国民生活審議会総合企画部会
雇用・人材・情報化委員会(第4回)議事要旨

平成14年6月4日


1.日時 平成14年6月4日(火) 14:00-16:00

2.場所 中央合同庁舎第4号館第4特別会議室(406号室)

3.出席者
(審議会)
橘木委員長、木村委員、清原委員、関根委員、都留委員、樋口委員、宮田委員
(事務局)
永谷国民生活局長、大石官房審議官(国民生活局担当)、渡邊官房審議官(国民生活局担当)、太田国民生活局総務課長、他
(その他)
松浦 克己(横浜市立大学商学部教授)、大井 方子(東京大学社会科学研究所助手)

4.議題
1) 松浦 克己 横浜市立大学商学部教授 
 報告「情報化と雇用機会等に関する調査」について
2) 自由討議
3) 事務局からの説明 
 雇用・人材・情報化委員会報告書(案)について
4) 自由討議

5.会議経過 (資料はPDF形式)
(1) 平成13年度内閣府委託調査「情報化と雇用機会等に関する調査報告書」について、横浜市立大学 松浦教授より資料1に基づき報告がなされ、自由討議が行われた。
(2) 事務局より論点に関する基本的データ等(資料3)及び雇用・人材・情報化委員会報告書 骨子(資料2-1資料2-2)についての説明につづき、欠席委員から提出された報告書骨子に関するコメント(大竹委員高山委員)の紹介がなされ、自由討議が行われた。

