1.日時 平成13年3月29日(金)14:00−16:00
2.場所 内閣府府議室(第4合同庁舎5階)
3.出席者
(委員)八代尚宏座長、大村芳昭、喜多村悦史、木村陽子、住田裕子、永瀬伸子、前田正子、山田昌弘の各委員
(事務局)坂井副大臣、池田局長、塚田審議官、大石審議官、太田総務課長、井内調査室長
(オブザーバー)松山参事官、浜田参事官、綱木課長
4.議題 「子どもの養育をめぐる課題」について
5.審議内容
開会後、太田国民生活局総務課長より検討の視点等について説明があった。
事務局からの説明を終わり、引き続き、委員から「子どもと仕事とが女性にとって代替的である現状」について、次のような報告があった。
「子どもと仕事とが女性にとって代替的である現状」について
《二極化の進展》
○ 最近女性が二極化している。国勢調査によれば1980年代には20歳台後半の女性未婚者は4人に1人だったが、95年には2人に1人となっている。その後は、人口問題研究所によると、晩婚化のテンポは収まってきたが、傾向は変わっていないということである。
○ 一方結婚した女性については、職業への進出が進んでいるとの認識をもっていたが、「出生動向基本調査(平成9年度)」を分析してみると、若い世代で出産後の専業主婦率が上昇していることがわかった。その要因を三世代同居の減少にあると考えたが、三世代同居世帯でも若い世代ほど第1子出産後の専業主婦率が上昇しており、また大都市と地方をみると、大都市のほうが専業主婦が多いが、若い世代でさらに多くなっている。学歴別でみると大卒のほうが就業継続する確率が高いが、それも若い世代で下がってきており、高卒との差が縮小してきている。
○ このように結婚をしないか、もしも結婚して子どもを持つのであれば、一時的に専業主婦になり、その後パートとしてカムバックするという二極化が強まっている。また結婚後の就業継続は、増えているとはいえ、いまだに4割程度の女性が結婚退職しているという事実も、日本的な特徴といえる。
《変わらない働き方と子どもの育ちの二極化》
○ こうした女性の出産後の就業パターンが変わらない中で、育児の内容については変わってきている。まず共働き家族についてであるが、2000年厚生科学研究の「誰が育児を担っているか」という調査をみると、祖父母の役割が縮小している。一方、育児休業の利用は急速に増加し、保育所の利用もやや増加しているが、これを出産児数に占める割合でみると非常に少ない。育児休業制度の利用状況を出産児数に占める割合でみると、育児休業法施行後の1992年から97年までの出産児数の7%、中小企業まで適用されるようになった95年から97年でみても8%となっている。それ以前から比べると普及しているといえるのかもしれないが、大勢の人が育休を利用しているという状況ではない。労働省の「女子雇用管理基本調査」をみると、だいたい5割くらいの人が育児休業を利用しているが、これは就業継続した人そのものが増えたということではなく、就業継続した人の育休利用が増えているだけである。
○ 続いて専業主婦についてであるが、前述のとおり結婚後の就業継続は増えているが、正社員女性の4割程度は結婚退職し、妊娠中正社員を続けた者も育休利用者はその2割程度で、かなり多くの人が辞めているというのが実状である。
○ 厚生省内の「少子化に関する研究会」の上場企業に勤務する若い女性に対するインタビュー調査結果から、豊かさゆえに「専業主婦願望」が強いとの分析があるが、私は同じ調査から、大企業のOLを続けることと出産とはいかに両立しがたいかという「OLが感じる現実」を読み取る分析をおこない、「現在の働き方では、子どもを持ちかつ働くことはむずかしいと感じられ、この結果、結婚を先延ばしにして未婚で就業を続けるか、あるいは出産離職をするか」という選択になっていると解釈する。またその人たちは未婚率が高いのだが、話しをきいてみると、生涯未婚で仕事をがんばるというのではなく、「いつかは結婚し、いつかは子どもを大事に育てたい」という。ただその「いつか」は切羽詰っていないし、目前にきていないというような認識である。育児休業を利用して仕事を続けるということに関しては、「あんな苦労をしたくない」「子どもが可愛そう」「家族に無理がかかる」「職場に迷惑がかかる」「夫が信頼できない」といったことから結局自分に負担がかかり、魅力的な選択肢というふうにはみられていない。
