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第2部 第1章 第3節 (2)打消し表示に関する実態調査報告書

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第3節 表示の充実と信頼の確保

(2)打消し表示に関する実態調査報告書

広告表示において、割安料金を強調する一方で実際は割安料金の適用には制約がある旨を分かりにくく記載している表示や、痩身効果を強調する一方で「効能効果を表すものではない」などと小さな文字で記載している表示などがみられます。

消費者庁は、このような「打消し表示」について調査を行い、2017年7月14日、「打消し表示に関する実態調査報告書」を公表しました。本報告書では、収集した打消し表示が含まれる表示物(計494点)の実態を明らかにするとともに、模擬広告(表示例)を制作してWebアンケート調査(回答数1,000件)及びグループインタビュー調査(12名)を実施し、これらの調査結果に基づいた景品表示法上の考え方を示しました。

表示方法に問題のある打消し表示

本報告書では、上記各調査より判明した、多数の者が打消し表示を見落としていたという結果等を踏まえ、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できるように適切な表示方法で表示されているか否かを判断する要素を示しています(図表Ⅱ-1-3-2)。例えば、打消し表示の文字が見落としてしまうほど小さい場合など、一般消費者が打消し表示を認識できないような表示方法がとられている場合に、商品・サービスの内容や取引条件について、実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがあるとの考え方を示しています。

表示内容に問題のある打消し表示

上記各調査の結果によれば、例えば、何らかの例外がある旨を記載している打消し表示を見た上でも、回答者は内容を理解できずに例外事項がないと誤認していました。本報告書では、このように一般消費者が打消し表示を読んでも内容を理解できず、商品・サービスの内容や取引条件について、実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがあるとの考え方を示しています。

体験談を用いる場合の打消し表示

調査対象者(1,000人)に、当該商品を摂取した人の体験談が掲載された表示例(図表Ⅱ-1-3-3)を見せたところ、体験談の記載に気付いた回答者のうち、42.2%が「『大体の人』が効果を得られる」と回答し、さらにこの中の33.7%が「この商品の購入を検討しても良い」と回答しました。一方、体験談の記載に気付かなかった回答者のうち、「この商品の購入を検討しても良い」と回答した人は、4.3%でした。このことから、体験談が効果に関する認識や商品選択に強い影響を与えていることが考えられます。

さらに、体験談の記載には気付いたが打消し表示には気付かなかった回答者のうち、体験談の記載を見て「『大体の人』が効果を得られる」と回答した人は、打消し表示に気付く前は42.8%であり、打消し表示を見た後でも36.6%でした。このように、体験談の記載には気付いたが打消し表示には気付かなかった回答者に対し、改めて打消し表示を見せたところ、体験談から受ける効果に関する認識に大きな変化はみられませんでした。

以上の調査結果から、実際には、商品を使用しても効果、性能等を全く得られない者が相当数存在するにもかかわらず、商品の効果、性能等があったという体験談を表示した場合、打消し表示が明瞭に表示されていたとしても、一般消費者は大体の人が何らかの効果、性能等を得られるという認識を抱くと考えられます。そのため、本報告書では、このような体験談は景品表示法上問題となるおそれがあるとの考え方を示しています。

事業者における留意点

事業者が強調表示を行おうとする場合には、打消し表示がなくても商品・サービスの内容や取引条件の実際を一般消費者が認識できるような内容とすることが求められます。やむを得ず、打消し表示を行う場合でも、一般消費者が打消し表示の内容を正確に理解できるように分かりやすく表示し、表示物全体として、表示から受ける一般消費者の認識と実際のものとの間に差が生じないように留意する必要があります。

各事業者においては、報告書で示した考え方を十分に理解し、(1)表示チェックの体制やルールの構築、不断の見直し、改善、(2)一般消費者の視点の活用、(3)正しい知識の習得、(4)「チェックリスト」の作成・見直しなどの取組を行うことが望まれます。

図表2-1-3-2打消し表示が適切な表示方法で表示されているか否かを判断する要素

図表2-1-3-3体験談の調査に用いた表示例

担当:参事官(調査研究・国際担当)