地方協力課 消費生活センターの設置・拡充など、地方の取組みを支援しています

「地方消費者行政の充実・強化のためのプラン」

3.主なテーマごとの「地方への期待」と「消費者庁の取組み」

(3) 相談員の処遇の改善

  相談員の処遇は、地方公共団体によってさまざまですが、全般的にその専門性に見合った地位と処遇が確保されていないという指摘が共通であると言えます。
  これに対する将来的な対策としては、法令など制度面の見直しによってどのような改善が可能となるのか、などの観点から、関係府省の協力や専門的な議論とともに、地方公共団体の取組みを促し、また、消費者庁及び消費者委員会としても法制度の見直しを検討することが重要な課題とされています。
  しかし、現行の法制度を前提としながらも、雇用形態・勤務体系を始めとして首長のリーダーシップや「基金」の活用などを通じて具体的な処遇の改善を進める取組みも確実に始まっています。

【「現場」の取組みの事例】
<新宿区(東京都)の事例>

  新宿区では、区長のリーダーシップのもと、報酬の改善を図った。

  消費者行政担当部局としては、人事・財政部局に対して、i.複雑な相談事例を紹介して、特商法など消費者関係特別法を駆使するきわめて専門性が高い業務であること、ii.消費者関連法の法律改正が頻繁に行われる状況を紹介して、常に研修を重ね高い資質を維持する必要性が強いこと、iii.解決困難事案の交渉が長引く案件を紹介して、悪質業者と数ヶ月交渉を続けるなどストレスが強い業務であり、公務員であれば危険手当を付加するような業務ともいえるものであること、iv.事業者との対応に加えて相談者との対応についても困難な問題を抱えることも多く、福祉事務所のケースワーカーや他の相談業務と比べても特に専門性と困難性が高い業務といえるものであること、などについて、詳細な事例とともに、相談員の専門性、困難性を強調。

<埼玉県の事例>

  埼玉県では、相談員の増員と処遇改善と専門性向上を兼ねて、平成21年度から新たに「主任消費生活相談員制度」を導入し、主任相談員6名を配置した。主任相談員は、自ら消費者からの相談を受けるほか、県センターの相談員への助言、市町村の相談員への助言、問題解決チームの責任者などの役割を担っており、これに対して勤務条件もアップした。

<東京都の事例>

  東京都では、消費生活相談員40名を「不動産」「金融」「通信」など専門分野別に10のグループ(平成21年度「安全・表示」グループを新設)に分けて配置し、問題点の分析や実務マニュアルをまとめて、通常の相談処理とは別に、区市町村のセンターに提供するなどの体制をとっている。

  平成21年4月から、各専門グループのリーダー役10名を「主任相談員」として配置、適切な処遇を図り、専門マニュアルの取りまとめやメンバーへのOJTの責任者としての役割を担うこととしている。

<野洲市(滋賀県)の事例>

  野洲市では、平成11年4月から非常勤として働いていた相談員が20年9月に職員採用試験を受験して合格し、正規職員に。同年10月から市民生活相談室の主査として相談現場で働いている。

  「役所の中で責任と権限を持って働くためにも正規職員化が必要」とする重要な事例の一つ。

<鈴鹿・亀山地区(三重県)の事例>

  鈴鹿・亀山地区では、「広域連合」で新たに消費生活センターを立ち上げるに当たっての準備段階からの課題の1つが「実務経験者がいないこと」であった。

  そこで、採用した相談員を県の消費生活センターに出向させて、1年間かけて相談員として養成することとした。県のセンターで「実践」を踏めたことが大きくその後の相談業務に役立っている。

【課題】

(雇用形態)

  地方公共団体における相談員の雇用形態については、地方公共団体に直接雇用されている場合、指定管理者や委託先の団体に雇用されている場合などがみられます。
  これらのうち、直接雇用されている相談員の雇用形態の主なものは、特別職非常勤職員、一般職非常勤職員、臨時的任用職員の3つであり、その多くは特別職非常勤職員(地方公務員法第3条第3項第3号)となっています。また、その任用期間は1年となっている地方公共団体が約9割で、再度任用の回数の制限を設けていない地方公共団体が約7割を占めています(参考5:「相談員の雇用形態に関する課題」 参照)。
  地方関係者との意見交換では、相談員からは「非常勤職員という身分では、いつ辞めさせられるか不安」という意見が数多く寄せられました。
  地方公共団体の中に、再度任用の際に試験を課しているところもありますが、相談員からは「15~20年の経験者を知識などの試験で「ふるい」にかけようとするのは...」「これまで頑張ってきたのは一体何だろうと感じて、やる気がストンと落ちてしまった」などの感想もありました。能力を実証するプロセスの中で、知識のみならず、経験や消費者と真摯に向き合う姿勢なども含めた評価の在り方が課題であると考えます。