○ その一方で専業主婦の育児に関しては、様々な問題が指摘されている。同居親の役割が三世代同居が減るとともに減少し、別居している妻の親の役割が増加、夫の役割が増加している。しかし、別居している親は「通い」のため、できるケアはそれほど大きくなく、夫は仕事をしているため、結局のところ密室のなかで母親が1対1で育児をおこなっているという状況が広がっている。
○ このように密室で1対1で母親ばかりに、あるいは公園に行っても同質的な母親のみの集団に育てられる子どもと、保育園やその他の手段で育てられる子どもとの育ちの二極化が進展している。
《進まない保育の充実、保育の多様化、対象の多様化》
○ では、子育て支援としての保育園はどうなっているか。認可保育園以外はほとんど助成を受けることはできず、「ひどい」ところほど補助も規制もない。児童に占める(認可)保育園入園比率をスウェーデンと首都圏のある自治体とを比較すると、1980年時点ではほぼ10%で差はなかった。しかし90年にはスウェーデンが45%となったのに対し、この首都圏の自治体は13%である。その後も少子化対策といわれているのにもかかわらず、2000年にこの自治体は14%と1%しか増えていない。その間無認可の保育園は増えたが、大和市の事件のようなこともあった。このようにこの10年間で助成を受けている保育園は増えていない。
○ 家庭に子どもを迎える保育ママは、北欧、フランスなどで制度化されている国もあるが、日本では、自治体の保育ママというのはごく限られた人数であるし、仕組みづくりがない。また労働供給がない。というのは、よそ様に子どもを預けることも、預かることも抵抗があるのか、あまり進んでいない。また、専業主婦を優遇する税・社会保障等諸制度の問題から、労働供給するインセンティブがない。これは社会保険庁「事業年報」、総務庁「労働力調査」、「全国消費実態調査」を分析すると、夫の月収が高い層で第3号被保険者からはずれることのデメリットが大きく、年収130万円となるところで就労調整する動きが強化されている状況がでている。
《大幅な舵転換の必要性・そのために何が出来るか》
○ 1980年から90年、2000年にかけて、女性の高学歴化、意識変化、雇用就業化という、いろんな国で起こっている変化が日本でも起きているのだが、結婚・出産というところでは、まだむかしの型以外のあり方が、どうもできそうもないという雰囲気が強く、そのために結婚しない。しかしかといって、生涯仕事に生きるというほどではなく、いつか結婚し、いつか子どもを持つといいつつしない、というような状況が続いている。こうしたなか、保育園の充実、とりわけ多様な保育園の充実ということに関しては、日本の場合遅れており、むしろ就労調整する動きは強化されている現状である。
○ このような状況に対し、大幅な舵転換が必要である。最近「専業主婦優遇を廃止せよ」とよくいわれるが、それだけでは決してだめであり、同時に育休・多様な働き方の充実・保育園をセットでやらなければならない。というのは専業主婦でないと子どもが持てないのではないかと多くの人が思っているような状況のもとで、そこだけを廃止したらかえって状況は悪化する可能性がある。
○ 具体的には、「働き方」では、育休を「時間分割(短時間での長期取得、分割取得)」を可能にし、また非正規雇用、フリーターが増えているので、非正規までに拡充する。あるいは短時間の正社員的な働き方をつくる。あるいは非正社員の正規登用の制度化、非正規の社会保障を充実することなどがあげられる。「保育対策」では、資源の有効活用のために幼保一元化をすすめる一方で、保育園の助成対象を認可保育園だけでなく多様化する。自治体によっては拡充できない状況があるので、特に大都市に、緊急に手厚い基準をいれるべきではないかと思われる。ファミリーサポートセンター事業には、供給側へのケアができる人材を配置する仕組みづくりが必要である。また、認可保育園を派遣の核とした専業主婦の育児支援をしてはどうか。保育園の地域子育て支援センターとしての機能ということがよくいわれるが、いまは補助的な仕事にとどまっているとの印象がある。そこに専門の職員を配置するなどしていかなくてはならないのではないか。
《働き方の多様性の少なさ、非正規労働が「非正規である問題」》
