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COLUMN1 障害者の消費者トラブルの未然防止・拡大防止に向けた基礎調査

障害者の消費者トラブルの未然防止・拡大防止に向けた基礎調査

2011年に改正された障害者基本法(昭和45年法律第84号)では、「消費者としての障害者の保護」が新たに規定され、2016年には、障害者に対する合理的配慮の提供などを国や地方公共団体等に義務付けた、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)が施行されました。

障害者の消費行動・消費者トラブルの実態を把握し、トラブルの未然防止・拡大防止を図るために、消費者庁と国民生活センターではそれぞれ基礎調査を実施しています。

★消費生活センターにおける相談体制に関する調査

国民生活センター「消費生活センターにおける障がい者対応の現況調査」(2018年1月公表)によると、2016年度に障害者の消費生活相談を受け付けたという消費生活センターは約7割でした。契約者や相談者の障害としては、「精神障害」、「知的障害」が多く、相談対応で困ったことや難しいこととして、「聞き取りや意思疎通をしにくいことがあった」との回答が71.8%と最も多くなっています。障害者の来訪による相談に必要となる準備や設備については、「プライバシーが守られる相談スペース」は78.2%、「車椅子での利用が可能な相談スペース」は69.3%の消費生活センターが備えているとの回答がありました。その一方、障害者への相談対応について必要に応じて福祉関係の専門家から助言を受けられる体制や取組があるとの回答は22.3%にとどまっています。また、定期的に臨床心理士を配置する等の取組を実施している消費生活センターもありました。

★障害者の消費行動と消費者トラブルの実態把握

消費者庁では、新未来創造オフィスにおいて、徳島県及び岡山県の協力を得て、「障がい者の消費行動と消費者トラブルに関する調査」を実施し、報告書を公表しました(2018年3月公表)。

これによると、買物が好きである旨の回答(「すごく好き」及び「好き」の合計)が、「精神障害者」は67.8%、「知的障害者」は81.6%、「発達障害者」は65.5%となっています。一方、調査項目が異なるため厳密な比較は困難ですが、消費者意識基本調査(2016年度)では、59.4%となっており、障害者が買物に関心を持っていることが示唆されます(図表1)。

次に、消費者トラブルを一つ以上経験した者の割合は、「精神障害者」は37.2%、「知的障害者」は20.3%、「発達障害者」は27.0%に上ります。同様に調査項目は異なるものの、消費者意識基本調査(2016年度)では7.7%となっており、障害者が比較的多くの消費者トラブルに直面している可能性が示唆されます(図表2)。

また、周囲には把握しきれない消費者トラブルがあることも示唆されました。その背景としては、トラブルを大したことではないと考えたり、相談するのが面倒だと考えたりするほか、相談相手からのネガティブな反応(迷惑がかかる、叱責される等)を考慮したりしていることなどがうかがえました。

図表1 「買物が好き」と回答した人の割合

図表2 何らかの消費者トラブルを経験したと回答した人の割合

担当:参事官(調査研究・国際担当)