(勤務体系)

  また、勤務日数について、相談員からは「通勤に時間がかかるため、週5日は厳しい」「家庭があるので毎日は難しい」という意見がある一方で、「週3日では継続的に相談を受けられない、あっせんができない」「週4日以上の勤務を希望しており、今のままでは業者と相談者の「橋渡し」が十分にできない」「継続案件は一貫して同じ者が担当するべきであり、その意味でも常勤化が必要」という意見もみられました。
  さらに、報酬について、「新人もベテランも給料が全く同じ」「通勤手当もなく、ボーナスも出ない」「超過勤務を行うと、翌日以降で時間調整される」「今の給料の水準では独身者は自活できない」という意見や、地方公共団体の財政当局に対して相談員からは「相談業務には2~3回で終わるものもあれば半年も要するあっせんもあるのに、困難な案件は数字として反映できないので理解してもらえず、結局、相談件数のみで評価されてしまう」という意見もみられました。また、「交通事故相談」など消費生活相談以外の分野の相談などの業務を担っている相談員の処遇との「バランス」を考慮して処遇の水準が横並びで決められているという事態を打開してほしいという要望もみられました。
  これらのほかにも、相談員の処遇については、「相談員の業務はストレスが大きく、危険も伴い、相手が特別な組織や団体であったりすることもあり、名前を覚えられたと感じると怖い」「消費者でもクレームをつける方が多くなり、教えてもいないのに自宅に電話がかかってきたこともある」など「危険」に見合った処遇を求める意見もみられました。

(研修)

  研修について、相談員からは「(独)国民生活センターの研修は大変ためになる」「知識向上はもちろんのこと、研修で知り合った他の地域の受講者との情報交換はその後も有益である」「県主催の研修は近いので参加しやすく便利である」など、(独)国民生活センターや都道府県が行う研修・巡回相談には相応の評価が示されました。一方で、「参加すると相談窓口の業務に支障が出るため、参加したくても参加できない」「1人しか相談員がいないため「現場」を空けられない」という相談窓口の体制の問題や「育児や介護を抱えており、宿泊を伴う研修は受けられない」などの家庭の事情により、参加したくてもできない相談員が多数いることが改めてわかりました。
  (独)国民生活センターとしては、これまで本部がある相模原市(神奈川県)のセンターでのみ行ってきた相談員養成研修を、平成21年度から全国主要都市の数箇所で行うなど、地方での研修を開催していますが、相談員からは「地方の養成研修が増えたら本部の専門研修が減ってしまったので、「基金」の活用などで専門研修をもっと増やしてほしい」といった要望や、研修の内容についても「相談業務には法律知識だけでなく、相談者の心理を汲み取ることも必要であり、その意味で、心理学などの分野も充実してほしい」などの意見が寄せられました。

(執務環境)

  相談員の執務環境を充実したものにしていくことも重要な課題であると考えます。
  日々の相談業務の蓄積であり、被害事例の傾向の把握、法執行の端緒となる情報、あっせんの際の事実認定のための資料という観点から、PIO-NET の利用環境の整備、地方公共団体の職員との相互の意思疎通や情報共有、国からの迅速な情報の提供など、相談員の執務環境を充実することは、相談者への助言、あっせんを行う上で不可欠であると考えます。
  しかしながら、週4日以上の窓口開設という要件を満たさないために PIO-NET の配備がない場合や、要件を満たしていても「相談員が高齢のため入力することに困難がある」という意見、また、配備があっても「日中は相談業務に追われてしまい、勤務時間内に相談内容を入力することが難しい」「PIO-NET はキーワードが決まっており、入力も検索も苦労するだけではなく、フリーワードで検索もできないため、使い勝手が悪い」などの意見も改めて寄せられました。
  このような情報インフラに関係する課題のほかにも、地方公共団体の職員との関係については、法執行に関して、「職員に情報を伝えても、知識や経験のある職員が少ないため、法執行にはなかなか結びつかない」「事業者を指導してほしいと相談したが、何度も断られてしまった」という意見もありました。
  情報の連絡や伝達などに関しても、「事前に何の相談もなく、すでに決まったことを突然通知される」「職員から伝えられるのはいつも通知ベースであり、相談してほしいのだが...」「せっかくの「基金」についても何の情報ももらえなかった」といった意見がみられるなど、職員と相談員との間の「距離感」もしばしば感じられました。

(消費者庁との関係)

