第3回 家族とライフスタイルに関する研究会 議事概要


1.日時  平成13年4月24日(火)14:00〜16:00

2.場所  内閣府府議室(第4合同庁舎5階)

3.出席者
(委員)八代尚宏座長、大村芳昭、喜多村悦史、木村陽子、住田裕子、永瀬伸子、山田昌弘の各委員
(事務局)坂井副大臣、池田局長、塚田審議官、大石審議官、太田総務課長、井内調査室長
(オブザーバー)田口参事官、綱木課長

4.議題  「高齢者とその家族の選択に関する課題」「女性の選択の自由の観点からの税・社会保障制度のあり方」について

5.審議内容

委員から「高齢者とライフスタイル」について、次のような報告があった。

「高齢者とライフスタイル」について

《高齢者の現状》
○一般的に高齢者に関しては、子ども世帯との別世帯化の進行、かなりの不動産資産を保有していること、健康状態が一般的に良好であることが指摘できよう。

《必要な対策の方向》
○今後の超高齢社会に向け、まず第一に、高齢者が所有している不動産資産を活用することが必要である。特に住宅に住まいつつ、その経済価値を生存中に活用できる仕組みづくりが必要である。
○第二に、高齢者が医療や介護を受ける際には応分な費用負担を行う仕組みづくりが必要である。
○第三に、高齢者が主体的に社会参加できる仕組みづくりが必要である。

《具体的な施策の骨子》
 リバース・モーゲージの制度化
○今後高齢化が進む中で年金、医療、介護の社会的負担が高まる中、給付面の見直しは避けられず、一方で、資産を老後の生活費やその他の費用などにあてたいとする意識が高まっているが、現在のところ高齢者が利用しやすい仕組みが存在しない。
○リバース・モーゲージ普及促進のための論点としては、基本構造といわゆる三大リスク(長生き・金利上昇・不動産価値下落)への対応や、初期に必要とされる資金調達の方法、中古住宅流通、今後の住宅建設のあり方等がある。
○リバース・モーゲージを既に利用しているという人は0.1%でほとんどいない。一応関心があるという人は約44%となっている。
○ 全国の65歳以上の81.0%が持家であり我が国の持家政策をとってきた成果であるものといえる。一方、大都市では高齢者は持家率は低いという議論もあるが、統計を見ると東京等を含む京浜葉大都市圏での65歳以上の持家率は76.9%と高く、公的借家9.6%、民間借家(木造)8.9%、民間借家(非木造)については4.1%となっている。
○高齢者の現住宅の老朽度をみると、65歳以上で夫婦のみの場合全体の1.5%は大修理を必要とする住宅、13.9%が中修理を必要する住宅であるが、修理に必要な資金が手元にないということが高齢者の状況であろうと考えられる。
○次に最近5年間の居住状況の変化をみると、高齢者が住居を変わった場合に子供と同居するのかというと必ずしもそうではない。65歳以上の夫婦のみの場合、住居が変わるのを機に子供と同居するのは6.6%に満たない。
○そこで今までなぜ普及が進まなかったのかということも含めて考えると、今までの考え方は融資・返済担保型、すなわち住宅を担保にお金を貸し、死亡時に相続人等が担保不動産を処分して返済するものであり、仮に本人が長生きをした場合には途中で担保価値が不足してしまうなど様々なリスクがある。長生き、不動産価値下落、金利変動これら全てのリスクが高齢者の負担になるとすると担保掛目を高く見積もる必要があり、なかなか利用しにくい。
○これに対し、売買・代金支払型は高齢者が住宅を売却し、65歳現在の不動産価値を平均余命の20年先で想定をし、それを終身定期金ということで年金で支払う。従って長生きした人は多く貰えるが、早く亡くなった人は1年で終わるということである。多数の人を一緒にいれれば、その中に自動的に生命保険の作用が入る。これはいいかえれば一時払い養老年金を住宅で買うということであり、ただ買主の事業主の方をみると、売主が住んでいるのですぐには運用できず、その方が死亡するまではお金を出しつづけなければならないということである。その費用がどの程度必要かというと、高齢者の1割が参加すれば恒常的に20〜30兆円というとになるが、その資金について、公的年金の積立金を使うか、証券化等により市中から集めるのかというあたりが課題である。
○中古住宅流通量をみると我が国では約30万戸程度、毎年1.4%ほどだがマンションではかなり動くようになっている。アメリカでは毎年約6%程度動くようである。不動産の評価方法等について、国土交通省でも検討している。