6. 主な意見等
○ ITスキルをどのように尺度化するかは難しいが、ECのITドライバーズライセンスはインセンティブにもなっており、日本でもNPO、企業などから始められているが、政府として何ができるかについては本委員会での論点となるのではないか。
→情報技術者検定は公的に行われている。米シスコのものは、企業も注目しており、大学でも導入の動きがある。日本において、資格試験をどのように取り入れていくかについては検討の余地があるだろう。
○ 骨子中の「ITリテラシー」は表面的な利用スキルのみを指しているように感じる。情報解釈・発信能力は、今後新しいメディアが出てきた場合にも生かすことができる能力である。同じ集団の中だけでの暮らしがグローバル化することにより、これまで特別な訓練がなされず、職業上も必要とされなかった情報解釈・発信能力の必要性は明らかになってきており、これは学校教育、生涯教育で取り入れられていく必要がある。ITリテラシーの根本と、職業に直結するような高度なスキルが混同されている。
○ 「ITリテラシー」という言葉を使うにあたって、「この場合には~を指す」というように定義づけをすべき。短絡的に操作能力に焦点を絞るのではなく、基礎的な問題発見能力、解決能力等を高める必要がある一方、専門のIT技術者の養成も重要、という両にらみのまとめ方がよいのではないか。具体的には、骨子P.5中の、情報提供、自己啓発への支援、ITの人材育成等に関し政府が何をできるかについて、中央教育審議会でも、社会人が大学に入るには2年間、4年間で終了という年次を切るのではなくより柔軟な単位取得を認めていくような制度を導入し、授業料にも一定の配慮が望ましいという提案がされている。総合的に職業能力の開発・リカレント教育を保障していくため、現行の高等教育との連携について補強が必要。また、先導的なNPOの活用等などへのめくばりも、バランスをつけることで原案の補強になるのでは。IT化が急速に進展する中、単純な操作能力だけでなく機器の革新に翻弄されない基礎的な能力を重視するという方針を明示した上でまとめるべき。
○ 雇用・人材・情報化委員会として雇用・人材・情報化に限定した内容となっているが、国民生活審議会としては国民生活とのつながりでとらえる必要がある。労働時間の長い人が増えることについて自己啓発を阻害している点が問題としているが、それだけでなく、所得・時間・雇用のウェルバランスが崩れていることが問題。施策の1~3はいずれも働き方に限定されているが、もう一つ項目をたてるか、1~3に分散させてこの観点を入れるべき。
○ 今後、技術の発展や国際化の進展等により仕事が特定の人に集中して忙しい人と暇な人が同時に発生し、差が広がる可能性がある。平均的な個人を想定して日本の平均的な姿を示すのは困難となる。その中で格差の問題も出てくるだろう。個人の選択と言い切れないところがでてくるのではないか。裁量労働制が他の国に比べて限定的に使われている問題、サービス残業の問題も考慮に入れるべき。
○ 骨子P.5情報提供について、特に転職市場で情報が不足している。個人の持つ職業能力が企業に見えない点が問題であり、完全に標準化することは困難かもしれないが、資格制度などによりどのような職業能力を持つのかを見るようにするなど、多様な能力を評価し、情報として提供することが転職コストを下げる上で必要となるのではないか。
○ 報告書の基本的な認識の中で、社会的な付加価値産出力と雇用創出力が構造的に変化していることの明確なビジョンを出した方がいいのではないか。ITだけでなく、バイオ、ナノ、環境など、今後高い付加価値を生み出す産業分野が就労を生むことになり、それを担える人材を輩出するという視点が社会的に必要。教育を公共財とみるという視点を出すべき。その上で、格差が生ずるのはやむを得ない部分があるが、北欧社会のように、全体を高いレベルにしようとするのか、highからlowまで出てくる可能性があるがどうするのかを問いかけることまで踏み込むことも必要ではないか。
○ 職能のアイテマイズ化、ポートフォリオ化に関連して、社会変化の方向性について委員会としてのビジョンを示すべき。クレジットベイズトからコンピテンシーベイズトへの流れ(単位を取得して卒業する形から、コンピテンシーを定義し、コンピテンシーを満たせば見合った学位を与える形への教育の変化)などいくつかの流れ。スウェーデンのICT委員会ではソフトインストラクチャーという概念を出し、人のもつ能力、スキルをコンピテンシー化して職能条件、基準を用意して体系化しマッチングを促進する仕組みについて検討されている。
○ 社会のビジョンとして多様化・個性ではなく、説得、伝達などのコミュニケーション能力が社会人として活躍する上での重要な要件として見直されてきていることを、コミュニケーション能力など、メディア・リテラシーという言葉よりもIT色の薄い言葉にして社会的変化として入れてはどうか。
○ 1960年代終わりに「労働市場の分断化」という労働経済学の議論があった。1960~80年代終わりの製造業が強みを発揮し、ものづくりが重要だった時代には平均値を引き上げる教育・施策が有効だったのに対し、90年代の長期不況下で、製造業も、ものづくりから開発、ソリューションにシフトしてきており開発、デザイン、ソリューションビジネスを考える人とそれ以外の人で仕事をめぐる分断化が進むだろう。これは賃金格差、所属分配の不平等の問題よりも根が深い問題である。
○ ITの進展に伴いナレッジワーカーが増えれば雇用されなくても済む社会もあり得る。日本、アメリカを含めフリーエージェントの比率は上がってきている。フリーターを適職化させる方策だけでなく、将来的な視点として自律的なナレッジワーカーの支援について考えることで、IT社会の将来の方向に近くなるのではないか。
○ 司法試験、公認会計士などの資格試験合格には大学より専門学校がベターと言われる中、学校教育とは何かという問題提起がなされ、また、大学では個々の技術より問題解決能力を与える様な教育をするようにとの意見も出されている。本委員会でこのような学校教育と職業教育といった問題まで回答するのは困難ではないか。
○ 教育における問題解決能力、コミュニケーション能力は企業への就職の場で直面することが多く、内発的に大学など高等教育機関で考えているところである。専門学校と四年制大学は何が違うのか、即戦力でないとしたら四年制大学で学んだことはどうしたら意義を持つのかが問われているが、ここでは、具体策の提示よりも、ITリテラシー、メディアリテラシーの育成とともにより充実することが大事、とするくらいで具体的なカリキュラムまで出す必要は無いのではないか。
○ 雇用のセーフティーネットに関し、家族での助け合いの精神が必要とされているが、独身者、離婚が増えている中、日本はもはや家族は助け合いできるような社会ではない。日本の現状に対して甘すぎるのではないか。
