第4回 家族とライフスタイルに関する研究会 議事概要
1.日時 平成13年5月16日(火)14:00〜16:00
2.場所 内閣府府議室(第4合同庁舎5階)
3.出席者
(委 員)八代尚宏座長、大村芳昭、喜多村悦史、木村陽子、住田裕子、前田正子、山田昌弘の各委員
(事務局)松下副大臣、池田局長、塚田審議官、大石審議官、太田総務課長、井内調査室長
(オブザーバー)坂井前副大臣、男女共同参画局綱木総務課長、浜田参事官、
4.議題 「男女間の選択(婚姻等)に関する課題(家族法等)」について
5.審議内容
委員から「家族法の主要論点」等について、次のような報告があった。
「家族法の主要論点(改正の方向)」について
《家族法の問題》
○平成8年に法制審議会において取りまとめられた民法の家族法部分の改正案については、適切な案と考えており、そのポイントを説明する。
婚姻最低年齢
○婚姻最低年齢は、現在男性が18歳女性が16歳であるが、社会的・経済的成熟度に重きをおくのが良いのであって男女に大きな差はないし、高校に行くのが事実上義務教育化されている社会の実態からすれば、高卒程度の年齢をもって婚姻ができるのが相当で男女とも18歳ということで両者の区別を廃止すべき。もっと低年齢で、という考えもあるが、民法では結婚をすると財産法的部分、経済法的部分では大人とみなされる。そうした意味からすると16歳同士の夫婦で財産権を自立させるには問題があろう。特に今若者が詐欺の被害に会うことが多い。そういう意味での社会的未成熟さがあり、18歳という案となっている。
再婚禁止期間
○再婚禁止期間は、現在半年間となっておりその間女性は再婚できない。一度離婚したら半年間は、結婚できない懲罰的な部分が若干ある。一番の目的は、前婚と後婚の夫との間で、どちらの子供なのか一律に決まらないのではないか、嫡出の推定が混乱するのではないか、父が誰かというのが分かりにくくなるのではないかということで間を空けていた。これを100日位であればぎりぎりの線で大丈夫だろうということで、3ヶ月という案とした。今の届出がある程度ずさんであるということからすれば、「3ヶ月位ちょっと待ってください」ということで現場の混乱を抑えようということ。3ヶ月位ないといろいろ書類を出す時に「妊娠していないか」という立ち入ったことをやらないといけない。最低限の嫡出推定の重複を回避するところに純化した。
夫婦の氏
○夫婦の氏については、後で説明する。
夫婦の契約取消権
○現在民法の夫婦の契約取消権は、仲が悪くなった破綻関係において、問題となる。あんな約束はしていないなど、夫婦の安易な取消権を認めていたものを廃止するという案である。
協議離婚後の親子の面接交渉や養育費等
○協議上の離婚の時の親子の面接交渉や養育費等の問題については、今まではうやむやのままで、それを決めないまま別れてしまった時にトラブルの種となっており、特に養育費はトラブルの最も大きな問題となっている。いろいろの形で取り決めをしない、あるいは取り決めをしても履行しないということなので、民法を改正するとすれば、養育費についての取り決めと履行の確保が大きな問題となろう。別れる時は子供の福祉を害することがないよう明文化すべき。
財産分与制度
○協議離婚の場合の財産分与制度は、年金の時にも大きく反映する問題である。離婚する時には、寄与の程度に合わせて財産を分与するのは当たり前であるが、寄与の程度が異なることが明らかでない時は相等しいものとするという、2分の1ルールを明文化するという案である。
○すなわち家も土地も結婚してからできたものについては、とりあえず収入のある夫の名義になっている。これは、夫婦別産制という考え方。取引の安全性からすれば夫の名義にせざるを得ないが、実質的には夫婦共同で作り上げた財産であるものは、財産分与する際、寄与の程度が異なることが明らかでない時には、半分に分けるということ。実際相続の場面では実現している。離婚の場合、母親と子供が残された場合は、半分が母親で半分が子供というルールが相続法で改正された。妻には潜在的に2分の1の権利があるということを法律上で認めている。