  さらに、消費者庁に対しても相談員からは「消費者庁が立ち上がったという意識が薄い」「法解釈をどこに問い合わせていいのかがよくわからない」「消費者庁と相談員が話をすることができる場があれば良い」「消費者庁から相談員への連絡体制ができていない」、「消費者安全法などによる情報の一元化についても全く情報がおりてこない」「提供した情報へのフィードバックがなされていない」などの意見をいただきました。

i. 身分、報酬、期間など雇用形態・勤務体系の改善

【地方への期待】

○ 相談員の知識・経験を活かす雇用形態・勤務体系を

  相談員の身分について、地方公共団体に直接雇用されている場合、指定管理者や委託先の団体に雇用されている場合など、いずれの場合においても、相談員の処遇の改善に取り組んでいる先導的な事例からも明らかなとおり、当面の対策としては、首長のリーダーシップによって相談員の知識や経験を活かす雇用形態・勤務体系へと改善していくことを強く期待します。
  相談業務は法律、経済から生活問題に至るまで幅広い分野の知識を常に維持することが必要とされると同時に、経験も重要なウエイトを占める業務です。
  また、消費生活関連の法令は頻繁に改正されるため、相談員は、常に学びながら法令などの知識を磨くことが求められます。加えて、相談者の気持を汲みながら状況を整理し、的確なアドバイスを行うなどの「カウンセラー」的な技術やコミュニケーションの能力も必要とされる専門的な仕事です。さらに、あっせんの場面では事業者との交渉という高い能力と多様な人を相手にしなくてはならない、というストレスにもさらされます。
  国はもちろんのことですが、地方公共団体においても、首長を始め担当幹部や担当職員は、改めてこのような相談員の専門性や困難性を十分に理解し、能力に見合う処遇としていくことを強く期待します。
  その際、いわゆる「雇い止め」に関しては、知識とともに経験にも裏打ちされた相談員を失うような事態は、相談員にとってはもちろん、地方公共団体にとっても損失であることに留意する必要があると考えます。
  さらに、地域の関係者や関係団体においても、それぞれの地域の首長が相談員の処遇の改善に向けてリーダーシップを具体的に示すよう働きかけていくことが重要であると考えます。

【消費者庁としての取組み】

○ 改善の具体化を可能とした背景や理由を分析・整理し、その情報を提供します

  当面の対策の一つとして、相談員の処遇の改善について、これまでに再確認した事例や今後とも把握する事例などを分析・整理して、そのような事例の具体化を可能とした背景や理由がどのようなものであるのかということを明らかにし、関連する情報を地方公共団体や関係者・関係団体に広く提供します。

○ 改善のための「基金」の活用について改めて検討・整理します

  当面の対策の一つとして、「基金」の活用によってどのような改善が可能となるかについて、これまでの地方公共団体の取組みなども踏まえて、改めて検討し、整理します。
  そのために、平成22年の年頭から着手し、集中的に議論を行い、その議論を踏まえて、当面の対策として必要な措置を講じることとします。

○ さまざまな機会をとらえて地方公共団体の首長に対して改善への積極的な 取組みを働きかけます

  当面の対策として、首長のリーダーシップによって相談員の処遇の改善が具体化していくことが不可欠であると考えます。
  このため、改善の先導的な事例などを紹介しながら、さまざまな機会をとらえて、地方公共団体の首長に対して働きかけます。

○ 中期的な対策として、相談員の雇用形態・勤務体系についての制度の在り方 を集中的に検討・整理します

  相談員の処遇の改善のためには、相談員の雇用形態・勤務体系についての制度面の検討・整理が不可欠です。ただし、法令などの見直しを伴うこととなる観点からは、関係府省の協力や専門的な議論もまた必要となります。
  このため、平成22年の年頭から着手し、消費者委員会との必要な連携を図りながら、制度の在り方について集中的に議論を行います。
  併せて、資格制度と相談員の雇用形態・勤務体系と関係などについても検討・整理します。

ii. 研修への参加の確保と研修の充実

【地方への期待】

○ 研修に相談員が参加しやすい職場環境に

  研修は、相談員にとって、法令などの知識や相談のスキルの向上につながることはもちろん、他の地域からの受講者とのネットワークづくりにも大いに役立つものであると考えます。
  地方公共団体としては、相談員が希望する研修に参加することができるよう、シフトの調整や相談員の不在を職員がバックアップするなど、体制を整えることを期待します。

○ 研修の機会の充実を

  相談員にとっての研修の意義にかんがみて、特に都道府県においては、消費生活センターで市町村の相談窓口の相談員のための研修の機会を増やすことを期待します。
  「基金」の活用を始めとして、必要に応じて消費者庁や(独)国民生活センターがこのような研修開催の具体化を支援することなども必要であると考えます。

