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第1部 第1章 第3節 (1)2017年の消費生活相談の概況

第1部 消費者問題の動向と消費者意識・行動

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第3節 消費生活相談の概況

(1)2017年の消費生活相談の概況

全国の消費生活相談は前年より増加

全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談の件数をみると、2017年は91.1万件となり、前年と比べ約1.9万件増加しています(図表I-1-3-1)。2017年の相談件数の特徴は、法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が多数寄せられ(本章第4節(1)参照。)、架空請求に関する相談件数が、15.9万件と前年の2倍以上になり、この10年間で最多となっていることです。

長期的な推移をみると、消費生活相談件数が192.0万件と、ピークとなった2004年度も、架空請求に関する相談件数が67.6万件と急増し、全体の35.2%を占めていました。その後、架空請求に関する相談は減少しましたが、この10年間をみると、消費生活相談件数は、おおむね年間90万件前後と、依然として高水準で推移しています。

消費生活相談件数が、依然として高水準である要因には、インターネットの生活への一層の浸透が挙げられます。特にスマートフォンの普及により、SNSを通じたコミュニケーション、インターネット通販での商品の購入やサービスの予約が、高齢者を含めた幅広い年齢層でより身近で日常的なものとなりました。さらに、インターネットを利用した非対面取引では、消費者個人が気軽・手軽に「売手」となることが可能となり、取引の売手と買手の双方が消費者個人である(事業者でない)いわゆるCtoC取引市場も拡大しています。こうした状況を背景に、消費生活相談においても関連したトラブルの相談が増加しています。

「通信サービス」に関する相談件数が突出

2017年の消費生活相談を、商品・サービス別に相談件数と相談1件当たりの実際に支払った金額(平均既支払額)の関係でみると、相談件数では、デジタルコンテンツやインターネット接続回線に関する相談等の「通信サービス」が24.7万件と全体の約3割を占め、突出して多くなっています(図表I-1-3-2)。2番目に相談件数が多いのは「商品一般」で10.0万件となっており、これは、2017年には法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が多数寄せられたためです。しかし、平均既支払額でみると、「通信サービス」は2.7万円、「商品一般」は1.6万円と他の商品・サービスよりも相対的に低くなっています。

平均既支払額でみると、屋根工事やリフォーム工事の解約に関する相談等の「工事・建築・加工」が108.6万円と最も高額で、訪問販売で購入した給湯器や太陽光発電パネルに関する相談等の「土地・建物・設備」が95.9万円と続きます。次いで、フリーローン・サラ金の返済に関する相談等の「金融・保険サービス」が75.4万円と高額です。「金融・保険サービス」は、相談件数も3番目に多く、総既支払額が最も高くなっています。

相談1件当たりの平均金額は長期的なすう勢としては減少傾向

2017年に寄せられた相談1件当たりの平均金額をみると、全体では、請求された又は契約した金額である「契約購入金額」が109.3万円、実際に支払った金額である「既支払額」が42.5万円となっています。平均契約購入金額、平均既支払額それぞれの推移をみると、全体、65歳以上、65歳未満の全てにおいて長期的なすう勢としては減少傾向にありますが、2015年以降は、65歳以上の平均契約購入金額は引き続き減少しているものの、その他は横ばい又はやや増加傾向です(図表I-1-3-3)。

また、2017年に寄せられた相談全体の契約購入金額及び既支払額それぞれの総額をみると、契約購入金額総額は4204億円、既支払額総額は1429億円といずれも前年を下回りました(図表I-1-3-4)。長期的な推移をみても減少傾向にあります。65歳以上の高齢者に関するものは、契約購入金額総額では1227億円と全体の29.2%を占め、既支払額総額では615億円と全体の43.1%を占めています。

65歳以上の高齢者については、相談1件当たりの平均契約購入金額は減少してきていますが、相談1件当たりの平均既支払額は65歳未満の2倍以上であること、相談全体の既支払額総額の4割以上を高齢者が占めていることから、高齢者の消費者被害は依然として深刻であるといえます。

属性別にみた2017年の相談状況

2017年の消費生活相談状況について、属性別にみると、年齢層別では65歳以上が29.2%と、高齢者が大きな割合を占めています(図表I-1-3-5)。10歳ごとの区分でみると、2016年では、40歳代が最も大きな割合を占めていましたが、2017年は60歳代、50歳代から法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が多く寄せられたこと等から、60歳代が17.6%と最も大きな割合を占め、次いで50歳代、40歳代の順となっています。

性別では、女性が53.0%、男性が42.8%と女性の割合が高くなっています。性別により寄せられる相談件数に大きな差がある商品・サービスは、女性が男性の3倍以上の「商品一般」、「クリーニング」、2倍以上の「保健・福祉サービス」、「保健衛生品」、「被服品」、「教育サービス」、「食料品」と、男性が女性の2倍以上の「車両・乗り物」です。