離婚原因等(裁判離婚)
○裁判上の離婚については、破綻した関係が5年間続いた場合は離婚を認めることを新たに明文化すべきであるという案である。ただし、非常に社会的に立場の弱い妻が社会に放り出されるのは問題であるので、離婚によって生活が困窮する場合や信義に反する場合、例えば外で別世帯を持っているようなものからの請求は信義に反するということで棄却する。あまりにもひどい場合は認めないが、少なくとも破綻主義というものを明確化する。形骸化した婚姻を残すというよりも、再出発して新しい関係を形作る方がそれぞれにとってよいのではないか。ただ、離婚することによって困る立場の女性がいる。夫の年金・遺族年金がもらえないが故にずっと妻の座にしがみついているという現実もある。年金制度等もこの問題を考える上で検討すべき。そのためにも女性の個人としての年金権の確立が非常に大事。また、現行民法で離婚原因の一つとして認められている精神病については、削除するべきである。これは差別を助長する恐れがあるので、明文化する必要はない。
非嫡出子の相続分差別
○現行民法では非嫡出子の相続分差別は、正妻の子供は1でいわゆる妾さんの子供は2分の1しか相続分が与えられない。高裁判決では違憲判決が出たものもある。最高裁では一つの制度として合憲判決しているが、母親によって子供の権利が変わるのはおかしい。生まれた子供に罪はないので、個人の平等を重視する方が望ましい。相続とは、嫡出子が家の財産を承継するという考え方から、亡くなった人の財産を分配するものへと変わってきており、その時に嫡出子とか非嫡出子で差を設けるのはおかしい。家族形態が大家族から核家族へ変わっていったということも含めて、非嫡出子の差別はおかしい。子供の権利条約その他いろいろな流れからみても反するもの。
《選択式夫婦別氏制度》
○家族法改正の目玉でもあり、今後議員立法されるとしたら、この部分だけが改正される可能性もあるもの。
歴史的経過
○歴史的経過をみると、夫婦別氏制度というのは日本古来からの伝統であるという議論があるが、実際は明治以降の話である。
○元々名字が平民に許されたのは明治3年の太政官布告で、それは名字を使ってもいいという程度のものであったが、ようやく同8年に義務化された。その内容は、妻は生まれ持っての氏を使用し、家を相続した時に夫の氏を称する、夫婦別氏であった。
○明治31年の旧民法では、戸主・家族はその家の氏を称し、妻は婚姻により夫の家の入った時に同じ氏を称するということで、家制度の中で夫婦同氏となった。
○昭和22年の新民法は、夫婦同氏制の原則を維持しつつも、合意により夫又は妻の氏とするということで、法律上男女平等にされた。当初案は、原則夫の氏、反対の意思表示の時は妻の氏ということだったが、GHQ案で変わった。そして、昭和22年以降、民法は婚姻・離婚の部分について、ほとんど改正がなされていない。離婚した時に結婚した時の名前を続けて使うことができるという「婚氏続称制度」というところが変わった程度。相続の時の嫡出子と非嫡出子の差別をなくそうという法律案を出したが、大反対にあい頓挫した。
夫婦別氏制度導入の賛成意見
○夫婦別氏制度の導入賛成意見として、98%の女性が結婚により改姓を強制される状況にあり、事実上の男女不平等であることや、改姓を強制された結果、社会生活上不便、不利益、不都合であることなどがあげられている。特に国立大学では戸籍上の名前を強いられるが、それまでの業績が反映されている名前を変えざるを得ないということは、非常に不便であるということを裁判で訴えたが棄却された。
○逆に、結婚により改姓しなくても社会は困らないのではないかという意見もある。また、強制的に改姓を求める制度は人格的利益を損ねており、女性にとって非常に苦痛であるという意見もあるが、これは氏は人格権そのもので改姓強制はアイデンティティを喪失させる、個人が自己をどのように表示するかは他人の権利を侵害しない限り自由、どのように表示するかは自己決定権ということ。
○一方、夫婦同氏制度の反対意見としては、