→(事務局)夫婦共稼ぎの選択肢がとれることにしておくことは、離婚した場合に妻へのセーフティーネットとなり、離婚しない場合にも家族としてのセーフティーネットとなり、選択肢として用意するということではないか。
○ フルタイマーとパートタイマーの格差是正については、具体策を言わなければならない。誰が犠牲になってどのような施策をするのかまで言うべき。そこまで踏み込む余裕・余地があるのかを議論したい。
→(事務局)具体策としては、第2回委員会において樋口委員から出された具体策を盛り込みたいと考えている。ただし、実際に政府ができることは税制、社会保険料など限られており、特にマーケット、労使間にゆだねられる部分については難しい問題はある。アイデアがあれば教えて頂きたい。
→こういう方策があるというシナリオを提示し、最終的には民間企業に選んでもらうということでよいのではないか。
○ 今回の報告書がどういうメッセージを出すかという点について、パートタイムとフルタイムの格差や雇用の分断化に対し、そうでない方向に考えたいというメッセージを出したい。資料2-1において、「2.変化の背景と雇用環境の変化」、「3.従来型の雇用慣行の国民生活への影響」の両方から「従来型の雇用慣行からの変容」に矢印が向かっているが、従来型の雇用慣行からの変容には、フルタイマー、パートタイマーの問題のように今認識できるものと、分断化のように今後想定される雇用慣行の変容の方向とがある。
解決のヒントは「雇用慣行の変化への対応と、ライフスタイルの選択肢拡大のために・・」であり、ビジョンの例となるのではないか。こうしたビジョンを掲げた上で「4.雇用に関する政策の方向」を再整理するとより説得力がでるのではないか。
今の雇用実態としてはマル1とマル2、これから起こりうる変化への対応としてマル3、国民生活審議会として、ライフスタイルの選択肢拡大という点ではマル4とマル5で広められ、従来は参入できなかった女性、障害者、高齢者も参入することで自らが生活の基礎である収入を確保するということであればこれもビジョンになる。このような方向性を出して、従ってどういう政策が必要かという順序になればすっきりするのではないか。キーワードである格差、分断は過剰に危機意識をあおることのないよう丁寧に説明し、雇用慣行の変化の良いところは促進し、危ないところはセーフティーネットを整備するという枠組みがよいのではないか。
○ 長時間労働と短時間労働で格差が拡大したとしても、双方が満足していれば問題ない。どちらかに不満がある場合には政策を考えなければならない。現状はどうか?
→グローバル化している下では、この程度でそこそこやっていきたいという仕事は全て中国に奪われるのではないか。
→市民の立場に根付いたサービス産業を復興させられればグローバル化の影響を受けない産業となるのではないか。
→どこまでサービス産業で雇用創出ができるかは人によって意見が異なるが。
→ケアサービス部門での雇用創出が骨子に入っているが、市場での調達という形になると、よいサービスは料金が高くなり高所得者しか利用できなくなる。税を負担することを受け入れざるを得ないと考えるがこの報告書の中でどのように扱うのか。社会保障負担、租税負担は上げざるを得ないが、社会的サービス部門を拡大して雇用も創出し、格差も一定に留めていくという方向になるかと思われる。しかし、アメリカのように公的セクターは関与しないという意思決定もできなくはないがどう思うか。
→(事務局)ケアサービス、介護、子育て等、旧厚生省の持っていた分野で不足払いを認めてこなかった部分について、範囲内は認めるが上回る部分は自己責任でというようにできれば需要は増えていくだろう。需要が増えていくことを進めている状況にある。負担の問題を含め、今日出して頂いた論点について整理した上で20日の第5回委員会に報告書のたたき台を提示させて頂きたい。
→すぐに税の話にいくのではなく、あくまでも雇用に絞るべきではないか。区市町村では財政逼迫の折から、保育園の経営を直接の雇用によらず、民間やNPOなどにアウトソーシングするなど工夫してやってきている。受益者負担で利用者も負担する。担い手を変えていくことで、固定的な人による固定的な運営ではなく循環的にしていくことができる。地方政府がすべきこととして、地場のコミュニティービジネス等で雇用機会を増やしていく、フルタイマーだけでなく、曜日別の働き方、ワークシェアリングの例示としては説得力がある。潜在的なニーズと供給のマッチングの可能性もある。このあたりを補強すると具体的なものが出てくるのではないか。
→(事務局)島田晴雄氏の530万人計画もコンセプトとまさに同じであり、今回の諮問会議 経済活性化戦略として人材力戦略、経営力戦略など6つの分野での戦略を出しているが、このような部分も大きなウェイトを占めてくるのではないか。
→日本では障害者の法定雇用率の充足が国際的に見てもかなり低く、障害者施策推進本部の分野で問題となっているが、サービスの対象者としてだけでなく主体としても障害者、高齢者をとらえているというところでこの委員会の特徴があり、力点をおいて欲しい。
○ (事務局)メディアリテラシー、グローバルリテラシーなど、表面的な技術だけでなくより根源的な教育、知識の重要性は報告書でも書けるかもしれないが、政策論としてどのように展開していけるのかという点で何か具体策があればご教示いただきたい。方向性だけ示して、それぞれの大学にまかせればよいのか
→この委員会でどこまで踏み込むかは別として、メディアリテラシー教育の重要性についての認識がやっとできてきた段階である。プログラム、テキスト、誰が担うのかについても議論がなされてきていない。本来トータルに考えられるべきはずが、関係省庁間で縦割りになってしまっている。現在の施策の中で、情報教育や、市民向けのIT講習会のやり方など国ができることはある。大学のプログラムを直接ということではなく、どういうことが必要かということを示すことが必要。
→大学に関しては認識が深まっているという現状を説明したのみである。メディアリテラシーについて1983年から1984年にはじめて発表した頃には全く理解されなかったが、ようやく浸透してきたのは、機器の操作能力だけでは解決できない問題が出てきているからではないか。詳細なカリキュラムまではここの委員会で取り上げる必要はないのではないか。
→カリキュラムを考えることが必要になってきているということを提言することはできる。

以上
(配布資料)(PDF形式)
議事次第
資料1 「情報化と雇用機会等に関する調査」概要報告
資料2-1 雇用・人材・情報化委員会報告書 骨子(イメージ)
資料2-2 雇用・人材・情報化委員会報告書 骨子
資料3 第4回雇用・人材・情報化委員会 参考資料
参考1 報告書骨子に関する大竹委員コメント
参考2 報告書骨子に関する高山委員コメント
[問い合わせ先]
内閣府国民生活局総務課
03-3581-0385
* 本議事要旨は暫定版のため、今後、修正がありえます。