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第2部 第2章 第6節 1.国の組織体制の充実・強化

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況の詳細

第6節 国や地方の消費者行政の体制整備

1.国の組織体制の充実・強化

(1)消費者行政体制の更なる整備等

2016年度の消費者庁の政策評価については、「消費者庁政策評価基本計画」(2013年3月消費者庁長官決定。2016年11月一部改正。)及び「平成28年度消費者庁政策評価実施計画」(2016年11月消費者庁長官決定)に基づき、2017年8月にその評価書を公表しました。

この2016年度の政策評価を踏まえた上で、2017年度には、消費者庁が所管する法律の執行体制の強化、効果的に機能する仕組みの構築及び法制化に向けた検討などに取り組むこととし、予算要求及び機構・定員要求並びに改正法案の成立や法制度の具体化につなげたところであり、消費者行政に係る体制の更なる整備等に有効に結び付けることができました。とりわけ、法律の執行体制について8人の定員増を確保しました。

また、2017年7月には「政府関係機関の地方移転にかかる今後の取組について」(2016年9月まち・ひと・しごと創生本部決定。以下「政府関係機関の地方移転にかかる今後の取組について」という。)に基づき、実証に基づいた政策の分析・研究機能をベースとした新しい消費者行政の発展の拠点として、徳島県に新未来創造オフィスを開設しました。

消費者委員会は、「政府関係機関の地方移転にかかる今後の取組について」に基づき、消費者庁や国民生活センターの徳島県での取組につき、消費者行政の進化等の観点から成果を検証し、提言・助言を行うとともに、3年後めどの新未来創造オフィスの取組の検証・見直しに当たっての意見を述べることとされています。このため、必要な重要事項について調査審議するため、2017年11月に「消費者行政新未来創造プロジェクト検証専門委員会」を設置し、同年12月以降、専門調査会等を開催しています。

(2)消費者庁における国際担当の体制強化

消費者庁では、国際業務実施体制整備等のため、2016年度には国際室を設置し、定員を新規増員したほか、以後、庁内の国際担当者が連携して国際会議に参加しました。

(3)消費者委員会の事務局体制の充実・強化等

消費者委員会は独立した第三者機関として、消費者の声を踏まえつつ自ら調査審議を行い、消費者庁を含む関係府省の消費者行政全般に対して建議等を実施するとともに、内閣総理大臣、関係各大臣等の諮問に応じて調査審議を行います。消費者行政が直面する諸課題に適切に対処するためには、消費者委員会が様々な消費者問題について調査審議を行い、積極的に建議等を行うことが重要です。

このため、内閣府において、事務局体制の充実・強化を図るための予算・定員要求を着実に行うとともに、民間の多様な専門分野における人材を任期付職員、技術参与や政策調査員等として任用し、消費者委員会が行う活動をしっかりと支えることとしています。

消費者委員会が調査審議を進めるために、関係府省への資料要求やヒアリング等を頻繁に実施しています。この結果、消費者委員会は2009年9月の発足以降、数多くの意見表明を行ってきており、消費者基本計画への反映、法令の改正・執行強化等を通じて、消費者行政の推進にいかされています。

2017年度においては「消費者行政における執行力の充実に関する提言」、「事故情報の更なる活用に向けた提言」(共に2017年8月)の公表、「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議」(2017年1月)に係るフォローアップを実施しました。

また、2017年3月に消費者庁より諮問された加工食品の原料原産地表示に関する「食品表示基準案」について調査審議を行い、同年8月に答申を発出したほか、消費者契約法の見直しについては、2016年1月の消費者庁への一次答申を発出後、「今後の検討課題」とされた論点につき、2016年9月に専門調査会での調査審議を再開し、翌年8月に報告書を取りまとめ、消費者委員会において二次答申を発出しました。

さらに、消費者庁より諮問のあった公益通報者保護法における規律の在り方や行政の果たすべき役割等に係る方策に関する事項について、2018年1月に公益通報者保護専門調査会で調査審議を開始したほか、消費者法(取引分野)におけるルール形成の在り方及びルールの実効性確保に資する公正な市場を実現するための方策並びに行政、事業者、消費者の役割について検討することを目的として消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループを設置し、同年3月から調査審議を行っています。

(4)障害者の消費者被害の防止策の強化

消費生活センター等へ寄せられる障害者の消費者被害に関する相談件数は、依然として多くなっています。また、相談の大半が障害者本人以外から寄せられるケースであることを考えると、実際にはより多くの障害者が被害に遭っていることが想定されます。

また、2016年4月に、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)が施行され、不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の提供により、障害の有無にかかわらず共に暮らせる社会を目指す取組が始まりました。国においては、今後の基本方針や、障害者への対応要領を定めることが求められています。

消費者庁では、高齢者及び障害者の消費者トラブルの防止等を目的とし、障害者団体のほか高齢者団体・福祉関係者団体・消費者団体、行政機関等を構成員とする「高齢消費者・障害消費者見守りネットワーク連絡協議会」を2007年から開催し、消費者トラブルに関して情報を共有するとともに、悪質商法の新たな手口や対処の方法などの情報提供等を行う仕組みの構築を図ってきました。2017年3月に開催した「第13回高齢消費者・障害消費者見守りネットワーク連絡協議会」では、「高齢者、障害者の消費者トラブル防止のため積極的な情報発信を行う」、「多様な主体が緊密に連携して、消費者トラブルの防止や『見守り』に取り組む」等の申合せをしました。