高齢者と税制の問題
○相続税について、基本的に夫婦間においては課税せず、そのかわり、これからのサラリーマン社会においては、子供に相続するときには優遇、免除等は行わずに、事業用等の場合を除きしっかり課税することとしてはどうか。
○高齢者には様々な税控除がある。65歳以上が対象の老年者控除については所得税では50万円の控除があり、一つの計算によると約1500億円控除していることになる。また公的年金等控除、マル優もある。年金課税については、最低でも140万円までは無税であり、一方、受給者で現在300万円以上年金を受給している人はあまりいない。これからの財政状況を考慮すると、更なる年金額の切下げは必至である中、公的年金控除についてどのようにするか考える必要があるのではないか。
○そこで、高齢者の所得課税について二つの立論をすると、一つの考え方は、高齢者の稼得活動のハンディを評価し、特別な控除を行うとするもので、その場合の論点としては、現行の様々な控除に加え公的年金についての控除は行きすぎではないかということがある。この場合、非課税となっている障害年金、遺族年金との均衡をどう考えるのかも論点である。もう一つの考え方は高齢者生活の下支えとして公的年金を非課税とし、老年者控除を廃止するという考えである。労働活動についての評価については世代に関係なく公平であるほうがよいのではないかということである。その観点から見た場合、後者、すなわち公的年金を非課税とし、老齢者控除やマル優を廃止する方が理にかなっていると思う。

高齢者と社会保険のあり方
○高齢者を受給者とする社会保険には公的年金、老人医療、介護保険がある。
○「税方式」の導入については、これまでの施策との連続性のほか、権利性の問題、政府負担の規模の問題等があり、社会保険方式を維持すべきではないか。
○提案として、現役時代に拠出し、高齢期に受給する社会保険システムとして、3つの社会保障を一元化してはどうか。また、現役時代の保険料納付実績を受給時に評価し、受給期の自己負担、一部負担の適正化を図り、相応に負担していただくこととしてはどうかということである。年金を受給する高齢者が自身の医療や介護のための保険料を負担するのは自然ではない。
○もっといえば年金では現役時代に滞納すると年金額減額のペナルティがあるが、医療ではそれがなく、その時点で保険料を払っていればいい仕組みになっている。だが、年金も老人医療も経済的には現役時代に前世代のために負担し、自分の老後には次の世代に負担してもらう仕組みである。であれば若いときの負担実績(保険料を滞納しなかったこと)を老後の給付を受けるための資格としてカウントすることが妥当ではないか。その実現のために、公的年金、老人医療、介護保険の受給要件を現在の基礎年金のそれで統一するのである。
○健康づくりをやれば、将来の医療費・介護費が減るのではないか。これを進めるための社会システムとして、健康管理組合を制度化する。規制緩和を行って企業・地域・個人などが任意に参加者を募って組合をつくり、組合がかかりつけ医と契約して加入者に対する健康指導等を行う。医療費が予測されたものよりも下がった場合には、下がった部分の半分位は、医療保険の保険者から健康管理組合に還元する。

