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第1部 第2章 第5節 (4)幅広い連携によって、社会全体で事故防止を

第1部 消費者問題の動向と消費者意識・行動

第2章 【特集】子どもの事故防止に向けて

第5節 子どもを安全な環境で育てるために

(4)幅広い連携によって、社会全体で事故防止を

社会の中で、事故防止の取組を有機的に連携

これまでみてきたように、情報収集・原因究明、法整備・ルール化、啓発活動等については、国・地方公共団体、関係機関・団体の多様な主体が、様々な取組を既に実施しています。

個々の取組がバラバラに行われるのではなく、社会の中で有機的に連携することで、事故を防止する効果が発揮されます。事故の内容は多岐の分野にわたるため、有効な対策を講じていくためには行政の担当者、医療や技術等の専門家、事業者、保護者等、多くの関係者との連携・調整が、重要です。

政府では、2016年度に「子どもの事故防止に関する関係府省庁連携会議」を設置し、関係府省庁間の情報共有、共通テーマを掲げての広報等、連携して推進しています。

そのほか、連携している例として、東京都商品等安全対策協議会の取組があります。毎年度、事故に関するテーマを一つ定めて、包括的に検討し、提言をまとめ、事業者等による商品の改良や法制度・規格についての改正といった事故防止の対策の具体的な進展に結び付けています(コラム参照:東京都商品等安全対策協議会)。

また、医療関係者、専門家、民間団体等が専門知識を子どもの事故防止のために活用することが期待されます。特に、医療関係者は、治療を行うために事故の状況を発生直後に把握し、傷害等についての医学的な専門知識等を持っています。医療関係者を始めとした有識者が、子どもの事故を防ぐことを目的として設立した団体では、市民を巻き込んで情報収集、工学的な原因究明、啓発活動、製品改善へ向けた提言等、幅広く活動が行われています(コラム参照:セーフキッズジャパン)。

地域ぐるみの取組で事故防止の効果を上げる

子どもの生活圏である地域の中で、関係者が連携した取組は、事故防止の効果が高いと言われています。京都府亀岡市では、地域全体で協働して安全・安心な街づくり・学校づくりを進めており、保育園に通う園児を対象にして、事故の情報収集や、収集された情報を基に環境整備や啓発活動等を実施しています(コラム参照:京都府亀岡市)。この取組により、園児の転倒によるけがの減少や、保護者及び子ども自身の安全意識の向上等の成果がみられています。このような地域ぐるみの取組が、更に多くの地域に広がることが期待されます。

子どもの事故防止を社会に組み込み、持続可能な社会へ

子どもの発達の在り方は時代が変わっても大きく変わらないと思われますが、消費者を取り巻く生活環境、消費者の生活スタイルは、時代と共に変化しています。生活スタイルが変わり、昔から使われているものが当時の想定にはない使い方をされて事故のリスクが生じることや、消費者のニーズに応えた便利な新製品が、一方で事故の原因になることも考えられます。事故を防止する取組は継続的に行っていくことが必要です。

子どもの事故防止は、2015年に国連で採択された2030年までの持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の達成に向けて、日本として実施する指針である「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」に掲げられています。子どもが安全・安心な社会で健やかに育つ「豊かで活力ある未来像」を実現するために、行政、事業者、保護者、保育関係者、医療関係者、地域社会等子どもの安全に関わるあらゆる主体が当事者として行動していくことが求められます。

そして、子どもの事故を防止するための対策は、高齢者等の事故防止の対策ともなることがあります。子どもの安全を確保する動きが組み込まれた社会では、子どもだけでなく、高齢者を含めあらゆる層の人々の安全・安心な暮らしを確保する動きが広まると考えられます。

COLUMN4
地域全体で安全なまちづくりに取り組む ~京都府亀岡市~

COLUMN5
テーマを定めて、包括的に取り組む ~東京都商品等安全対策協議会~

COLUMN6
社会のあらゆる領域へ多角的にアプローチ ~セーフキッズジャパン~

担当:参事官(調査研究・国際担当)