消費者機構(CI:Consumers International)が提唱している世界的な記念日です。
今年の世界消費者権利デーのテーマは、「持続可能な消費者(The Sustainable Consumer)」です。
全ての人は消費者であり、消費者の行動は経済社会に大きな影響を与えます。我が国においては家計が支出する消費額はGDP(国内総生産)の過半を占めています。消費者が自らの行動に自覚を持ち、日常の消費生活において、人や社会、環境に配慮して行動することは、持続可能な社会の実現に不可欠です。
その意味で、消費者は先駆者であり、改革者でもあります。消費者庁は、消費者が社会のモデルチェンジを図り、持続可能な社会の形成に向けて必要な知識や情報を収集・習得し、自主的に行動することを支援し、そのための環境整備に努めてまいります。
2015年9月、「持続可能な開発目標」(SDGs:Sustainable Development Goals)が国連サミットにおいて全会一致で採択されました。SDGsは2030年までの国際目標であり、17の目標を達成することにより、誰一人取り残さない、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向けて取り組むものです。消費者庁として、17の目標全ての達成に向けて施策を推進してまいります。例えば12番目の目標「つくる責任、つかう責任」では、事業者任せではなく、消費者自らが意識を持ち行動することが前提となっています。このため、消費者と事業者が共通の目標の実現に向けて互いの強みをいかして協力して取り組む「協働」の枠組構築を進めてまいります。
特に、食品ロスの削減は、資源の有効活用や環境負荷軽減の観点から重要な課題です。2019年10月に施行された「食品ロスの削減の推進に関する法律」に基づき策定される基本方針の下、消費者、事業者、地方公共団体等の多様な主体が連携し、国民運動として食品ロスの削減を推進してまいります。また、消費者の自立を促すために消費者教育その他の普及啓発を推進するとともに、事業者の自主的取組を加速するために消費者目線を重視して事業活動を行う「消費者志向経営(愛称:サステナブル経営)」が社会の基本認識となるべく取り組みます。さらに、食品ロス削減のほか、プラスチックごみ問題への対応など、地域の活性化や雇用等も含む、人や社会・環境に配慮して消費者が自ら考える賢い消費行動、いわゆるエシカル消費を普及啓発するために取り組んでまいります。
「持続可能な消費者」を考える上で、将来の社会を支える若者を始め、高齢者や障害者などを含めた多様な消費者が社会に参加し、それぞれの持つ潜在能力を発揮できる社会の実現が重要です。2022年4月からの成年年齢の引下げも見据え、消費者被害の防止及び救済に向け、消費者教育の充実や、地方における相談体制の整備、消費者ホットライン「188」(いやや)の周知を進めております。また、「地方消費者行政強化作戦2020」を策定し、見守り活動の充実を含め、引き続き、全ての消費者が、どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられ、誰一人取り残されることがない体制の構築を図ります。
このほか、消費者庁では、消費者の安全・安心を脅かす事態には断固として対応し、厳格な法執行を行うとともに、必要な制度整備に取り組みます。
特定商取引法、景品表示法等の所管法令を厳正に執行し、悪質商法や不当表示を徹底的に排除してまいります。更なる悪質商法への対策強化や経済のデジタル化等に対応するため、特定商取引法及び預託法について、法改正も視野に制度の在り方について検討を進めてまいります。消費者契約法については、昨年6月に、消費者の契約の取消権の拡大等を内容とする改正法が施行されました。更なる制度改正に向けた課題についても着実に検討を進めてまいります。
食品表示制度については、今年4月から、食品表示法に基づく新たな制度に完全移行します。消費者の自主的かつ合理的な食品の選択に資するよう、適切な運用に努めます。
消費者庁は昨年設立10周年の節目を迎えました。消費者行政の司令塔としての新たなステージを迎えるに当たり、令和2年度からの5年間を対象とする新たな消費者基本計画を策定し、この計画に基づいて消費者政策を強力に推進することとしております。消費者行政を担う大臣としてリーダーシップを発揮し、消費者を取り巻く環境の変化を注視しながら、今後も消費者の安全・安心の確保に全力を尽くしてまいります。
令和2年3月13日
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)
衛藤 晟一