・氏は単なる個人の呼称ではなく、家族の呼称であるとする考えは家制度の残滓である。
・夫婦同氏制度はわが国古来の伝統と文化で定着しているとの考え方に対し、たかだか明治以来のもので、国民意識も変化している。
・家族の一体感を損ねる、子の福祉を害するといわれるが、諸外国でも夫婦別氏制度があり、それについて問題があるといわれたことはないし、また、一体感のために国が同氏を強制すべきではない。
・夫婦同氏の強制により、改姓した者が家に従属する意識を生み、個人の尊重を基本とする現代の家族意識に反する場合がある、家名継承のために制度導入の意義あるとの論がある等があげられる。
世論調査
○国民意識が重要であり、近々世論調査の予定。最も近いところで平成8年の状況をみると、まだ、賛成の方より反対の方が多い。ただ、反対派が過半数割れという状況にきている。平成2年は52%が反対し平成6年で53%だったのが、ようやく39.8%となった。それから年齢層で見ると、若い世代の方は賛成が上回っていおり、20代30代40代は反対派よりも賛成派の方が多いので、これからやればやるほど、賛成と反対の比率が変わっていくのではないか。
《年金の問題》
○今後、少子高齢化の進展で、女性・高齢者の社会進出が一層必要になるだろう。こうした中で、特にサラリーマンの専業主婦は、第3号被保険者として自らは保険料を払わないけれども、キチンと基礎年金部分が受け取れるということをどう考えるのか。
○従来までの専業主婦は多数派で、社会を支えていた重要な要素として、企業戦士の夫を支え家を守るという立派な主婦に対して、第3号被保険者として保険料を払わなくてもよいことで、キチッと優遇しようとすることに理屈・合理性があった。そもそも現在は、専業主婦にならざるを得ないような方が多い。それは、固定的役割分担意識の下、保育・介護環境等の未整備、長時間労働等による仕事と家庭との両立が困難な状況にあるためである。しかし、今後は、両立支援策が進んでくるということになると、女性もこれまで働けなかった者が働けるようになって労働市場に進出することになるだろう。そうすると、残る専業主婦は、夫の一定以上の収入を背景に、家庭内労働、地域活動・余暇活動等に充実感、必要感を求める、ある意味で豊かな層であろう。これは諸外国を見てもそうなっており、かつ少数派になっていくことは間違いない。そういう方に対して今後も優遇策をとる必要があるのかどうか。
○厚生労働省では、専業主婦は収入がないので負担能力がないという言い方をしている。夫婦別産制だから、夫に全部財産が行っている。夫が死ぬ時か離婚する時にしか清算されない。2分の1という民法の改正が潰れたように、妻には2分の1の権利はないのだという。
○それに対して、次のような点を主張したい。1.無収入の学生に強制していることと専業主婦との関係で制度的不均衡がある。2.自営業者の妻というのは、場合によっては仕事をしていない自営業者の妻もいるが保険料を支払っている。3.3号制度ができる以前は、主婦に対しては、国民年金の任意加入制度があったが、これに対して7割から8割の加入実績があった。4.夫の収入に対しては家事労働等の無償労働で寄与しており、離別とか死別という結婚終了の際には、清算して2分の1の財産分与・相続として取得するという潜在的持分権がある。これは抽象的な負担能力があるということである。5.妻は婚姻費用を夫と共有しており、妻にも負担能力がある。夫婦協力義務というのが民法上定められていて、夫が働き妻が家事をやっている場合、稼働して収入のある夫に婚姻費用分担義務があり、逆に妻はそれに対して別居している場合に請求権が認められている。しかも、拠出された費用は夫婦の共有である。したがって、家事の場合妻は夫の意向を聞くことなく代理権としていろいろな買い物ができる。夫婦の共有の部分という原資がある。しかも夫婦には生活保持義務があり、単なる扶養義務よりもっと重いものである。「余力があるからあげる」という扶養義務とは異なり、この生活保持義務というのは、親子夫婦同等の生活水準を送る義務というもので、そのための保険・医療費は当然婚姻費用に含まれ、年金も同額受給できるものというのが民法上の家族の理念。妻に夫の収入の2分の1の潜在的持分権があることを前提として、具体的な支払保険料を算出して、これを婚姻費用から支出するとすれば、妻に収入はなくても年金を支払う根拠、つまり負担能力があることにつながる。