○ 研修の内容の充実を

  研修の内容についても、法令などの知識のみならず、交渉術やコミュニケーション能力など、幅広い内容や実践形式の研修の充実が必要であると考えます。
  また、消費生活を巡る社会経済の実情の変化も速く、多様化・複雑化・高度化していることから、相談員のレベルアップのための研修を増やしていくことも必要であると考えます。
  さらに、相談員の資格者がいない、少ないといった地域での相談員の育成は重要な課題です。
  これらに対応していくために、地方公共団体としては、「基金」の活用などによって研修を内容面で充実し、具体化することを期待します。

○ 研修への専門家・関係団体の協力を

  相談業務の多様化・複雑化・高度化に相談員が対応していくためには、さまざまな関係者や関係団体の連携・協力が不可欠であると考えます。
  このため、弁護士、司法書士、医師、建築士を始めとする専門家や関係団体による地域の研修への積極的な協力を大いに期待します。

【消費者庁としての取組み】

○ 多様な手段の活用による研修の充実を図ります

  相談員にとっての研修の機会を確保するために、(独)国民生活センターとともに、PIO-NET の回線を活用したサテライト研修やDVDやインターネットなどの映像配信などの活用を検討します。

○ 多様な機会の提供による研修の充実を図ります

  (独)国民生活センターや都道府県と連携・協力して、短期間での研修の実施や地方での研修の機会を増やすこと、相談員のレベルアップのための研修を増やすことを検討します。

○ 地方公共団体による研修を積極的に支援します

  「基金」を活用した相談員養成事業の具体的な実施方法のアドバイスなど、研修の開催や内容の充実に積極的な地方公共団体を消費者庁としても大いに支援していきます。

○ 専門家・関係団体の協力を働きかけます

  (独)国民生活センターによる研修や地方公共団体が行う研修に対して、専門家や消費者団体など関係団体による積極的な連携・協力を得ることができるよう、消費者庁としても働きかけます。

○ 研修の充実のための「基金」の活用について改めて検討・整理します

  「基金」の活用によってどのように充実が図られるのかについて、これまでの地方公共団体の取組みなども踏まえて、改めて検討し、整理します。
  そのために、平成22年の年頭から着手し、集中的に議論を行い、その議論を踏まえて、当面の対策として必要な措置を講じることとします。

iii. 執務環境の改善

【地方への期待】

○ 担当幹部や担当職員による相談員との連携のさらなる強化を

  相談員が接する情報はまさに現場の「生の声」です。
  このような「現場」の最前線の相談員の「視点」を消費者行政に反映していくことは、地方公共団体はもちろんのこと、国としても重要な課題です。
  消費者被害の防止などのためには、相談員がもたらす「現場」の情報を迅速かつ的確に把握し、事業者に対する指導や注意喚起につなげていくことが不可欠です。
  このため、地方公共団体においては、これまで以上に担当職員と相談員の間で、日常的に情報交換や意見交換を図るなど、連携を一層強化することを期待します。
  このことを通じて、相談員の収集した情報が施策に効果的に活用されることにより、相談員の「やりがい」を支えることになると考えます。

○ 職員の一層の専門性向上を

  消費者の苦情相談や被害情報は、複雑化・高度化・長期化し、関係する法令の目まぐるしい制定・改廃が行われています。
  担当職員についても、一層の専門性の向上に取り組むことを期待します。

○ 機器・設備の整備を

  「基金」の活用も通じて、消費生活センターや相談窓口の電話回線、電話相談の録音・記録装置、事業者関連の情報のインターネットによる参照のための機器やセキュリティ対策など、相談員の業務を支援するハード面の環境を整備することを期待します。

【消費者庁としての取組み】

○ PIO-NETを使いやすいシステムとします

  入力の負担の軽減の視点、検索や集計などの利用の効率性・容易性の視点など、より使いやすいシステムとするために、(独)国民生活センターとともに PIO-NET の在り方について検討し、具体的に改善します。

○ PIO-NETの配備・展開の拡大を図ります

  独自の事例の蓄積が必ずしも容易ではない地方公共団体での PIO-NET 情報の活用の視点、PIO-NET を通じた相談員や職員による国の関連情報の効率的な入手の視点など、現在は「週4日以上の相談窓口の開設」としている PIO-NET の設置基準について、(独)国民生活センターとともに検討し、見直すとともに、計画的な配備や展開の加速化を図ります。

○ 相談員の相談や照会などへの対応のための体制の整備を図ります

  関係する国の地方機関、(独)国民生活センターとの連携・協力を図りながら、相談員から法解釈に関する質問を受け付ける体制を整備します。
  また、消費者庁と都道府県・政令指定都市との間で行う「ブロック会議」などにおいて相談員との意見交換の「場」を設けるなど、さまざまな機会をとらえて地方公共団体の相談員や職員との間での情報の交流を図ります。

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