高齢者の社会参加の促進
○わが国の高齢者の就業意欲は高いが、その目的は生活の為というよりも「生きがい」のためである。社会参加率や、雇用率を高めていくための対策を考える必要がある。高齢者の就労抑制作用があると指摘される在職老齢年金については、例えば65〜69歳は現役と引退期の中間と考え、一律3割停止するというような加齢に応じて受給額を調整してはどうか。雇用保険で高年齢者雇用継続給付を受けている場合に、厚生年金が一律カットされることと基本的に考え方が合う。
○育児・介護休業中の者に、現在の出産手当、傷病手当を参考に標準報酬の6割を手当として支給することとしてはどうか。これにより離職せずに、その後元の職場に勤務することになれば、その後の保険料納付も期待でき、手当の額とその後に納付されることになる保険料の額との比較によっては、保険財政に好影響を与える可能性もある。また、介護休業中の保険料を育児休業と同様免除とし、社会的に意義のあることであるため、国庫負担で補うものとしてはどうか。
○高齢者が地域社会活動に参加しない理由をみると、75?79歳では「健康・体力に自信がないから」という理由は半数に満たない。
○高齢者の地域ボランティア活動への参加割合は年々増加しており、年代別にみても、加齢につれ、それ程急激に低下してはいない。
○小中学校の教育費における財政負担が非常に重いという話があるが、これからの高齢者は高学歴の方も多いので、やる気のある高齢者に教室に入っていただくことで、教育と高齢者雇用が進むのではないか。

次に、太田国民生活局総務課長より「男女間の選択に関する課題」について説明があり、引き続き、委員から「女性の選択の自由の観点からの税・社会保障制度のあり方」について、次のような報告があった。