国民生活センターでは、障害者からの消費生活相談を引き続き受け付けるとともに、相談体制の更なる整備を行っています。

また、弱視、色覚障害者等に配慮する観点から、国民生活センターのウェブサイトでは音声読み上げソフトへの対応等を実施しました。

さらに、2018年版「くらしの豆知識」(注99)は、カラーユニバーサルデザインに配慮して作成するとともに、デイジー図書(国際標準規格の視覚障害者向けデジタル録音図書)を作成・配布しました。

(5)国民生活センターによる消費生活センター等への相談支援機能強化

国民生活センターでは、全国の消費生活センター等からの商品やサービスなど消費生活全般に関する相談や問合せ等に対応する「経由相談」を実施し、相談解決の支援を行っています。

各地の消費生活センター等への相談支援機能を強化するため、2011年度に専門チーム制を本格導入し、2017年度には、専門家からのヒアリング、事業者団体等との意見交換会等を多数行い、専門性の強化を図りました。

また、消費生活センター等のバックアップとして、土日祝日に窓口を開設していない消費生活センター等を支援するため、消費者ホットラインを通じて、「休日相談」(2014年度までの名称は「土日祝日相談」)を行うとともに、平日には、各地の消費生活センター等が通話中のために電話がつながらない場合に対応する「平日バックアップ相談」を運営しています。

さらに、地方の消費生活センター等が昼休みを設けることの多い平日の11時から13時までの時間帯に、消費者から電話で相談を受け付ける「お昼の消費生活相談」を行っています。

2017年度に「経由相談」は7,271件、「平日バックアップ相談」は3,714件、「お昼の消費生活相談」は3,056件を受け付けました。

また、2017年9月14日から15日まで「アクティブシニアのトラブル増加!60歳以上の消費者トラブル110番」を実施し、88件の相談を受け、その結果を公表しました。

相談処理の専門性の強化を図るため、法律、自動車、土地・住宅、美容医療に加え2015年10月から新たに「決済手段」についても高度専門相談の実施を開始しました。

さらに、商品に関する苦情相談の解決のため、各地の消費生活センター等からの依頼を受けて商品テストを実施しています。

このほか、国民生活センター越境消費者センターにおいて、2015年6月から越境消費者相談の受付を開始し、2018年3月末時点で1万2858件の相談を受け付け、消費者に対して内容に応じた助言や情報提供を行いました。うち2件については、国民生活センターのウェブサイトでの公表を行いました。なお、海外提携機関は2018年4月1日時点で12機関となっています。

(6)消費者政策の推進等に向けた関係省庁等の連携強化

消費者庁では、2017年11月に消費者政策担当課長会議を開催しました。この会議では、関係府省と消費者政策に関連する最近の動向について意見交換を行い、今後も協力して消費者課題に取り組んでいくことを確認しました。

(7)消費者・生活者を主役とする行政を担う国家公務員の意識改革

「昇任時相談窓口等体験研修」は、「生活安心プロジェクト「消費者・生活者を主役とした行政への転換に向けて」(2008年4月国民生活審議会意見)に対するアクションプラン(工程表)」(同年7月生活安心プロジェクトに関する関係省庁局長会議決定)に基づき、各府省庁の審議官級職員を対象に2009年度に人事院と内閣府の共催により、試行的に開始されました。その後、第2期消費者基本計画(平成22年3月閣議決定)において継続的に実施することとされ、以後、人事院と消費者庁の共催により実施しています。

具体的には、国民生活センターや消費生活センター、行政相談所、日本司法支援センター(法テラス)、公共職業安定所、児童相談所、福祉事務所、年金事務所の協力を得て、消費者・生活者の声に触れる相談窓口業務を体験する業務体験研修(全体で3期間、うち1日派遣。)及び同研修で得られた経験や気付き、行政や公務員の在り方について考えたことなどを参加者間で討議するとともに、討議概要を発表する事後研修(全体で2回、うち1回参加。)から構成されています。

2017年度は、計97名が研修に参加しました。

研修終了後に実施したアンケートでは、参加者の93.8%から有益との回答を得るなど、高い評価を得ていることから、今後も継続して実施を予定しています。

(8)消費者からの情報・相談の受付体制の充実

消費者庁及び関係府省等では、消費者からの多様な情報・相談に対応するために、相談窓口ごとに電話、メール等の受付手段を拡充するなど、体制の整備を進めています。

消費者庁では、消費者からの情報・相談の受付体制の拡充について、関係府省庁等の相談窓口の設置状況を取りまとめています。主な相談窓口等は別表2(章末参照。)のとおりです。2017年11月の消費者政策担当課長会議では、受付体制の状況を把握するのに併せ、受付体制の維持・強化を促しました。


  • 注99:消費者トラブル対策に役立つ情報をコンパクトにまとめた年1回発行の冊子で、2018年版は「ネット活用の心得」を特集。

担当:参事官(調査研究・国際担当)