地方

消費生活センターの設置・拡充など、地方の取組みを支援しています

「地方消費者行政の充実・強化のためのプラン」

3.主なテーマごとの「地方への期待」と「消費者庁の取組み」

(2) 法執行の強化

  消費者の安全・安心を確保するためには、消費者からの苦情・相談やあっせんに適切に対応するとともに、被害をもたらしている事業者の行為を是正し、被害の拡大の防止を図るなど法執行の強化が不可欠です。

【「現場」の取組みの事例】
<北海道の事例>

  北海道では、特定商取引法やJAS法の執行に携わる職員について、全職員を対象とする公募により配属することにより、法執行等に意欲のある職員の確保に努めている。

  また、「メーリング・リスト」を活用し、悪質事業者の動向について、道の担当課、消費生活センター、市町村など関係機関内で情報を共有している。市町村や消費生活センターが投稿した事業者情報(特に被害情報)に基づいて、他の自治体が警戒を強めるほか、当該情報に基づいて道が速やかに事業者指導等を行うなどにより、同様の消費者被害の拡大防止を図っている。

<宮城県の事例>

  宮城県では、法執行強化のために、「地域活性化・生活対策臨時交付金」により「基金」に上積みを行い、平成21年4月に「不当取引専門指導員」(県警察OB)を配置するとともに、県の消費生活センターを県庁舎に移転させ、相談部門を組織統合し、8年ぶりに特定商取引法に基づく行政処分を実施した(平成21年9月公表)。

<福島県の事例>

  福島県では、執行担当者として、消費生活センターでの相談業務の実務経験がある者を配置し、特定商取引法に係る相談、被害実態、業者との対応方法など相談実務で蓄積したノウハウを活用し、執行の実務に取り組んでいる。

<埼玉県の事例>

  埼玉県では、消費者保護の強化を図るため、平成21年4月、特定商取引法等の担当課の職員を倍増し、警察OBを3名に増員の上、立入捜査班を3班体制にして、同時に複数個所への立入を機動的に実施できる体制を整備した。

  また、「悪質事業者対策専門アドバイザー」制度を設け、事案の調査や行政処分の過程で、法解釈や違反事実の裏付け証拠の検討などについて、助言を求めるとともに、執行担当者の知見やノウハウの向上を図っている。

<東京都の事例>

  特定商取引法や消費者保護条例等に違反するおそれがあると認められる案件を、都内の各消費生活センターが、「不適正取引に関する通知書」として随時、東京都消費生活総合センターに送付(紙ベース)し、総合センターが一旦集約の上、東京都取引指導課へ送付する(年間150~160件程度)。

  取引指導課に送付された通知書に基づく調査の結果については、都の消費生活センターを通じて、各消費生活センターにフィードバックしている。

<香川県の事例>

  香川県では、平成18、19年度において県警と人的交流を行い、執行ノウハウの蓄積に努めるとともに、平成20年度からは特定商取引法に専従する職員を2名配置し、執行を担う人材配置の強化を図っている。

<埼玉県・東京都・千葉県・神奈川県・静岡県の事例>

  埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、静岡県では、「五都県悪質事業者対策会議」を立ち上げ、悪質事業者に関する情報交換を行うとともに、特定商取引法について、合同での行政指導、立入調査、さらには、同時に行政処分の実施等を行い、首都圏全体としての執行力の強化を図っている。

  また、広域的・効果的な表示等の適正化を推進するため、景品表示法を円滑に運用することを目的として、「五都県広告表示等適正化協議会」を開催し、連携強化を図っている。

<愛知県・岐阜県・三重県・静岡県の事例>

  愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の東海4県では、「東海地域悪質事業者対策会議」を立ち上げ、立入検査など広域にわたる調査について4県での連携を具体化した。平成20年11月には、同時に特定商取引法に基づく行政処分を実施した。

<滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県の事例>

  滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県の4府県が、家庭教師の派遣に伴う授業料等に関する不当表示について、連携して調査にあたり、平成21年3月、4府県同時に景品表示法の規定に基づく指示を行った。

<東京都・大阪府の事例>

  東京都が調査していた事業者の本店所在地が大阪府であったこと、同時期に大阪府も当該事業者について調査中であったことから、両自治体が合同で調査を進めることとし、連携して立入検査を実施するなどした結果、平成21年10月、当該事業者に対し、特定商取引法に基づく業務停止命令を行った。

<福岡県・鹿児島県の事例>

  九州各県・山口県・沖縄県が立ち上げた「消費生活の安全安心ネットワーク会議」において鹿児島県が報告を行った懸案事業者が、福岡県に本社がある一方で主力の営業拠点が鹿児島県にあったこと、鹿児島県にとって初めての処分であったことから、九州経済産業局のバックアップの下、両自治体が連携して立入検査を実施(九州経済産業局も立会)するなどした結果、平成21年2月、鹿児島県が当該事業者に対し、特定商取引法に基づく業務停止命令を行った。

【課題】

(法執行の実情)