「女性の選択の自由の観点からの税・社会保障制度のあり方」について
○本日の報告の、第一の観点は現行の税・社会保障制度が、労働供給などに関する女性の個人の意志決定を歪めていないかということ、第二の観点は結婚・離婚・育児といったことについて現行の税・社会保障制度が厚生の面から問題を生じていないかということである。
○家族と税・社会保障という観点からみると、戦後の社会保障は第二の大きな変わり目を迎えているのではないか。
○第一に1975年のライフサイクル計画について、先進資本主義諸国が第2次大戦後既に福祉国家を形成しつつあったが、当時、石油ショックの後でこのまま福祉国家を続けてよいのか、大きな福祉でよいのかというような見直し論があった。日本でも、その影響を大きく受け、西洋型ではない日本型の福祉国家を建設すべきではないか、ということでライフサイクル計画というものが立ち上げられ、「日本型福祉社会」ということで有名になった。ライフサイクル計画の考え方自体は、個々人が家を購入したり、老後の生活設計をするときにどのようにして生活設計を支援していくかという観点で、今から見ても斬新なものであったが、家族というものの見方においてはやはり予測を間違えたのではないか。当時は、老後の生活保障としてやはり日本人は家族の絆が強いし、家族にもっと拠り所を認めるべきであるとされ、例えば税制で所得税の人的控除として老親と同居している者には、扶養控除を割り増ししなさいといったことが勧告されている。当時の状況から見ると高齢者が子供と同居している世帯は8割で、高齢者だけで夫婦とか単身で生活している人たちは全体の8〜16%にすぎなかった。高齢者のうち夫婦あるいは単身者で生活しているのは4割という現在の状況は、当時は全く予測できなかった。家族の相互扶助というものをかなり過大視していた。この問題は、我々はアジアの国だけれども家族というのは本当にアジア的なものを残しているのか。あるいは同じように経済発展した国ならば、同じような家族経済をたどっていくのかどうかという問題提起を含んでいる。
○私たちが、今後の我が国の社会保障・税制を考える場合に、これからの家族というのはどうなっていくんだ、ということの予測が非常に重要なポイントになる。家族は変わりつつある。シングルも増加しているし、3世帯同居は急激に減少している、シングルペアレントも、西洋には及ばないものの18歳未満の子供がいる世帯の8%位になって世帯数としては絶対数・割合とも増加している。また、世帯人員が減少しているし、高齢単身あるいは高齢夫婦世帯が増加している。結婚生活20年以上の夫婦の離婚率も上昇しているし、共働き世帯が増加し、そのなかでキャリアカップルとそうでないカップルの分化が起こっている。まさにイギリス、アメリカで起こっていることが日本でも見えつつある。現在同棲が少ないとか未婚の母が西洋に比べて少ないということは将来的には増えるものではないか。
○人類が高齢社会に達したのは1970年のオーストリアが初めてであったが、1970年代というのは非常に大きな変化がおこっている。75年に合計特殊出生率が2.0を切ったが、そのときには既に女性のサラリーマン化が起こっていた。その後およそ25年が経ったが何がどのように変化したかを見ると、特殊出生率は低下したままである。25歳から59歳までの女性の労働力は、この20年間日本も含めて先進諸国の中で絶えず上昇している。そこでパート就労が多いか、フルタイム就労が多いかというと国によって若干の違いはあるが、女性のサラリーマン化と労働力率の上昇ということはあらゆる年令階層でおこっている。相変わらず寿命が延びようとしている社会で、正規雇用者でない人たちが増加している。
○このような共通した現象がみられるところで私たちの社会は高齢社会で労働力を確保しなければならないし、高齢化に伴うリスクが社会的に大きくなってきている。果たして現行の制度がマッチしているか。労働力の確保ということについてもマッチしているか。先ほど我々が第二段階目にきていると言ったのは、こういった現在の家族の変化をどれほど受け止めて新しい形に社会保障を組み直すかどうかということが問われる時期に入ったと言うことである。これほど子供を産まない社会というのは、子供を産むという本人の意思決定を妨げているものがあるのではないか。それはとりもなおさず社会全体のあり方を問い直さなければならないのではないかという問題である。その一つの解が男女共同参画社会の建設ということではないか。
○現行の税の特徴は以下のとおりである。
○個人単位と世帯単位が混在している。税制で個人単位と言うときは、あくまでもその人の収入はその人にかける。家族が何人いるかという状況は、まず考慮には入らない。世帯単位というのは二分二乗方式とかいろんなことで議論がされているが、税金の世帯単位というときは、世帯の所得を合算して分割する。例えば合算分割主義というのがあるが、アメリカ、ドイツがとっている方法であるが、これはあくまでも課税の便宜上にすぎず仮に二分の一で均等で割っても、この世帯の所得が妻のものになる、半々ずつ妻のものになる、夫のものになるという権利とは関係はしておらず、課税の不均等をどうやってなくすかという便宜的なものにすぎない。これが重要なポイントで、年金の議論の時に混同してはならない。一方、年金で個人単位というときには、あくまでも個人の権利として、拠出した保険料に対して給付がついて、そしてそのときには家族状況については考慮されない。それでは何故我々の国が個人単位と世帯単位が混在しているのかということだが、基本的に老齢年金においても所得税においても単位は個人単位である。しかし、非扶養配偶者の所得が低いときには世帯単位となるということが行われており、そのときには税制では配偶者控除あるいは配偶者特別控除がつき、老齢年金では第三号被保険者として国民年金の保険料はなし、という具合に扱われる。
○社会保険のうちの遺族年金の存在自体、世帯を前提としたものとなっている。生活保護の受給についても家族扶養が優先されている。
○パートタイマーの社会保険への加入要件が厳しく、被用者保険は正規雇用者を対象としている。
○給付の受給資格に男女や結婚形態に偏りがある。特に遺族年金ははっきりしている。
○税と社会保障の重複が多い。例えば遺族年金の子加給、児童扶養手当、扶養控除等である。
○老後貯蓄のための税制優遇措置が各年金制度と結びつきすぎている。
○現行制度が各方面にもたらす影響としては、労働意欲の阻害や、パートタイマーの待遇改善を阻害すること等がある。また、正規雇用者のみを対象としているため、保障からもれる人も出てくる一方で、厚生年金の空洞化というのが人口の高齢化以上に厚生年金の中では高齢化が進むことになる。厚生年金の空洞化が現行制度のままでは加速されることとなる。それで保障からもれる人々が増加し政策の意図が達成されない。
○今後の方向としては、以下の点があげられる。
○個人単位の徹底が望ましい。何故なら世帯単位の未分化のところで労働意欲の阻害が発生しているからである。
○パートの厚生年金や健康保険加入要件の緩和を進める。
○年金の改革については難しいところではあるが、皆年金制度を維持するのかしないのかというところも論点となり、所得のある人だけに年金を給付する制度にし、所得の低い人は生活保護に変えて最低保障型の年金にするかどうか。おそらく日本はしばらく皆年金制度を維持するのではないかと考えている。基礎年金は消費税で行い、厚生年金は確定拠出型の年金で行う。遺族年金は40年くらいかけて廃止して加入したい人のみオプションにすればよいのではないか。
○重複した制度の整理・合理化を進める。扶養控除と児童手当の財源を一元管理し制度を一本化する。
○老後貯蓄のための税制の整備については個人の選択するライフスタイルに関係なく一人あたりの限度額を定額にするほうがわかりやすい。
○育児と介護と税・社会保障のありかたについては、介護については社会的に見なければならないという合意は得やすいと考えるが、育児については社会的に見る必要があるかというと、どの国を見てもはっきりとコンセンサスがあるとは見ていない。また、どの制度が出生率の上昇に効果があるのかということもまだはっきりしていない状況にあるのではないかと考える。しかしそれにも関わらず各国ともに育児期間については年金で保障するとことが80年代よりも90年代に入って強化されてきた。この考え方のひとつの裏は家族責任を持つものが不利にならないようにというような考え方。また少子化対策としてははっきりしていないが、とにかく働くことが足かせとならないような、子供を産むことがペナルティーとならないようなことにするという、一環としてなされているのではないか。年金で子育て支援をする場合に成果主義かまたは子供を産んだ時点のことかという両方がある。成果主義というのは年金をもらうときに加算される方法で、もう一つの方法は育児期間中に保険料で免除をする。機能的には同じだがどの時点でするかということで考え方が異なる。フランスは長い間成果主義であったが90年代に入り考えが変わり、現在ではフランス、ドイツでは子育て子供一人につき期間限定でみなし所得を算出し、その期間保険料を拠出したとみなす。その財源としては国庫負担の国もあれば保険料で対応している国もある。スウェーデンは子育て期間中に所得が減少した人が対象となっているので、ある意味就労支援的な性格が強いと考える。日本については育児休業期間中に限定して保険料を免除している。

