消費者安全課 消費者の生命・身体の安全の確保に取り組みます

平成23年8月28日、29日に開催意見交換会「食品と放射能について、知りたいこと、伝えたいこと」

会場の参加者からの質問とパネリストからの回答の概要

Q9.「科学の限界」、”ゼロ”への過剰な要求を消費者はしている。これを理解してもらうにはどうしたらいいでしょうか。

危害因子ゼロが目指されてきましたが、微生物にせよゼロにできないし、栄養素にしても100%安全なものはない、すべては量と作用次第であることが確かめられてきました。リスク管理の目標も、社会的に許容可能なレベルにおかれるようになりました。

また、リスクがゼロに近づけば近づくほど、1単位のリスクを引き下げるのにコストがたくさんかかるようになり、ほかに対策の必要な重要な危害因子があるかも知れません。

リスクが下がっても、その小さいリスクがひょっとしたら自分の子どもに来るかもわからないとなったら、なかなか許容しがたいことではありましょうが、、限られた人材、限られたお金しか持ち合わせていない社会で大きなリスクをなくしていくためにどうするかということをお互いに考えていかないといけないと思います。

リスクとリスク、リスクとコストのバランスを考えることが課題ではないでしょうか。

パネリストからの回答(詳細)

これも大変難しいことだと思います。放射性物質に限らず、食品由来のリスクについては、常にこの問題に直面していると思います。私どももこれまで、この放射性物質の問題が起こる以前から、ゼロリスクへの期待ということをどう考えていくかということについては、消費者の皆さんとたくさんお話をさせていただいています。

これは大きく2点考えないといけないかなと思います。

1点は、リスクをゼロにすることは、その原因である危害因子をゼロにすることになります。危害因子がゼロにできたら、リスクもゼロになる。しかし、危害因子がゼロにできるかといえば、ほとんどのものがゼロにできないのです。例えば、消費者調査でリスク認知の度合いが非常に高かった腸管出血性大腸菌は病原微生物ですが、病原微生物の例などは典型的だと思うのです。

80 年代、90 年代の初めくらいまでは、危害因子をゼロにするという方向で専門家は努力してきた。ゼロにできたと思っていた。顕微鏡を見たら細菌が見えない。ところが顕微鏡の精度が上がると、何のことはない、まだいた。では、そもそもどう考えたらいいのかという考え直しがされて、人間に悪影響を起こす微生物、特に腸管出血性大腸菌などは数個でも非常に重篤な影響を与えますので、これは食品に付着しないようにしないといけないのですが、良性の細菌とかまで含めますと、私たち人間の体が細菌と共生していて、体の表面にも、体の中にもたくさん住んでいて、体の環境を調整してくれていて、病原性のものが入ってこないように、いってみれば防御機構をつくってくれているわけです。だから、細菌はなくせない。なくしたら生きていけない。その中で悪性のものだけをより分けるということは難しい。悪影響を及ぼさない程度に菌数を下げることは絶対必要だけれども、ゼロにすることは現実的でない。あるいは、突然変異が起こる可能性もあり、危害因子をなくすことはできない。またそもそも、どんな栄養素でも食べものでも取りすぎれば健康に悪影響を与える、100%安全なものはない。つまり量とその作用次第ということです。そのようなことから、ゼロリスクは現実的でなく、社会的に許容できる限度までリスクを引き下げることが目標だと考えられるようになってきたわけです。この考え方を私たちはもっと理解していかないといけないということが1点かと思います。

もう1点はもっと現実的な問題ですが、リスクを引き下げていく。最初の大きいリスクを少し引き下げ、そのリスクをさらに引き下げ、どんどんゼロに近づけていくと、恐らくゼロに近づけば近づくほど、1単位のリスクを引き下げるのにコストがたくさんかかるようになると思うのです。そうすると、みんなが気になるからといっても、その危害因子のリスクをゼロにすることにすごくお金をかけるより、実はほかに手のついていない重要な危害因子があって、それをどうするかの対策を立てないといけない。あるいは、今、食品安全だけの世界で考えていますけれども、ほかにも社会的な大きな問題があるかもわからない。そちらに費用を投入することが必要かもわからないというふうに、やはりリスクの度合いとそれを下げるのに投入する費用はバランスで考えていくことが望まれます。限られた人材、限られたお金しか私たちは持ち合わせていないので、それを必要なところに投入できるように、つまり、優先順位を考えていけるようにする。

これもなかなか受け入れがたいことで、リスクが下がっても、その小さいリスクがひょっとしたら自分に来る、あるいは自分の子どもに来るかもわからないとなったら、なかなか許容しがたいことではありますけれども、私たちは社会をつくっているわけで、その社会で大きなリスクをなくしていくためにどうするかということをお互いに考えていかないといけない。

そういうリスクとリスクのバランス、リスクとコストとのバランスを考えていくことも、私たちの大きな課題ではないかと思います。

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