  全国的に被害が及んでいる、または、及ぶ恐れのある事案などに対して、国として厳正な法執行を行う一方で、消費者の生活の「現場」により近い立場にある都道府県としても地域の実情を踏まえて対応することが期待されます。
  しかしながら、都道府県における法執行の状況をみると、大都市圏を中心に積極的に執行を行っている地域がある一方で、人材やノウハウの不足もあるため、執行の実施には都道府県間でばらつきがみられます。
  例えば、特定商取引法の執行については、平成16年度以降で、例えば、100件を超える東京都による行政処分(業務停止命令、指示)を始め、北海道、埼玉県、神奈川県、静岡県、大阪府、香川県などでは十数件以上に及んでいる一方で、一件も行政処分が実施されていない県も4県みられます。景品表示法の執行についても、同時期で、東京都は14件の指示を実施した一方、一度も実施していない県は14県にも及んでいます(参考4:「都道府県における景品表示法、 特定商取引法の執行実績」参照)。
  このような地域間での執行のばらつきにつけ込み、悪質な事業者が、執行の取組みが進んでいない県に活動の場を移して、消費者被害を拡散させる例もみられるところであり、国とともに都道府県全体としても法執行の強化が必要であると考えます。

(執行の体制と人材)

  法執行の強化のためにはまず、体制を整える必要があります。
  特に、執行を担う人材の強化が重要な課題です。
  地方関係者との意見交換では、例えば、「執行担当職員を増やしたいが、現状維持が精一杯」「本来であれば執行を担当する職員が「基金」関連の業務に取られている」など執行を担う人員の強化は「現場」ではなかなか困難であるとする意見や、消費者庁に対して「執行に関する研修を充実してほしい」との要望がありました。
  一方で、執行担当者の増加や執行事務への専任化を図り、体制強化を進める県や、県警との人的交流によって執行のノウハウの蓄積を図るなど、執行を担う人材の育成を進める県もみられました。

(地方での連携と国との連携)

  同時に、法執行の強化のためには、都道府県同士の連携、都道府県と市町村の連携、国と地方公共団体との連携も重要な課題です。
  「現場」の取組みの事例で挙げたように、管内の市町村と執行に関する情報共有を図ることや執行の要請に応じるなど地域内での連携に取り組む地方公共団体、近隣の都県と立入検査や行政処分を共同で実施するなど地域間の連携を進めている地方公共団体もみられます。また、他県から事業者指導の連携の提案があり、検討している県もあるなど、連携に向けた動きは着実に進みつつあります。
  そのような中で、地方公共団体によっては、例えば、県の法執行について、市町村担当者から「県は全然執行をしてくれない」との意見や県の消費生活相談員からは「被害情報を執行担当者に持ち込み、事業者指導を要請しても、対応してくれない」「県には調査・勧告権限があるのだから、市で受けた相談を基に県で対処してほしい」という意見がみられました。
  一方で、県の担当者からは「執行強化まで手が回らない」という意見や「消費者被害は広域化しており、そうした案件は国で対応してほしい」といった意見もみられました。
  法執行の「力」は、実務をこなす中で蓄積されていくものです。「力」をつけていくことは容易ではなく、継続的な努力や相応の期間を要するものです。
  したがって、法執行の強化のためには、国としても厳正な法執行を行うとともに、地方公共団体の主体的な取組みに対して、国としての支援や協力を積極的に行い、全国的な規模でも執行の強化の実が挙がるよう積極的に取り組んでいくことが重要な課題です。

i. 法執行を担う体制整備と人材強化

【地方への期待】

○ 執行を担う職員の配置と専任化を

  そもそも消費者行政を担当する職員が少ない県や、配置されていても法執行を担当する職員が他の業務を多数兼務し、執行に専任できる環境にはないといった県も少なくありません。定員管理、財源確保の問題にも直面する中、体制強化は必ずしも容易ではない実情にあります。しかしながら、執行の過程では綿密な調査や証拠の積み重ねが必要となるなど、法執行は、少人数で「片手間」でできる事務では決してありません。
  このことから、都道府県においてはまず、執行担当者の新たな配置や専任化を進めることを強く期待します。

○ 執行を担う職員の経験・研修の充実を

  法執行を担当する職員が少ない県では、立入検査のノウハウ、調書の作成、事実認定など、執行に要する専門性や実務経験の蓄積、執行業務の前提となる法解釈能力の向上が執行担当者の努力だけでは十分には行き届かない環境にあるともいえます。このように一県の努力だけでは、執行担当者の実務面の能力の向上を図ることが容易ではない場合もあります。
  そこで、このような県と先導的な取組みを進めている都道府県との間の連携を促進することを期待します。
  もちろん、必要に応じて国がこのような連携の具体化を支援することなども重要であると考えます。