以上の説明及び報告に対する委員等からの主な発言は以下のとおり。

○専業主婦に対して、子育ての援助をするということは、靴の上から足を掻くようなものであり、むしろ直接子どもに対して援助(児童手当など)をするということが必要である。税制上の配偶者控除は専業主婦にとって非常に失礼な制度である。専業主婦の経済的な貢献を評価し、専業主婦の帰属所得に課税することが、専業主婦の労働を社会的に評価することにつながる。しかし所得のない専業主婦に課税することは非現実的だから、代わりに配偶者控除をやめて、共働き控除に振り替える。そうすると間接的に、共働きの人が家事労働できないことに対する一種の補償になる。

○年金保険料は社会保険料方式で考えるのか、税方式で考えるのかという議論がある。現在社会保険制度と税制度は複雑に入り組んでおり、しかも負担分は社会保険料の方がはるかに高くなっている。論理的には消費税が一番すっきりするような気がするが、具体論としては益税の問題など消費税の徴収能力には問題がある。ただ、社会保険に入れない層は拡大しており、しかも社会保険料負担を嫌ってそこに入れないような雇用者が拡大している現状では社会保険方式もなかなか難しいと思われる。社会保険制度と税制度との間の整合性はどう考えるべきかについて御意見をお願いしたい。