委員から「比較家族法・国際家族法から見た「氏」」について、次のような報告があった。
「比較家族法・国際家族法から見た「氏」」について
「何のための比較法か」
○比較家族法の観点から氏というものを考えていきたい。比較することの意味としては2つあり、第1に、世界の国々が氏という問題についてどのような状況にあり、どういう形で取り組んでいるのかということを比較整理することによって、わが国の相対的な位置を知ることができる。第2に、わが国と比較的状況の似ている国の例を挙げることによって、具体的なわが国の法律のあり方を考える場合の参考となる。
「夫婦・子の姓に関する各国比較」
夫婦の姓について
○姓という制度が国によって位置付けが違っている。姓がない国もあるし、また姓が一つだったり、二つあったりして、単純に別姓を認める、認めないで整理するのが難しい。一つ共通して言えることは、ほとんどの国で、結婚前の前の姓を結婚後も引き続き名乗ることができるような、何らかの対策をとっていること。具体的には、別姓を認めている国、もしくは夫の姓と妻の姓をつなげる結合姓を認める国等がある。何も認めていない例としては、タイがあり、個人姓名法第12条に「婚姻をした女は、その夫の姓を用いなければならない」とあり、夫の姓を義務付けている法律があるが、近年、この法律の改正の動きが出てきている。
○ヨーロッパの国々はこの分野で進んだ地域であるが、その中でも比較的後進国と位置付けられている国が、ドイツ・スイス・オーストリアの3カ国である。日本においては、これら3カ国の方が、いわば別姓先進国であるスウェーデン・ノルウェーと比べるよりも参考になる。
○スイスについては、結婚後夫の姓を名乗るということが決まっているが、結婚後妻は夫の姓に昔の自分の姓を付加できるようになっている。
子の姓について
○子の姓は、国によってかなり違いがあるが、婚内子と婚外子で姓の決め方が異なっている。婚内子については、同姓の場合、両親の姓を名乗り、別姓の場合は国よって異なっている。一方、婚外子については、母の姓を称すると定めている場合が多い。ただ北欧などでは、父親の姓を称することを認めるような法整備がなされている。
「ドイツでの状況について」
ドイツを取り上げる理由
○日本と状況が近いドイツについてであるが、ドイツは日本と同様親しい者の間でも比較的名字で呼ぶ割合が多く、姓と名の呼び方の比重が似ている。家族法においても姓というものが重視されている。さらに、別姓を法律上で明確に認める前の段階では、96〜97%の人が夫の姓を名乗っており、日本の夫婦のうち夫の姓を名乗っている割合と大変似ている。しかもそのうち、9割ほどは夫婦の姓の決定を特に行っていない。日本でも97%が夫の姓を名乗っているが、姓を決める際に夫婦で話合った上で決めるのではなく、結婚したら女性の名前を変えるのは当然という形で話もなしに決めていることが多いという点も日本に似ている。
夫婦と子の姓に関する法制度の沿革
○後進国であるドイツにおいても80年代の頃から姓に関する議論が盛んになり、いくつかの姓に関する連邦裁判所の判決があった。91年に姓に関する規定につき違憲判決を出し、これを踏まえ93年に法改正が行われ、夫婦別姓が明文化された。
