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COLUMN4 地域全体で安全なまちづくりに取り組む ~京都府亀岡市~

地域全体で安全なまちづくりに取り組む
~京都府亀岡市~

京都府亀岡市は、地域全体で協働して安全・安心なまちづくりを進めています。安全な地域づくりに関する国際的な認証「セーフコミュニティ(SC)」を2008年に日本国内で初めて取得し、2015年には、安全・安心な学校づくりに関する認証「インターナショナルセーフスクール(ISS)」も取得しました(注1)。SC認証、ISS認証の取得とは、「けがや事故のリスクがないと認められた」という意味ではなく、「安全なまち、学校づくりのための仕組みが確立され機能していると認められた」という意味で、SCは5年、ISSは3年に1度、取組状況について国際的な認証機関(注2),(注3)の審査を受けて認められるものです。このコラムでは、その取組の一部として、保育園児の安全に向けた取組を紹介します。

亀岡市では、市内9園(市立全8園、私立1園)の保育所が、ISS認証を取得し、園児の保育環境、けがの状況等について情報を収集・分析し、抽出された課題の解消に向けてプログラムを実施し、効果を検証するといった形で包括的に取組を進めています。取組に当たっては、関係機関や地域と連携し、子どもに安全な環境づくり、子ども自身が考え、危険を回避する力を養う安全・安心教育等を進めています。

〈情報収集・分析から課題を抽出〉

●けがの状況の記録、傾向の分析には、亀岡市独自の電子登録システム「乳幼児外傷予防システム」を活用しています。このシステムは、看護師等が、けがをした園児の年齢、性別、けがの発生場所、状況、処置、病院搬送の有無等の情報を、パソコン上で該当する選択肢をクリックするだけで簡単に登録できるようになっています。
●登録された情報は、各保育所で保育士が見ることができ、園全体でのけがの傾向(けがの発生しやすい月、時間帯、年齢、場所など)を知ることができます。また、亀岡市立保育所は、立地により園の状況が大きく異なります。JRの駅に近い住宅地は人口も多く保育所の在園児数も多い一方、田畑に囲まれた地区は保育所の在園児数も少なくなっています。そのため、在園児数によって「大規模園」(園児100人以上)、「中規模園」(園児50~99人)、「小規模園」(園児50人未満)にグループ分けし、グループ別に連携して活動し、けがの状況の分析、課題の設定等を行っています。特に小規模園は、けがの発生数の増減を測るのに、各園単独では子どもの数が少なすぎて難しいところ、同じ小規模園のグループで集計することでけがの傾向を分析することが可能になります。
●集積されたけがの情報については、看護師を中心に保育士が分析します。分析の結果、多くの保育所で、保育室での「衝突」、運動場での「転倒」、「衝突」によるけがが多いことが課題でした。

「乳幼児外傷予防システムの登録画面」と「保育所サーベイランスの仕組み」

〈課題に応じた具体的取組を体系的に実施し、効果を検証〉

●課題の解決に向けて、保育所は、全年齢・環境をカバーするように取組プログラムを作成、実施しています。「体力づくり」、「安全教育」、「環境改善」の三つを柱とし、それぞれに対して「園児向け」、「職員向け」、「保護者向け」の取組を進めています。具体的な取組の内容は全園共通のもの、保育所規模別グループ共通のもの、各園独自のものがあります。
●「園児向け」の取組は、園児が主体的に行い、園児自身に気付きや考える力を付けることを目指した内容になっています。例えば、「運動場で滑って転倒してけがをすることが多い」という課題に対する取組として、「砂がある場所は滑りやすい」ことを園児に教え、園児自身が、自分がよく滑る場所をほうきで掃いて砂を払う、という活動が実施されています。

安全安心マップ

避難訓練

●地域とも保育園児の安全に関する問題点(リスク)を共有し、協力して取組を進めていることも特徴の一つです。例えば、自治会や近隣住民の協力によって、保育所付近の溝に落ちないように柵や蓋が設置されたり、園のそばの大きな川が氾濫したときに備えて近隣住民や中学校の生徒と一緒に避難する訓練を実施したりしています。
●「保護者向け」の取組では、ヒヤリハットの経験と改善点を保護者が報告し合う研修会を行っています。参加できなかった保護者には、後日お便りでの共有等も行っています。
●取組の効果は、けがのデータなどから検証し、その後のプログラムに反映します。防止策の検討・実施、効果測定においては、小児科医の助言を受けています。

〈取組の手応え・広がり〉

●このような取組を進めた結果、保育所全体のけがが減少傾向となっていることから、引き続き、工夫や改善を加えながら取組を進めています。通園時に保護者ときちんと手をつないでいる割合が高くなるなど、子ども自身の安全に関する意識の向上といった成果もみられます。保護者からも、「『○○しちゃいけないんだよ』と子どもが教えてくれ、子どもの成長を感じられる」などの感想が寄せられています。このように、取組によって、子どもが守られるだけでなく、子どもが自分や周囲の人の安全を確保する力を育てています。


  • 注1:市立小学校1校、市立保育所8園及び私立保育所1園
  • 注2:International Safe Community Certifying Center
  • 注3:International Safe Schools Certifying Centers

担当:参事官(調査研究・国際担当)