○ 以上のような施策をおこなわないと、これからさらに少子化は促進するであろうと考える。フリーターや正社員になれない男女が増加し、育休も取れない。男性にとって妻子を養える給与ではないため、むかしのような専業主婦のようなかたちで子どもを養えない。また社会保険料が上がっていくスケジュールができているので、負担も増える。また住居と子どもを持つということは関連しているが、社宅等家賃補助住宅が減少していることなど、いろんなところで少子化要因は進展している。
○ 人口政策が有効かどうかわからない面もあるが、多くの人が子どもを持たない未来というものを明確に描いて、子どもを持っていないわけではなく、ずるずると少子化要因が促進されている。それは諸制度が変わっていないというところにあるのではないだろうか。いろいろな諸要因が変化しているのに、子どもの養育、介護といったケア活動を国が社会保障のなかで明示的に位置づけず、主な稼ぎ手に対する生活保障のみを中心に考えて、家庭内活動を行っている妻に対しては世帯主を通じて暗黙に生活保障がされるというようなむかしのままの型だけが残っていると、やはり結婚が減り、子どもが減る。そうではなく、男女の雇用を前提として、社会的な保育や介護の制度、働き方等を充実させていくタイプか、少なくともケア活動そのものに対して給付をするタイプに国全体が変わる必要があるのではないか。そうして子どもと仕事とが代替的でない状況を作り出していくべきではないかと思われる。
次に、委員から「働く母親への支援策比較」について、次のような報告があった。
「働く母親への支援策国際比較」について
《大枠》
○ 福祉国家を女性の位置づけでみると、1.世帯主(Breadwinner)モデル、2.性別中立(Gender Neutral)、3.性別公平(Gender Equity)の3類型に大きく分けられる。
○ 1.は、経済的な所得は夫が稼ぎ、女性はだれかに扶養されている制度であり、世帯単位で自己完結するモデルである。ドイツ、日本、スペイン、イタリアが当てはまる。
○ 2.は、個人単位であり、女性と男性に特別な扱いがない。典型的な例は、アメリカである。
○ 3.は、出産や育児など、専業主婦が無償で行うのではなく、ひとつの社会活動として位置づけることによって、家庭で育児や介護に携わった人には児童手当などの保障があり、家庭の外で就労を選んだ人には、社会的に保育や介護を供給しようというパターンである。男女平等といいつつも、出産や保育などは、女性に負担がかかるので、そのハンディを社会的に補うことによってスタートラインを一緒にしようという考え方である。
スウェーデン、フランス、ドイツ、オランダ、日本、米国の6カ国について紹介。
《スウェーデン》
○ 女性の継続就労と子育ての両立支援をするパターン。
○1.現金給付、2.現物給付、3.労働時間管理という3つの制度が整合的でしっかりしている。
○ スウェーデンでは、黄金の1960年代(高度成長期)に、多くの女性が働き出し、出生率が非常に落ちた。同時に高齢化率が上がり、老人介護も問題になっていた。その際、様々な政策的な議論(子どもは家で育てるべきか、社会で育てるべきか)がされた後、「働く女性にも子どもを育てる権利がある」ということで決着がつき、1985年には、国会で1歳半からすべての子どもに保育を保障するということが決まり、各地方自治体は、就学前児童の保育の希望者に保育を提供することが義務付けられた。つまり、待機児童を出すことは許されない。
○ 専業主婦になることは、一部の高額所得者を除いて不可能であるという社会である。社会保障も就労とリンクしているので、働かないと損という社会。
○ 高収入で高学歴の女性ほど出生率が高い。つまり、育児休業手当等が休業前所得にリンクしているので、高い給料をもらっているほど、休業手当がもらえる。初めて子どもを産む年齢は、上がっている。2年以内に2人目の子どもを産むと、1人目と同じ条件で育児休業手当の条件が整備されるので、1人目は遅いが、2人目は1人目を産んだ後すぐに産むというパターンがみられる。
○ 逆に、失業中の女性や低所得の女性ほど、出生率が低い。
○ スウェーデンは、政策の見直しが頻繁に行われる。財政赤字のときは、育児休業手当の割合を下げるが、そうすると、みんな子どもを産むのを控える。景気が良くなると、その割合が高くなり、産む人が増える。そのため、出生率の上下が激しく、これが政策の副作用でもある。