○ドイツの姓に関する法律は、元々1896年の民法の規定を3回改正し現在に至っている。1回目の改正は1957年に行われた(男女同権法)。それまで妻は当然夫の姓を称するとしていたのを、妻は未婚時の姓を夫の姓に付加することができるということにした。そして子供の姓は夫婦の姓である夫の姓が自動的に付けられた。その後1976年の婚姻修正第一法律によって、夫婦の姓を夫もしくは妻の姓から選択できるということになった。これは現在の日本と同じ状況である。そして子供は婚姻の時に決まった姓を称することになり、ようやく子供が母親の姓を称することが法律で認められるようになった。この1976年の法律作成の過程で、婚姻の際の姓の決定の仕方について、「二重姓」つまり夫の姓と妻の姓を合わせて夫婦の姓とするという考え方は採用されなかった。これは、夫婦の二重姓を承継する子供の姓が膨らむ、あるいは膨らまないためにはカットしなければならないが、その決め方をどうするのか、という問題があったからである。
○さらに夫婦の姓を決定する場合に、協議してもどちらも自分の姓に愛着を持ち、どちらにも決定できない場合、夫の姓に自動的に決められてしまうというルールが76年の改正後に導入された。その後、この規定が憲法違反ではないかという議論が起こり80年代頃までは連邦裁判所も合憲判断をしていたが、91年に初めて違憲であるという判断がなされた。夫婦同姓でなければならないという部分ではなくて、自動的に夫の姓になってしまうという部分が憲法違反であるという判決であった。この判断を受けてドイツの議会は規定の変更に取り組んだ。暫定措置として憲法裁判所は暫定ルールを作成した。それによると、姓の決定に至らなかった場合に限り、別姓を認めるという形であった。その子供の姓は両親が決めるが、決まらない時は両親の姓をつなげた二重姓をつける、そのつなげる順番についても夫婦で決定できない場合、役所でくじで決めるという判断であった。くじというのはおかしいという意見があり、離婚等の際に子供を引き取ることが妻の方が多いということで妻の姓でいいのではないか、あるいは男の子は夫の姓、女の子は妻の姓としてはどうか、または裁判所で決定する等いろいろな意見が出ていたが、男女平等等の基本法に照らすと問題があり、消去法的に一番差別的でない方法として、憲法裁判所は上記の通り決定したものと思われる。
○この後93年に議会で決定した内容では、夫婦別姓を認めるというものであった。子供の姓についても、出生の時に両親が決めることとしている。ただし、二重姓やくじによる選択は認めず、最終的に子供の姓について両親が決定できない場合は、後見裁判所に判断を委ねて、後見裁判所は両親のいずれかに姓の決定権を与える。その親が決定権を行使しない場合は、決定権を与えられた親の姓が子供につけられるという内容であった。
○その法律の運用状況について、ドイツ全体ではなくドイツ南部のチューリンゲンという人口20万人位の町で調査したものがあるが、違憲判決が出た91年から新しい法律ができた93年にかけて、夫の姓をつけた割合が76%、妻の姓が3%、別姓が21%という結果であった。94年でも近い割合であった。この数字は日本で実際に夫婦別姓が行われた場合の予測として参考価値はあるのではないか。
「オーストリアでの状況について」
○オーストリアもドイツと同様の状況であるが、もともと夫の姓を強制する法律があったところに、何度かの法改正を経て、妻の姓も夫婦の姓として認められた。94年にでき95年から施行された法律によると、夫婦別姓を認めるという内容となっている。子供の姓については、ドイツでは長子の出生段階で決定し、第二子以降はそれと同じ姓を名乗るということになっているが、オーストリアでは婚姻時に、将来生まれる子供の姓を届け出るという点が異なっている。
○夫婦別姓の選択を認める法律ができた時に、法律が施行される前に婚姻した夫婦が、施行後に別姓に変更できるかという問題については、日本の場合、1,2年の経過措置を認めるべきという意見が多いが、オーストリアでは12年の経過措置期間を設けている。
「日本の夫婦別氏制度の検討」