○税制度という場合、目的税と一般財源の税ではかなり意味が違うので、目的税ということをベースに税方式と社会保険方式を比較していただきたい。

○税方式という場合に、一般会計で行うという説をとった場合に、これは世帯の不公平どころか負担はどこにいくのかわからなくなってしまう。目的税ということであれば、社会保険料もある意味目的税であり、そうすると、消費税がいいのか、社会保険料がいいのかということになるのかもしれない。その場合、消費税で年金(年金にとどまらず医療や介護もという議論になると思われるが)を、すべて所得制限もなしに、若いときの貢献に一切関係なく、とにかく一定の年齢になれば必要な給付を出すというのも、一つの選択の問題として理屈としては考えられるが、実現性はどうであろうか。重要なのは高齢者のための年金、医療、介護費用は現役層が順繰りに負担せざるを得ないということであり、そうであれば現役時代の負担実績を受給期に何らかの形で評価するのが自然。いずれにせよ、年金も老人医療も介護も、結局は税金同様若い人が負担しており、保険料は若い時からちゃんと払うようにしなければならない。
○保険料の滞納者がいる点についてであるが、突然失業した人に対して求職者給付に保険料負担を上乗せし、それを直接保険料収入に入れることができないか。また、学生(現在延納制度がある)に対しては、払えない人に貸し付けるといった制度が考えられないか。それから、障害年金や生活保護の人は当然保険料が免除されているが、その分年金受給額が三分の一になっている。年金受給額を満額払えるように、保険者あるいは行政の負担で現在の給付額に保険料を上乗せするという制度が考えられないか。さらに、申請免除という制度がこれまで運用上いろいろ問題があり、これをしっかりとるということも必要である。また、三号被保険者は保険料を負担すべきであるが、そのかわり育児期間、介護期間に携わる主婦(一、二、三号)については、その社会的意義を評価し、保険料を免除できないか。社会的に重要性があるならば、一般会計が負担すべき正当な場合といえる。こういう対策を講じた上で、残った滞納者に対しては法律に基づき断固滞納処分を行う。実は厚生年金は滞納処分を行っているが、国民年金は現在滞納処分を行っていない。老後に向けて皆で保険料を払うという制度に移行した上で、滞納者については断固法に基づいて執行する必要がある。

○現在の社会保険料は、報酬に全く定率に比例しているが、現実的な生活水準の比較というのを考えと、世帯人員が非常に多くてかなり必需財に振り向けて食べている世帯と、同じ30万稼得していても一人で生活している世帯であれば、かなり生活水準に差がある。税金ではその辺は色々考慮しているけれど、社会保険料は全く考慮していない。それで全体を非常に大きく社会保険料でやっていこうということになった場合の社会保険料の意味することは何かお聞きしたい。それから自分自身消費税がいいと結論に至っているわけではないが、消費税というのは消費額とリンクするわけで、世帯の消費水準とある程度リンクするかもしれないが、報酬比例の場合はそうではない。報酬比例の場合は負担も給付も全く定率であるから、負担の水平的な公平ということを考えたときに、公平とは言えない負担と給付になっている。それを国の規模でやっていいのかという問題がある。

○一方で税金というものがあって、そこがそれなりにいろんなことを排除している。それと全く同じことをまた社会保険料でなぜ二重にやる必要があるのかという、制度としての問題である。

○先程目的税類似といったが、この財源を保険料で賄うことは極めて自然なことだと思う。そのときに社会保険料の中にさらに累進というものを入れる必要があるのかと思う。つまり、医療など皆ほぼ同じであり、給付の方は必ずしも従来の所得にリンクしないわけである。にもかかわらず所得比例となっているということにおいて、高額所得者に協力していただいているわけである。そういう意味でもっとそれ以上に調整をするべきであるのではないかというならば、それは所得税の分野の問題である。

○ある調査で、今の30〜40代の特に子育て中の女性が高負担高福祉なんてやめてしまえという意見が一番多かったという結果がある。今までは賦課方式で、一生懸命働いて子育てしてきたにもかかわらず、自分が高齢になったときには積立方式で自由にしろというのはまさに踏んだり蹴ったりだと思っている人が多いのではないか。世代間公平と言った場合に、同じ世代の人がずっと続くというイメージがあるが、現実に人は加齢するから、世代間公平よりもいわゆるコーホート公平、何年に生まれた人がどれだけ得して損してというのを考慮しないと、ただ世代間不公平を直せばいいという議論ではないのではないか。専業主婦の税制にしても、今まで得していながらペナルティーを受けないのに、なんで得している人を今も支えなければならないのかと、社会学の調査の現場から見るとそう思う。
○高齢者が独立して住むようになっているという話しだが、調査の結果によると、いずれは子どもと同居したり、住宅を譲るという意識が多く見られる。表面的に高齢者のみ世帯が増えたから独立する人が増えたとはいいにくいのではないか。
○リバース・モーゲージについてであるが、子どもの側からの不動産相続期待はまだ高い。不動産を相続した者と、相続できなかった者との差というのは、極めて大きく、普通の個人の努力では回復できない格差となっている。親の家計と子どもの家計が分かれていくという意見については疑問がある。