さらに、性別、年齢層別に区分してみると、相談件数は、男女共に60歳代が最も多くなっています(図表I-1-3-6)。

商品・サービス別では、性別を問わず幅広い年齢層で「通信サービス」が大きな割合を占めていますが、これは、ウェブサイトを利用したデジタルコンテンツや、インターネット接続回線等に関する相談が多いことによるものです。また、2017年は、例年と異なり、50歳代から70歳代までの女性では「商品一般」の相談件数が多く、60歳代女性では3割を超えていますが、これは、主にこの年齢層の女性から、法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が寄せられたことによるものです。

次に、商品・サービスを更に詳細に区分してみると、何らかのウェブサイトに関連する「デジタルコンテンツ」についての相談件数が最も多く、他の商品・サービスを大きく引き離しています(図表I-1-3-7)。「デジタルコンテンツ」に関する相談の内訳をみると、半数以上が架空請求に関するもので、架空請求に関するもの以外では、「アダルト情報サイト」や「他のデジタルコンテンツ」、「出会い系サイト」に関するものが多くなっています。主な相談例は「アダルト情報サイトを閲覧していたら、突然登録となり、登録料を請求された」、「パソコンを操作していたら突然警告画面が出て、『ウイルスを取り込んだ』と表示されたので対策ソフトを契約したが、不審」、「出会い系サイトに登録したが、サクラサイトだと分かった。今後どうしたらよいか」といったものです。年齢層別にみても、60歳代及び80歳以上を除く各年齢層で「デジタルコンテンツ」に関する相談が最も多く、「インターネット接続回線」に関する相談も全年齢層で多く寄せられていることから、インターネットに関連した商品・サービスについての相談が大きな割合を占めていることが分かります。

2番目に相談件数が多いのは「商品一般」となっており、60歳代及び80歳以上では「デジタルコンテンツ」を上回っています。60歳代については、2017年は架空請求のはがきに関する相談が多く寄せられたことによるものです。

このほか、60歳代及び70歳代を除く各年齢層で「他の健康食品」が上位にありますが、このうち、20歳未満から50歳代までについては、インターネット通販等で「お試し」で購入するつもりが定期購入となってしまう契約のトラブルに関する相談が、前年を上回る件数寄せられたことによります(本章第4節(2)参照。)。

若者の相談はインターネット利用に関するものが中心

15歳から29歳までの若者の相談をみると、性別、年齢層を問わず、インターネット利用に関するものや、「賃貸アパート」、「光ファイバー」等一人暮らしを始めた際に契約したり購入したりすることが多い商品・サービスについての相談が上位に挙がっています(図表I-1-3-8)。また、成人になると「フリーローン・サラ金」についての相談も多く寄せられています。性別、年齢層別にみると、20歳代の男性では、「フリーローン・サラ金」についての相談が多くなっており、内容をみると、生活費や遊興費のための借金のほか、友人や先輩、中にはSNSで知り合った人から「必ずもうかる」と勧誘され、消費者金融等で多額の借入れをして情報商材等を購入したものの、「もうからないので解約したいが相手と連絡がとれない」等の相談も寄せられています。また、女性では、年齢層を問わず、エステや健康食品等広い意味での美容に関わる相談が多くみられます。

高齢者に関する消費生活相談件数は依然として高水準

65歳以上の高齢者に関する消費生活相談件数について、この10年間の推移をみると、2013年以降高水準で推移しており、2017年は26.6万件で前年を上回りました(図表I-1-3-9参照。)。5歳ごとに分けてみると、前年に比べて65―69歳が1.5万件以上増えており、60歳代から法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談が多く寄せられたことが影響しています。また、この10年間で、85歳以上の相談件数は倍増しています。

高齢者に関する消費生活相談について、相談件数上位の商品をみると、2017年は、「商品一般」以外では、「デジタルコンテンツ(全般)」、「光ファイバー」等インターネットに関連した相談で上位が占められており、この傾向は前年と変わりません(図表I-1-3-10)。一方、「アダルト情報サイト」に関する相談件数は、前年より約4割減少しました。2011年に相談が多かった「ファンド型投資商品」、「公社債」、「未公開株」など金融商品への投資に関する相談は、2017年は上位に挙がっていません。しかし、「仮想通貨」に関する投資勧誘トラブルの相談が高齢者から寄せられており、高齢者の投資に関するトラブルには注意が必要です(本章第4節(2)参照。)。

認知症等の高齢者や障害者等の見守りが重要

認知症等の高齢者(注23)に関する相談をみると、高齢者全体とは異なる傾向を示しています。本人から相談が寄せられる割合の推移をみると、高齢者全体では約8割であるのに対し、認知症等の高齢者では2割に満たない状況です(図表I-1-3-11)。販売購入形態別にみると、「インターネット通販」は約1.0%、通信販売全体でも約1割にとどまる一方で、「訪問販売」が4割近く、「電話勧誘販売」も2割近くと大きな割合を占めています(図表I-1-3-13参照。)。「訪問販売」や「電話勧誘販売」に関する相談では、本人が十分に判断できない状態にあるために、事業者に勧められるままに契約したり、買物を重ねたりといったケースがみられます。相談内容としては、インターネット利用に関する相談は少なく、健康食品や自宅の修繕工事に関する相談が多くなっています。具体的には、「認知症気味の親の家で健康食品と請求書を見つけた。本人は身に覚えがないという」、「独居高齢の親が、訪問販売で勧誘され自宅の修繕工事を契約したが、業者や契約内容が不審で代金も高額」といった相談が寄せられています。このほか、いわゆるかにの送りつけ商法(注24)に関する相談もみられます。