○ このように、スウェーデンでは、女性に働いてもらって付加価値の高い仕事に就いてもらって、かつ子どもを産んでもらうという点では成功しているが、政策的にもお金がかかるので、一度手厚い制度を入れると、みなの期待値が上がり、下げることができない。
《フランス》
○ フランスは、北欧についで、乳幼児をもつ母親の就業率が高く、しかもフルタイムで継続をする人が多い。(フルタイム就労は、35時間労働制であるため、日本とは感覚が異なる)。
○ 子育て支援は、現金給付、現物給付ともに非常に充実している。
○ かつての家庭ではレベルの高い育児がされておらず、19世紀末から、政府が医療機能を持つ保育園を整備していた。つまり、親の育児を補完するため、保育園で預かって食事を与えて、死亡率を下げるため、保育園が利用されていた。
○ 一方で、高貴な女性は、乳母に育児させるということが当然であったため、保育園やベビーシッターの手を借りて育てるのが当たり前という考え方が一般的であった。そのため、保育ママやベビーシッターに育児をしてもらうのは、全く抵抗感がない。フランスの場合は、日本やドイツが、「働く女性はいい母親になれない」という考え方があるのと大きく異なり、「成熟した女性は、仕事と子どもを持つのが普通」という考え方が根強い。
○ 「保育学校」(水曜日休み)には、1999年時点で2歳児の36%、3歳児では、母親が働いていようが働いていまいが、ほぼ100%入学している。これと、ベビーシッターを組合せたり、水曜日は仕事を休んだりして、様々な保育手段を組合せて女性は働いている。
○ 1990年代に入ってから、共働き家庭への支援策に転換している。
○ 保育の特徴は、AGED(家にベビーシッターや家政婦を雇った場合、費用の半分、総額45000フランまでを両親の所得税から控除、さらにベビーシッターの社会保険料を補助)、AFEAMA(登録保育ママに子どもを預けた場合、保育ママの社会保険料の補助)に加え、APEという養育親手当の制度がある。女性はどちらでも選ぶ自由があるが、一般的に、所得の低い女性は子どもを産むと手厚い養育親手当をもらい、家庭の専業主婦となる。一方、高学歴、高所得の女性は、保育学校や各種の制度を使って就労を継続することが見られる。前者の専業主婦となった女性は、再就職が非常に難しいため、保育ママや裕福な家庭のベビーシッターになったりする。
○ 専業主婦となった女性の再就職は、やはり難しいので、手厚い養育親手当によって就業を中断させるのは、女性の生涯所得という点では、マイナスだという評価である。
《ドイツ》
○ 児童手当強調型、家庭の育児強調型。
○ 「働く母親はいい母親になれない」、「就労といい子育ては両立しない」という社会の概念が強い。極端だが、家庭の子育てと就労が分断されており、二者択一である。
○ 東ドイツでは、女性は働いており保育園は完備されていたが、統合以降、財政難のため、西ドイツの価値観に吸収されつつある。この中で、今起こっているのは、ドイツは、3年間育児休業があるが、企業側から考えると、3年間育児休業をとる人を採るインセンティブはなし、3年間育児休業をとれる人は経済的に恵まれた人のみである。
○ 自力で保育を調達できるエリートのみ、子どもを産んで継続就業できるので、ドイツでフルタイム就業で子どもを持って働きつづけることができる人は、エリートの証明にもなっている。
○ このため、無子割合が非常に高くなっている。実際1955?60年生まれの西ドイツの女性では、無子割合は25%である(無子割合1割がふつう)。
○ ドイツでは、あまりに就労と家庭が分断されているため、家庭をもつ社会の層と結婚をせずに子どもを持たない層で社会が大きく分化しており、将来の旧西ドイツ側の無子割合は30%を超えるだろうと予想され、危惧されている。
○ 子どもを持たない人が増えてくると、育児支援にお金を投下しようとする社会的支援が 得にくくなり、ますます子どもを産みにくい社会になる。
○ 西ドイツと東ドイツでは、世論調査でも大きく違いがあり、旧東ドイツは、「女性は子どもを産んでも働いたほうがよい」という支持率が高く、無子割合は低い。旧西ドイツでは、「女性は子どもを産んだら家庭に入るほうがよい」とする支持率が高く、無子割合が高い。
《オランダ》