○子育て支援についても、税制度と社会保障制度に重複した部分があり、かえって格差が拡大しすぎて不公平を生じさせている面がある。
○負担の原資を税方式にするか社会保険方式にするかについてはこだわる必要はない。むしろ年金を受給できる権限を最低限の所得保障と考えるか、老後の自助努力の世界と考えるか、その辺の筋道をきちっと決めておく必要がある。
○今ある専業主婦と、将来減少するであろう豊かな専業主婦を分けて考えていくべきである。今ある専業主婦は高度成長時代を通して日本の社会に自然的に生じたものであるが、今すぐに労働市場に参入するにしてもかなり限られたものになると考えられるので、移行措置をきちんと考えていかなければならない。遺族年金は本来廃止すべきだし、三号年金についても全く不公平だと考えているが、それをある程度計算にいれて動ける世帯から実施すべきである。コーホートによる制度改革ということをいわなければ現実的ではない。
○年金については、主婦が家事労働に寄与している労働については、家庭の中の有償労働についての寄与分だと考えている。世帯の中で婚姻費用を夫がお金として出し、無償労働で妻が出し、婚姻費用については共有の関係を持っているので、年金負担は民法上できると考えている。主婦に負担させる根拠があると考えているので、問題は女性の賃金が男性の賃金の6割しかないということ、日本の男性の家事労働の寄与は全世界的に見て最低ランクであるということである。今現在の移行措置としては、専業主婦家庭であっても、共働き家庭であっても、収入を合算して年金支払い料を計算し、所得税もある程度これを考慮することが公平であると考える。将来的にはスウェーデン的になればいいと考えている。

○第三者被保険者が今すぐ放り出されるという議論があるときに、夫はどういう責任をもつものなのか。

○婚姻共同生活において収入のある夫が現金を出し、妻が無償労働を支出し、婚姻共同体が成立しており、婚姻費用の分担義務の中で必要な年金支払い料を夫が支払うべきである。ただ、その計算の根拠として、税に二分二乗があるとするならば、年金もそれでいけるだろう。最終的な年金受給権を夫婦で同額であるべきだとする考え方もある。生活保持義務として日本の法律では夫婦で同じレベルの生活をするということだから、年金の支払額と受給額を同額であるという考え方を年金については説明することが可能と考えている。

○もともと三号被保険者の問題は、離婚した時の対策ということからきている。なぜ財産分与の考え方を公的年金にも適用できないのかということが最大の疑問である。

○夫婦別産制の下では、夫の収入には妻の所有権がないという考え方があるが、実は婚姻生活を清算する場合には、妻にも二分の一の潜在的持分があると考えている。実際の婚姻費用は夫が支払うべきであり、それについては妻も日常家事代理権の範囲内では自由に使えるという考え方がある。

○夫の収入が1000万の場合と300万の場合は、妻の家事労働は、同じ家事労働でも前者は500万で後者は150万という考えですね。

○第三号被保険者の歴史的意義は終わったと考えている。ただし、子育て世帯の保険料をそのまま増やすというのはよくないと考えている。今の年金の報酬比例制度は、女性の出産離職者に大きなペナルティを与えている。就労を奨励的にするような制度変更が必要であると考えている。また出産時期に、働きたい人は働き、子育てしたい人もペナルティなく子育てすることができる、そういう制度変更が必要である。