認知症等の高齢者本人はトラブルに遭っているという認識が低いため、問題が顕在化しにくい傾向があり、特に周囲の見守りが必要です。

障害者等(注25)に関する相談についても、本人から相談が寄せられる割合をみると、消費生活相談全体では約8割であるのに対し、障害者等に関する相談では4割に満たない状況が続いています(図表I-1-3-12)。相談内容をみると、出会い系サイト等の「デジタルコンテンツ」に関する相談や「フリーローン・サラ金」に関する相談が多くなっています。「出会い系サイトに登録し、指示通りに課金したが相手と会えずだまされたことに気付いた」、「『宝くじが高額当選した』というメールを信じて手数料を振り込んだが、当選金が入金されず、だまされたことに気付いた」など、相談時点で既に金銭的被害に遭っているケース、借金の支払が膨らみ生活が困難になって初めて家族や民生委員、福祉事業者等が気付いて相談をするケースも目立ちます。

以上のことからも、認知症等の高齢者や障害者等の消費者トラブルの未然防止や被害の拡大防止には、周囲の見守りが必要なことが分かります。家族のみならず、近隣住民や福祉事業者、行政機関等が協力して見守りを強化していくことが重要です。

COLUMN1
障害者の消費者トラブルの未然防止・拡大防止に向けた基礎調査

販売購入形態別にみた相談状況

消費生活相談の販売購入形態別割合の推移をみると、「店舗販売」が減少する一方、「インターネット通販」が増加し、2017年は、「インターネット通販」の割合が「店舗販売」の割合を上回りました(図表I-1-3-13)。ここでの「インターネット通販」は、いわゆる通常のインターネット通販より広い概念を含んでおり、アダルト情報サイトに代表される、ウェブサイトを利用したサイト利用料、オンラインゲーム等のデジタルコンテンツも入るため、データの見方には注意が必要です。より相談件数が増加しているのは、デジタルコンテンツ以外のいわゆる通常のインターネット通販です(図表I-1-3-15)。

65歳以上の高齢者についてみると、65歳未満と比べて「訪問販売」、「電話勧誘販売」の割合が大きいことが特徴ですが、2013年と比較すると、「電話勧誘販売」の割合が大きく減少しています。一方で「インターネット通販」の割合が増加し、2017年は「訪問販売」の割合を上回りました。

また、年齢層別にみると、20歳代では「マルチ取引」、80歳以上では「訪問購入」が、他の年齢層に比べて、相談に占める割合が高くなっています(図表I-1-3-14)。

トラブルになりやすい商法や手口に関する相談

トラブルになりやすい商法や手口には様々なタイプのものがありますが、主なものとその相談件数の推移をみると、2017年は、法務省等をかたる架空請求のはがきに関する相談の急増により、「架空請求」、「身分詐称」が急増しています(図表I-1-3-16)。

他には、「サイドビジネス商法」も増加し続けており、これは、インターネット上での副業に関する相談の増加によるものです。

また、2017年は、「原野商法」が増加しており、これは、過去に原野商法の被害に遭った高齢者の二次被害が増加したことによるものです(本章第4節(4)参照。)。これに関連して、についてみると、「二次被害」2017年は「二次被害」の件数は減少していますが、これは、2016年の増加の原因であった、「アダルト情報サイトからの請求に関する探偵業者等への相談で被害に遭った」というケースが減少したことによります。

一方、「劇場型勧誘」、「利殖商法」、「当選商法」等は件数の減少が顕著になっています。背景として、手口が消費者に少しずつ認知されることで被害の未然防止が図られ、相談件数の減少につながったものもあると考えられる一方で、悪質事業者が新たな手口へ移ったために相談件数が減少したものもあると考えられます。しかしながら、引き続き、一定数以上の相談が寄せられていることを踏まえ、消費者への啓発その他の対策を続ける必要があります。


  • 注23:トラブルの当事者が65歳以上で、精神障害や知的障害、認知症等の加齢に伴う疾病等、何らかの理由によって十分な判断ができない状態であると消費生活センター等が判断したもの。
  • 注24:突然「かには好きですか」などと電話があり、強引に契約させられたり、断ったのに商品が届いたりする商法。かにのほかにえびやほたて貝等に関する相談もみられる。
  • 注25:トラブルの当事者が心身障害者又は判断能力の不十分な方々であると消費生活センター等が判断したもの。

担当:参事官(調査研究・国際担当)