○ 組織としての位置づけの強化を

  法執行の体制の充実が進まない背景としては、そもそも、執行業務を含めた消費者行政に対する組織としての位置づけや「優先度」が明確にされていないことが挙げられると考えます。
  したがって、首長を始め担当幹部の認識を深めることを強く期待します。
  特に、首長自らが執行を重視し、取組みをリードする姿勢や基本的な方針を明らかにすることが不可欠であると考えます。それによって、執行担当者の増員や執行業務への専任化など、人員配置の充実、執行担当専門部署の設置など組織強化を図ることが可能になると考えます。
  また、執行の「現場」には「危険」が伴います。労災対応などリスク管理や執行業務の勤務評定への適切な反映、「キャリア・バス」の構築を図るなど、執行担当者の「やる気」「意識」の向上を支えることが望まれます。

【消費者庁としての取組み】

○ 研修員の受入れなどによる人材育成の強化に取り組みます

  消費者庁の執行担当部署に地方公共団体からの行政実務研修員を積極的に受け入れることとします。
  併せて、先導的な取組みを進める都道府県において他の地方公共団体から研修員の受入れが具体化するように消費者庁が仲介役を果たしたいと考えます。
  これらによって、直接に実務経験を積む機会が提供され、各地方公共団体の執行業務の中心を担っていく職員の育成を支援するとともに、国と地方公共団体、地方公共団体間の人的連携を強化します。

○ 執行担当職員への研修を充実します

  消費者庁において、都道府県の執行担当者などを対象とした、執行・法令研修などの一層の充実・強化を図ります。
  特に、ケース・スタディの充実などによる「実戦志向」の研修を充実します。また、特定商取引法、景品表示法、JAS法など消費者庁が関連する法令に関する研修を一体として実施してまいります。

○ 国・国の地方機関との連携・協力を強化します

  関係する国の地方機関との連携・協力も図り、特定商取引法などの処分実績がない、あるいは、少ない県に対して、国や関係する国の地方機関が立入検査に立会うなど、執行担当者に具体的なノウハウの伝播を図ります。

ii. 国と地方などの連携の強化

【地方への期待】

○ 地域内での連携を

  事案の発掘、寄せられた情報の確認など都道府県の執行担当者が市町村の相談窓口などから情報を入手する仕組みを確保することや、執行に際して市町村から都道府県へ申し出を行うことができる体制を整備するなど、都道府県と市町村の間の連携を強化することが不可欠であると考えます。
  また、執行担当者と相談員との意思疎通や連携が必ずしも上手くいっていないのではないかという指摘もみられることから、都道府県内においても、消費生活センターの相談員と執行担当者の緊密な情報交換を図るなど、実務レベルでの両者の間の連携を強化することが不可欠であると考えます。
  このため、連絡会議を開催するなど、意思疎通の緊密化を図ることを期待します。
  また、都道府県警から執行担当部署への職員(警察OBを含む)の受入れによる実務ノウハウの吸収、立入検査時の連携、悪質な事案の告発などを通じ、行政サイドの人材強化や行政処分と捜査との協力を図ることを期待します。
  さらには、執行担当者が相談員からもたらされる情報を分析し、執行につなげていくための法解釈や事実認定などの能力を高めていくために、法解釈や違反事実の裏付けにおいて関係法令を始めとする各分野の専門家の知見を活用するなど、執行過程において弁護士などの専門家との連携を図ることを期待します。

○ 地域間での連携を

  事業者の国内の活動には地理的な一定の圏域が予め定まっているわけではありません。圏域を越えて展開される悪質な事業者の活動を是正していくためには都道府県レベルでの連携を図る必要もあります。
  このため、例えば、広域圏のレベルで先導的な取組みを進める都道府県を中心として、共同調査を実施し、現場ベースでのノウハウの共有化を図ることや、定期的な連絡会議の開催により情報共有を図るなど、広域的な視野での執行の強化を期待します。

○ 国との連携を

  法執行に当たっては、国としては全国的に被害が及んでいる、または、及ぶ恐れのある事案などに対処するとともに、地域レベルの事案については、都道府県が地域の実情を踏まえて対処するなど、国と地方公共団体とが役割を分担しつつ連携を図ることが不可欠であると考えます。
  このため、被害情報、法執行の取組み状況など、情報の共有化を一層進め、必要な連携を図りながら執行に取り組むことが重要です。もちろん、必要に応じて国がこのような地域レベルの事案についても、情報やノウハウの提供などを通じて支援することなども重要であると考えます。

【消費者庁としての取組み】

○ 連携のための「場」づくりに取り組みます

  関係する国の地方機関との連携・協力も図りながら、ブロックごとに国と都道府県の執行担当部署の責任者が執行強化に向けた情報交換、意見交換などを行う「場」をつくります。
  食品表示の執行については、都道府県の関係機関と国の地方機関で構成する「食品表示監視協議会」を47都道府県に設置し、関係機関間の情報共有や問題のある事業者への処分等の迅速な対応を促進するとともに、こうした対応が円滑に実施されるよう、関係省庁とで構成する「食品表示連絡会議」を設置することにより、不適正な食品表示に関する監視強化を促進します。

○ 情報の「ネットワーク」を強化します

  (独)国民生活センターなど関係機関の連携・協力も得ながら、消費者庁と都道府県の担当者との間での情報の迅速な提供・連絡・伝達の「ネットワーク」を強化して、国の法解釈や事例についての情報の共有化などを図ります。

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