○年金の負担と給付で損得計算する人は多数派ではない。心配を与えているのは、保険料がどこまで上がるんだろうか、年金は本当にもらえるんだろうかということであり、必要なのは、負担と給付の明快な青写真を出すことである。世代の損得議論を貫いていくと、制度の最初から損得は崩れている。年金の成熟化措置といっているが、制度の最初では短い加入期間で年金をもらえ、その得がだんだん小さくなり、制度が破綻しなければある時点でとんとんになることになっている。
○年金制度をやめたいという人がいるが、自分の親が年金をもらっていて自分が払わないというのは問題である。もし年金制度をやめたら自分でちゃんと親を養うのかということになる。
○改革をやるための経過措置としてコーホートごとに考える必要があるのではないかという話しであるが、昭和60年の年金改革においても、40年の経過措置を組んでいる。
○第三号被保険者制度は、婦人の年金権が目的であって、保険料は健康保険制度同様にとらないこととした。誰が払わなくてよくて、誰に払ってもらうべきかというというのは今後の話しとしてある。
○年金の財産分与の話しであるが、年金は一身専属であるがそれを分けることはできないかということであったが、年金制度として割り切ることは多分できないだろうと思う。婚姻期間に応じた分与額などについては、裁判所の財産分与においてやっていただければよいのではないか。
○リバース・モーゲージについてであるが、三世代同居は確実に減っている。子どもに資産を残す方法であるが、同居している住宅を相続する場合は、今の相続税法でもかなりの減額控除となっている。親子が別々に住んでいて、子どもが自分の財産もつくっている場合、家で残して子どもが売り払うのか、それよりも家を親が自分の老後に使って預金通帳や株式を残すのか、という選択があってもいいのではないか。リバース・モーゲージの普及は0.1%という指摘であるが、これは現在の仕組み(融資・返済担保型)の下である。集団で組むか権利の移転型(売買・代金支払型)にすることにより担保掛目をあまり見なくてよくなるので、かなり普及するであろうというのが最近の意見である。

○年金の問題にしても、妻の待遇というのを考える時に、婚姻生活共同体に対して妻がどの程度寄与したかということを基準に考えるのか、それとも婚姻生活共同体を構成したということ自体に目を向けてそこから結論を出していくのか、寄与度をどの程度考慮してそこにどの程度焦点をあてるかということから考えていかなければいけない。
○高齢者の活用として少人数教育に使っていくという話しがあったが、新しい人材を入れて活性化させていく際に、まわりでいかにしてバックアップしていけるかということを前提として考えていかないと、有為な高齢者の人材をうまく活用できない結果になりはしないかという心配がある。

○年とったら子どもと住みたいという親がまだ多いのではないかということだが、意識調査では願望が含まれているのかもしれない。実際の地域別の分布を見ても、子どもとの同居世帯が全国平均より高いのは東北と北陸ぐらいである。
○社会保険で支払能力まで加味する必要はないのではないか。税や手当ての面で調整する方がいいと思う。

○高齢者が子どもと住みたいというのは減っているかもしれないが、子どもの側が親に依存したいという意識が逆に強まっているのではないか、その交差地点にいるのではないか。

○パラサイトシングルも、あと20年、30年経ったとき、今頼っている親が自分に頼ることになる。それに耐えられるかどうか見て見たい。

○調査をやってみると、親はポックリ死んで頼られることはないと皆信じている。

○税金に比べ社会保険が行っている移転の規模の大きさが個人の世帯で考えるとあまりにも大きい。税金に比べて社会保険料は一つの世帯で2倍くらい払っている。30万の収入があって子どもが二人いる世帯と、子どもがいないが30万に抑えている世帯とで、給付と負担が全く同じということに問題があるだろう、それは真の公平とは言えないのではないか。

○消費税を完全目的税にして、高齢者用の給付だけに充てろということであれば、これは今所得にリンクしている社会保険料に代えて、消費税を社会保険にしようというに過ぎない。保険料の有り方としてどういうとり方がいいのかという議論をしている。税方式か社会保険方式かの議論ではなく、社会保険方式の保険料の有り方の議論である。

○税方式、保険料方式の話しだが、なんで年金に消費税なのかなと思う。フランスのCSGは収入にかける。医療だったら消費税でもいいが、年金は収入にかける方がいい。
○労働政策では断続的雇用というものがあまり認められておらず、労働政策の中に入っていない。今の加入制度は人材派遣業という雇用形態にマッチしていない。2ヶ月以上働くと加入義務があるのだが、人材派遣業をする立場からすると、収入でとる方がよい。全部消費税というのはどうかなと思う。

以上

 なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性がある。

(連絡先)内閣府国民生活局総務課調査室
補佐 中垣
担当 福留、木村
TEL 3581-9369(直通)