○ 1980年代の前半、ワークシェアリングをするため、労働時間の短縮化を進めた。このため、基幹産業であった造船業と繊維が低迷し、サービス業などが増えていく中で企業もパート(女性)を雇いたいということとリンクして、女性の職場進出が1990年代に入ってから進み始めた。
○ 保育の最低基準はなく、現在、保育法を準備中である。
○ 女性は働かないことが前提であったので、育児休業制度はまだ貧困である。
○ サバティカル休暇制度(誰でも1年休める休暇制度)という制度がある。
○ コンビネーションモデル(1.5稼ぎモデル)について、政府がキャンペーンなど行い、社会をあげて短時間労働を推奨している。(フルタイムの週平均労働時間が36時間であり、週休3日も増えつつある)。
○ 短期的に変化が起こっているので、世代によって違いがあり、50代は、「女性が働くことは考えられない」という考えであり、40代以下は、ほとんどが共働きである。
○ パートが正規労働であるだけでなく、フルタイムがワークシェアリングのために時短されているので、毎週の労働時間規制も厳しく、サービス残業はありえない。
《アメリカ》
○ ヨーロッパとは対極にあり、先進国の中では特異である。
○ 政府は個人の結婚や家庭には介入しないことで徹底しており、児童手当はなく、保育も全く足りていない。ただ労働市場が非常に柔軟なため、それぞれの所得に応じて就労調整をしながら、子育てと仕事の両立をしている。
○ アメリカは保育のデータも揃っておらず、保育ママも公的にやっているものは非常に少ない。現在では、虐待などの問題から、施設保育へのニーズが高い。
○ 経済格差が大きく、エリートは所得が高く、移民労働力もあり低賃金で働く労働者が豊富であるため、エリートは、各自ベビーシッターを雇ったりしている。
○ 育児休業などは、個々の企業の制度なので、エリートで大企業に勤める女性はそこで優遇され、制度を利用しながら就労を継続する。
○ 従業員50人以下の企業で勤める女性は、産休もないので、一旦仕事をやめる。ある調査によると、世帯年収1万ドル以下の世帯の女性の約2割は、出産後6週間で仕事に復帰をする。つまり、出産休業、育児休業をとる経済力がない。
○ マーケットで安い労働力は多いので、エリートにとってはいいが、中産階級ではいい保育を見つけるのは難しく、下層階級にとっては非常に厳しい社会である。
以上の説明及び報告に対する委員等からの主な発言は以下のとおり。
○ アメリカは出生率が高いが、上流階層と下層階層では出生率に差があるのか。
○ アメリカの出生率が高い理由は様々あるが、1.家が大きいことと、2.子育てに対して親に求められる期待値が小さいことによる、精神的楽さがあげられる。
○ 上流階層の人は、保育サービスをお金で買って、毎日仕事をすることも可能だし、しばらく専業主婦をすることも可能。下層階層では子どもが産まれるたびに仕事を辞めるが、働き方が柔軟なため、再就職も比較的簡単であるし、夫婦で就業時間をずらして、保育園やベビーシッターへ支払う費用を少なくしている。
○ 日本の場合、保育所の整備が遅れているため、大都市(女性賃金が高い地域)ほど出生率が低いというデータがあるが、アメリカの例からすると、保育所の整備がすすめば、(所得の高い)大都市ほど出生率が高くなるというという論理になるが、そのような傾向を示す資料(研究)はあるのか。
○ 保育サービスの充実度と出生率、あるいは女性就業率とは正の相関がみられるが、どちらが原因であり結果であるかは、それだけではわからない。
○ 自治体レベルで保育園入園率と労働力率、出生率について分析したことがあるが、(保育園入園率と出生率につき)有意な関係はみられなかった。ただし、既婚女性が働くのが当たり前の自治体のほうが結婚が早く、出生率が高い。保育園からの直接の経路はなかった。また保育園と出生率の正の相関を示した論文もあったが、これも出生率が高い自治体で保育園整備がすすんだということもあり、厳密にどういう因果関係であるかは分析が必要。
○ 女性の就業意識が二極化しているのではないか。むかしは高学歴で仕事をしたい人も、単純労働ばかりをしたくない人も、同じ専業主婦になるのが普通だと思われていたから、一律の対応が可能だったが、今はホワイトカラーとブルーカラーとでは就業意識が違うはずであり、一律に保育所や就業支援をするのではなくそれぞれに対応した施策が必要なのではないか。