○ドイツでは婚姻の際に、夫婦がその姓を決定しない場合に夫の姓を自動的に称する規定は違憲とされたが、同姓を要求すること自体が憲法違反とされたわけではない。日本においては、二重姓というものが社会的に受け入れられないということがあり、ドイツやオーストリアのように旧姓前置するとか二重姓を認めるということが解決策としては現実的でなく、別姓にするしかない。なお、「女性差別撤廃条約16条g項」では、夫と妻が同一の個人的権利を有するとされ、その中に姓の選択も入っているが、それが別姓の選択を認めることまでを意味しているのかどうかは判断できない。子供の姓についても、ドイツ式に最初子供が生まれた時に決めてあとの子はそれに習うのか、オーストリア的に結婚の時に決めるのか。結婚の時に決めるとなれば、憲法24条の婚姻の自由との関係をどう考えるのか、また、生まれた時に決めるといっても2番目3番目も同じ姓を名乗らせるべきなのかという問題もでてくる。そうした意味で、ドイツ・オーストリアの例が参考になるものと考えられる。
以上の説明及び報告に対する委員等からの主な発言は以下のとおり。
○先ほど専業主婦はマイナリティだと言われたが、それは定義次第で数が大きく変わってくる。一銭も稼いでいない人と定義するか、第3号被保険者と認定される所得が130万円以下の労働しかしていない人と定義するか、配偶者控除の対象となる103万円以下と定義するかで随分異なる。また自営業の人を全体に入れるかどうかで随分違う。
○財産分与制度の話で、妻の相続分を2分の1に引き上げるにあたり、その背後の考え方として妻の財産分が2分の1あって、残りの夫の分を子供が相続するという理解を私はしたが、この認識は合っているのか。また、その立法にあたってそういう認識を明確にしていたのかどうかを教えていただきたい。
○民法学者の間では、夫婦の財産形成において寄与の割合が明確に差があると言えない限り、妻の取り分が2分の1あるという考えは当然のことである。法制審議会の中でも当然のこととなっている。日経新聞が行った、わが国の家族の意識という調査で、「内助の功を金額換算した場合、夫の収入の何割に相当すると思うか」という質問に対し、女性の回答では、「5割ある」という人が32%、「5割以上」という人が10%もいた。わが国における意識としては5割というのが一般的な考えである。男性の意見もほぼ同じくらいである。
○妻の分が2分の1であるという意識は、標準的な家庭の場合ではないかと思う。昔はそれでよかったかもしれないが、今は夫の収入格差も大きくなってきており、その点をどう考慮するべきかというような議論というのはないのか。また、離婚し、妻子の生活が困窮する場合の離婚請求は棄却すべきと言われているが、離婚して生活が困窮する場合、離婚する前も恐らく困窮していたはず。この一文は名目上入っているだけなのではないか。また信義に反する者からの離婚請求は棄却すべきと言われているが、どのような場合信義に反するのか。そもそも、離婚自体が信義に反しているのだから、信義の程度とはどのぐらいのものなのか。家裁の調査官等からの話では、結局裁判までするのは単なる嫌がらせの場合が多いと聞いている。
○夫婦別姓論では、婚姻制度を守ろうという考えが背後にあるから、別姓のまま結婚しようという考えになる。そもそもラディカルな人は、結婚をしないのでこのような議論とは関係がない。ドイツやオーストリア等で夫婦別姓を認めたのは、元々同棲や事実婚が多いから、夫婦別姓を認めることで事実婚を結婚に変えさせようという結婚奨励のような意識があったのではないかと思うがその理解は正しいのか。
○夫婦別姓と家の相続の議論を同じにすると混乱するので、分けて考えるべきだ。現在は少子化時代なので、姓が変わっても財産をもらう子供もいるし、実家の墓に入るという子供もいる。だから姓が変わっても墓は守られる。今の若い女性の3割は夫と同じ墓に入りたくないと言っている。また海に捨ててほしいという人たちもいる。家系が破壊されるかどうかという議論と結びつけると働いている女性だけが夫婦別姓論を唱えているように聞こえる。
○夫婦別姓と家の相続の議論は分けて考えるべきだと思うが、反対論者がむしろ結びつけようとしている。夫婦別姓を認めると家が崩れるということを根拠に反対している。別姓論者の方が規制緩和として別姓でも同姓でもどちらでもいいという考え方をしている。
○家の問題と、夫婦別姓の問題は別個に考えるべきと思っている。
○氏というのは、日本人の多くが先祖から代々受け継がれてきた姓をまた受け継いでいる。お墓もその同じ氏のものがふさわしいという考え方があり、そこから、妻も名前を残すためには別姓がいいという意見が出てくる。これに対して、今の若い人たちは、氏は自分を特定する呼称だと考えている。そうすると自分の名前は自分で決めていいのではないかという自由論も出てくるが、一方で名前は社会に認知されていくうちに個人のものから社会のものになっていく。Aという人が、突然Bという名前になると、特定するのが難しくなるので問題が生じる。だから、姓についても変わらない方が望ましいという考え方もある。規制緩和という意味からいくと、選択の幅が広いほうがいい。選ぶ人が少数でもそれは認めてあげるべきである。別姓をしたい人はし、したくない人はしないという自由が与えられるべきである。
○離婚の問題であるが、信義に反する場合は離婚請求を棄却する等の考え方を入れるべきであるという意見が一部の人からあり、最後のところで入れた。運用ではこの表現があろうがなかろうが裁判所で適正な判断が行われると思う。破綻主義を明確化することは、形骸化した妻の座に固執するようなことができなくなり、意味がある。他人の幸せを邪魔するようなことは自由な個人の生き方を阻害しているし、本人も不幸だと思う。
○お墓の問題について民法の規定には、同氏の方がお墓を守らなければならないとは書いていない。これは別姓の問題とは別である。
○夫婦別姓を認めることで事実婚を結婚に変えさせようという結婚奨励のような意識があったのではないかという質問に対してであるが、実際に事実婚を結婚に誘導しようという意図はあったと思う。ヨーロッパでは結婚をしていないカップルにパートナーシップ制度を導入しているが、パートナーシップから結婚への移行はできるが、結婚してから離婚をせずにパートナーシップに移行することはできないという制度を導入しているところが多い。パートナーシップに登録してもらい、最終的には結婚に移行してほしいという意図はあると思う。但し、数字としてはそれほどの効果はあがっていない。
○夫婦別姓制度の導入が婚姻を守る効果が以下の出来事から日本にもあるのではないかと思われた。先日、保育園に子供を預けながら働く母親7人にインタビューをしたとき、7人のうち2人が、結婚前に仕事上で論文を書く等して名前を売っていたため、子供を産むときだけ結婚して嫡出子とし、子供が生まれたあとはまた離婚をし、元の姓に戻した経験があった。夫婦別姓になれば結婚するけれども、そうでないなら子供を産むたびに結婚し、離婚するということを繰り返さざるをえない。結婚して安定した家庭を築きたいけれども、今まで築いてきたキャリアは失いたくないという考えである。これは男性側にもあって、養子に入る場合男性にとって大きな問題となる。夫婦別姓は家制度を守るという意味だけでなく、女性がキャリアを築くという意味でも重要である。実際に結婚したくても、その障害となっているという事実が存在している。
○平成8年の世論調査でそういう意識について質問したものがある。「氏を変更したくないという理由から正式な夫婦となる届出をしない内縁の夫婦がいると思うか」という質問に対し、「いる」と答えた人が、59.3%もいた。特に女性の30代は最も高く、74.7%だった。こういう届出をしない夫婦を許容する世の中になってきている。
○夫婦別姓が認められた方がかえって家は存続していく。
○98%が夫の姓を名乗っているということは、残り2%は差別されるということである。
○先ほど話のあったペーパー離婚が本当に増えてきている。そういう意味では日本は、法を守る意識の高い国であると言える。だから日本では嫡出子の割合が他の先進国に比べ驚くほど高い。
○女性の労働力率と出生率の国際比較を見ると、出生率の低い、日本・西ドイツ・スペイン・イタリアといった国で、どこも女性の労働力率が低くなっている。夫婦別姓の後進国であるドイツはこのような状況である。これらの国はどこも女性が自立しておらず、こういう結果となっている。非嫡出子差別があるということが子供を産みにくい状況を作っている。