○ 問題は未婚者がどういう家族の型を描けるかということである。米国やフランスでは、仕事もあって子どももあるほうがより「望ましい」社会であり、それに対してみながあこがれを持ち、それを求めることが維持可能であるが、日本の場合は子どもがいて仕事もすることは大変過ぎるというイメージしかないため、あこがれとはなっていない。女性の高学歴化が進んでいるが、子どもを持ちながら働くという選択肢がないため、非婚化、少子化が進んでいる。今後もっと別の働き方が描ければ意識も違ってくると思う。
○ アメリカではエリートの女性は、エリートの男性に出会えるため、専業主婦の道が開ける。下層階級における専業主婦は、仕事にも就けない状態の人である。国際競争のなかで男性賃金の伸びが低下しているため、中流の生活を維持するためには、共働きしなければならないというのが実態。日本も今後そのような状況になるといわれており、専業主婦になれるだけの所得の夫をみつけることは困難となっていく。こうしたことからも働きながら子どもを育てることができるようにする政策が必要である。OECDの調査でも片稼ぎ世帯は失業に対して脆弱で、所得はすごく高いかすごく低く、共稼ぎ世帯は平均的である。安定した家計がないと、安心して子どもが育てられないので、共稼ぎを奨励することが実現可能な選択肢であり、もう世帯主モデルの社会に戻ることはできないとされている。
○ 日本がどのプログラムを選択するかという前に、日本がどういう現状にあるかという認識が重要。バブルのおわりから21世紀入りにかけ、男性のエリート層と中産階級との二極分化が始まりつつあり、女性においても二極分化が始まっている。そのなかで専業主婦の問題は非常に大きな意味を持つ。専業主婦を横に置いて、働く女性だけを支援することはできない。今ある専業主婦の問題を解決して、かつ21世紀の女性の生き方はどうあるべきかという将来的なビジョンを描かなければ、いろいろなところの納得がえられない。また男女共同参画社会基本法では、介護と育児は社会の支援のもとにやっていこうという思想が法律のなかに入っており、やはり専業主婦も有償労働化していくというような方向付けを出していくべきではないかと思う。
○ 見方の違いというよりも方法論の違いであり、意識が先か、構造が先ということになる。選択しているといっても、やはり環境の制約のなかで選択しているのであり、制約が変われば選択も変わる。やっぱり選択肢の多い社会のほうがいいわけで、最初から専業主婦対策とか、働く女性対策とか分けるべきではなく、できれば両方できる社会、つまり子どもが生まれたあとは専業主婦になって、またなんのコストもなくまたフルタイムで働ける流動的な社会という意味で、アメリカの社会を評価している。多様な階層に対して多様な政策をという政策割り当て方式はいかがなものか。
○ 育児休業の利用が進まないことに対して、要因をどのように分析しているか。
○ 保護者の収入によって保育料に格差があるが、これにより何か影響があるのか。
○ A社で、育児休業をとった後の復職の時に、育休の前のポストを保証するということをして、育休の取得率の向上につながっているということがあるが、復職時のポストの保証についてはどのように考えているか。
○ 育児休業を父親も義務的にとらせる制度を我が国で検討することについて、どういう考えをお持ちか。
○ 日本以外の国で、多様な家族のあり方に対する社会的なバックアップの進み方の度合いと出生率の関係が結びついているのではないか。婚外子出生率と合計特殊出生率の関係の比較で、婚外子出生率が高いほうが合計特殊出生率が高いという結論があったが、家族のあり方に対する態度が出生率にどんな影響を与えているとお考えか。
○ 育児休業が伸びないことについては、今の働き方はフルタイムが多く、通勤時間もかかり、正社員は残業も引き受けないといけない現状の中で、自分が残業できないとなると、周囲に負担がかかってしまうシステムとなっている。育児休業をとった人に対して、インタビュー調査を行ったことがある。それによると、1.企業が辞めさせたくないという専門性がある人材であり、2.本人も専門性を持っているから、いろんな苦労を背負ってでもやってみたいという気持ちがある場合にだけおこる可能性が強かった。一部の地方の大手電機産業の工場では、制度が充実しており通勤時間が短いところで取得率が高いということはある。