○次の3点について教えてほしい。第1に、遺産について相続税の掛け方・遺留分のあり方等はどうしていけばいいのかということ、第2に、離婚した亭主は金持ちなのに別れた妻はお金を受け取れないというようなことがあるが、民法上なにか問題点はないのか、第3に、家族の扶養義務についてはどのように考えていくべきか。
○アメリカでは、税金と一緒に慰謝料も取り立ててくれるという制度もあるようだ。
○離婚したときの財産分与、養育費問題について、日本では制度はあるにはあるが、運用が難しい。養育費の給料天引き制度も案として検討されている。加えて離婚したときに夫の年金からも養育費が払われるべきだと個人的には考えている。ただ、日本ではまだこれからという状況である。今のように女性の給料が男性に比べ低いという実態の中では、男性の所得に頼らざるをえない。
○専業主婦家庭の場合、資産は夫名義になっている。夫が亡くなった場合、2分の1は妻にあるけれども、残りは妻にないというのは非常に不安定な状態となってしまう。また、よく問題となるのは、夫が勝手に家を出て行き、家を売ってしまった場合、妻の居住権が全く確保されない。潜在的持分権をどのように顕在化させるかが問題である。
○事実婚の場合の財産分与はどのようになっているのか。事実婚では守られていないとするなら、なぜ結婚した夫婦だけが守られなければならないのか。
○家族の扶養義務はまさに生活保護の問題だと思う。例えばドイツの生活保護は世帯単位で考えるのではなく、個人単位で考えている。家族と同居している場合は、家族の収入まで加味している。個人としては、家族の扶養義務は取り払っていくべきだと考えている。
○事実婚と法律婚の違いは相続の問題だけだと思う。財産形成に寄与したものを分け合うという中で、事実婚を解消したときの問題として2分の1ルールが重要だと考えている。相続のときには法的ルールがないので、それは遺言でまかなうべきである。
○世帯単位と個人単位の話であるが、二人の給料を合算し、2つに割って計算の根拠にすべきだと考えている。また、共働きだけれども家事を全くしない夫のいる家庭でも同様に足して2で割るべきである。総務庁の調査では、共働きの夫の方が、専業主婦の夫に比べ家事をする時間が短いという結果がある。他の国と比べても比較にならないぐらい短い。こういう環境の中では夫と妻の給料を足して2で割るという考え方は合理性があると思っている。
○二分二乗方式の実現可能性はどの程度か。厚生労働省は無理だと言っているようだが。
○厚生労働省が無理といっているのは専業主婦には所得がないからという理由だけである。負担能力があることを認めれば、あとは計算の根拠をどこにもっていくかだけである。問題は事業所負担をどうするかだと思う。
○二分二乗方式は労働供給という観点からはマイナス効果となり困る。そこはむしろ個人単位にして、専業主婦の所得がないというのを夫の共同生活費用という形で本来夫が払うべきだという考えにたつべきである。
○健康保険の被保険者の配偶者の費用はどう考えるべきか。
○健康保険についても夫は妻の分を払う義務があると考えている。それが払えないならば、生活保護といった他のセーフティーネットで守られるべき問題だと思う。ただ、そういう主婦は働きに出ると思う。
○健康保険も介護保険の第2号も全く同じ論理である。第3号は年金の話だけだが、同じことが健康保険も介護保険にも適用できる。だから健康保険でやってないから年金でやる必要がないという論理はおかしい。
○税金の配偶者控除も同じ問題を抱えている。
○税金はむしろ個人単位で、配偶者控除だけが例外である。税金は配偶者がどれだけの所得をもっていても個人単位で税金が掛けられる。
○夫婦別姓となった場合の子供の姓の決め方に関してであるが、子供の姓はくじで決める等いろいろ意見があるが、個人的には子供の姓がばらばらになってもいいと考えている。但し、国民の意見としては、子供の姓を同じにすべきであるという意見が72.5%という高い比率となっており、まだここまで推し進めるのは時期尚早ではないかと考えている。