○ 保育料では、自治体で実証分析(1997年)をしたことがあるが、保育料が高いところで入所率が落ちる。保育料と就業継続は有意な関係を持つ。
○ 男性の育児休業については、現在は労使間の協定で専業主婦のいる家庭では育児休業をとらないでよいとなっている。日本の社会では、まだ育児休業をとらないのが当たり前となっており、全体的に理解が全くない。男性の育児休業を義務付けるのはいいことだと思うが、そのためには社会全体が大転換して、税制、社会保障全体、働き方などを変えなければならないし、そういう段階にきていると思う。
○ A社でできたのは、その人に会社に残って欲しいからできていると思う。しかし、「若いうちだけいて欲しくて長く残って欲しくない」と思っている企業がたくさんあり、そういう人事制度になっている。全体的な見直しが必要。
○ 女性にも、復職後、前職でバリバリ働きたい人と、のんびりやりたい人がいるので必ずしも前職復帰がいいとは限らない。
○ 保育料については、スウェーデンも高い。アメリカも、質の高い保育園となるとかなり高い保育料である。
○ 婚外子出産については、国際比較を行うと、女性の労働力率が高く、男性の家事参加率が高く、婚外子割合が高く、女性の避妊が自由な国ほど出生率が高くなっている。婚外子割合が高い国ほど出生率が高いことに対する解釈のひとつは、社会保障が個人単位になっている国では、法律婚であれ事実婚であれ関係ない。また、女性の就労状況がよくて、女性一人でも子どもを養って食べていけるという要因もある。それと、結婚前にまず同棲するという文化もある。
○ 育児期に関わらず、全体として就労時間を短縮することにふれられていないのは何故か。
○ 専業主婦を貫いている世帯でも、少子化が生じているのはどういう原因からかと考えておられるか。
○ 日本の女性の働き方は、パートが多くなると考えられるが、就業形態の多様化に応じた保育サービスを提供している国で、モデルとなるような国はあるか。
○ 専業主婦の世帯では、意外と子どもが少なく、はじめての出産まで時間がかかる。いちばん子どもが多いのは、公務員である。仕事を続けられ、育児休業もとれそうであれば、若いうちに子どもを産んでいる。可能であれば所得が高いほうが子どもが産まれると思う。
○ 全国的にみて専業主婦率が高いのは、東京、神奈川と北海道である。基本的には、都会のサラリーマンの家庭で多い。
○ 女性の公務員が早く結婚して子どもを産むというのは、地方である。地方の公務員は、一種のエリートであり、双方の親のバックアップもあるため子どもをつくるのが早い。一方で、公務員でない専業主婦でない人は、夫が低収入であるため働かざるを得ない人が多く、子どもをたくさんつくれない。
○ 大都市で専業主婦の子どもが少ないのは、住居が狭い、夫の収入が不安、教育費がかかるといった要素があると思われる。
○ パートに相応しい保育というのは無く、保育の量を増やすしかないと思う。保育は、作れば作るほど需要を更に喚起する。保育園が少なくて足りないからもともと申し込まないが、地域に保育園ができると、そこに預けて働こうとする人が増え、入所希望者が増える。また、保育園に預けて働く人が周囲に増えると、自分もそうしたいと思う人が増えることもあり、需要を掘り起こすことがある。
○ 専業主婦の育児は行き詰まっており、子育て支援のために一時預かりという制度が始まっているが、十分機能していない。
○ 今の認可保育園は、コストがかかる。多くの国では、保育ママなどから充実していっているところもある。我が国でも、そのあたりからの充実していくことも考えられると思う。
○ 認可保育の基準は理想を追い求めすぎで、非常にハイレベルであると思う。家庭保育を前提におくより、施設型の保育でより多くの子どもを預けることができるように充実すべきであると思う。
○ 今の認可保育園について時間の延長についての融通性がない。ニーズがあるところには用意しないことで、劣悪な無認可保育園は増えるという現状になってしまっていると思う。
○ 我が国は、サラリーマンばかりであるが、もう少し独立自営業のようなものが増やせないかと思う。日本では企業FPばかりであるが、海外は独立FPがむしろ多い。
○ 税制や予算からみると、いろいろな制度を充実するのはいいことだが、どこを切り詰めるか(どこはなくすか)という提言があれば幸いである。